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舞台へ

 そして。


 数日後。


 星霜王国。


 城下町の中央広場。


 そこには。


 巨大なステージが。


 完成していた。


「……」


 千乃。


「……」


 真銀。


 二人は。


 ステージの裏から。


 客席を見ていた。


「……多くない?」


 千乃が。


 ぽつり。


 呟く。


 真銀。


「多いな」


 広場だけでは。


 足りない。


 通りまで。


 人。


 人。


 人。


 さらに。


 建物の窓から。


 顔を出している人までいる。


「ちのしろー!」


「千乃様ー!」


「真銀様ー!」


「新曲楽しみー!」


 千乃。


「……」


 目が。


 きらきら。


「……すごい」


 真銀。


「帰るなら」


「今のうちだぞ」


「え?」


「これ」


「もう逃げられない」


「……」


 千乃。


「やだ」


「なんで?」


「楽しそうだから!」


「……」


 真銀。


「そう言うと思った」


 その時。


「お二人とも!」


 町人が。


 走ってくる。


「準備できました!」


「衣装も!」


「ステージも!」


「音響も!」


「照明も!」


「観客も!」


「全部完璧です!」


 真銀。


「音響?」


「照明?」


「いつの間にそこまで……」


 町人。


「ちのしろですから!」


「その一言で全部済ませるな」


 千乃。


「真銀!」


「ん?」


「衣装!」


「……」


「見に行こう!」


「俺はもう着てる」


「あ」


 千乃は。


 自分の衣装を見る。


 白を基調とした。


 星の刺繍。


 淡いピンクのリボン。


 髪には。


 小さな星飾り。


「……」


 くるっ。


 ドレスが。


 ふわっ。


「かわいい!」


「何回言うんだ」


「何回でも!」


 真銀。


「……」


 そして。


 千乃は。


 ステージの方を見る。


「……」


「歌」


「楽しみだなぁ」


 真銀。


「俺は緊張してる」


「え?」


「人前で歌うなんて」


「普通しないだろ」


「でも」


 千乃。


 真銀を見る。


「一緒なら大丈夫だよ」


「……」


 真銀。


「……そうだな」


 少しだけ。


 笑った。


 その時。


 ステージの前。


「皆さん!」


 司会役の町人が。


 マイク代わりの魔道具を持って。


 叫んだ。


「本日は!」


「星霜王国!」


「千乃様と真銀様による!」


「ちのしろ!」


「初の!」


「オリジナル曲披露です!!」


「うおおおおおおおおおおおおお!!」


 歓声。


 千乃。


「……」


 ステージ裏。


 深呼吸。


「……よし」


 真銀。


「緊張してる?」


「ちょっと」


「意外だな」


「私だって緊張するよ!」


「そうか」


 千乃。


「でも」


 笑う。


「始まったら楽しむ!」


「……」


 真銀。


「それがお前らしい」


 司会。


「それでは!」


「お二人!」


「お願いします!!」


 照明。


 ぱぁぁぁぁぁっ!!


