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たぶるきあいぱわぁー、始原竜へ

 永劫水晶の光が。


 ゆっくりと。


 消えていく。


 七柱。


 その前に。


 一本の道が。


 伸びていた。


 暗い。


 長い。


 そして。


 どこまでも。


 深い。


 セレオン。


「……」


「この先が」


「始原竜の領域だ」


 グラン。


「……」


「とうとう来たか」


 ヴァルガス。


「今まで」


「誰も戻ってこなかった場所だな」


 リゼリア。


「記録上」


「帰還者はゼロです」


 エレノア。


「……」


「怖いね」


 ノアス。


「でも」


 アイを見る。


「たぶん大丈夫」


 アイ。


「うん」


 グラン。


「お前ら」


「その『たぶん』」


「信用していいのか?」


 ノアス。


「幸運神だから」


「たぶん」


 グラン。


「その自信が一番怖い」


 七柱は。


 ゆっくり。


 道へ入った。


 一歩。


 二歩。


 三歩。


 何も。


 起きない。


 アイ。


「……」


 ノアス。


「……」


 二人。


 顔を見合わせる。


「……」


「……」


 グラン。


「やめろ」


「まだ何も言ってない!」


 アイ。


「でも」


 ノアス。


「うん」


「ちょっと」


「やりたくなってきた」


 グラン。


「やめろ」


 アイ。


「一回だけ」


「やめろ」


 ノアス。


「小さくなら?」


「そういう問題じゃねぇ!」


 アイ。


 拳を。


 ぐっ。


 ノアスも。


 拳を。


 ぐっ。


「「たぶるきあいぱわぁー!!」」


 ……。


 …………。


 何も。


 起きない。


 グラン。


「……」


「ほらな」


 アイ。


「……」


 ノアス。


「……」


 アイ。


「失敗?」


 ノアス。


「たぶん」


 グラン。


「よし」


「今日はこれで終わりだ」


 その瞬間。


 遠く。


 どこかで。


 カチッ。


「……?」


 セレオン。


「今」


「何か音がした」


 リゼリア。


「記録します」


 グラン。


「いちいち記録するな」


 カチッ。


 カチッ。


 カチッ。


 道の奥。


 何かが。


 動いている。


「……」


 アイ。


「何だろう」


 ノアス。


「幸運かな」


 グラン。


「違うだろ」


 その瞬間。


 道の左右に。


 無数の。


 小さな扉が。


 ずらり。


 と現れた。


「……」


 セレオン。


「またか」


 リゼリア。


「先ほどと」


「同じ現象です」


 ヴァルガス。


「どれが正解だ?」


 ノアス。


「……」


 目を閉じる。


「左」


 アイ。


「左!」


 グラン。


「また即決かよ!」


 ノアス。


「幸運神だから」


 アイ。


「気合だから」


 グラン。


「二人ともそれしかないのか!?」


 しかし。


 左端の扉。


 勝手に。


 開いた。


「……」


 その向こう。


 何もない。


 ただ。


 真っ暗。


 グラン。


「……」


「本当にここか?」


 ノアス。


「うん」


 アイ。


「行こう」


 セレオン。


「待て」


「何だ?」


「これは」


「空間そのものが」


「扉の向こうを」


「隠している」


 アイ。


「つまり?」


 セレオン。


「分からない」


 アイ。


「じゃあ」


 拳。


 ぐっ。


 ノアス。


 拳。


 ぐっ。


 グラン。


「やめろぉぉぉぉぉぉ!!」


「「たぶるきあいぱわぁー!!」」


 ドォォォォォォォォォォン!!


