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ふぁ?!誰?!

 アストラル・レルム。


「……じゃあ」


 エレノアが。


 アイを見る。


「そろそろ帰ろっか」


「うん」


 アイは。


 小さく頷いた。


 白い髪。


 白い猫耳。


 そして。


 腰のあたりから伸びる。


 ふわふわの白い尻尾。


 右目は金色。


 左目はピンク。


 人の姿になった。


 けれど。


 アイ自身は。


 まだ少し。


 この姿に慣れていなかった。


「……」


 エレノア。


「大丈夫?」


「うん」


「喋るのも?」


「だいぶ慣れた」


「よかった!」


 グランが。


 腕を組む。


「じゃあ」


「下界へ戻るか」


「うん」


 オルディアも。


 静かに頷く。


「気をつけて帰るといい」


「ありがとう」


 アイ。


 少し笑う。


「また来るね」


「いつでも来い」


 グラン。


「今度は地面を壊すなよ」


「……」


 アイ。


「私、そんなに壊してないよ?」


「一回でも十分だ」


「……」


 エレノア。


「じゃあね、アイちゃん!」


「うん」


 エレノアが。


 手を振る。


 アイも。


 手を振り返す。


「またね」


 そして。


 星の光が。


 アイの周囲に。


 ふわり。


 集まり始めた。


「……」


「行ってきます」


 光。


 ぱあっ。


 アイの姿が。


 アストラル・レルムから。


 消えた。


 星霜王国。


 星氷神城アストラルグレイシア


 その中庭。


「……」


 真銀が。


 空を見上げていた。


 その隣には。


 ララ。


 ライ。


 アイシィ。


 カミル。


 そして。


 クオン。


 レオン。


 シオン。


 皆。


 静かに。


 空を見ていた。


 千乃がいなくなってから。


 少しだけ。


 時間が経っていた。


「……」


 その時。


 空間が。


 ふわり。


 揺れた。


「……?」


 真銀。


「何だ?」


 星の光。


 集まる。


 そして。


 その中心から。


 一人の少女が。


 ゆっくり。


 降りてきた。


「……」


 真銀。


「……?」


 ララ。


「……?」


 ライ。


「……」


 アイシィ。


「……」


 カミル。


「……」


 クオン。


「……?」


 レオン。


「……」


 シオン。


「……?」


 少女。


 白い髪。


 白い猫耳。


 白い尻尾。


 右目。


 金色。


 左目。


 ピンク。


 そして。


「……」


 少女が。


 ゆっくり。


 地面へ。


 足をつけた。


「……ただいま」


 真銀。


「…………」


 数秒。


 完全に。


 停止。


「……」


 ララ。


「……」


 ライ。


「……」


 アイシィ。


「……」


 カミル。


「……」


 真銀。


「……誰?」


「え?」


 アイ。


「私」


「アイ」


「……」


 真銀。


「……アイ?」


「うん」


 真銀。


「…………」


 アイ。


「どうしたの?」


 真銀。


「いや」


「……」


「お前」


「人になったのか?」


「うん」


 真銀。


「…………」


 アイ。


「レルムで」


「人の姿になれるようにしてもらった」


「……」


 真銀。


 しばらく。


 アイを見る。


「……猫だったよな?」


「うん」


「白い猫」


「うん」


「……」


「人になった?」


「うん」


「……」


 真銀。


「そうか」


 ララ。


「アイ!」


「うん?」


「人になった!」


「なったよ」


「すごーい!」


 ララが。


 ぴょんぴょん。


 飛び跳ねる。


「耳も!」


「尻尾も!」


「ある!」


「うん」


 ララ。


「かわいい!」


「ありがとう」


 ライ。


「……」


「なるほど」


 アイシィ。


「人の姿でも」


「アイさんはアイさんですね」


「うん」


 カミル。


「……」


 アイを見る。


「確かに」


「気配は同じだ」


 真銀。


「……」


