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事の行方

 その後。


 千乃たちは。


 ユミナリア皇国へ向かうことになった。


 星氷神城アストラルグレイシア


 中庭。


「じゃあ」


 千乃。


「行こうか」


 真銀。


「ああ」


 カイル。


「久しぶりのユミナリア皇国か。いい思い出ないな。」


 ララ。


「また行く!」


 ライ。


「遊びに行くわけではない」


 ララ。


「分かってる!」


 アイシィ。


「今回は事件ですからね」


 カミル。


「気を抜くなよ」


 パイライト。


「当然だ!」


 胸を張る。


「私は次期皇王!」


「自国の危機を前にして!」


「遊んでなどいられん!」


 千乃。


「さっきまで柚乃に」


 パイライト。


「それは別問題だ!」


 カイル。


「別にしろ」


 パイライト。


「何だと!?」


 柚乃。


「二人とも」


「今は事件だから」


 カイル。


「……分かった」


 パイライト。


「……」


 千乃。


「素直だ」


 真銀。


「珍しいな」


 パイライト。


「今回は!」


「本当に!」


「緊急事態だからな!」


 千乃。


「うん」


「そこは分かってる」


 そして。


 千乃は。


 右手を前へ出した。


「……」


 真銀。


「千乃」


 千乃。


「何?」


 真銀。


「また始めるのか?」


 千乃。


「もちろん」


 カイル。


「嫌な予感がする」


 千乃の周囲に。


 淡い光が集まり始める。


 地面に。


 巨大な魔法陣が。


 広がった。


 ララ。


「おお!」


 千乃。


 ゆっくりと。


 口を開く。


「世界の境界を越え」


「遠き地へ続く道よ」


 真銀。


「……」


 カイル。


「……」


 パイライト。


「……」


 千乃。


「我らを導け」


 魔法陣が。


 強く輝く。


「――《星界転移門》」


 カイル。


「普通に格好いい」


 千乃。


「でしょ?」


 真銀。


「……厨二病だな」


 千乃。


「褒め言葉!」


 真銀。


「そうなのか?」


 そして。


 光が。


 全員を包み込んだ。


     ◇


 次の瞬間。


 千乃たちは。


 ユミナリア皇国。


 皇都の中央広場に立っていた。


「……」


 千乃。


「……」


 真銀。


「……」


 カイル。


「……」


 柚乃。


「……」


 ララ。


「……」


 全員。


 言葉を失った。


 広場には。


 人がいた。


 けれど。


 誰も。


 笑っていなかった。


 店は。


 開いている。


 道も。


 いつも通り。


 しかし。


 空気だけが。


 明らかに違っていた。


 子供。


「……」


 母親。


「大丈夫よ」


 けれど。


 その声は。


 震えていた。


 千乃。


「……怖がってる」


 真銀。


「ああ」


 パイライト。


「……」


 いつもの。


 自信満々な顔。


 それが。


 消えていた。


 自分の国。


 自分の民。


 その不安そうな姿を。


 静かに見つめる。


 そして。


「……城へ行く」


 千乃。


「うん」


 カイル。


「調査は?」


 真銀。


「まず情報だ」


 ライ。


「正しい判断だ」


 パイライト。


「当然だ」


 ララ。


「ちょっとかっこいい!」


 パイライト。


「ちょっと?」


 千乃。


「今だけね」


 パイライト。


「なぜだ!?」


 そんな時。


 広場の端で。


 一人の女性が。


 突然。


「……え?」


 千乃。


「?」


 女性の身体が。


 淡く。


 黒く。


 光り始めた。


 真銀。


「千乃!」


 千乃。


「分かってる!」


 全員が。


 女性を見る。


「な、何!?」


「いや……!」


「助け……!」


 次の瞬間。


 女性の足元に。


 黒い魔法陣が。


 現れた。


 パイライト。


「何だ、あれ!?」


 千乃。


「魔法陣……?」


 真銀。


「転移系か?」


 女性。


「いやあああああああああああああああああ!!」


 千乃。


 すぐに。


 手を伸ばした。


「――《星の箱》!」


 光が。


 女性へ向かう。


 しかし。


 触れる前に。


 黒い魔法陣が。


 強く光った。


 バシュッ!!