 暗闇が。


 吹き飛んだ。


「……」


「…………」


 全員。


 固まった。


 暗闇の奥。


 巨大な空間。


 そして。


 その中央に。


 一滴の。


 光。


「……」


 リゼリア。


「……涙?」


 ヴァルガス。


「いや」


「まだ違う」


 セレオン。


「この空間」


「時間の流れが」


「完全に停止している」


 アイ。


「……」


 ノアス。


「幸運だった」


 アイ。


「気合だった」


 グラン。


「だからどっちだよ!!」


 その時。


 光の一滴が。


 ふわり。


 浮かび上がった。


 そして。


 声。


「……誰だ」


 空間そのものが。


 震えた。


 エレノア。


「……」


 グラン。


「……」


 ヴァルガス。


「……」


 リゼリア。


「……」


 セレオン。


「……」


 ノアス。


「……」


 アイ。


「……」


 全員。


 上を見る。


 何も。


 見えない。


 けれど。


 確かに。


 そこに。


 巨大な存在が。


 いる。


「……」


 アイ。


「始原竜?」


 声。


「そうだ」


 ズン。


 空間が。


 揺れる。


「我が」


「始原竜」


 グラン。


「……」


「いたのかよ」


 ヴァルガス。


「本物か」


 リゼリア。


「記録に」


「存在しか残っていません」


 始原竜。


「……」


「お前たちは」


「何をしに来た」


 アイ。


 一歩。


 前へ出る。


「始原竜の涙が」


「必要なの」


 始原竜。


「……」


「なぜだ」


 アイ。


「私の魂を」


「元の身体に」


「戻したいから」


 始原竜。


「……」


 長い。


 沈黙。


 そして。


「帰還を望むか」


 アイ。


「うん」


「どうしても」


 始原竜。


「……」


 ノアス。


 アイの隣へ。


「じゃあ」


「俺も」


 拳を。


 ぐっ。


「幸運で」


 アイ。


 拳を。


 ぐっ。


「気合で」


「「たぶるきあいぱわぁー!!」」


 グラン。


「話を聞けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 しかし。


 始原竜は。


 怒らなかった。


「……」


「面白い」


 アイ。


「え?」


 始原竜。


「気合と幸運」


「二つの力が」


「重なっている」


 ノアス。


「やっぱり?」


 始原竜。


「お前たちの力は」


「理屈ではない」


 アイ。


「うん」


 始原竜。


「だが」


「結果を生む」


 その瞬間。


 巨大な瞳が。


 暗闇の中で。


 ゆっくり。


 開いた。


「ならば」


「一つ」


「試してみよう」


 アイ。


「何を?」


 始原竜。


「我の涙を」


「欲するなら」


「我を」


「笑わせてみろ」


「……」


 七柱。


「…………」


 グラン。


「……」


「なんでそうなるんだ」


 始原竜。


「千年以上」


「誰も」


「我を笑わせられなかった」


 ノアス。


「……」


 アイ。


「……」


 二人。


 顔を見合わせる。


 そして。


 同時に。


 拳を。


 ぐっ。


「……」


 グラン。


「やめろ」


 アイ。


「せーの」


 ノアス。


「せーの」


「「たぶるきあいぱわぁー!!」」


 ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!