 その言葉に。


 アイは。


 少しだけ。


 笑った。


「そう?」


「ああ」


 真銀。


「姿が変わっても」


「アイはアイだ」


「……」


 アイ。


「うん」


 クオンが。


 とことこと。


 近づく。


「アイさん」


「なに?」


「人になったんですね」


「うん」


「……」


 クオン。


 白い尻尾を見る。


「触っていいですか?」


「いいよ」


 クオン。


 そっと。


 触る。


「……ふわふわ」


「猫だからね」


「人なのに?」


「……」


 アイ。


「細かいことは」


「気にしない」


 真銀。


「千乃みたいなこと言うな」


「……」


 アイ。


 一瞬。


 止まる。


 けれど。


「そう?」


「ああ」


 真銀。


「たまに」


「言い方が似てる」


 アイ。


「……」


「そうなんだ」


 真銀は。


 それ以上。


 気にしなかった。


 ただ。


 目の前にいる。


 白い猫だったアイが。


 今は。


 人の姿になっている。


 それだけ。


 その事実を。


 少しずつ。


 受け入れていた。


「……」


 真銀。


「でも」


「アイ」


「うん?」


「このまま」


「どうする?」


「……」


 アイ。


「どうするって?」


「住む場所」


「……」


「猫の時は」


「千乃の部屋で寝てたけど」


「人になったなら」


「さすがに」


「同じ部屋というわけにはいかないだろ」


「……」


 アイ。


「……そうだね」


 ララ。


「じゃあ!」


「アイのお部屋!」


「うん」


 真銀。


「用意するか」


 アイ。


「……」


 少し。


 驚いたように。


「いいの?」


「ああ」


 真銀。


「この城の家族だからな」


「……」


 アイ。


「家族……」


「そうだ」


 真銀。


「猫だった時も」


「ずっと一緒にいた」


「今さら追い出す理由もない」


 アイ。


「……」


「ありがとう」


 真銀。


「礼を言うほどじゃない」


 ララ。


「アイのお部屋!」


「どこがいい?」


 アイ。


「……」


 周囲を見る。


 廊下。


 部屋。


 階段。


 そして。


 千乃の部屋。


 アイは。


 一瞬だけ。


 そちらを見る。


「……」


 けれど。


 すぐに。


 真銀を見る。


「どこでもいいよ」


「そうか」


 真銀。


「じゃあ」


「千乃の部屋の近くにするか?」


 アイ。


「……!」


 少し。


 目を丸くする。


「近く?」


「ああ」


「……いいの?」


「千乃の部屋は」


「今もそのままだからな」


 真銀。


「その近くなら」


「いつでも行ける」


「……」


 アイ。


「うん」


 小さく。


「そこがいい」


 真銀。


「分かった」


 ララ。


「アイのお部屋!」


「作ろう!」


 ライ。


「急に楽しそうだな」


「だって!」


「新しい仲間のお部屋だよ!」


 アイシィ。


「家具も必要ですね」


 クオン。


「ベッド!」


 レオン。


「机!」


 シオン。


「棚!」


 真銀。


「……」


「お前たち」


「いつの間に」


「そんなに乗り気なんだ」


 三人。


「「「アイさんのお部屋だから!」」」


「……」


 真銀。


「そうか」


 少し。


 笑った。


「じゃあ」


「みんなで作るか」


 アイ。


「……」


 その言葉を聞いて。


 アイも。


 小さく笑った。


「うん」


 白い猫耳が。


 ぴくり。


 白い尻尾が。


 ふわり。


 揺れる。


 こうして。


 星氷神城アストラルグレイシアには。


 新しい部屋が。


 一つ。


 作られることになった。


 そこに住むのは。


 かつて。


 千乃の部屋で眠っていた。


 一匹の白い猫。


 そして今は。


 一人の少女となった。


 アイ。


 誰も。


 彼女が千乃だとは。


 知らない。


 真銀も。


 ララも。


 ライも。


 アイシィも。


 カミルも。


 クオンも。


 レオンも。


 シオンも。


 ただ。


 猫だった仲間が。


 人になった。


