ナカマアツメ
翌日。
アストラル・レルム。
アイ。
エレノア。
そして。
グラン。
三人は。
神界の中央広場に立っていた。
「……」
アイが。
手に持った紙を見る。
そこには。
昨日。
老人の神から聞いた。
三つの材料。
星霊花。
永劫水晶。
始原竜の涙。
「……」
アイ。
「仲間」
「集めないとね」
エレノア。
「うん」
グラン。
「まず」
「誰を誘う?」
「……」
三人。
顔を見合わせる。
エレノア。
「強いだけじゃダメなんだよね」
グラン。
「ああ」
「前任の破壊神でさえ」
「帰ってこなかった」
アイ。
「……」
「だから」
「力だけじゃなくて」
「戻ってこられる人」
「探さないと」
グラン。
「難しいな」
「神界で」
「そんな奴」
「いるか?」
エレノア。
「いるよ」
「たぶん」
グラン。
「たぶんかよ」
「だって」
エレノア。
「私たち」
「神様でしょ?」
「……」
アイ。
「神様でも」
「帰ってこなかったんだよね」
エレノア。
「……」
「そうだった」
三人。
再び。
沈黙。
すると。
「……お前たち」
後ろから。
声。
振り返る。
「何をしている?」
そこに。
一人の神が。
立っていた。
長い銀髪。
金色の瞳。
白いローブ。
静かな雰囲気。
グラン。
「……」
「セレオンか」
エレノア。
「知ってるの?」
「神界でも」
「かなり古株だ」
アイ。
「セレオンさん」
「うん」
「ちょっと」
「お願いがあるんだけど」
セレオン。
「何だ?」
アイ。
「魂を」
「元の身体に戻す方法を」
「探してる」
「……」
セレオンの表情が。
変わった。
「……魂帰還の儀か」
「知ってるの!?」
「ああ」
「だが」
セレオン。
「その話は」
「やめておけ」
アイ。
「……」
「どうして?」
「危険だからだ」
「知ってる」
「何柱もの神が」
「戻っていない」
セレオン。
「……」
「知っているのか」
「うん」
アイ。
「だから」
「仲間を探してる」
「……」
セレオンは。
しばらく。
アイを見る。
「お前は」
「なぜ」
「そこまでして」
「戻りたい?」
アイ。
「……」
少しだけ。
目を伏せる。
「待ってる人が」
「いるから」
セレオン。
「……」
「そうか」
それ以上。
聞かなかった。
「俺は」
「戦闘だけなら」
「役に立たん」
グラン。
「……?」
セレオン。
「だが」
「空間と時間の流れを」
「読むことができる」
アイ。
「……!」
「それ」
「必要かも」
「そうだろうな」
エレノア。
「じゃあ」
「来てくれる?」
セレオン。
「……」
「条件がある」
「なに?」
「無茶をするな」
アイ。
「……」
「努力する」
グラン。
「それ」
「絶対破るやつだろ」
「……」
アイ。
「じゃあ」
「約束する」
「一人では」
「絶対に行かない」
セレオン。
「よし」
こうして。
一人目。
セレオンが。
仲間になった。
次。
神界の鍛錬場。
巨大な岩を。
一人の神が。
素手で。
軽々と。
持ち上げていた。
「……」
グラン。
「あいつは?」
セレオン。
「ヴァルガス」
「戦神だ」
エレノア。
「強そう」
グラン。
「強いぞ」
アイ。
「……」
ヴァルガスが。
こちらに気づく。
「何だ?」
アイ。
「ヴァルガスさん」
「ちょっと」
「お願いがある」
「……」
話を聞いた。
ヴァルガス。
「……」
「面白そうだ」
グラン。
「お前」
