すごいっ!すごいよ!
それから。
さらに。
月日が流れるにつれて。
レオンとシオンは。
どんどん。
話せるようになっていった。
最初は。
「まま」
「ぱぱ」
「おにーたん」
それだけだった。
けれど。
少しずつ。
「まま、きた」
「ぱぱ、いる」
「おにーたん、あそぶ」
そんなふうに。
二つ。
三つ。
言葉をつなげるようになっていった。
ある朝。
「まま!」
千乃が。
「ん?」
振り返る。
「まま、あさ!」
「朝?」
レオンが。
「おはよ!」
「……!」
千乃。
「おはようまで言えた!?」
シオンも。
「まま、おはよ」
「……!」
千乃。
「二人とも!」
ぎゅっ。
「上手!」
「えへへ」
「えへへ」
紫色の魔力が。
ぽわぽわ。
二人の周囲で。
嬉しそうに。
揺れる。
そして。
クオンが。
部屋へ入ってくる。
「おはよう」
「おにーたん!」
「……!」
クオン。
すぐに。
「おはよう」
「おにーたん!」
「うん!」
「おにーたん!」
「うん!」
レオンが。
クオンへ。
手を伸ばす。
「おにーたん、だっこ」
「……!」
クオン。
「もちろん!」
抱き上げる。
シオンも。
「おにーたん、こっち」
「はいはい」
クオン。
二人を。
順番に。
抱き上げる。
「……」
千乃。
「クオン」
「なに?」
「完全に定着したね」
「うん」
「おにーたん」
「うん」
「もう自分から訂正しないんだ」
「だって」
クオン。
二人を見る。
「これが一番嬉しいから」
「……」
千乃。
「そっか」
「うん」
レオン。
「おにーたん!」
「うん!」
シオン。
「おにーたん!」
「うん!」
クオン。
「何?」
「おにーたん!」
「……」
「うん!」
もはや。
クオンは。
何度呼ばれても。
嬉しそうだった。
そして。
真銀。
「おはよう」
「ぱぱ!」
「うん」
「ぱぱ、おはよ!」
「……」
真銀。
停止。
「……今」
「うん?」
「文章になったな」
千乃。
「なったね」
シオン。
「ぱぱ、おはよ」
「……」
真銀。
「……おはよう」
二人。
「おはよ!」
「……」
真銀。
目元を。
そっと。
押さえる。
「……」
千乃。
「泣かない?」
「泣かない」
ぽろ。
「泣いた!」
「……」
「もう!」
真銀。
「……嬉しいから仕方ないだろ」
「はいはい」
昼。
食堂。
ララが。
白くて。
ふわふわの。
うさぎ姿で。
ぴょんっ。
「お昼だよー!」
「らら!」
「うん!」
「らら、ぴょん!」
「ぴょん!」
ララ。
「……」
そして。
「かわいいぃぃぃぃぃぃぃ!!」
「ララ!」
千乃。
「声!」
「……!」
ララ。
口を押さえる。
「……かわいい」
小声。
レオン。
「らら、かわいい」
「……!」
ララ。
「……」
ぷるぷる。
「ララ?」
「……泣かない」
シオン。
「らら、かわいい」
「……」
ぽろ。
「泣いたぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「だってぇぇぇぇぇぇ!」
「声!」
「……はい」
午後。
ライ。
「今日は何して遊ぶ?」
レオン。
「らい、あそぶ」
「……ああ」
シオン。
「らい、いっしょ」
「……」
ライ。
「分かった」
千乃。
「ライ」
「ん?」
「嬉しい?」
「……」
「尻尾ないから分かんない」
「……」
ライ。
「嬉しい」
「言った!」
「聞こえているだろ」
「うん!」
アイシィも。
「こんにちは」
「あーしぃ!」
「はい」
「あーしぃ、きた!」
「……」
アイシィ。
「来ましたよ」
シオン。
「あーしぃ、あそぼ」
「もちろんです」
アイシィ。
にこっ。
「上手ですね」
柚乃。
「柚乃だよ」
「ゆの!」
「うん!」
「ゆの、きた!」
「……!」
柚乃。
「私が来たって分かるんだね」
「ゆの!」
「はい!」
柚乃。
二人を。
嬉しそうに。
見つめる。
「……かわいい」
そして。
ある日の夕方。
千乃が。
庭へ出る。
「二人とも」
「おいで」
「まま!」
「まま、いく!」
「うん!」
レオン。
とことこ。
シオン。
とことこ。
そして。
千乃のところへ。
「まま!」
「うん!」
「だっこ!」
「はいはい」
千乃。
二人を。
抱き上げる。
「高い高いする?」
「する!」
「する!」
千乃。
「せーの!」
「きゃー!」
「きゃー!」
紫色の魔力が。
ぽわっ。
空へ。
小さな光の粒となって。
舞い上がる。
「おほし!」
レオンが。
「ほし!」
シオンも。
「星?」
千乃。
空を見る。