 女性。


「……!」


 そして。


 消えた。


 全員。


「……」


 千乃。


「……間に合わなかった」


 カイル。


「目の前で……」


 パイライト。


「……」


 周囲。


 悲鳴。


「まただ!」


「誰か消えた!」


「逃げろ!」


 人々が。


 一斉に。


 その場を離れ始めた。


 千乃。


「待って!」


 しかし。


 誰も。


 止まらない。


 恐怖。


 それだけが。


 広場を支配していた。


 真銀。


「千乃」


 千乃。


「うん」


 真銀。


「あれを調べよう」


 千乃。


「……魔力の残滓」


 千乃は。


 女性がいた場所へ。


 近づく。


 そして。


 地面に。


 手をかざした。


「……」


 黒い。


 魔力。


 わずかに。


 残っている。


 千乃。


「……変」


 真銀。


「何が?」


 千乃。


「これ」


「転移魔法じゃない」


 パイライト。


「何?」


 千乃。


「……」


 魔力を。


 さらに。


 探る。


「転移なら」


「移動先へ繋がる魔力が残る」


 真銀。


「ああ」


 千乃。


「でも」


「これは」


 カイル。


「何だ?」


 千乃。


 ゆっくり。


 顔を上げる。


「……」


「どこにも」


「繋がってない」


 全員。


「……?」


 ライ。


「意味が分からん」


 アイシィ。


「消えた方たちは」


「どこへ行っているんでしょうか……」


 その時。


 カミル。


「……待て」


 千乃。


「?」


 カミル。


 地面を。


 じっと。


 見つめる。


「これは」


「魔力ではない」


 真銀。


「何?」


 カミル。


「……似ている」


 千乃。


「何に?」


 カミル。


「神の力に」


 千乃。


「……」


 真銀。


「……」


 カイル。


「……」


 ララ。


「神?」


 カミル。


「だが」


「違う」


 千乃。


「違う?」


 カミル。


「我が知る神の力とは」


「何かが違う」


 カミルの表情が。


 険しくなる。


「……これは」


「何者かが」


「神の力を」


「無理やり真似している」


 千乃。


「……」


 その言葉。


 千乃の背中に。


 冷たいものが走った。


 そして。


 その時。


 遠く。


 路地裏。


「……」


 黒い影が。


 千乃たちを見ていた。


 その手。


 黒い結晶石。


「……」


 影は。


 小さく。


 笑う。


「一人」


「目撃者が増えた」


 結晶石が。


 淡く。


 光る。


「だが」


「問題ない」


 影。


「次は」


 千乃を見つめる。


「お前たちにも」


「見せてやる」


 その瞬間。


 皇都の。


 遠く。


 鐘が鳴った。


 ゴォォォォォォン……。


 パイライト。


「……」


 千乃。


「何?」


 パイライト。


 顔を上げる。


「……皇城の鐘だ」


 真銀。


「何を知らせる鐘だ?」


 パイライト。


「……」


 一瞬。


 黙る。


「皇族が」


「緊急招集をかける時の鐘だ」


 千乃。


「じゃあ」


 パイライト。


「ああ」


「城へ急ぐ」


 しかし。


 千乃。


「待って」


 パイライト。


「何だ」


 千乃。


「……」


 先ほど。


 女性が消えた場所。


 そこを。


 じっと見る。


「これ」


「誰かが」


「魔法を発動させてる」


 真銀。


「つまり?」


 千乃。


「……」


「犯人は」


「この皇都の中にいる」


 その言葉に。


 全員。


 表情を変えた。


 遠く。


 どこかで。


 黒い結晶石が。


 また一つ。


 光った。


 そして。


 千乃たちは。


 まだ知らなかった。


 この事件が。


 ただの誘拐でも。


 失踪でもないことを。


 消えた人々が。


 どこへ行ったのか。


 そして。


 黒い結晶石を。


 使っている者が。


 何を。


 目的としているのか。


 その答えは。


 まだ。


 誰にも。


 分からなかった。


