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189/197

二人でセット

 翌朝。


 星氷神城アストラルグレイシア


 城門前。


「……」


 門番。


 遠くを見る。


「……」


 嫌な予感。


 金色の髪。


 少しふくよかな体格。


 そして。


 ものすごく。


 自信満々な顔。


「……」


 門番。


「またか」


 パイライトが。


 胸を張って。


 歩いてくる。


「おはよう!」


「ユミナリア皇国の!」


「次期皇王!」


「パイライト・ユミナリアである!」


「帰ってください」


「朝の挨拶より先に!?」


「昨日も帰っていただきましたので」


「今日は違う!」


「何がですか」


「今日は!」


 パイライト。


 びしっ。


 城を指差す。


「千乃様と柚乃様に!」


「正式に!」


「会いに来た!」


「帰ってください」


「だから早い!!」


 その時。


 城の中。


「……?」


 レオンが。


 窓の外を見る。


「……」


 シオンも。


 隣へ来る。


「誰?」


「昨日の人」


「……」


「パイライト」


「……」


 二人。


 顔を見合わせる。


「……」


「……」


「「嫌い」」


 千乃。


「今日も早いね!?」


 真銀。


「昨日から学習してないな」


 千乃。


「たぶん」


「してないね」


 そして。


 城門。


「千乃様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「……」


 千乃。


 ため息。


「……また来た」


 真銀。


「行く?」


「うん」


 レオン。


「ママ」


「なに?」


「ぼくも行く」


 シオン。


「わたしも」


「二人とも?」


「うん!」


 千乃。


「じゃあ」


「一緒に行こうか」


「うん!」


「うん!」


 城門前。


 パイライト。


「千乃様!」


「昨日は少々!」


「言葉が足りなかった!」


 千乃。


「そう?」


「私は!」


「あなたを!」


「諦めない!」


「……」


 レオン。


「帰って」


「……」


 パイライト。


「……」


「朝一番に!?」


 シオン。


「ママに近づかないで」


「まだ何もしていないぞ!?」


 レオン。


「嫌い」


「だから理由を聞いている!!」


 柚乃。


 後ろから。


「お姉ちゃん」


「うん?」


「この人」


「うん」


「また来たね」


「来たね」


「……」


「帰ってもらおう」


「うん」


 パイライト。


「ちょっと待て!」


「私にも!」


「話す権利くらい!」


 千乃。


「あるよ?」


「では!」


 パイライト。


「千乃様!」


「私と!」


「結婚を!」


「お断りします」


「早い!!」


 レオン。


「嫌い」


 シオン。


「帰って」


 柚乃。


「ママに近づかないで」


 パイライト。


「四連続!?」


 真銀。


「諦めろ」


「真銀まで!」


 パイライト。


 歯を食いしばる。


「……いいだろう」


「ならば!」


「今日は!」


「新しい作戦がある!」


 千乃。


「作戦?」


「そうだ!」


 パイライト。


 懐から。


 何かを取り出す。


「これだ!」


 きらっ。


 小さな魔法具。


「千乃様の気を引くために!」


「私の!」


「特製!」


「高級!」


「魔法菓子だ!」


 千乃。


「……」


 真銀。


「……」


 柚乃。


「……」


 レオン。


「……」


 シオン。


「……」


 ララ。


「……」


「食べ物?」


 千乃。


「うん」


 ララ。


 ぴょんっ。


「ララ食べたい!」


「ダメ」


「なんで!?」


「パイライトのだから」


「……」


 パイライト。


「そこ!?」


 千乃。


「それに」


「なんか怪しい」


「怪しくない!」


 真銀。


「じゃあ自分で食べろ」


「……」


 パイライト。


「……」


「…………」


「これは」


「その」


「千乃様用で」


「自分で食べるものでは」


「怪しいじゃん」


「……」


 柚乃。


「怪しいね」


「柚乃様まで!?」


 すると。


 レオンが。


 すっと。


 前へ出た。


「ママ」


「うん?」


「ぼく」


「この人」


「嫌い」


「うん」


「だから」


 レオンの周囲に。


 紫色の魔力が。


 ふわっ。


「追い払う」


「……!」


 パイライト。


「なっ!?」


 シオンも。


 レオンの隣へ。


「わたしも」


「……」


 紫色の光。


 ふわっ。


 千乃。


「二人とも?」


「うん!」


「魔法?」


「うん!」


 真銀。


「……」


「二人で使うのか?」


 レオン。


「うん」


 シオン。


「二人じゃないと」


「できない」


「……」


 千乃。


「へえ」


 ライ。


「面白い仕様だな」


 アイシィ。


「魔力の波長が」


「互いに補完されているのでしょうか」


 ララ。


「すごーい!」


 パイライト。


「ちょっと待て!」


「私は次期皇王だぞ!?」


 レオン。


「知ってる」


 シオン。


「だから?」


「だから!?」


 レオンが。


 右手を。


 前へ。


「……」


 シオンも。


 左手を。


 前へ。


「……」


 二人の魔力が。


 ゆっくり。


 重なる。


 紫。


 紫。


 そして。


 一つの光へ。


「……」


 千乃。


「なんか」


「本格的だね」


 真銀。


「詠唱する気だな」


「詠唱?」


 柚乃。


「中二病?」


「たぶん」


 千乃。


「誰に似たんだろう」


 全員。


「……」


 真銀。


「お前だろ」


「えっ」


 レオン。


 目を閉じる。


「紫電に眠る」


「……」


 シオン。


「星々よ」


「……」


 二人。


「我らの声に応え」


 魔力が。


 さらに。


 強くなる。


「一つの力となれ」


 千乃。


「おお……」


 ララ。


「かっこいい!」


 ライ。


「……」


「完全に」


「千乃の影響だな」


「なんで!?」


 アイシィ。


「そして」


「二人の魔力が」


「一つになっています」


 レオン。


「――」


 シオン。


「――」


 二人。


「「紫星双閃しせいそうせん!!」」


 ドォォォォォォォォォン!!