 始原竜。


「…………」


 七柱。


「…………」


 グラン。


「…………」


 始原竜。


 数秒。


 沈黙。


 そして。


「……ふっ」


「……」


「……」


「……」


 始原竜の口元が。


 ほんの少し。


 上がった。


「……くだらん」


 アイ。


「笑った!」


 ノアス。


「笑った!」


 グラン。


「……」


「本当に笑わせたのかよ」


 始原竜。


「……」


 小さく。


 息を吐く。


「仕方ない」


 光の一滴が。


 ゆっくり。


 アイの前へ。


「持っていけ」


 アイ。


「……!」


「ありがとう!」


 始原竜。


「ただし」


「その力」


「使いすぎるな」


 アイ。


「たぶるきあいぱわぁー?」


「そうだ」


 ノアス。


「なんで?」


 始原竜。


「神界の法則が」


「少し」


「おかしくなっている」


 グラン。


「やっぱりな」


 セレオン。


「……」


「時空の流れまで」


「変化しています」


 リゼリア。


「記録します」


 グラン。


「だから記録するな!」


 始原竜。


「……」


「もう一つ」


 アイ。


「?」


 始原竜。


「その掛け声」


「我の前で」


「二度と使うな」


 アイ。


「……」


 ノアス。


「……」


 二人。


「「分かった」」


 グラン。


「絶対守れよ」


 アイ。


「うん」


 ノアス。


「うん」


 数秒。


 沈黙。


 アイ。


「……」


 ノアス。


「……」


 グラン。


「……」


 アイ。


「……」


 ノアス。


「……」


 そして。


「「たぶるきあいぱわぁー!!」」


「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 始原竜。


「…………」


 エレノア。


「ふふっ☆」


 始原竜。


「……もう一度」


「我を笑わせるつもりか?」


 アイ。


「うん!」


 グラン。


「帰るぞ」


 こうして。


 七柱は。


 始原竜の涙を。


 無事。


 手に入れた。


 そして。


 最後に。


 必要なのは。


 元の身体。


 そして。


 魂帰還の儀。


 アイは。


 光の一滴を。


 大切に。


 胸元へ。


 しまった。


「……」


「あと一つ」


 ノアス。


「うん」


「帰るだけだね」


 アイ。


「そうだね」


 グラン。


「……」


「その『帰る』が」


「一番大変なんだよな」


 セレオン。


「確かに」


 リゼリア。


「帰還記録が」


「存在しませんからね」


 アイ。


「……」


 それでも。


 七柱は。


 来た道を。


 振り返った。


 そして。


 ゆっくり。


 歩き始めた。


 今度こそ。


 帰るために。


 始原竜。


 アストラゼウス。


 その巨大な姿を前に。


 七柱は。


 静かに。


 帰り道を探していた。


 セレオン。


「……」


「本来なら」


「ここから戻るだけでも」


「かなり難しい」


 グラン。


「だろうな」


 リゼリア。


「記録上」


「この場所から帰還した神は」


「存在しません」


 ヴァルガス。


「……」


「最後まで」


「とんでもない場所だな」


 エレノア。


「アルちゃん」


「帰れる?」


 アイ。


「……」


 アストラゼウスから。


 もらった。


 始原竜の涙。


 それを。


 胸元で。


 そっと確認する。


「うん」


「帰りたい」


 ノアス。


「じゃあ」


「幸運で帰ろう」


 アイ。


「気合で帰ろう」


「……」


 グラン。


「嫌な予感がする」


 セレオン。


「まさか」


 アイ。


 ノアス。


 二人。


 顔を見合わせる。


「……」


「……」


 そして。


 同時に。


 拳を。


 ぐっ。


 握った。


 グラン。


「待て」


「帰還方法は」


「ちゃんと考えろ」


 アイ。


「考えたよ」


 ノアス。


「俺も」


 グラン。


「何を?」


 二人。


「「たぶるきあいぱわぁー帰還!」」


「名前からして不安しかない!!」


 アイ。


「いくよ!」


 ノアス。


「うん!」


 二人。


 両手を。


 高く。


 掲げる。


「「たぶるきあいぱわぁー!!」」


 ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!


 空間が。


 大きく。


 震えた。


「……!」


 セレオン。


「時空が」


「動いた!」


 リゼリア。


「記録します!」


 グラン。


「今回は記録していい!」


 リゼリア。


「では記録します」


 ヴァルガス。


「帰還の道は?」


 セレオン。


 目を見開く。


「……開いている」


 アイ。


「やった!」


 ノアス。


「幸運!」


 アイ。


「気合!」


「「たぶるきあいぱわぁー帰還!!」」


 バァァァァァァァァァァァン!!