「話聞いてたか?」
「当然だ」
ヴァルガス。
「何柱も帰ってこなかった」
「それでも」
「挑む価値はある」
アイ。
「……」
「危険だよ」
「望むところだ」
ヴァルガス。
「だが」
「俺は」
「戦うことしかできん」
セレオン。
「だからこそ」
「必要だ」
ヴァルガス。
「……」
「分かった」
こうして。
二人目。
戦神ヴァルガス。
仲間になった。
そして。
神界の図書塔。
無数の本が。
空中を。
ゆっくり。
飛んでいる。
「……」
アイ。
「すごい」
エレノア。
「ここなら」
「詳しい人がいるはず」
その奥。
一人の女神が。
本を読んでいた。
「……」
アイ。
「こんにちは」
「……」
女神。
顔を上げる。
「魂帰還の儀について」
「調べていますか?」
「……!」
アイ。
「分かるの?」
「少しだけ」
女神。
「私は」
「リゼリア」
「記録神」
「魂に関する記録なら」
「かなり詳しいです」
アイ。
「じゃあ」
「一緒に来てほしい」
「……」
リゼリア。
「材料の場所も」
「分かるかもしれません」
アイ。
「本当?」
「ええ」
リゼリア。
「ただし」
「私は」
「戦えません」
グラン。
「それでもいい」
アイ。
「うん」
「知識が必要だから」
リゼリア。
「……」
「では」
「お手伝いします」
こうして。
三人目。
記録神リゼリア。
仲間になった。
そして。
最後に。
エレノアが。
「もう一人」
「必要だと思う」
アイ。
「誰?」
エレノア。
「私の知り合い」
グラン。
「……嫌な予感がする」
「失礼だなぁ☆」
エレノア。
「でも」
「たぶん」
「今回」
「すごく役に立つよ」
やって来たのは。
一人の神。
青い髪。
緑色の瞳。
軽そうな雰囲気。
「エレノア!」
「久しぶり!」
「うん!」
「で?」
神。
「面白そうな旅って?」
グラン。
「お前」
「最初から」
「危険性を理解してるか?」
「もちろん!」
「……」
グラン。
「絶対分かってない」
「分かってるって!」
アイ。
「……」
「でも」
その神は。
アイを見る。
「君」
「本当に」
「戻りたいんだね」
「うん」
「……」
「なら」
神は。
笑った。
「俺も行く」
アイ。
「ありがとう」
グラン。
「名前は?」
「あ」
「忘れてた」
エレノア。
「この人」
「ノアス」
「よろしく!」
ノアス。
「よろしく!」
セレオン。
「……」
ヴァルガス。
「……」
リゼリア。
「……」
グラン。
「……」
アイ。
「……」
エレノア。
「……」
全員。
「……」
グラン。
「……」
「なんで」
「自己紹介を」
「最後にするんだ」
ノアス。
「雰囲気で!」
グラン。
「雰囲気で決めるな」
こうして。
仲間は。
集まった。
アイ。
エレノア。
グラン。
セレオン。
ヴァルガス。
リゼリア。
ノアス。
七柱。
魂帰還の儀。
そのために。
神界の最深部。
時空の裂け目。
そして。
始原竜の巣。
三つの。
危険な場所へ。
向かう。
その旅は。
まだ。
始まっていない。
けれど。
神界でも。
誰も帰ってこなかった。
その場所へ。
今。
七柱の神が。
挑もうとしていた。
アイ。
「……絶対」
「帰ろうね」
グラン。
「当然だ」
エレノア。
「うん!」
セレオン。
「約束したからな」
ヴァルガス。
「生きて戻る」
リゼリア。
「記録も」
「ちゃんと持ち帰ります」
ノアス。
「じゃあ!」