「そうだね」
「おほし!」
「おほし!」
「上手!」
夜。
千乃の部屋。
二人は。
ベッドの上。
「今日は」
千乃が。
「いっぱい喋ったね」
「うん!」
「まま」
「なに?」
「だいすき」
「……!」
千乃。
「……」
シオン。
「まま、だいすき」
「……」
千乃。
「……もう」
ぎゅっ。
二人を。
抱きしめる。
「お母さんも」
「二人のこと」
「大好きだよ」
「まま!」
「まま!」
その隣。
真銀。
「……」
千乃。
「真銀?」
「……俺も」
「うん?」
「言われたい」
「……」
千乃。
「じゃあ自分で言えば?」
「……」
真銀。
「……ぱぱ」
レオン。
「ぱぱ!」
シオン。
「ぱぱ!」
「うん」
「ぱぱ、だいすき」
「……」
真銀。
完全停止。
「……」
ぽろ。
「また!?」
「……無理だ」
「何が!?」
「嬉しすぎる」
「それ昨日も聞いた!」
レオン。
「ぱぱ、ないてる」
「……!」
シオン。
「ぱぱ、ないてる」
「…………」
真銀。
「……泣いてない」
ぽろ。
「泣いてる!」
千乃。
「もう!」
そして。
クオンが。
部屋の入口から。
「おにーたんも」
「……」
「おにーたん、だいすき!」
「……!」
クオン。
完全停止。
「……」
千乃。
「クオン?」
「……」
レオン。
「おにーたん!」
シオン。
「だいすき!」
「……」
クオン。
顔を伏せる。
「……」
ぽろ。
「クオンまで!?」
「……嬉しい」
「やっぱり泣くんだ!?」
クオン。
涙を拭いながら。
「……だって」
「おにーたんって」
「呼んでくれるだけでも」
「嬉しいのに」
「……」
「だいすきまで言われたら」
「……」
「無理」
千乃。
「何が無理なの!?」
「泣く」
「言い切った!?」
そして。
レオンとシオン。
「おにーたん!」
「おにーたん!」
「まま!」
「ぱぱ!」
四つの声。
部屋に。
響く。
紫色の魔力が。
ぽわぽわ。
二人の周囲を。
優しく。
舞っていた。
少しずつ。
言葉が増える。
発音も。
どんどん。
綺麗になっていく。
「まま」
「ぱぱ」
「おにーたん」
「ゆの」
「らら」
「らい」
「あーしぃ」
「らぶいーうみす」
もう。
どの名前も。
ほとんど完璧。
そして。
ある日。
カイルが。
食堂へ入ってきた。
「おはよう!」
二人。
振り返る。
「……」
カイル。
「……?」
レオン。
口を開く。
「おまけ」
カイル。
「……」
シオン。
「カイル」
カイル。
「……!」
レオン。
「おまけカイル」
シオン。
「おまけカイル」
「「おまけカイル!」」
「…………」
カイル。
その場で。
膝をついた。
「……」
「完璧に言えるようになったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
千乃。
「そこ!?」
カイル。
「名前を!」
「俺の名前を!」
「ちゃんと!」
「カイルって!」
「言えるようになったのに!」
レオン。
「おまけカイル」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
シオン。
「おまけカイル」
「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
千乃。
「なんで完璧に発音できるようになった最初の成果がそれなの!?」
ララ。
「おまけカイル!」
「ララまで覚えないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
そして。
真銀。
「……発音は完璧だな」
「そこ褒めるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
星氷神城。
今日も。
二人の成長で。
少しずつ。
言葉が増えていた。
ただし。
カイルにとっては。
名前の発音が完璧になったことより。
「おまけカイル」の発音が完璧になったことのほうが。
はるかに。
致命的だった。
それから。
さらに。
時間が経つにつれて。
レオンとシオンは。
どんどん。
話せるようになっていった。
最初は。
「まま」
「ぱぱ」
「おにーたん」
だった。
けれど。
今では。
「ママ」
「パパ」
「おにーたん」
と。
はっきり。
発音できるようになった。
ある朝。
「ママ!」
「ん?」
千乃が。
振り返る。
「ママ、おはよう!」
「……!」
千乃。
「ちゃんと喋った!?」
「うん!」
レオン。
「ママ、おはよ!」