 ステージが。


 星の光に包まれる。


「……!」


 千乃。


「行こう!」


「……ああ」


 二人。


 ステージへ。


 歩き出す。


 歓声。


「千乃様ぁぁぁぁぁぁ!」


「真銀様ぁぁぁぁぁ!」


「ちのしろー!」


 千乃。


 ステージ中央へ。


 くるっ。


 笑顔。


「みんなー!」


「今日は来てくれてありがとう!」


「うおおおおおおおおお!!」


 真銀。


 隣へ。


「……」


 千乃。


「真銀!」


「何だ?」


「挨拶!」


「……」


 真銀。


 一瞬。


 客席を見る。


「……今日は」


「よろしく」


 歓声。


「きゃああああああ!」


「真銀様ぁぁぁ!」


 千乃。


「ほら!」


「言えた!」


「……」


 真銀。


「子ども扱いするな」


「ごめん!」


 音楽が。


 静かに。


 始まる。


 星の音。


 きらん。


 きらん。


 千乃が。


 最初の一歩を。


 踏み出す。


 ドレスが。


 ふわっ。


「星の下で 笑おうよ」


 広場が。


 一瞬。


 静かになる。


 そして。


 千乃の歌声が。


 星空のように。


 広がっていく。


「今日もここで 会えたから」


 真銀。


 続く。


「遠い夜を 越えてきた」


「迷うことも あったけど」


 千乃。


 くるっ。


「泣いた日も!」


 真銀。


「笑った日も」


 千乃。


「全部!」


 真銀。


「忘れない」


 二人。


「だから今 歌おう」


 観客。


「……」


 そして。


「星の下で 君と笑おう」


 ステージの上。


 星の魔法が。


 一つ。


 二つ。


 三つ。


 空へ。


 舞い上がる。


「ここにいるよ いつまでも」


 千乃。


 楽しそうに。


 踊る。


 ステップ。


 ターン。


 ジャンプ。


「手を伸ばして!」


 真銀。


「空を見上げて」


 千乃。


「もっと!」


 真銀。


「もっと!」


 二人。


「一緒に行こう!」


「うおおおおおおおおおおお!!」


 観客が。


 一斉に。


 手を上げる。


 千乃。


「みんなも!」


「一緒に!」


 子どもたち。


「一緒に行こうー!」


 町人。


「うおおおおおお!!」


 真銀。


「……」


 思わず。


 笑った。


 千乃。


「真銀!」


「ん?」


「今笑った!」


「……」


「また言うのか」


「言う!」


 曲が。


 後半へ。


 千乃。


 真銀。


 二人の動きが。


 少しずつ。


 揃っていく。


 最初は。


 ぎこちなかった真銀も。


 今では。


 千乃の動きを。


 自然に追っている。


「もっと高く!」


「もっと遠く!」


「声を!」


「届けよう!」


 二人。


「星空の向こうまで!」


 その瞬間。


 ステージの上空。


 巨大な星が。


 ぱぁぁぁぁぁっ。


 輝いた。


「うわぁぁぁぁぁぁ!!」


「すごい!」


「星だ!」


 千乃。


 目を輝かせる。


「きれー!」


 真銀。


「お前」


「歌いながら普通に感動するな」


「だって本当に綺麗!」


 そして。


 最後のサビ。


 二人。


 並んで。


 客席を見る。


「星の下で 君と笑おう」


「ここにいるよ いつまでも」


「涙だって 悲しみだって」


「明日の光に 変えていこう」


 最後。


 千乃。


「星霜王国!」


 真銀。


「この街で!」


 千乃。


「みんなで!」


 真銀。


「歌おう!」


 二人。


「笑おう!」


 そして。


「星の下で」


「また会おう!」


 ぴたっ。


 二人。


 最後のポーズ。


 頭上から。


 星の光が。


 降り注ぐ。


 静寂。


 一秒。


 二秒。


 三秒。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 大歓声。


 拍手。


 子どもたちが。


「ちのしろー!」


「ちのしろー!」


「ちのしろー!」


 と。


 叫ぶ。


 千乃。


「……!」


 嬉しそうに。


 手を振る。


「ありがとうー!」


 真銀。


 少し照れながら。


 手を振る。


「……ありがとう」


 千乃。


「真銀!」


「何だ?」


「楽しかった?」


「……」


「……ああ」


「やった!」


 そして。


 町人たち。


「アンコール!」


「アンコール!」


「アンコール!」


 真銀。


「……」


「まだやるのか?」


 千乃。


「やろう!」


「即答!?」


 千乃。


 客席へ。


「もう一回!」


「歌おうかー!」


「うおおおおおおおおおおお!!」


 真銀。


「……」


 ため息。


「……分かった」


 その瞬間。


 町中から。


「ちのしろ!」


「ちのしろ!」


「ちのしろ!」


 声が響いた。


 その日。


 星霜王国の城下町に。


 正式に。


 一つのユニットが誕生した。


 千乃。


 真銀。


 二人で歌う。


 星のような歌。


 その名は。


 ――ちのしろ。


 そして。


 本人たちは。


 まだ知らない。


 この日のステージが。


 後々。


 星霜王国の伝説になることを。

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