時空の裂け目 たぶるきあいぱわぁー
星霊花を手に入れた。
七柱は。
次の目的地。
永劫水晶へ向かっていた。
「……」
アイ。
「次は」
「時空の裂け目」
セレオン。
「ああ」
「ここから先は」
「本当に危険だ」
グラン。
「さっきも言ってたな」
セレオン。
「今度は本当だ」
ノアス。
「さっきも本当だったよ?」
「……」
グラン。
「幸運神が余計なこと言うな」
「はい」
しばらく。
歩く。
すると。
「……?」
アイが。
足を止めた。
「どうした?」
ヴァルガス。
アイ。
「道が」
「ない」
目の前。
巨大な崖。
その向こう。
目的地へ続く道。
しかし。
間には。
とてつもなく深い。
空間の裂け目。
「……」
エレノア。
「うわぁ」
「これは」
「飛べないと無理だね」
グラン。
「飛んでも」
「時空の歪みに巻き込まれる」
セレオン。
「普通に渡るのは不可能だ」
リゼリア。
「記録にも」
「この場所を越えられた者はいないと」
「あります」
アイ。
「……」
裂け目を見る。
ぐにゃり。
空間そのものが。
歪んでいる。
「……」
アイ。
「じゃあ」
右手を。
ぐっ。
「壊す」
セレオン。
「待て」
「何を?」
「時空だ」
「うん」
「壊すな」
「……」
アイ。
「でも」
「道がないよ?」
「だからって」
「時空を壊すな」
「……」
アイ。
「じゃあ」
「どうするの?」
「俺が道を作る」
セレオンが。
魔力を集中させる。
空間の歪みを。
少しずつ。
固定する。
しかし。
「……っ」
セレオンの額に。
汗。
「無理だ」
「え?」
「歪みが強すぎる」
「このままでは」
「固定できない」
グラン。
「なら」
「戻るか?」
アイ。
「……」
首を。
横に振る。
「嫌」
エレノア。
「アルちゃん?」
アイ。
「だって」
「もう」
「星霊花」
「取ったよ」
「うん」
「ここまで来た」
「うん」
「だから」
アイ。
拳を。
握る。
「気合」
「……」
グラン。
「嫌な予感しかしない」
アイ。
「気合で」
「なんとかする!」
「具体性がない!」
アイ。
裂け目の前へ。
一歩。
出る。
「……」
両手を。
前へ。
「うおおおおおおおおおおおおお!!」
光が。
集まる。
エレノア。
「アルちゃん!?」
アイ。
「道ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
拳を。
前へ。
「できろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ドォォォォォォォォン!!
空間が。
揺れた。
「……」
全員。
「……」
アイ。
「……」
「……」
何も。
起きない。
ノアス。
「……」
「気合」
「足りないんじゃない?」
アイ。
「なるほど」
グラン。
「納得するな」
アイ。
もう一度。
拳を。
握る。
「気合追加!」
「何を追加してるんだ!?」
アイ。
「うおおおおおおおおおおおおお!!」
ドォォォォォォォン!!
空間が。
さらに。
震える。
裂け目が。
ぐらり。
「……!」
セレオン。
「待て」
「何?」
「今」
「裂け目の境界が」
「少し動いた」
アイ。
「ほんと?」
「ああ」
アイ。
「じゃあ」
さらに。
拳。
「気合ぃぃぃぃぃぃっっっっっっっっっっっっっっ!!」
ドォォォォォォォォォォォォォン!!