シオンも。
「ママ、おはよう!」
「……」
千乃。
しばらく。
二人を見る。
「……すごい」
「何が?」
真銀が。
後ろから。
顔を出す。
「もう普通に会話できるじゃん」
「そうなの!」
千乃。
「昨日まで」
「もっと短かったのに!」
レオン。
「ママ、びっくりした?」
「した!」
シオン。
「ママ、うれしい?」
「うれしい!」
「よかった!」
「……」
千乃。
思わず。
二人を。
ぎゅっ。
「ママも嬉しいよ!」
「……」
真銀。
「俺は?」
「……」
レオン。
真銀を見る。
「……」
「パパ」
「……!」
真銀。
「うん!」
「パパ、おはよう」
「……」
真銀。
完全停止。
「……」
千乃。
「真銀?」
「……」
「どうしたの?」
「……」
ぽろ。
「泣いた!?」
「……」
「パパって」
「ちゃんと言ってくれた……」
「今まで何回も言ってたよ!?」
「発音が違う!」
「そこ!?」
シオン。
「パパ、ないてる」
「……!」
真銀。
「泣いてない」
ぽろ。
「泣いてる!」
「……」
「パパ、泣き虫」
「……」
真銀。
「……否定できない」
そして。
クオンが。
部屋へ入ってくる。
「おはよう」
「おにーたん!」
「おはよう!」
「おにーたん!」
「うん!」
クオン。
すっかり。
「おにーたん」で。
定着していた。
レオン。
「おにーたん、今日なにする?」
「……!」
クオン。
「今日は?」
「うん!」
「遊ぶ?」
「遊ぶ!」
シオン。
「おにーたん、一緒に遊ぼう!」
「もちろん!」
クオン。
二人の手を。
それぞれ。
握る。
「どこ行く?」
「庭!」
「庭!」
「じゃあ行こう」
「うん!」
「おにーたん!」
「なに?」
「だいすき!」
「……」
クオン。
固まる。
「……」
千乃。
「クオン?」
「……」
ぽろ。
「また!?」
「嬉しい……」
「まだ泣くの!?」
レオン。
「おにーたん、泣いてる」
「……」
シオン。
「おにーたん、また泣いてる」
「……」
クオン。
「……だって」
「おにーたんって呼ばれるの」
「嬉しいから」
「じゃあ」
「うん?」
「ずっとおにーたんね!」
「……」
「うん!」
クオンは。
満面の笑顔だった。
昼。
食堂。
ララが。
いつもの。
白くてふわふわの。
うさぎ姿で。
「お昼だよー!」
「ララ!」
「……!」
ララ。
「今!」
「ちゃんと!」
「ララって呼んだ!?」
「うん!」
「……!」
レオン。
「ララ、おなかすいた!」
「ごはん!」
シオン。
「ララ、ごはん!」
「もちろん!」
ララ。
ぴょんぴょん。
「いっぱいあるよー!」
「やった!」
「やった!」
ライ。
人型で。
「二人とも」
「食べる前に手を洗えよ」
「はーい!」
「はーい!」
「返事も揃ったな」
アイシィ。
「今日は何を食べますか?」
「パン!」
「スープ!」
「……」
アイシィ。
「二人とも違いますね」
「パン!」
「スープ!」
「それぞれ食べたいものが違うんですね」
「うん!」
「そう!」
柚乃。
「じゃあ」
「二人で交換したら?」
「いいよ!」
「うん!」
レオン。
「シオン、パンあげる」
シオン。
「じゃあ、スープあげる」
「……」
千乃。
「もうそんな会話までできるの!?」
ライ。
「成長が早いな」
ララ。
「主!」
「なに?」
「私も!」
「うん?」
「会話したい!」
「ララはいつもしてるでしょ」
「もっと!」
「何を?」
「もっといっぱい!」
「……」
ララ。
「主!」
「うん」
「大好き!」
「私も大好き」
「……!」
「ララ?」
「……」
ぽろ。
「また!?」
「嬉しい!」
そして。
午後。
カイルが。
食堂へ入ってきた。
「よし!」
「今日も俺のイケメンを……」
「おまけカイル!」
「……」
カイル。
停止。
「……」
レオン。
「おまけカイル!」
シオン。
「おまけカイル!」
「「おまけカイル!」」
「完璧すぎるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
カイル。
膝から崩れる。
「発音まで!」
「綺麗に!」
「揃って!」
「おまけカイルってぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
千乃。
「もう覚えちゃったんだから仕方ないよ」
「仕方なくない!」
真銀。
「……かなり流暢になったな」
「そこを褒めるな!」
シオン。
「カイル」
「……!」
「おまけ」
「うん」