 七柱の足元。


 巨大な光の魔法陣が。


 一瞬で。


 広がった。


 エレノア。


「わっ!」


 グラン。


「うおっ!?」


 ヴァルガス。


「これは!」


 リゼリア。


「空間転移です!」


 セレオン。


「しかも」


「帰還先が」


「自動で指定されている!」


 グラン。


「何で!?」


 アイ。


「帰りたいから!」


「理由になってねぇ!」


 次の瞬間。


 七柱の身体が。


 光に包まれた。


 その瞬間。


 アイは。


 ふと。


 振り返った。


「アストラゼウス!」


 始原竜。


 巨大な瞳を。


 ゆっくり。


 アイへ向ける。


「……何だ」


 アイ。


 笑う。


「また遊びに来るねー!」


「…………」


 アストラゼウス。


 しばらく。


 沈黙。


 そして。


「……好きにしろ」


 アイ。


「うん!」


 エレノア。


「アルちゃん!」


「もう転移始まってるよ!」


 アイ。


「分かってるー!」


 グラン。


「分かってねぇだろ!」


 ノアス。


「また来ようね!」


 アイ。


「うん!」


 アストラゼウス。


「……」


 七柱。


 光の中へ。


 消えていく。


 最後に。


 アストラゼウスが。


 小さく。


 呟いた。


「……騒がしい神々だった」


 けれど。


 その声には。


 ほんの少しだけ。


 笑いが混じっていた。


 次の瞬間。


 光が。


 弾ける。


 そして。


 七柱は。


 神界の入口。


 アストラル・レルムへ。


 帰還した。


「……」


 全員。


 その場に。


 立っている。


 無事。


 帰ってきた。


 グラン。


「……」


「帰ってきた」


 セレオン。


「ああ」


 リゼリア。


「帰還成功」


 ヴァルガス。


「……」


「本当に」


「帰れたな」


 エレノア。


「アルちゃん!」


「成功したね!」


 アイ。


「うん!」


 ノアス。


「やっぱり幸運だった」


 アイ。


「気合だった」


 グラン。


「もうどっちでもいい」


 そして。


 アイは。


 胸元に手を当てる。


 そこには。


 星霊花。


 永劫水晶。


 始原竜の涙。


 三つの素材が。


 揃っていた。


「……」


 アイ。


「これで」


「やっと」


「帰れる」


 エレノア。


「うん」


 グラン。


「あとは」


「元の身体だな」


 セレオン。


「魂帰還の儀」


 リゼリア。


「準備を始めましょう」


 ノアス。


「……」


「もう一回」


 アイ。


「?」


 ノアス。


 拳を。


 ぐっ。


「たぶるきあいぱわぁー帰還!」


 アイ。


 拳を。


 ぐっ。


「たぶるきあいぱわぁー!」


 グラン。


「帰ってきたばっかりだぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 神界に。


 二人の声が。


 響き渡る。


 こうして。


 誰一柱も帰れなかった。


 危険な旅を。


 七柱は。


 無事に。


 終えた。


 そして。


 始原竜アストラゼウスとの。


 新しい縁も。


 いつの間にか。


 生まれていた。


 アイは。


 もう一度。


 始原竜のいた方向を見る。


「……またね」


 小さく。


 そう呟いた。


 アストラル・レルム。


 長い旅を終え。


 アイたちは。


 神界へ。


 戻ってきていた。


「……」


 アイ。


 胸元に。


 三つの素材を。


 大切にしまっている。


 星霊花。


 永劫水晶。


 そして。


 始原竜アストラゼウスの涙。


「……揃った」


 リゼリア。


「はい」


「必要なものは」


「すべて揃っています」


 セレオン。


「後は」


「元の身体だ」


 アイ。


「……」


 元の身体。


 千乃の身体。


 星氷神城に。


 今も。


 永久氷界によって。


 眠っている。


 アイ。


「……帰る」


 エレノア。


「アルちゃん」


「うん」


「大丈夫?」


 アイ。


「大丈夫」


 グラン。


「……」


「無理すんなよ」


 アイ。


「うん」


 ノアス。