その瞬間。
裂け目が。
ピタッ。
止まった。
「……」
「……」
「……」
セレオン。
「……」
「固定」
「された」
グラン。
「は?」
リゼリア。
「記録にありません」
ヴァルガス。
「どうやった?」
アイ。
「気合」
グラン。
「説明になってない」
アイ。
「でも」
アイが。
裂け目の上を見る。
歪んでいた空間が。
一本の道のように。
まっすぐ。
伸びている。
「渡れるよ」
エレノア。
「……」
「本当に?」
「うん」
ノアス。
「すごい!」
セレオン。
「……」
「理屈が分からん」
アイ。
「私も」
「分からない」
グラン。
「本人も分かってないのかよ」
アイ。
「気合だから」
「だから説明になってねぇ!」
七柱。
慎重に。
その道を。
渡っていく。
一歩。
二歩。
三歩。
空間の裂け目の上。
しかし。
不思議なことに。
足場は。
まったく揺れない。
セレオン。
「……」
「これは」
「時空そのものが」
「一時的に」
「安定している」
アイ。
「よかった」
グラン。
「……」
「お前」
「本当に」
「気合だけで」
「時空を安定させたのか?」
「たぶん」
「たぶんかよ」
そして。
全員が。
無事に。
向こう岸へ。
到着した。
アイ。
「よし」
拳を。
ぐっ。
「次!」
リゼリア。
「……」
「まだ先があります」
アイ。
「気合で行こう」
グラン。
「その作戦」
「禁止したい」
エレノア。
「私は賛成☆」
ヴァルガス。
「俺も」
ノアス。
「俺も!」
セレオン。
「……」
「もう諦めた」
アイ。
「じゃあ」
七柱。
再び。
歩き始める。
その先。
時空の裂け目。
さらに奥。
永劫水晶。
そして。
その先には。
始原竜の涙。
誰一柱として。
帰ってこなかった場所が。
待っている。
それでも。
今は。
一柱。
また一柱。
歩いている。
そして。
アイは。
拳を握った。
「気合は」
「万能!」
グラン。
「……」
「この旅」
「大丈夫か?」
エレノア。
「たぶん大丈夫!」
「またたぶん!?」
七柱の声が。
神界の奥へ。
響いていった。
そして。
七柱は。
永劫水晶を目指して。
さらに奥へ。
歩いていた。
しばらく。
何事もなく。
「……」
ノアス。
「……」
アイ。
「……」
二人。
顔を見合わせる。
「……ねえ」
アイ。
「うん?」
ノアス。
「さっきの」
「気合」
「うん」
「すごかった」
アイ。
「ほんと?」
「うん」
ノアス。
「俺も」
「幸運で」
「なんとかするの」
「得意」
アイ。
「……」
少し。
考える。
「じゃあ」
「一緒にやってみる?」
ノアス。
「何を?」
アイ。
拳を。
ぐっ。
「気合」
ノアス。
拳を。
ぐっ。
「幸運」
グラン。
「……」
エレノア。
「……」
セレオン。
「……」
ヴァルガス。
「……」
リゼリア。
「……」
全員。
嫌な予感。
アイ。
「いくよ」
ノアス。
「うん!」
二人。
拳を。
前へ。
「「たぶるきあいぱわぁー!!」」
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!