 それだけだと思っていた。


 アイ。


「……」


 新しい部屋になる場所を。


 見つめる。


 そして。


「……ここから」


「また」


「みんなと一緒に」


 少しだけ。


 笑った。


「暮らそう」


 新しい部屋を。


 みんなで。


 作ることになった。


 けれど。


 その場に。


 一人だけ。


 静かになっている人物がいた。


「……」


 真銀。


 窓の外を。


 見ている。


 アイは。


「……?」


 その横顔を見る。


「真銀?」


「……」


 返事がない。


「真銀」


「……ああ」


 ようやく。


 真銀が。


 振り返った。


「どうしたの?」


「……いや」


 真銀は。


 少しだけ。


 笑おうとした。


「何でもない」


「……」


 けれど。


 その笑顔は。


 明らかに。


 無理をしていた。


 アイ。


「……何でもない顔じゃないよ」


「……」


 真銀。


 黙る。


 そして。


 ぽつり。


「……千乃が死んだのは」


「……」


「俺のせいだ」


 アイ。


「……」


 真銀の声は。


 低かった。


「俺が」


「もっとちゃんとしていれば」


「千乃は」


「死ななかった」


「……」


「前の世界でも」


「今の世界でも」


「俺は」


「千乃を守れなかった」


 アイ。


「……」


 真銀。


「前の世界では」


「千乃が」


「俺を庇って死んだ」


「……」


「そして」


 拳を。


 ぎゅっと。


 握る。


「この世界では」


「レグナードに」


「千乃を奪われた」


「……」


「心臓を刺されて」


「千乃は」


「死んだ」


 アイ。


「……」


 真銀。


「俺は」


「二回も」


「千乃を失った」


 少し。


 息を吸う。


「……二回も」


「殺したんだ」


 アイ。


「……!」


 その言葉を聞いた瞬間。


 アイの口が。


 勝手に動いた。


「そんなことないっ!」


「……!」


 真銀が。


 目を見開く。


 アイ自身も。


 驚いていた。


「……」


「……」


 真銀。


「アイ?」


「……」


 アイ。


「……ごめん」


「いや」


 真銀は。


 首を横に振る。


「どうして」


「そんなに」


「強く否定したんだ?」


「……」


 アイ。


 言葉に。


 詰まる。


「……いや……」


「……」


「でも」


「真銀が」


「千乃を殺したなんて」


「私は」


「思わない」


 真銀。


「……」


 アイ。


「千乃は」


「真銀を守りたかったんだと思う」


「……」


「だから」


「自分から」


「守ったんだと思う」


 真銀。


 黙っている。


 アイ。


「それを」


「真銀のせいにするのは」


「違うよ」


「……」


「絶対に」


「違う」


 真銀。


「……」


 その言葉を。


 何度も。


 噛みしめるように。


 真銀は。


 アイを見た。


「……アイ」


「うん」


「お前」


「千乃と」


「本当に」


「少し似てるな」


「……」


 アイ。


「そう?」


「ああ」


 真銀。


「考え方が」


「……」


 アイ。


 少しだけ。


 目を逸らす。


「……そうなのかな」


 真銀。


「でも」


「ありがとう」


「……」


 アイ。


「ううん」


 真銀。


「俺」


「ずっと」


「千乃のことを」


「自分のせいだと思ってた」


「……」


「だから」


「誰かに」


「そう言ってもらったのは」


「初めてだ」


 アイ。


「……」


 真銀。


「少しだけ」


「楽になった気がする」


 アイ。


「……よかった」


 その時。


「千乃さぁぁぁぁぁぁん!」


「様子を見に参りましたよぉぉぉぉぉぉっっっ!!」


「!?」


 廊下から。


 ものすごい声が。


 響いてきた。


 ララ。


「……」


 ライ。


「……」


 アイシィ。


「……」


 クオン。


「……」


 レオン。


「……」


 シオン。


「……」


 真銀。


「……」


 アイ。


「……」


 そして。


 扉が。


 ばぁん!!


