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まってて。迎えに行くから

 空。


 千乃は。


 鬼月姫の姿のまま。


 一直線に。


 ルースエルド王国へ向かっていた。


「……」


 白い髪が。


 風になびく。


 深紅の瞳。


 前だけを見る。


「真銀……」


 その名を。


 小さく。


 呟く。


「待ってて」


 黒い翼。


 ばさぁっ。


 さらに。


 速度を上げる。


 その時。


「お姉ちゃぁぁぁぁぁん!!」


「……?」


 後ろから。


 声。


 千乃が。


 振り返る。


「……?」


 遠く。


 何かが。


 飛んでくる。


 白い。


 巨大な影。


「……アイシィ?」


 近づいてくる。


 巨大な氷竜。


 その背中には。


 レオン。


 シオン。


 クオン。


「……」


 千乃。


「なんで!?」


 アイシィが。


 空を飛びながら。


「千乃さん!」


「先に行かれては困ります!」


「え?」


 レオン。


「ママ!」


「パパ!」


 シオン。


「ママ!」


「パパ取り返す!」


 クオン。


「お姉ちゃん!」


「僕たちも行く!」


 千乃。


「……」


 少し。


 驚く。


「みんな」


 アイシィ。


「私が」


「皆さんを乗せてきました」


「クオンさんも」


「一緒です」


 クオン。


「うん!」


 千乃。


「……」


 鬼月姫の。


 冷たい瞳が。


 ほんの少し。


 柔らかくなる。


「そっか」


 レオン。


「ママ」


「うん?」


「一緒に」


「パパ取り返そう」


 シオン。


「うん!」


 千乃。


「……うん」


 黒い翼。


 ゆっくり。


 アイシィの横へ。


「みんなで」


「取り返そう」


 アイシィ。


「はい」


 そして。


 ルースエルド王国。


 王都。


 上空。


 巨大な影が。


 二つ。


 近づいてくる。


「……」


 城壁の兵士。


「な……」


「何だ、あれは!?」


「白い竜……?」


「いや!」


「あれは!」


「鬼だ!」


「人が飛んでいる!?」


「鬼が飛んでくるぞぉぉぉぉぉ!!」


 王都。


 大騒ぎ。


 そのまま。


 千乃たちは。


 王城へ向かう。


 千乃。


「……」


 深紅の瞳。


 城を見る。


「真銀」


「どこ?」


 アイシィ。


「……」


「気配を探ります」


 目を閉じる。


 数秒。


「……」


「見つけました」


 千乃。


「どこ?」


「王城」


「最上階付近です」


「……」


 千乃。


「行こう」


 アイシィ。


「はい」


 二つの影が。


 王城へ。


 降りていく。


 どんっ。


 どんっ。


 王城前の広場。


 兵士たちが。


 一斉に。


 武器を構える。


「止まれ!」


 千乃。


「……」


 地面へ。


 静かに。


 降り立つ。


 白い髪。


 深紅の瞳。


 二本の角。


 黒い着物。


 巨大な黒い翼。


 鬼月姫。


 千乃。


 その隣。


 巨大な氷竜。


 アイシィ。


 背中から。


 レオン。


 シオン。


 クオンが。


 降りてくる。


「……」


 兵士。


「……」


「…………」


「何なんだ」


「この集団……」


 クオン。


「お姉ちゃん」


「うん?」


「僕」


「ここに来るの初めて」


「そうだね」


「……」


「怖い?」


「ちょっとだけ」


「そっか」


 千乃。


 クオンの頭を。


 軽く。


 撫でる。


「大丈夫」


「私がいるから」


「うん」


 その時。


 王城の扉が。


 ばぁんっ!!


 開いた。


「来たか」


 低い声。


 千乃。


「……」


 顔を上げる。


 階段の上。


 一人の青年。


 ルースエルド王国。


 第一王子。


 レグナード・ルースエルド。


 その隣。


 ココア。


 そして。


 その後ろ。


「……」


 真銀。


「……!」


 千乃の瞳が。


 わずかに。


 揺れる。


「真銀……!」


 真銀は。


 意識を取り戻していた。


 しかし。


 兵士に囲まれている。


「千乃……」


 千乃。


 一歩。


 前へ出る。


「真銀を」


「返して」


 レグナード。


「……」


「簡単には返せない」


 千乃。


「どうして?」


 ココア。


「お兄様は」


「世界最強ですもの!」


「あなたが」


「どれだけ強くても」


「勝てるはずありませんわ!」


 千乃。


「……」


 レグナード。


「千乃」


「お前が」


「この男を」


「本当に取り戻したいのなら」


「……」


 一歩。


 前へ。


「俺に勝て」


 空気が。


 止まる。


 千乃。


「……」


 レグナード。


「俺に勝てば」


「真銀は返す」


「……」


 千乃。


「本当に?」


「ああ」


「約束する」


 千乃。


 真銀を見る。


「……」


 真銀。


「千乃」


「うん」


「無理するな」


「……」


 千乃。


「大丈夫」


 真銀。


「……」


「俺は」


「ここにいる」


「うん」


 千乃。


「だから」


 深紅の瞳が。


 レグナードへ。


 向く。


「勝つ」


 レグナード。


「……」


 千乃。


「真銀を」


「取り返す」


 ココア。


「お兄様!」


「この女を」


「倒してくださいませ!」


 レグナード。


「分かっている」


 そして。


 千乃の後ろ。


「ママ!」


「……?」


 レオン。


「パパ!」


「……」


 シオン。


「ママ!」


「頑張って!」


 千乃。


「……」


 鬼月姫の。


 冷たい顔。


 ほんの少し。


 笑った。


「うん」


 アイシィ。


「千乃さん」


「……」


「私たちは」


「ここで待っています」


 クオン。


「お姉ちゃん」


「絶対」


「帰ってきてね」


 千乃。


「もちろん」


 そして。


 レグナード。


 剣を抜く。


 キィィィン。


「俺は」


「ルースエルド王国第一王子」


「この国で」


「最も強い」


 千乃。


「……」


 黒い翼。


 ゆっくり。


 広がる。


「じゃあ」


 深紅の瞳。


「どっちが」


「本当に強いか」


 レグナード。


「決めよう」


 ココア。


「お兄様!」


「勝ってくださいませ!」


 千乃。


「……」


 真銀。


「千乃」


「うん?」


「……気をつけろ」


「分かってる」


 千乃。


 少しだけ。


 笑う。


「真銀」


「……」


「待ってて」


「必ず」


「迎えに行くから」


 そして。


 レグナードも。


 構える。


「来い」


 千乃。


「うん」


 黒い翼が。


 大きく。


 羽ばたいた。


 ばさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!


 次の瞬間。


 鬼月姫。


 千乃が。


 一気に。


 地面を蹴った。


 レグナードも。


 同時に。


 踏み込む。


「……!」


 千乃。


「……!」


 二人の距離が。


 一瞬で。


 消える。


 そして。


 鬼月姫と。


 世界最強を名乗る第一王子。


 ついに。


 激突する。

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