「出発だね!」
グラン。
「……」
「まだ準備段階だ」
「え?」
「地図も」
「装備も」
「何もない」
「……」
アイ。
「……」
エレノア。
「……」
ヴァルガス。
「……」
リゼリア。
「……」
セレオン。
「……」
ノアス。
「……」
アイ。
「……」
「準備から」
「始めよう」
グラン。
「それが普通だ」
「よし!」
七柱は。
まず。
旅の準備を。
始めることにした。
翌朝。
アストラル・レルム。
神界の中央門。
そこに。
七柱の神が。
集まっていた。
アイ。
エレノア。
グラン。
セレオン。
ヴァルガス。
リゼリア。
そして。
ノアス。
全員。
昨日。
アイが作った。
最高強度の神装を。
身につけている。
「……」
グランが。
全員を見る。
「これで」
「準備は終わったな」
ヴァルガス。
「ああ」
セレオン。
「地図もある」
リゼリア。
「必要な記録も」
「すべて持ちました」
エレノア。
「食料もあるよ☆」
グラン。
「神界で食料いるのか?」
「いるよ!」
「……そうか」
そして。
最後に。
ノアス。
「俺も」
「準備万端!」
胸を張る。
アイ。
「ノアス」
「なに?」
「幸運神なんだよね?」
「そう!」
「じゃあ」
「今回」
「かなり重要だね」
「当然!」
ノアスは。
自信満々に。
笑った。
「俺がいる限り」
「きっと大丈夫!」
グラン。
「その言葉」
「過去に誰か言ってないか?」
リゼリア。
「……」
「記録を確認します」
ページをめくる。
「……あります」
全員。
「……」
リゼリア。
「『幸運に恵まれているから大丈夫』」
「そう言って出発した神が」
「三柱」
「……」
「帰ってきていません」
ノアス。
「……」
「それ」
「言わないでくれる?」
エレノア。
「幸運神なのに?」
「幸運神でも傷つくんだよ!」
アイ。
「じゃあ」
「今回は」
「もっと慎重にね」
ノアス。
「うん」
少しだけ。
真面目な顔になる。
「俺の幸運」
「自分のためだけじゃなくて」
「みんなのために使う」
グラン。
「……」
「それなら」
「頼りにする」
ノアス。
「任せて!」
そして。
アイが。
中央門へ。
歩いていく。
「じゃあ」
「行こう」
七柱。
「うん」
「おう」
「はい」
「行くぞ」
それぞれ。
門をくぐる。
その先。
神界の。
さらに奥。
星霊花が咲く。
最初の目的地。
神界最深部。
そこへ続く道だった。
◇
しばらく。
歩いた。
最初は。
何も。
起こらなかった。
エレノア。
「……」
「平和だね」
グラン。
「そうだな」
アイ。
「……」
「なんか」
「逆に怖い」
ノアス。
「大丈夫だって!」
その瞬間。
足元。
ガキッ。
「……?」
ヴァルガスが。
足を止める。
「罠か?」
全員。
動きを止めた。
セレオンが。
周囲を見る。
「魔力反応」
「……ある」
リゼリア。
「過去の記録にも」
「この辺りで」
「探索者が」
「多数」
「消失しています」
グラン。
「……」
「なら」
「迂回するか?」
アイ。
「待って」
ノアス。
「……」
地面を見る。
「こっち」
アイ。
「え?」
「右」
「少しだけ」
「右へ行こう」
グラン。
「何か分かるのか?」
ノアス。
「分からない」
「ただ」
「なんとなく」
グラン。
「……」
「幸運か」
「うん」
七柱。
右へ。
一歩。
二歩。
三歩。
その瞬間。
ドォォォォン!!