「……」
「…………」
「………………」
何も。
起きない。
グラン。
「……」
「何だったんだ」
アイ。
「分からない」
ノアス。
「俺も」
セレオン。
「そもそも」
「何を発動した?」
「分からない」
リゼリア。
「記録不能です」
ヴァルガス。
「技名だけは」
「妙に勢いがあったな」
エレノア。
「たぶるきあいぱわぁー☆」
「流行らせる気!?」
グラン。
「やめろ」
しかし。
その直後。
ズズズズズ……。
「……?」
地面が。
ほんの少し。
揺れた。
セレオン。
「……待て」
アイ。
「なに?」
「前方」
セレオンが。
指を向ける。
そこには。
さっきまで。
何もなかったはずの場所に。
一本の道。
いや。
道というより。
光の筋が。
まっすぐ。
伸びていた。
「……」
ノアス。
「ほら」
「幸運」
アイ。
「気合」
「……」
「……」
二人。
もう一度。
拳を。
ぐっ。
「「たぶるきあいぱわぁー!!」」
「もういい!!」
グランが。
叫んだ。
しかし。
光の筋は。
さらに。
明るくなる。
リゼリア。
「……」
「これは」
「永劫水晶への」
「誘導経路でしょうか」
セレオン。
「時空の流れも」
「安定している」
ヴァルガス。
「つまり」
「成功したのか?」
アイ。
「……」
ノアス。
「……」
二人。
顔を見合わせる。
「「成功!」」
グラン。
「お前ら」
「本当にそれでいいのか!?」
アイ。
「だって」
「道できたよ?」
ノアス。
「幸運だったね!」
アイ。
「気合だったね!」
グラン。
「どっちだよ!!」
エレノア。
「両方じゃない?」
セレオン。
「理屈としては」
「認めたくないが」
リゼリア。
「記録上は」
「結果だけが残ります」
ヴァルガス。
「なら問題ない」
グラン。
「問題しかないだろ」
そして。
七柱は。
光の道を。
歩き始めた。
アイ。
ノアス。
二人が。
先頭。
拳を。
握ったまま。
「「たぶるきあいぱわぁー!!」」
グラン。
「歩きながらやるなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
神界の奥。
二人の声が。
妙に。
楽しそうに響いていた。
そして。
七柱は。
光の道を。
さらに。
奥へ進んでいた。
アイ。
ノアス。
二人は。
先頭。
「……」
「……」
二人とも。
何かを。
考えている。
グラン。
「……嫌な予感がする」
エレノア。
「私も☆」
セレオン。
「何か」
「来るな」
リゼリア。
「記録しておきます」
ヴァルガス。
「……何をする気だ?」
アイ。
振り返る。
「ねえ」
ノアス。
「うん?」
「さっきの」
「たぶるきあいぱわぁー」
「うん」
「もっと」
「強くできないかな?」
ノアス。
「できると思う」
グラン。
「やめろ」
「まだ何もしてない!」
アイ。
「でも」
ノアス。
「うん」
「さっき」
アイ。
「道ができた」
ノアス。
「うん」
「だったら」
「もっと大きくしたら」
「もっとすごいことになるかも」
グラン。
「ならない」
アイ。
「やってみないと分からないよ?」
グラン。
「分かる」
ノアス。
「じゃあ」
拳を。
ぐっ。
「やろう」
アイ。
「うん!」
グラン。
「やめろぉぉぉぉぉぉ!!」
しかし。
遅かった。
アイ。
ノアス。
二人が。
並んで。
拳を。
高く。
掲げる。
「「たぶるきあいぱわぁー!!」」
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!
神界全体が。
揺れた。
「……」
「…………」
「………………」
セレオン。
「……今」
「時空が」
「揺れた」
リゼリア。
「記録します」
「『たぶるきあいぱわぁーによる神界震動』」
グラン。
「記録するな!」
エレノア。
「でも」
「すごーい☆」
ヴァルガス。
「何だ」
「この力……」
アイ。
「成功?」
ノアス。
「成功!」
その瞬間。
ドンッ。
さらに。
ドンッ。
ドンッ。
ドンッ。
ドドドドドドドドドドッ!!
神界の奥から。
光が。
こちらへ。
走ってくる。
「……?」
アイ。
「何これ?」
セレオン。
「待て」
「これは」
「お前たちの力に」
「反応している」
アイ。
「え?」
ノアス。
「幸運が」
「寄ってきてる?」
リゼリア。
「違います」
「幸運が寄ってきているというより」
「周囲の現象が」
「全部」
「都合よく動いています」
グラン。
「最悪じゃねぇか」
その瞬間。
頭上。
巨大な岩が。
ごろごろごろごろ。
「……」
アイ。
「岩?」
岩。
ころころ。
ころころ。
そして。
七柱の前で。
ぴたっ。
止まった。
ノアス。
「幸運!」
アイ。
「気合!」
二人。
拳を。
ぐっ。
「「たぶるきあいぱわぁー!!」」
「もう使うな!!」
グランが。
叫んだ。
すると。
岩が。
ぱかっ。
割れた。
「……」
中から。
光。
さらに。
その光が。
道を。
作る。
セレオン。
「……」
「これは」
「永劫水晶への」
「最短経路だ」
アイ。
「やった!」
ノアス。
「幸運!」
アイ。
「気合!」
グラン。
「だからどっちだよ!!」
さらに。
光の道を。
進む。
すると。
「……」
ノアス。
「止まって」
アイ。
「?」
「俺」
「今」
「すごく」
「幸運な気がする」
アイ。
「じゃあ」
「やろう」
ノアス。
「うん」
グラン。
「待て」
遅い。
「「たぶるきあいぱわぁー!!」」
パァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!