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 パイライト。


 魔力の奔流に。


 吹き飛ばされる。


 ただし。


 城門の外。


 地面を。


 ごろごろ。


 転がって。


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 ぽすっ。


 止まる。


「…………」


 パイライト。


「……」


「…………」


「……」


 無傷。


 ただし。


 服が。


 土まみれ。


「……」


 千乃。


「大丈夫?」


「……」


 パイライト。


「……」


「なぜ」


「私が」


「子どもに」


「吹き飛ばされるのだ……」


 レオン。


「帰って」


 シオン。


「もう来ないで」


 パイライト。


「……」


「また!?」


 しかし。


 真銀が。


「……待て」


「どうした?」


 真銀。


 二人を見る。


「さっき」


「二人で使わないと発動しないって言ったな?」


 レオン。


「うん」


 シオン。


「そうだよ」


「じゃあ」


 真銀。


「どちらか一人だけだったら?」


「……」


 千乃。


「試してみる?」


 真銀。


「安全な方向でな」


「うん!」


 レオン。


 片手を。


 前へ。


「……」


 紫色の魔力。


 ふわっ。


「紫電に眠る」


「……」


 しかし。


「星々よ」


 レオン。


「……」


「……」


 魔力が。


 ぷすっ。


 消えた。


「……」


 レオン。


「失敗」


 シオン。


「じゃあ」


 今度は。


 シオン。


「紫電に眠る」


「星々よ」


「我が声に応え」


 魔力。


「……」


 ぷすっ。


 消える。


「失敗」


 千乃。


「本当に二人じゃないと駄目なんだ!」


 アイシィ。


「興味深いですね」


 ライ。


「かなり特殊だな」


 ララ。


「二人セット!」


 柚乃。


「お姉ちゃん」


「うん?」


「じゃあ」


「二人が喧嘩したら?」


「……」


 千乃。


「魔法使えないね」


「……」


 レオン。


「喧嘩しない」


 シオン。


「しない」


「……」


 真銀。


「即答だな」


 その時。


 土まみれのパイライトが。


 ゆっくり。


 立ち上がった。


「……」


「……」


 パイライト。


「ふふ」


 千乃。


「……?」


「なるほど」


「二人でなければ」


「発動できないのだな?」


 レオン。


「うん」


 シオン。


「そうだよ」


 パイライト。


 にやり。


「ならば!」


「どちらか一人を!」


「私の味方にすれば!」


 千乃。


「……」


 柚乃。


「……」


 真銀。


「……」


 ライ。


「……」


 アイシィ。


「……」


 ララ。


「……」


 全員。


「……無理だろ」


「なぜ!?」


 レオン。


「ママの味方」


 シオン。


「わたしも」


「……」


 パイライト。


「……」


 レオン。


「おまけカイルより」


 パイライト。


「!?」


 シオン。


「嫌い」


「おまけカイルと比較するなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 ララ。


「おまけカイル!」


「ララまで!」


 その瞬間。


 城の中から。


「俺の名前を呼んだ気がするぅぅぅぅぅぅぅ!!」


 カイル。


 走ってくる。


「何だ!?」


 パイライト。


「……」


 カイル。


「……」


 レオン。


「カイル」


 カイル。


「……!」


「俺の名前!」


 シオン。


「おまけカイル」


「なんでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 千乃。


「朝から元気だね」


「元気じゃない!!」


 パイライト。


「……」


 しばらく。


 二人を見つめる。