「カイル」
「……!」
カイル。
「……今」
「今、カイルって言ったよな!?」
「うん」
「俺の名前!」
「うん!」
「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
カイル。
立ち上がる。
「ついに!」
「ついに俺の名前を!」
「ちゃんと呼んでもらえた!」
レオン。
「おまけカイル」
「なんで続けるの!?」
シオン。
「おまけカイル」
「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
千乃。
「でも」
「カイルって言えるようになったのは」
「すごいね」
「だろ!?」
「うん」
「じゃあ」
「俺のこと」
「カイルって呼んでくれ!」
二人。
「カイル!」
「カイル!」
「……!」
カイル。
両手を。
広げる。
「これだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
次の瞬間。
「おまけカイル!」
「なんでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
城内。
笑い声。
千乃も。
真銀も。
クオンも。
ララも。
ライも。
アイシィも。
柚乃も。
みんな。
笑っていた。
そして。
レオンとシオンは。
今日も。
新しい言葉を。
一つ。
覚えていく。
「ママ」
「パパ」
「おにーたん」
「柚乃」
「ララ」
「ライ」
「アイシィ」
「ラブリー・スミス」
「カイル」
「おまけカイル!」
「最後だけ余計だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
星氷神城。
今日も。
二人の声で。
賑やかだった。
その日の午後。
星氷神城。
城門前。
「……?」
門番が。
遠くから。
一人の男が。
歩いてくるのを見つけた。
金色の髪。
少しふくよかな体格。
そして。
ものすごく。
自信満々な顔。
「……」
門番。
「……まさか」
男は。
胸を張る。
「ごきげんよう!」
「ユミナリア皇国の」
「次期皇王!」
「パイライト・ユミナリアである!」
「……」
門番。
「帰ってください」
「早い!?」
「千乃様から」
「許可がありません」
「私は!」
「千乃様に会いに来たのだ!」
「それでもです」
「……」
パイライト。
「……柚乃様にも」
「会いたい」
「帰ってください」
「二人とも!?」
その頃。
城内。
千乃の部屋。
「ママ」
「なに?」
レオン。
「外に誰かいる」
「誰?」
「知らない人」
シオン。
「金色の人」
「……」
千乃。
「金色?」
真銀。
「……」
「嫌な予感がする」
その瞬間。
廊下から。
「千乃様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「……」
千乃。
「……聞こえた」
真銀。
「俺も」
レオン。
「誰?」
シオン。
「うるさい人?」
「たぶん」
千乃。
ため息。
「……パイライトだ」
「……」
二人。
顔を見合わせる。
「……」
「……」
「「嫌い」」
千乃。
「即答!?」
そして。
城門。
パイライト。
「千乃様!」
「私は!」
「あなたに会いに!」
その瞬間。
「帰って」
「……」
パイライト。
「……え?」
後ろから。
レオンとシオンが。
とことこ。
歩いてきた。
千乃。
「ちょっと!」
「二人とも!」
「危ないから!」
真銀。
「大丈夫」
「俺がいる」
パイライト。
目を丸くする。
「……」
「この二人は?」
千乃。
「私の子ども」
「……!」
パイライト。
「子ども!?」
「まさか!」
「真銀との!?」
「うん」
「……」
パイライト。
固まる。
「……」
そして。
レオンが。
パイライトを見る。
「…………」
「「嫌い」」
「私に言っているのか!?」
「「うん」」
「即答!?」
パイライト。
なんとか。
笑顔を作る。
「いやいや」
「子どもというのは」
「まだ人を見る目が……」
「帰って」
レオン。
「……」
「え?」
シオン。
「帰って」
「……」
「……」
「「帰って」」
「二人ともぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
千乃。
「すごいハッキリ言うようになったね……」
真銀。
「そこを感心するのか」
パイライト。
「私は!」
「千乃様に!」
「会いに来たのだ!」
「「ママに近づかないで」」