今度は。
空間に。
無数の。
扉が。
出現した。
「……」
セレオン。
「何だこれは」
リゼリア。
「……」
「扉です」
「見れば分かる」
ヴァルガス。
「どれが正解だ?」
ノアス。
「分からない」
アイ。
「私も」
グラン。
「お前ら」
「幸運神と守護神だろ」
ノアス。
「じゃあ」
目を閉じる。
「右」
アイ。
「右!」
二人。
同時に。
右端の扉を。
指差す。
「……」
セレオン。
「根拠は?」
「「たぶるきあいぱわぁー」」
「根拠になっていない!」
しかし。
右端の扉。
勝手に。
開いた。
その向こう。
永劫水晶が。
見えた。
「……」
「…………」
「………………」
全員。
沈黙。
アイ。
「……」
ノアス。
「……」
そして。
「「たぶるきあいぱわぁー!!」」
「もういい!!」
グラン。
頭を抱える。
だが。
その瞬間。
永劫水晶の周囲に。
巨大な魔法陣が。
出現した。
セレオン。
「まずい!」
「これは」
「永劫水晶の防衛機構だ!」
ヴァルガス。
「来るぞ!」
エレノア。
「アルちゃん!」
アイ。
「……」
ノアス。
「……」
二人。
顔を見合わせる。
「……やる?」
「やろう」
グラン。
「やめろ!!」
二人。
拳を。
握る。
「「たぶるきあいぱわぁー!!」」
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!
防衛魔法。
全部。
止まった。
「……」
セレオン。
「……」
「停止した」
リゼリア。
「……」
「記録更新」
ヴァルガス。
「防衛機構を」
「気合で止めた……?」
エレノア。
「幸運も」
「混ざってるからね☆」
グラン。
「もう」
「俺」
「何も言わん」
アイ。
「やったね!」
ノアス。
「やった!」
二人。
ハイタッチ。
「「たぶるきあいぱわぁー!!」」
グラン。
「最後まで言うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
その声が。
永劫水晶の洞窟全体へ。
響き渡った。
そして。
奥。
巨大な。
永劫水晶が。
ゆっくり。
光り始めた。
リゼリア。
「……」
「反応しています」
セレオン。
「まさか」
アイ。
「何?」
セレオン。
「お前たちの」
「たぶるきあいぱわぁーに」
「永劫水晶そのものが」
「反応している」
ノアス。
「じゃあ」
アイ。
「……」
「もう一回?」
グラン。
「やめろ」
アイ。
「一回だけ」
グラン。
「絶対ダメだ」
ノアス。
「じゃあ」
アイ。
「せーの」
「「たぶるきあいぱわぁー!!」」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
そして。
永劫水晶が。
まばゆい光を放った。
七柱の前に。
巨大な。
光の道が。
開く。
その先。
さらに奥。
誰一柱として。
帰ってこなかった。
最後の場所。
始原竜の涙へ。
続く道。
アイ。
「……」
ノアス。
「……」
二人。
拳を。
ぐっ。
「「……たぶるきあいぱわぁー」」
グラン。
「小声でもやるなぁぁぁぁぁぁ!!」
神界の奥で。
理屈を超えた。
二柱の力が。
今。
完全に。
暴走し始めていた。