「……」


「私は」


「今日」


「完全に」


「負けた」


 千乃。


「うん」


「認めるんだ」


「だが!」


 パイライト。


 土を払いながら。


「私は!」


「諦めないぞ!」


 レオン。


「嫌い」


 シオン。


「帰って」


 柚乃。


「ママに近づかないで」


 真銀。


「帰れ」


 ララ。


「帰ってー!」


 ライ。


「帰れ」


 アイシィ。


「お帰りください」


 カイル。


「俺も帰ってほしい!」


 パイライト。


「お前は誰だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 カイル。


「俺はカイル!」


「おまけカイル!」


「俺はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 星氷神城。


 朝からものすごくうるさかった。


 パイライトが。


 城門の外へ。


 吹き飛ばされた。


「……」


 千乃。


「……」


 真銀。


「……」


 柚乃。


「……」


 レオン。


「……」


 シオン。


「……」


 そして。


 地面に転がった。


 パイライト。


「……」


「私は」


「次期皇王なのだが……」


 千乃。


「うん」


「そうだね」


「でも」


「帰ってね」


「ひどい!」


 その時。


 真銀が。


 ふと。


 二人を見る。


「……なあ」


「なに?」


「さっきの話」


「うん」


「二人じゃないと」


「魔法が発動しないんだよな?」


 レオン。


「うん」


 シオン。


「そうだよ」


「必殺技だけ?」


「……」


 二人。


 顔を見合わせる。


「……」


「……」


「分からない」


 千乃。


「じゃあ」


「普通の魔法は?」


「試してみようか」


 レオン。


「うん!」


 シオン。


「やってみる!」


 千乃。


「じゃあ」


「まずレオンだけ」


「うん」


 レオンが。


 一歩前へ出る。


 右手を。


 すっと。


 前へ。


「火よ」


「集まれ」


 小さな。


 紫色の魔力が。


 手のひらへ。


 ふわっ。


「……!」


 レオン。


「出た!」


 千乃。


「おお!」


 真銀。


「普通に出てるじゃないか」


「よかったね!」


 しかし。


 レオンが。


「えい!」


 と。


 手を振った瞬間。


 ぽすっ。


 魔力が。


 消えた。


「……」


「……」


「……」


 レオン。


「……あれ?」


 千乃。


「消えたね」


「うん」


 ライ。


「発動前の魔力だけか?」


 アイシィ。


「そう見えますね」


 レオン。


「もう一回!」


 再び。


「火よ!」


「集まれ!」


 ぽわっ。


 紫色の光。


 そして。


「いけ!」


 ぽすっ。


 消える。


「……」


 レオン。


「できない」


 千乃。


「なるほど」


 真銀。


「次」


「シオン」


「うん!」


 シオン。


 手を。


 前へ。


「風よ」


「集まれ」


 ふわっ。


 小さな紫色の風。


「できた!」


 シオン。


「すごい!」


 千乃。


「でも」


「飛ばしてみよう」


「うん!」


「えい!」


 ふっ。


 消える。


「……」


 シオン。


「できない」


 柚乃。


「お姉ちゃん」


「うん?」


「これ」


「普通の魔法も」


「二人じゃないと」


「使えないんじゃない?」


「……」


 千乃。


「やってみよう」


 レオン。


「うん」


 シオン。


「うん」


 二人が。


 並ぶ。


 レオン。


 右手。


 シオン。


 左手。


 それぞれ。


 前へ。


「火よ」


「風よ」


「「我らの力に応えよ」」


 紫色の魔力。


 二人の手から。


 同時に。


 流れ込む。


 そして。


「「――発動!」」


 ボォォォォォォォォッ!!