 開いた。


「千乃さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」


 ラブリー・スミス。


 ピンク色のツインテール。


 ハート型サングラス。


 いつもの。


 テンション。


「お元気ですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「……」


 アイ。


「……」


 ラブリー。


「……あれ?」


 真銀。


「……」


 ラブリー。


「真銀さん?」


「……」


 ラブリー。


「どうしました?」


 真銀。


 しばらく。


 黙っていた。


 そして。


「……千乃が」


「死んだ」


「……」


 ラブリーの。


 笑顔が。


 止まった。


「……え?」


「レグナードに」


「心臓を刺されて」


「死んだ」


「……」


 ラブリー。


「…………」


 数秒。


 何も。


 言わない。


 そして。


「……」


「……うそ」


 声が。


 震えた。


「……千乃さんが?」


 真銀。


「ああ」


「……」


「本当に?」


「ああ」


「……」


 ラブリーの目に。


 涙が。


 浮かんだ。


「……」


 そして。


「……っ」


 ぽろ。


「……」


 ぽろぽろ。


「千乃さん……」


 アイ。


「……」


 ラブリー。


「なんで……」


「……」


「どうして……」


「……」


 涙を。


 拭う。


 けれど。


 止まらない。


「……あの子」


「いつも」


「笑ってたじゃないですか……」


「……」


「困ってる人がいたら」


「すぐ助けて……」


「……」


「誰かが泣いてたら」


「自分まで悲しそうな顔して……」


「……」


 そして。


 ラブリーの表情が。


 少しずつ。


 変わった。


「……それなのに」


「……」


「レグナード……?」


 声が。


 低くなる。


「……あの男が」


 ぎゅっ。


 拳を握る。


「千乃さんを」


「……」


「殺した?」


 真銀。


「ああ」


「……」


 ラブリー。


 俯く。


 肩が。


 小さく震えている。


「……許せません」


「……」


「絶対に」


「……」


 涙を流したまま。


 ラブリーは。


 はっきりと。


「許せませんよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 アイ。


「……」


 ララ。


「……」


 ライ。


「……」


 アイシィ。


「……」


 真銀。


「……」


 ラブリー。


「……千乃さん」


 再び。


 涙が。


 ぽろぽろ。


「……」


「会いたかったのに」


「……」


「また」


「一緒に」


「もっと…もっとお話ししたかったのに……」


 真銀。


「……」


 ラブリー。


「……」


 そして。


 アイを見る。


「……」


「あなた」


「……?」


 アイ。


「何ですか?」


 ラブリー。


「……」


「千乃さんに」


「少し」


「似ていますね」


「……」


 アイ。


「そう?」


「ええ」


 ラブリーは。


 涙を拭った。


「でも」


「……」


「千乃さんじゃない」


「……」


 アイ。


「……うん」


 ラブリー。


「アイさん」


「はい」


「千乃さんの分まで」


「……」


「この城で」


「みんなと」


「仲良くしてあげてくださいね」


「……」


 アイ。


「もちろん」


 ラブリー。


「……」


 そして。


 もう一度。


 涙を拭う。


「……それにしても」


 少し。


 怒った顔。


「レグナード」


「……」


「絶対に許しませんからね」


 真銀。


「……」


 アイ。


「……」


 ラブリー。


「泣いて」


「怒って」


「今日は忙しいですよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 ライ。


「忙しい理由が独特だな」


「泣くのと怒るのを同時にするな」


 ラブリー。


「できます!」


 アイシィ。


「できるんですね……」


 ラブリー。


「恋愛ギルド長ですから!」


 真銀。


「関係あるのか?」


「あります!」


 ラブリーは。


 涙を拭きながら。


 もう一度。


 アイを見る。


「……アイさん」


「はい」


「これから」


「よろしくお願いしますね」


「うん」


「……」


 アイ。


「こちらこそ」


 こうして。


 千乃を知らない設定のアイと。


 千乃を失った仲間たち。


 そして。


 その死を悲しむラブリー。


 それぞれが。


 新しい関係を。


 少しずつ。


 作り始めていた。


 誰も。


 アイが千乃本人だとは。


 知らない。


 ただ。


 白い猫だった少女が。


 人になった。


 それだけ。


 けれど。


 真銀の胸にあった。


「千乃が死んだのは俺のせい」


「俺が二回も殺した」


 という思いを。


 アイは。


 思わず。


 否定してしまった。


 その言葉だけは。


 どうしても。


 黙っていられなかった。


 その日の夜。


 星霜王国。


 星氷神城アストラルグレイシア


 静かな廊下。


 誰も。


 三人の姿がないことに。


 まだ。


 気づいていなかった。


 クオン。


「……」


 レオン。


「……」


 シオン。


「……」


 三人は。


 城を出ていた。


 向かう先。


 ルースエルド王国。


 そして。


 レグナード。


「……」


 クオンが。


 小さな拳を。


 ぎゅっと握る。


「お姉ちゃんを」


「傷つけた」


 レオン。


「ママを」


「奪った」


 シオン。


「……」


「許さない」


 三人は。


 止まらなかった。


 ルースエルド王国。


 王都。


 夜。


 静かな街。


 ……その上空。


 突然。


 紫色の光が。


 広がった。


「……?」


 人々が。


 空を見上げる。


「何だ?」


「魔法?」


 その瞬間。


 王城の前へ。


 三つの影が。


 降り立った。


 クオン。


 レオン。


 シオン。


「……」


 王城。


 その奥。


 レグナードが。


 ゆっくりと。


 姿を現す。


「……子ども?」


 レオン。


 前へ。


 一歩。


「レグナード」


「……」


 シオン。


 その隣へ。


「あなたに」


 クオン。


「言いたいことがある」


 レグナード。


「何だ?」


 三人。


 顔を上げる。


 そして。


 声を揃えた。


「「僕たちから」」


 クオン。レオン。


「私たちから」


 シオン。


「「ママを奪ったこと」」


 レオン・シオン。


「お姉ちゃんを奪ったこと」


 クオン。


 そして3人同時に。


「「「絶対に許さないっ!!」」」


 レグナード。


「……」


「何を」


「言っている?」


 レオン。


「分からないなら」


 シオン。


「分からせる」


 クオン。


「僕たちの怒りを」


 三人。


 手を。


 重ねる。


 紫色の魔力が。


 一気に。


 膨れ上がった。


「……っ!」


 レグナードの表情が。


 初めて。


 変わる。


「この魔力……!」


 レオン。


「行くよ」


 シオン。


「うん」


 クオン。


「……お姉ちゃんをかえせ。」


「「ママを返して!」」


 三人。


「「「絶対に許さない!!」」」


 ドォォォォォン!!