「…………」
パイライト。
完全停止。
「……」
千乃。
「……」
真銀。
「……」
ララ。
いつの間にか。
白いうさぎ姿で。
その場にいる。
「チビデブブス皇子!」
「な、なんだ?」
「主に近づいちゃダメ!」
「ララまで!?」
ライ。
人型で。
「……当然だな」
アイシィも。
人型で。
「ええ」
「二人が嫌がることは」
「しないでください」
パイライト。
「……」
「私は!」
「ただ!」
「千乃様と!」
「柚乃様に!」
「会いに来ただけだ!」
柚乃。
後ろから。
顔を出す。
「……」
パイライト。
「おお!」
「柚乃様!」
「お久しぶりです!」
「……」
柚乃。
千乃を見る。
「お姉ちゃん」
「うん?」
「この人」
「うん」
「嫌い」
「……」
パイライト。
「…………」
柚乃。
「帰って」
「…………」
「お姉ちゃんに近づかないで」
「…………」
パイライト。
「なぜだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
千乃。
「柚乃」
「なに?」
「ちゃんと嫌なことは嫌、と言えるようになったね」
「うん」
「でも」
「うん?」
「今の言葉」
「かなり強いよ?」
「だって」
柚乃。
千乃の隣へ。
「お姉ちゃん」
「困ってるから」
「……」
千乃。
「柚乃……」
真銀。
少しだけ。
笑った。
「姉を守ろうとしてるんだな」
「うん」
レオン。
「ママは」
「ぼくたちが守る」
シオン。
「ママは」
「わたしたちが守る」
千乃。
「……」
「……二人とも」
「大きくなったね」
パイライト。
「待て!」
「私を悪者のように扱うな!」
レオン。
「嫌い」
「また!?」
シオン。
「帰って」
「また!?」
「ママに近づかないで」
「また!?」
レオン。
「おまけ」
パイライト。
「……?」
シオン。
「カイル」
「……」
「カイル?」
千乃。
「今それ関係ないよ!?」
ララ。
「おまけカイル!」
「ララまでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
パイライト。
「……」
「……」
「…………」
「カイル?」
真銀。
「別の男だ」
「……」
パイライト。
「……」
「知らない名前が」
「増えている」
「そこ!?」
パイライト。
改めて。
千乃を見る。
「千乃様」
「私は」
「あなたを…」
「みとめないし!ママに近づくな!風船ブタめ!」
千乃。
「……」
レオン。
「嫌い」
シオン。
「帰って」
柚乃。
「ママに近づかないで」
パイライト。
「…………」
四方向から。
完全拒否。
「…………」
パイライト。
「……」
「私は」
「次期皇王だぞ?」
千乃。
「うん」
「……」
「だから?」
「…………」
真銀。
「帰れ」
「真銀まで!?」
ライ。
「帰れ」
アイシィ。
「お帰りください」
ララ。
「帰ってー!」
クオン。
後ろから。
「おにーたんも」
「……」
「この人、帰ってほしい?」
レオン。
「うん」
シオン。
「うん」
クオン。
「じゃあ」
パイライトを見る。
「帰ってください」
「…………」
パイライト。
完全敗北。
「……」
「……」
「……分かった」
背を向ける。
数歩。
歩く。
そして。
振り返る。
「だが!」
「私は!」
「諦めないぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
レオン。
「嫌い」
シオン。
「帰って」
柚乃。
「ママに近づかないで」
パイライト。
「…………」
今度こそ。
黙って。
歩いていった。
城門が。
閉まる。
「……」
千乃。
「……すごかった」
真銀。
「何が?」
「二人の喋り方」
「うん」
「ちゃんと会話になってた」
レオン。
「ママ」
「うん?」
「守ったよ」
シオン。
「わたしも」
「……」
千乃。
二人を。
ぎゅっ。
「ありがとう」
「でも」
「次からは」
「危ない人には」
「近づかないでね」
「うん!」
「わかった!」
そして。
レオン。
「ママ」
「なに?」
「パイライト」
「うん?」
「嫌い」
「……」
シオン。
「パイライト」
「帰って」
千乃。
「まだ言ってる!?」
真銀。
「……名前まで完璧になった結果」
「これか」
千乃。
「うん……」
星氷神城。
今日も。
二人の会話は。
とても。
上達していた。
ただし。
パイライトにとって。
その上達は。
かなり。
容赦がなかった。