「うわっ!」


 炎が。


 風に乗って。


 大きく舞い上がる。


 けれど。


 千乃が。


「二人とも!」


「うん!」


 レオン。


 すぐに。


 魔法を消す。


 ふっ。


 静かになる。


「……」


 真銀。


「……」


「やっぱり」


 ライ。


「二人で一組か」


 アイシィ。


「魔力そのものが」


「互いを補っているようですね」


 柚乃。


「すごい……」


 千乃。


「……」


 二人を見る。


「じゃあ」


「一人じゃ」


「攻撃魔法」


「使えない?」


 レオン。


「うん」


 シオン。


「たぶん」


「回復魔法は?」


 千乃。


「……」


 レオン。


「やってみる」


 シオン。


「私も」


 二人。


 手を。


 それぞれ。


 千乃へ。


「「癒しの光よ」」


 ふわぁっ。


 淡い紫色の光が。


 千乃を。


 優しく包む。


「……」


「……」


 千乃。


「……あったかい」


 レオン。


「できた!」


 シオン。


「二人なら!」


 千乃。


「じゃあ」


「一人だと?」


 レオン。


「……」


 片手を。


 千乃へ。


「癒しの光……」


 ぽすっ。


 消える。


「……」


 シオン。


「……」


「やっぱり」


 千乃。


「普通の回復魔法まで!?」


 真銀。


「つまり」


「攻撃だけじゃない」


 ライ。


「防御も」


 アイシィ。


「回復も」


 柚乃。


「全部」


「二人で一つ……」


 千乃。


「なるほど」


 レオン。


「ぼく」


「シオンと一緒じゃないと」


「魔法できない」


 シオン。


「わたしも」


「レオンと一緒じゃないと」


「できない」


 二人。


 顔を見合わせる。


「……」


「……」


 そして。


 ぎゅっ。


 手を握る。


「「ずっと一緒!」」


 千乃。


「……」


 少しだけ。


 目を細める。


「仲良しだね」


 真銀。


「それが一番だな」


 すると。


 パイライト。


 地面から。


 むくっ。


 起き上がる。


「……」


「つまり」


「どちらか一人を」


「私の味方にすれば」


 千乃。


「……」


 真銀。


「……」


 柚乃。


「……」


 レオン。


「……」


 シオン。


「……」


 ララ。


「……」


 ライ。


「……」


 アイシィ。


「……」


 全員。


「無理」


「即答!?」


 パイライト。


「なぜだ!」


 レオン。


「シオンは」


「ぼくの妹」


 シオン。


「レオンは」


「わたしのお兄ちゃん」


 千乃。


「二人は」


「セットだからね」


 パイライト。


「……」


「……」


「……」


「ならば!」


 パイライト。


 両手を。


 広げる。


「私が!」


「二人まとめて!」


「味方に!」


 レオン。


「嫌い」


 シオン。


「帰って」


 パイライト。


「……」


 柚乃。


「ママに近づかないで」


「……」


 パイライト。


「……」


 静かに。


 しゃがみ込む。


「……」


「なぜ」


「こんなにも」


「嫌われるのだ……」


 千乃。


「心当たり」


「あるでしょ?」


「……」


 パイライト。


「……ある」


 真銀。


「あるんだ」


 パイライト。


「だが!」


 勢いよく。


 立ち上がる。


「私は!」


「諦めない!」


 レオン。


「帰って」


 シオン。


「もう来ないで」


 パイライト。


「……」


「……」


「今日は帰る」


 千乃。


「うん」


 パイライト。


「だが!」


「また来るぞ!」


 レオン。


「嫌い」


 シオン。


「帰って」


 パイライト。


「…………」


「……」


 そして。


 とぼとぼ。


 帰っていった。


 城門が。


 閉まる。


「……」


 千乃。


「なんか」


「毎回」


「同じ終わり方だね」


 真銀。


「学習しないからな」


 柚乃。


「でも」


「今日」


「新しいこと分かったね」


「うん」


 千乃。


 二人を見る。