 王城の外壁が。


 大きく。


 崩れ落ちた。


 しかし。


 街の建物には。


 一切。


 魔法が当たらない。


 魔力の流れが。


 まるで。


 最初から。


 そこだけ避けているように。


 レグナード。


「……!」


「街の人間を」


「避けている……?」


 レオン。


「当然だよ」


 シオン。


「私たちは」


「誰でもいいわけじゃない」


 クオン。


「お姉ちゃんを傷つけた奴を」


 レオン。


「ママを奪った奴を」


 シオン。


「止めに、排除しに来た」


 次の瞬間。


 三人の魔法が。


 一斉に。


 王城へ向かう。


 ドォン!


 ドォォン!


 バァン!


 王城の塔が。


 次々と。


 崩れていく。


 重要施設。


 軍の拠点。


 王族専用の施設。


 そして。


 王城。


 それだけが。


 狙い撃ちされていく。


 街。


 無傷。


 人々。


 無傷。


 けれど。


 王国の中枢だけが。


 次々と。


 機能を失っていく。


「なぜだ……!」


 レグナード。


「なぜ」


「子どもが」


「これほどの力を……!」


 レオン。


「僕たちだけじゃない」


 シオン。


「二人だから」


 クオン。


「そして」


 三人。


「「「三人だから」」」


 紫色の光が。


 夜空を。


 染める。


 レグナード。


 剣を。


 構える。


「ならば」


「私が」


「止める!」


 突進。


 しかし。


 レオンとシオンが。


 同時に。


 手を。


 前へ。


「「遅い」」


 ドォォォン!!


 レグナードが。


 大きく。


 吹き飛ぶ。


 王城の広間へ。


 落ちる。


「ぐっ……!」


 クオン。


「お姉ちゃんは」


 レオン。


「ママは」


 シオン。


「ずっと」


「みんなを守ってた」


 クオン。


「なのに」


 三人。


「「「あなたは傷つけた」」」


 レグナード。


「……」


 立ち上がろうとする。


 しかし。


 紫色の魔力が。


 王城全体を。


 包んだ。


 逃げ道。


 ない。


 攻撃できる場所。


 限られている。


 街へは。


 一切。


 魔力が流れない。


「……」


 レグナード。


 初めて。


 理解した。


 この三人は。


 怒りに任せて。


 無差別に攻撃しているわけではない。


 明確に。


 自分だけを。


 狙っている。


「……」


 レオン。


「終わりにする」


 シオン。


「うん」


 クオン。


 三人。


 魔力を。


 一つに。


 重ねる。


「「「しんじゃえ」」」


 次の瞬間。


 巨大な紫色の光が。


 王城を。


 包み込んだ。


 轟音。


 閃光。


 そして。


 静寂。


 王城は。


 完全に。


 崩れ落ちていた。


 その周囲。


 皇族の館。


 軍事施設。


 王国の中枢となる建物。


 それらも。


 すべて。


 破壊されている。


 けれど。


 街の人々は。


 誰一人として。


 傷ついていない。


 ただ。


 王国の中心だけが。


 消えていた。


 レオン。


「……」


 シオン。


「……」


 クオン。


「……」


 三人。


 しばらく。


 崩れた王城を見る。


 そして。


 クオンが。


 小さく。


「……これで」


「お姉ちゃんの分」


 レオン。


「まだ」


「足りない」


 シオン。


「……」


「でも」


 三人。


 空を見る。


「……帰ろう」


 クオン。


「お姉ちゃんが」


「待ってる」


 レオン。


「ママも」


 シオン。


「きっと」


 そして。


 三人は。


 星霜王国へ。


 戻ろうとした。


 しかし。


 その背後。


 崩れた王城の瓦礫の中から。


「……」


 一つの。


 小さな魔力反応が。


 残っていた。


 三人は。


 まだ。


 気づいていない。


 レグナードが。


 生きているのか。


 それとも。


 別の何かなのか。


 誰にも。


 まだ。


 分からなかった。

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