 ユミナリア皇国。


 皇城。


 会議室。


 重い空気が。


 部屋を包んでいた。


 長い机。


 その周囲には。


 皇帝。


 皇后。


 そして。


 複数の大臣たち。


 千乃たちも。


 部屋の中にいた。


 千乃。


「……」


 真銀。


「……」


 カイル。


「……」


 柚乃。


「……」


 ララ。


「……」


 ライ。


「……」


 アイシィ。


「……」


 カミル。


「……」


 パイライト。


「……」


 皇帝。


「……では」


 低い声。


「現状を報告せよ」


 一人の騎士が。


 前へ進む。


「はい」


「本日」


「皇都内で確認された失踪者は」


 資料を見る。


「二十三名」


 千乃。


「……二十三人」


 真銀。


「一日でか」


 騎士。


「はい」


 カイル。


「多すぎる」


 皇后。


「昨日までにも」


「既に」


「十一名」


「行方不明になっています」


 千乃。


「合計」


「三十四人……」


 パイライト。


「……」


 拳を。


 強く握る。


 皇帝。


「共通点は」


 騎士。


「現在」


「調査中です」


 千乃。


「……」


 真銀。


「……」


 騎士。


「ただ」


 全員。


「?」


 騎士。


「一つだけ」


「奇妙な点があります」


 皇帝。


「言え」


 騎士。


「はい」


 資料を。


 一枚。


 机の上へ置く。


「失踪した者の中には」


「貴族」


「商人」


「兵士」


「一般市民」


「子供」


「老人」


 千乃。


「……バラバラだね」


 騎士。


「はい」


「身分」


「年齢」


「性別」


「職業」


「全て」


「共通点がありません」


 真銀。


「……」


 ライ。


「無差別か」


 アイシィ。


「それなら」


「犯人の目的は何なのでしょう……」


 騎士。


「ですが」


 資料を。


 もう一枚。


 取り出す。


「唯一」


「共通するものがあります」


 全員。


「?」


 騎士。


「失踪者全員」


「一週間以内に」


「同じ場所を通っています」


 千乃。


「同じ場所?」


 騎士。


「はい」


「皇都中央」


「旧大聖堂前の通りです」


 パイライト。


「……旧大聖堂?」


 皇帝。


「封鎖されているはずだ」


 騎士。


「はい」


「現在は」


「誰も使用していません」


 千乃。


「なんで?」


 騎士。


「十年前」


「原因不明の魔力暴走が起きました」


 真銀。


「魔力暴走?」


 騎士。


「はい」


「大聖堂の地下から」


「突然」


「強大な魔力が噴き出し」


「建物の一部が崩壊」


「多数の負傷者が出ました」


 カイル。


「……」


 騎士。


「その後」


「調査が行われましたが」


「原因は不明」


「地下は」


「完全に封鎖されました」


 千乃。


「……」


 パイライト。


「俺も」


「中に入ったことはない」


 千乃。


「……怪しい」


 真銀。


「ああ」


 ララ。


「怪しい!」


 ライ。


「単純だな」


 ララ。


「でも怪しい!」


 千乃。


「今回はララが正しいと思う」


 ララ。


「やった!」


 皇帝。


「……」


 千乃たちを見る。


「星霜王国の者たちよ」


 千乃。


「?」


 皇帝。


「この件」


「協力を頼めるか」


 千乃。


「……」


 一瞬。


 パイライトを見る。


 そして。


「うん」


「もちろん」


 パイライト。


「千乃様」


 千乃。


「何?」


 パイライト。


「……ありがとう」


 千乃。


「……」


 真銀。


「……」


 カイル。


「……」


 全員。


「……」


 千乃。


「珍しい」


 パイライト。


「何だと!?」


 千乃。


「何でもない」


 皇帝。


「では」


「旧大聖堂を調査せよ」


 騎士。


「しかし陛下!」


「地下は危険です!」


 皇帝。


「だからこそ」


「彼らに頼む」


 千乃。


「……?」


 皇帝。


「神龍」


「勇者」


「災害級魔物」