「普通の魔法も」


「二人で一つ」


 レオン。


「うん!」


 シオン。


「そう!」


 千乃。


「じゃあ」


「これから」


「二人でいっぱい練習しようか」


「うん!」


「うん!」


 ララ。


「主!」


「なに?」


「ララも!」


「二人の魔法」


「見たい!」


「いいよ」


「やったー!」


 ライ。


「……」


「ただし」


「城を壊すなよ」


 レオン。


「分かった!」


 シオン。


「分かった!」


 真銀。


「……」


「本当に?」


 二人。


「「うん!」」


 千乃。


「その返事」


「信用できないなぁ」


 星氷神城。


 その日。


 新しい事実が。


 判明した。


 レオンとシオン。


 二人の魔力は。


 それぞれ別々に存在している。


 けれど。


 魔法として形にするには。


 二人の力が。


 必要だった。


 攻撃も。


 防御も。


 回復も。


 すべて。


 双子で一つ。


 そして。


 それは。


 二人だけの。


 特別な力だった。


 数日後。


 星氷神城アストラルグレイシア


 城門前。


 今日は。


 珍しく。


 来客があった。


「……」


 千乃。


 門の外を見る。


「誰?」


 そこには。


 二人の人物。


 一人は。


 長い金髪の少女。


 白と金の豪華なドレス。


 もう一人は。


 銀色の髪の少年。


 青い礼服。


 二人とも。


 見るからに。


 身分の高そうな姿だった。


「隣国」


「アルヴェリア王国の」


「第一王女」


「リリアーナです」


「同じく」


「第一王子」


「レグルスです」


 千乃。


「……」


 真銀。


「……」


 柚乃。


「……」


 レオン。


「……」


 シオン。


「……」


 ララ。


「……」


 ライ。


「……」


 アイシィ。


「……」


 クオン。


「……」


 そして。


 カイル。


「……」


「俺は?」


 誰も。


 見ていなかった。


「なんで!?」


 リリアーナは。


 にこり。


 と笑った。


「今日は」


「レオン様と」


「シオン様に」


「お会いしたくて」


 千乃。


「うちの子に?」


「はい」


 レグルス。


「隣国との交流も兼ねて」


「少し」


「お話をさせていただければと」


 真銀。


「……」


「構わないが」


 千乃。


「でも」


「私も一緒にいるよ?」


 リリアーナ。


「もちろんです」


「ただ」


「少しだけ」


「私たちと遊んでいただければ」


 レオン。


「遊ぶ?」


「はい」


 シオン。


「何するの?」


「とても楽しいことですよ」


 リリアーナ。


 後ろの侍女が。


 大きな箱を。


 持ってきた。


 ぱかっ。


「……!」


 中には。


 色とりどりの玩具。


 魔法で光る人形。


 小さな魔導車。


 宝石のような積み木。


「わぁ……」


 レオン。


「すごい」


 シオン。


「きれい……」


 千乃。


「おお」


 ララ。


「ララも遊びたい!」


 リリアーナ。


「もちろん」


「ですが」


 レオンとシオンを見る。


「これは」


「お二人への贈り物です」


「……!」


 二人の目が。


 輝く。


「もらっていいの?」


「はい」


「全部?」


「全部です」


 レオン。


「……」


 シオン。


「……」


 二人。


 嬉しそうに。


 玩具を見る。


 千乃。


 にこっ。


「よかったね」


「うん!」


「ありがとう!」


 リリアーナ。


「そして」


「もう一つ」


 レグルス。


「私たちの国には」


「王族専用の」


「魔法学院があります」


 レオン。


「魔法学院?」


「そうです」


「たくさんの魔法を」


「学べます」


 シオン。


「魔法……」


 レグルス。


「お二人なら」


「きっと」


「素晴らしい魔法使いになれるでしょう」


 レオン。


「……」


 シオン。


「……」


 千乃。


「二人とも」


「興味ある?」


「ある!」


「ある!」


 即答。


 真銀。


「……」


