花灯りの新しい仲間
その日の午後。
花灯り。
「……」
ソイルは。
店先に並べた花を。
一つずつ。
丁寧に整えていた。
「この花は」
少し右へ。
「……うん」
今度は。
少し左へ。
「これでよし」
その時。
からん。
店の扉についた。
小さな鈴が鳴った。
「いらっしゃいませ……」
ソイルが。
顔を上げる。
「……あら?」
そこに。
一人の女性が。
立っていた。
焦げ茶色の髪。
後ろでまとめた。
ポニーテール。
茶色の瞳。
そして。
大きな荷物を。
片手に持っている。
「久しぶり」
「……!」
ソイルの目が。
大きくなる。
「リイル?」
「そう」
女性。
リイルは。
にこっと笑った。
「元気だった?」
「元気だったけど……」
ソイル。
「どうしてここに?」
「決まってるでしょ」
リイルは。
持っていた荷物を。
どんっ。
と床へ置く。
「今日から」
「ここで働くの」
「……え?」
「よろしく」
「ちょっと待って」
ソイル。
「急すぎない?」
「そう?」
「そうよ!」
「だって」
リイルは。
店内を見回す。
「一人でやってるんでしょ?」
「……まあ」
「最近」
「お客さん増えたんじゃない?」
「……」
ソイルは。
少しだけ。
笑った。
「まあね」
「でしょう?」
リイル。
「それに」
「千乃様が帰ってきたんでしょ?」
「……!」
ソイル。
「知ってるの?」
「町中、その話でもちきりじゃない」
「そうね」
「だから」
リイル。
「ここ」
「もっと忙しくなると思う」
「……」
「私も」
「手伝うよ」
ソイルは。
しばらく。
親友の顔を見ていた。
「……本当に?」
「本当」
「昔から」
「花屋やってみたいって言ってたでしょう?」
リイル。
少し笑う。
「私たち」
「昔からの親友なんだから」
「……」
ソイル。
ふっと。
笑った。
「じゃあ」
「よろしくね」
「こちらこそ」
二人は。
小さく。
笑い合った。
少しして。
「まず」
ソイル。
「花の水替え」
「任せて」
リイルは。
慣れた手つきで。
花瓶を持ち上げる。
「……」
「上手ね」
「昔から」
「花は好きだったから」
「知ってる」
「……」
リイルは。
花を見ながら。
「そういえば」
「何?」
「千乃様って」
「花灯りによく来てたんでしょ?」
「うん」
「どんな人?」
「……」
ソイルは。
少しだけ。
考える。
「明るい人」
「それは聞いた」
「優しい人」
「それも聞いた」
「花を見ると」
「すごく嬉しそうにする人」
「……」
リイル。
「へえ」
「それから」
ソイル。
「困ってる人を見たら」
「放っておけない人」
「……」
「だから」
「町の人たちに」
「すごく愛されてる」
「そうみたいね」
リイルは。
少しだけ。
窓の外を見る。
「じゃあ」
「私も」
「一度会ってみたいな」
「きっと」
「すぐ会えるわよ」
「どうして?」
「千乃様」
「花灯りに」
「また来るって言ってたから」
「……」
リイル。
「そっか」
その時。
からん。
鈴が鳴った。
「こんにちはー!」
「……」
「……」
二人が。
同時に。
入口を見る。
そこには。
千乃がいた。
「ソイルさん!」
「いらっしゃいませ」
「……?」
千乃が。
店内を見る。
「……あれ?」
「初めまして」
リイルが。
笑顔で。
頭を下げる。
「リイルです」
「今日から」
「ここで働くことになりました」
「……!」
千乃。
「新しい人!」
「はい」
「ソイルさんのお友達?」
「昔からの親友です」
「へえ!」
千乃は。
目を輝かせる。
「じゃあ」
「ソイルさんのこと」
「いっぱい知ってる?」
「ええ」
「千乃様」
「何?」
「ソイル」
「昔から」
「かなり頑固ですよ」
「ちょっと!」
ソイルが。
慌てる。
千乃。
「ふふっ」
「そうなんだ!」
「千乃様まで!」
リイル。
「でも」
少し笑って。
「優しいところも」
「昔から変わってません」
ソイル。
「……」
千乃。
「いい友達だね」
「……」
二人。
少しだけ照れたように笑った。
「そうですね」
「……うん」
そして。
千乃は。
店内の花を見る。
「今日も綺麗!」
リイル。
「本当に」
「花がお好きなんですね」
「うん!」
千乃は。
一輪の花を。
そっと。
眺めた。
「……」
リイルは。
その横顔を見る。
そして。
少しだけ。
笑った。
「なるほど」
「……?」
「ソイルが」
「大事にしてる理由」
「分かった気がします」
「え?」
ソイル。
「ちょっと!」
「何言ってるの!」
「本当のこと」
「もう!」
千乃は楽しそうに笑った。
花灯り。
今日から店員が二人になった。
昔からの親友。
ソイル。
そして、
リイル。
花を育てる二人の間にまた、新しい日常が始まった。