「そして」


 千乃を見る。


「神に近い力を持つ者」


 千乃。


「……」


 皇帝。


「これほど」


「頼りになる者たちは」


「他にいない」


 カイル。


「……」


 少しだけ。


 胸を張る。


 ララ。


「ララたち」


「すごい!」


 ライ。


「今さらだな」


 アイシィ。


「少し緊張しますね……」


 カミル。


「問題ない」


 真銀。


「千乃」


 千乃。


「うん」


 真銀。


「行こう」


 千乃。


「あ」


 真銀。


「?」


 千乃。


「でも」


 カイル。


「何だ?」


 千乃。


「旧大聖堂って」


「どうやって行くの?」


 パイライト。


「俺が案内する」


 千乃。


「分かった!」


 その時。


 会議室の扉。


 コンコン。


「失礼します」


 騎士が。


 部屋へ入ってきた。


 その表情。


 青ざめていた。


 皇帝。


「何だ」


 騎士。


「……緊急報告です」


 全員。


「?」


 騎士。


「先ほど」


「皇城内で」


「一名」


「消えました」


 部屋。


 沈黙。


 千乃。


「……え?」


 真銀。


「皇城の中で?」


 騎士。


「はい」


 皇帝。


「誰だ」


 騎士。


「……」


 一瞬。


 騎士は。


 パイライトを見る。


 パイライト。


「……?」


 騎士。


「殿下付きの」


「侍女です」


 パイライト。


「……!」


 カイル。


「目の前で?」


 騎士。


「いえ」


「部屋にいたはずですが」


「気づいた時には」


「消えていました」


 千乃。


「……」


 真銀。


「……」


 パイライト。


「……」


 そして。


 千乃。


「……犯人」


「近い」


 真銀。


「ああ」


 その瞬間。


 会議室。


 パチン。


 小さな音。


 千乃。


「?」


 机の上。


 何かが。


 転がっていた。


 黒い。


 小さな結晶石。


 千乃。


「……!」


 真銀。


「触るな!」


 千乃。


「うん」


 千乃は。


 手を伸ばす。


 しかし。


 直接。


 触れない。


 空中に。


 淡い光。


「――《星の糸》」


 細い。


 光の糸が。


 黒い結晶石を。


 絡め取る。


 そして。


 ゆっくり。


 千乃の前へ。


 持ち上げた。


 真銀。


「……これが」


 千乃。


「うん」


「たぶん」


 パイライト。


「……」


 黒い結晶石。


 次の瞬間。


 淡く。


 光った。


 千乃。


「!」


 真銀。


「千乃!」


 千乃。


「大丈夫!」


 光が。


 強くなる。


 そして。


 突然。


 部屋の中央に。


 黒い文字が。


 浮かび上がった。


『 ミツケタ 』


 全員。


「……」


 ララ。


「……」


 ライ。


「……」


 アイシィ。


「……」


 カミル。


「……」


 カイル。


「……」


 柚乃。


「……」


 千乃。


「……」


 真銀。


「……」


 パイライト。


「……」


 皇帝。


「……」


 皇后。


「……」


 そして。


 黒い結晶石。


 パキッ。


 砕けた。


 千乃。


「……」


 その破片を。


 見つめる。


 真銀。


「……何を見つけた」


 千乃。


「……」


 少しだけ。


 顔を上げる。


「私たち」


 全員。


「……?」


 千乃。


「……」


「見つけられてる」


 その言葉。


 会議室の空気が。


 さらに。


 冷たくなった。


 そして。


 誰も気づかなかった。


 会議室の窓。


 その外。


 遠く。


 黒い影が。


 静かに。


 千乃たちを。


 見つめていたことを。


 影。


「……」


 小さく。


 笑う。


「ようやく」


「こちらを」


「見てくれた」


 そして。


 その姿は。


 闇の中へ。


 溶けるように。


 消えた。

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