 少し。


 考える。


「確かに」


「二人の魔法は特殊だからな」


 リリアーナ。


「でしたら」


「ぜひ」


 にこっ。


「私たちの国へ」


「来ませんか?」


 千乃。


「……?」


 柚乃。


「お姉ちゃん」


「うん?」


「どういう意味?」


 リリアーナ。


「簡単なことです」


「しばらく」


「私たちの国で暮らすのです」


「……」


 千乃。


「しばらく?」


「はい」


「魔法学院にも通って」


「王宮で生活して」


「たくさんの魔法を学ぶ」


「素敵でしょう?」


 レオン。


「……」


 シオン。


「……」


 レグルス。


「もちろん」


「千乃様も」


「一緒に来ていただいて構いません」


 千乃。


「……」


「私も?」


「ええ」


 リリアーナ。


「ただ」


「王宮には」


「王族専用区画がありますので」


「レオン様とシオン様は」


「私たちと一緒に」


「暮らしていただきます」


 千乃。


「……」


 真銀。


「……」


 柚乃。


「……」


 レオン。


「……」


 シオン。


「……」


 ララ。


「……?」


 ライ。


 眉をひそめる。


「……」


 アイシィ。


「……」


 クオン。


「……」


 レオン。


 玩具を見る。


 シオン。


 魔法学院の話を思い出す。


「……」


 楽しそう。


 新しい玩具。


 新しい魔法。


 王宮。


 魔法学院。


 何もかも。


 魅力的だった。


「……行きたい」


 レオンが。


 ぽつり。


 シオンも。


「……私も」


 千乃。


「……」


 真銀。


「……」


 千乃は。


 二人を見る。


「本当に?」


「うん」


「魔法」


「いっぱい覚えたい」


「……」


 千乃。


 少し。


 笑った。


「そっか」


 そして。


「じゃあ」


「行ってみる?」


「……!」


 リリアーナ。


 嬉しそうに。


「本当ですか?」


「うん」


 レグルス。


「では!」


「明日にでも」


「……」


 その時。


 レオンが。


 ふと。


 千乃を見る。


「……」


「ママ」


「なに?」


「ママも」


「一緒に来る?」


「もちろん」


 千乃。


「……」


 レオン。


「ずっと?」


「……」


「ママも」


「王宮にいる?」


 千乃。


「うん」


 シオン。


「……」


「パパは?」


 真銀。


「俺もいるぞ」


「……」


 シオン。


「……」


 しかし。


 リリアーナが。


 少しだけ。


 笑った。


「王宮の規則上」


「ご両親が」


「ずっと一緒というわけには」


「いかないかもしれません」


「……」


 レオン。


「……え?」


 シオン。


「……」


 リリアーナ。


「でも」


「心配ありません」


「私たちが」


「大切にしますから」


「……」


 レオン。


 玩具を見る。


 シオン。


 魔法学院を思い浮かべる。


 けれど。


 その瞬間。


 二人の顔から。


 笑顔が。


 消えた。


「……」


「……」


 レオン。


「ママと」


「離れるの?」


 シオン。


「……」


「ママと」


「一緒じゃないの?」


 リリアーナ。


「少しの間だけです」


「すぐ慣れますよ」


 レオン。


「……」


 シオン。


「……」


 二人。


 顔を見合わせる。


「……」


「……」


 そして。


「「嫌」」


「……!」


 リリアーナ。


「え?」


 レグルス。


「なぜ?」


 レオン。


「ママと離れちゃう」


 シオン。


「魔法より」


「おもちゃより」


「ママがいい」


 千乃。


「……!」


 真銀。


「……」


 柚乃。


「……」


 ララ。


「……!」


 レオン。


「ママ」


「うん?」


「一緒にいたい」


 シオン。


「わたしも」


「ママと」


「離れたくない」


 千乃。


「……」


 二人のもとへ。


 しゃがみ込む。


「……そっか」


 レオン。


「うん」


 シオン。


「うん」


 千乃。


 二人の頭を。


