ファンクラブ設立
翌朝。
星霜王国。
城下町。
昨日のステージから。
一夜。
明けた。
……にもかかわらず。
「ちのしろぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「最高だったぁぁぁぁ!!」
「もう一回見たい!」
「新曲よかった!」
「真銀様が笑った!」
「千乃様が可愛かった!」
「二人とも最高!」
町は。
朝から。
騒がしかった。
そして。
広場には。
一枚の大きな紙。
貼られていた。
『ちのしろ』
『ファンクラブ設立のお知らせ』
千乃。
「……」
真銀。
「……」
二人。
その紙の前に。
立っていた。
「……何これ」
千乃が。
首を傾げる。
真銀。
「知らん」
「ファンクラブ?」
「そう書いてある」
「私たちの?」
「たぶんな」
千乃。
「……」
「……」
「すごいね」
「何が?」
「ファンクラブだよ?」
「……」
真銀。
「俺は」
「昨日」
「一曲歌っただけだぞ」
「私も!」
「お前は三曲目までやろうとしてた」
「アンコールだったから!」
「……」
その時。
町人が。
走ってきた。
「千乃様!」
「真銀様!」
「お二人とも!」
「ファンクラブへようこそ!」
「いや」
「俺たちのファンクラブだろ」
「そうです!」
「なんで俺たちが入るんだ」
千乃。
「会員証ある?」
「あります!」
町人。
どんっ。
机。
そして。
大量のカード。
「……」
真銀。
「作ったのか」
「はい!」
千乃。
「見せて!」
「こちらです!」
一枚。
千乃用。
『ちのしろ・会員証』
『No.001』
「……」
千乃。
「私が?」
「もちろん!」
「じゃあ真銀は?」
「No.002です!」
「……」
真銀。
「俺」
「会員なんだな」
「はい!」
「拒否権は?」
「ありません!」
「……」
千乃。
「じゃあ私No.001!」
「千乃!?」
「だって楽しそう!」
真銀。
「……」
町人。
「ちなみに!」
「何?」
「すでに」
「三百人以上」
「会員登録されています!」
「三百!?」
千乃。
「すごい!」
真銀。
「早すぎるだろ」
「昨日の夜だけで」
「登録希望者が殺到しまして!」
「殺到!?」
千乃。
「何するの?」
町人。
「もちろん!」
「ちのしろの応援です!」
「応援?」
「はい!」
「次回公演の準備!」
「新曲!」
「衣装!」
「グッズ!」
「……」
真銀。
「グッズ?」
千乃。
「グッズ?」
町人。
「はい!」
別の町人が。
箱を。
持ってくる。
「試作品です!」
箱。
ぱかっ。
「……」
千乃。
「……これ」
そこには。
星型の小さなペンダント。
中央に。
『ちのしろ』
と。
刻まれている。
「かわいい!」
千乃。
「欲しい!」
「お前本人だろ」
「だってかわいい!」
真銀。
「……」
さらに。
箱の中。
「こちらは!」
「ちのしろタオル!」
「……」
「そして!」
「ちのしろ扇子!」
「……」
「さらに!」
「ちのしろ星型うちわ!」
千乃。
「全部ほしい!」
「だから本人だろ!」
町人。
「真銀様の分もあります!」
真銀。
「俺はいい」
「えー」
千乃。
「お揃いにしようよ」
「……」
真銀。
「……一つだけな」
「やった!」
町人。
「ありがとうございます!」
その時。
別の町人が。
紙を持って。
走ってくる。
「次回公演の案!」
「もうあるのか」
「はい!」
紙。
『ちのしろ・第二回公演』
『場所:中央広場』
『日時:近日決定』
『新曲予定』
『アンコールあり』
真銀。
「……」
千乃。
「アンコールありだって」
「勝手に決めるな」
「いいじゃん!」
「お前が許可するな」
「だって」
「楽しいし!」
真銀。
「……」
そして。
千乃。
少し考える。
「ねえ」
「何?」
「次の曲」
「もっと」
「みんなで歌える曲にしない?」
町人。
「……!」
「それ」
「いいですね!」
千乃。
「掛け声とか!」
「いい!」
「みんなが参加できる!」
「最高だ!」
真銀。
「……」
「また始まった」
「何が?」
「お前の」
「アイドル魂」
「アイドル魂って何!?」
その時。
広場の端から。
「ちのしろー!」
子どもが。
声を上げた。
「ちのしろー!」
別の子も。
「ちのしろー!」
さらに。
「ちのしろ!」
町人たち。
どんどん。
声が。
重なっていく。
「ちのしろ!」
「ちのしろ!」
「ちのしろ!」
千乃。
「……!」
嬉しそうに。
手を振る。
「みんな!」
「ありがとう!」
真銀。
少しだけ。
照れながら。
手を上げる。
「……ありがとう」
その瞬間。
歓声。
「うおおおおおおおおおお!!」
千乃。
「真銀!」
「何だ?」
「次も!」
「一緒にやろうね!」
「……」
真銀。
「……ああ」
そして。
その日の午後。
集会所では。
再び。
作曲会議が。
始まった。
「次は!」
「もっと盛り上がる曲!」
「星をテーマに!」
「二人の掛け合い!」
「みんなのコール!」
「最後は大合唱!」
「……」
若い作曲家。
「俺」
「寝る暇ないな」
千乃。
「頑張って!」
「千乃様も手伝ってください!」
「もちろん!」
真銀。
「……」
静かに。
椅子へ座る。
「俺も?」
「もちろん!」
「……」
「分かった」
こうして。
星霜王国では。
新たな歌が。
作られ始めた。
昨日まで。
ただの。
お祝いだった。
けれど。
今では。
街全体が。
二人を。
待っている。
千乃と。
真銀。
ちのしろ。
次のステージへ。
物語は。
また。
少しだけ。
賑やかな方向へ。
進み始めていた。