さっきまでいた場所の地面が。
大きく。
崩れ落ちた。
「……」
「……」
「……」
全員。
固まる。
ノアス。
「……」
アイ。
「……」
「ノアス」
「なに?」
「今の」
「幸運?」
「たぶん」
グラン。
「たぶんで済ませるな」
エレノア。
「ノアス!」
「すごいじゃん!」
ノアス。
「でしょ!」
ヴァルガス。
「……」
「幸運神」
「侮れんな」
ノアス。
「もっと褒めて!」
リゼリア。
「調子に乗ると」
「幸運が逃げる可能性があります」
「それは嫌!」
アイ。
少し。
笑った。
「じゃあ」
「慎重にね」
「うん!」
◇
さらに。
奥へ。
進む。
今度は。
巨大な岩壁。
道が。
二つに。
分かれていた。
「……」
セレオン。
「左は」
「時空の歪みが強い」
「右は」
「魔力反応が異常に濃い」
グラン。
「どっちも危険じゃねぇか」
アイ。
「……」
ノアス。
「右」
全員。
「……」
アイ。
「理由は?」
「なんとなく」
グラン。
「またか」
アイ。
「でも」
「ノアスの幸運」
「信じてみよう」
七柱。
右へ。
進む。
数分後。
「……」
リゼリアが。
足を止めた。
「……左側」
「今」
「時空崩壊が発生しました」
セレオン。
「……」
「かなり大きい」
グラン。
「……」
ヴァルガス。
「右で正解だったな」
ノアス。
「俺の出番!」
胸を張る。
「幸運神!」
エレノア。
「かっこいい!」
「もっと言って!」
アイ。
「はいはい」
そして。
道の先。
薄暗い森が。
見えてきた。
その奥。
「……」
淡い光。
「……あれ」
アイが。
目を細める。
リゼリア。
「……!」
「記録にあります」
「星霊花」
全員。
足を止める。
森の奥。
星のように。
淡く輝く花。
「……」
アイ。
「見つけた」
けれど。
その瞬間。
森の奥から。
「グルルルル……」
低い声。
ヴァルガスが。
大剣を構える。
「来るぞ」
グラン。
「守護獣か」
セレオン。
「かなり強い」
リゼリア。
「記録では」
「星霊花を守る守護獣は」
「過去の神々を」
「一度も」
「通していません」
アイ。
「……」
ノアス。
「じゃあ」
少しだけ。
前へ出る。
「俺の出番だね」
グラン。
「何をする?」
ノアス。
「……」
ノアス。
笑う。
「幸運を」
「引き寄せる」
その瞬間。
森の奥。
守護獣が。
姿を現した。
巨大な。
白銀の獣。
鋭い眼。
七柱を。
じっと。
見つめる。
「……」
アイ。
「……」
守護獣。
「……」
そして。
ノアスが。
一歩。
前へ。
「……」
「俺たち」
「花を」
「一輪だけ」
「もらいたいんだ」
守護獣。
「……」
ノアス。
「だから」
「できれば」
「戦いたくない」
守護獣。
「……」
長い。
沈黙。
そして。
守護獣が。
ゆっくり。
道を。
開けた。
「……?」
全員。
「…………」
ノアス。
「……」
「え?」
エレノア。
「幸運?」
ノアス。
「……」
「たぶん」
グラン。
「お前」
「本当に幸運神なんだな」
アイ。
「すごい」
リゼリア。
「過去の記録」
「初めて更新されました」
ノアス。
「よっしゃぁぁぁぁぁ!」
ヴァルガス。
「騒ぐな」
「幸運が逃げるぞ」
「……!」
ノアス。
「静かにする」
アイ。
森へ。
入っていく。
星霊花の前に。
立つ。
「……」
アイ。
そっと。
手を伸ばす。
「これで」
「一つ目」
星霊花。
淡く。
光る。
アイの手の中へ。
そして。
七柱の旅は。
ついに。
最初の材料を。
手に入れた。
だが。
残りは。
あと二つ。
永劫水晶。
そして。
始原竜の涙。
どちらも。
過去に。
誰一柱として。
帰ってきていない。
それでも。
七柱は。
歩き続ける。
アイ。
「……次」
「行こう」
グラン。
「ああ」
ノアス。
「幸運なら」
「次も何とかなる!」
セレオン。
「その発言」
「少し不安だな」
エレノア。
「でも」
「今のところ」
「全部うまくいってるよ☆」
リゼリア。
「……」
「記録上」
「確かに」
ヴァルガス。
「なら」
「次も行ける」
七柱。
次なる場所。
時空の裂け目へ。
向かっていった。