「幸運は」


「最後まで続いてるよ」


 アイ。


「じゃあ」


 少し。


 笑う。


「帰ろう」


 セレオンが。


 手を。


 前へ。


 伸ばす。


「帰還座標」


「星霜王国」


 空間が。


 ゆっくり。


 開く。


 けれど。


 アイ。


「待って」


 セレオン。


「どうした?」


 アイ。


「私が」


「先に行く」


 エレノア。


「一人で?」


「うん」


「どうして?」


 アイ。


 少しだけ。


 笑う。


「真銀に」


「確認したいことがあるから」


 グラン。


「……」


「分かった」


 セレオン。


「なら」


「先に送ろう」


 光。


 アイを。


 包む。


 その直前。


 エレノア。


「アルちゃん」


「うん?」


「ちゃんと」


「帰ってきてね」


 アイ。


「うん!」


 そして。


 光。


 ぱあっ。


 アイの姿が。


 消えた。


 星霜王国。


 星氷神城。


 中庭。


 真銀は。


 一人で。


 ベンチに座っていた。


「……」


 空を。


 見ている。


 その表情は。


 静かだった。


 けれど。


 どこか。


 寂しそうだった。


 その時。


 空間が。


 ふわっ。


 揺れる。


「……?」


 真銀が。


 顔を上げる。


 白い光。


 その中から。


 一人の少女が。


 降りてくる。


 白い髪。


 白い猫耳。


 白い尻尾。


 右目。


 金色。


 左目。


 ピンク。


 アイ。


「……」


 真銀。


「アイ?」


「うん」


 アイ。


「ただいま」


 真銀。


「……おかえり」


 アイ。


 真銀の前まで。


 歩いていく。


「真銀」


「ん?」


「……」


 アイ。


 少しだけ。


 真銀を見る。


「千乃に」


「……」


「会いたい?」


 真銀。


「……」


 その言葉。


 真銀の表情が。


 止まった。


「……千乃に?」


 アイ。


「うん」


「会いたい?」


 真銀。


 すぐには。


 答えなかった。


「……」


 手。


 膝の上で。


 ぎゅっと。


 握る。


「……会いたい」


 アイ。


「……」


「すごく?」


 真銀。


「……ああ」


「毎日」


「会いたいと思ってる」


 アイ。


「……」


 真銀。


「でも」


「もう」


「会えない」


 アイ。


「……」


 真銀。


「だから」


「そう思うだけにしてる」


 アイ。


「……そっか」


 真銀。


「……」


 アイ。


「じゃあ」


「もし」


「会えるなら?」


 真銀。


「……」


 真銀が。


 ゆっくり。


 顔を上げる。


「……会いたい」


「絶対に」


 アイ。


「……」


 少しだけ。


 目を伏せる。


「そっか」


 真銀。


「アイ?」


 アイ。


「なに?」


「どうして」


「そんなことを聞く?」


 アイ。


「……」


 アイは。


 少しだけ。


 笑った。


「秘密」


「……」


 真銀。


「変な奴だな」


 アイ。


「よく言われる」


 真銀。


「……」


 アイ。


「でも」


「一つだけ」


 真銀。


「?」


 アイ。


「真銀」


「なに?」


「……もう少しだけ」


「待ってて」


 真銀。


「……?」


 アイ。


「きっと」


「会えるから」


 真銀。


「……」


 アイ。


 白い尻尾が。


 ゆっくり。


 揺れる。


「だから」


「今は」


「諦めないで」


 真銀。


「……」


「分かった」


 アイ。


「うん」


 真銀。


「……」


 そして。


 アイは。


 空を見上げた。


「……」


 もうすぐ。


 始まる。


 魂帰還の儀。


 千乃として。


 戻るための。


 最後の一歩。


 真銀は。


 まだ。


 知らない。


 目の前にいる。


 アイが。


 千乃自身だということを。


 けれど。


 その日は。


 もう。


 遠くなかった。

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