 そっと。


 撫でる。


「じゃあ」


「行かなくていいよ」


「……!」


 二人。


 千乃へ。


 ぎゅっ。


「ママ!」


「ママ!」


「……」


 千乃。


「大好きだよ」


「ぼくも!」


「わたしも!」


 リリアーナ。


「……」


 レグルス。


「……」


「ですが」


 レグルス。


「魔法を学ぶ機会を」


「捨てるのですか?」


 レオン。


「……」


 シオン。


「……」


 レオン。


 少し。


 考える。


「魔法」


「学びたい」


 シオン。


「でも」


「ママと離れるなら」


「いらない」


 レグルス。


「……」


 リリアーナ。


「……」


 真銀。


「それが」


「二人の答えだな」


 千乃。


「うん」


 リリアーナは。


 少しだけ。


 困った顔をした。


「……」


「では」


「この玩具も」


「返していただきましょうか」


 シオン。


「……」


 レオン。


「……」


 二人。


 玩具を見る。


 そして。


「いいよ」


「返す」


 リリアーナ。


「……!」


 レオン。


「ママと離れるくらいなら」


「いらない」


 シオン。


「全部」


「いらない」


 侍女が。


 箱を閉じる。


 ぱたん。


 千乃。


「……」


 そして。


 二人は。


 手を繋ぐ。


「一緒」


「うん」


「ずっと」


「うん」


「ママと」


「一緒」


 紫色の魔力が。


 ふわっ。


 二人の周囲に。


 集まり始める。


 レオン。


「……」


 シオン。


「……」


 魔力が。


 少しだけ。


 強くなる。


 千乃。


「……あれ?」


 真銀。


「どうした?」


「二人の魔力」


「強くなってない?」


 アイシィ。


「感情に」


「反応しているのかもしれません」


 ライ。


「なるほど」


 ララ。


「主を守りたいから?」


 レオン。


「うん」


 シオン。


「ママを守る」


 千乃。


「……」


 少し。


 目を細める。


「ありがとう」


 そして。


 レオン。


「ママ」


「なに?」


「ぼく」


「魔法」


「もっと練習する」


「うん」


 シオン。


「わたしも」


「うん」


「でも」


「ママと一緒に」


「うん」


 千乃。


「じゃあ」


「三人でいっぱい練習しようか」


「うん!」


「うん!」


 リリアーナとレグルス。


 しばらく。


 二人を見る。


「……」


「……」


 そして。


 レグルス。


「……私たち」


「やり方を」


「間違えたな」


 リリアーナ。


「……そうね」


「欲しいものを」


「何でも与えれば」


「ついてくると思っていた」


 千乃。


「……」


 リリアーナ。


「ですが」


「この二人にとって」


「一番大切なのは」


「物でも」


「地位でも」


「魔法でもない」


「……」


 レオン。


「ママ」


 シオン。


「ママ」


 二人。


 千乃の手を。


 ぎゅっ。


「……」


 千乃。


「それだけ」


 リリアーナ。


「……」


「素敵な家族ですね」


 真銀。


「……」


「まあ」


「そうだな」


 カイル。


「俺も」


「一番大切なものを」


「見つけた」


 千乃。


「何?」


「イケメンであること」


「帰って」


「なんで!?」


 その瞬間。


 レオン。


「カイル」


「……!」


 シオン。


「おまけカイル」


「最後にそれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 星氷神城。


 今日も。


 双子の声が。


 響いていた。


 そして。


 二人は。


 新しいことを。


 一つ。


 覚えた。


 魔法より。


 おもちゃより。


 王宮より。


 自分たちにとって。


 一番大切なもの。


「ママ」


「うん」


「大好き」


「……」


 千乃は。


 笑った。


「私も」


「二人が大好きだよ」

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