いい加減にしましょうね? 4
ユミナリア皇城。
地下から続く。
長い廊下。
千乃たちは。
パイライトを探していた。
……探していたのだが。
「パイライトー」
「どこー?」
千乃。
白髪。
深紅の瞳。
鬼月姫の姿のまま。
普通に。
廊下を歩いている。
真銀。
「千乃」
「なに?」
「その探し方」
「どうかと思う」
千乃。
「え?」
「だって」
「探してるんだから」
「呼んだ方が早いかなって」
真銀。
「本人が」
「返事すると思うか?」
千乃。
「……」
「しないか」
ライ。
「するわけないだろ」
ララ。
「主!」
「ララも呼ぶ!」
「やめろ」
千乃。
「じゃあ」
「真銀」
「なに?」
「探して」
真銀。
「雑だな」
千乃。
「探知魔法使えるでしょ?」
真銀。
「……使える」
「じゃあお願い」
真銀。
「分かった」
真銀。
その場で。
足を止める。
静かに。
目を閉じた。
「「「「「「「……」」」」」」」
「……何を」
「するつもりですの?」
真銀。
「探知魔法」
エリシア。
「そんなもの」
「簡単に見つかるはずが……」
真銀。
「……」
手を。
ゆっくり。
前へ出す。
淡い光。
指先から。
ふわっ。
広がる。
細い。
光の波。
廊下を。
通り抜け。
壁を。
すり抜け。
皇城の奥へ。
さらに。
さらに。
広がっていく。
真銀。
「……」
千乃。
「どう?」
「静かに」
「はーい」
「…………」
真銀。
探知魔法。
さらに。
広がる。
皇城。
一階。
二階。
三階。
地下。
塔。
廊下。
部屋。
そのすべてを。
探していく。
真銀。
「……」
ララ。
「……」
柚乃。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「…………」
「……ふん」
千乃。
「なに?」
エリシア。
「弟は」
「簡単には」
「見つかりませんわ」
千乃。
「そう?」
エリシア。
「ええ」
真銀。
「……」
その瞬間。
ぱちっ。
真銀。
目を開ける。
「見つけた」
エリシア。
「……」
千乃。
「早っ!?」
真銀。
「東側の塔」
「三階」
「……!」
千乃。
「どんな場所?」
真銀。
「大きな部屋」
「……誰かいる?」
真銀。
「パイライトだけ」
エリシア。
「……!」
「そんな……!」
千乃。
「じゃあ」
「行こっか」
エリシア。
「ちょっと待ちなさい!」
千乃。
「なに?」
「パイライトの場所が」
「分かったからって!」
「そのまま!」
「行くつもりですの!?」
千乃。
「うん」
エリシア。
「罠かもしれませんわ!」
千乃。
「じゃあ」
「エリシアも一緒に行けばいいよ」
エリシア。
「……」
「…………」
「それは」
「罠の説明になってませんわ!」
千乃。
「じゃあ」
「行こう」
エリシア。
「人の話を聞きなさい!」
千乃。
くるっ。
真銀。
「……」
「千乃」
「なに?」
「東側の塔」
「結構遠いぞ」
千乃。
「そっか」
真銀。
「……」
「…………」
「歩くのか?」
千乃。
「歩くよ」
「え?」
真銀。
「え?」
千乃。
「鬼月姫なんだから」
「飛べるだろ」
千乃。
「……」
柚乃。
「……」
ララ。
「……」
ライ。
「……」
アイシィ。
「……」
千乃。
「……」
「…………」
「そうだった」
真銀。
「忘れるなよ」
千乃。
「じゃあ」
「行ってくるね」
真銀。
「待て」
千乃。
「なに?」
「俺たちは?」
千乃。
「……」
魔法の糸。
エリシア。
「……」
千乃。
「……」
全員を見る。
「一緒に飛ぶ?」
ララ。
「飛ぶ!」
ライ。
「俺は別に」
ララ。
「飛ぶ!」
ライ。
「……分かった」
柚乃。
「私も!」
アイシィ。
「わたしも」
真銀。
「……」
千乃。
「真銀は?」
真銀。
「……」
「…………」
「飛ばされるのは」
「もう嫌だ」
千乃。
「今回は」
「普通に抱えていくよ」
真銀。
「それも」
「ちょっと嫌だ」
千乃。
「なんで!?」
エリシア。
「……」
「…………」
「わたくしも」
「飛ばすつもりですの?」
千乃。
「もちろん」
エリシア。
「もちろん!?」
千乃。
「大丈夫」
「魔法の糸で」
「固定するから」
エリシア。
「安心できませんわ!」
千乃。
「じゃあ」
「歩く?」
エリシア。
「……」
「…………」
「飛びますわ」
千乃。
「決まり」
真銀。
「何がだ」
千乃。
そのまま。
少し。
地面から浮く。
ふわっ。
柚乃。
「お姉ちゃん」
「うん?」
「どうやって」
「全員運ぶの?」
千乃。
「魔法」
「便利だね」
真銀。
「便利すぎるだろ」
千乃。
「褒めてる?」
「褒めてない」
千乃。
魔法。
淡い光。
全員の身体を。
優しく。
包み込む。
ふわっ。
ララ。
「浮いた!」
ライ。
「……」
アイシィ。
「便利ですね」
柚乃。
「すごい!」
真銀。
「……」
エリシア。
「……」
魔法の糸。
さらに。
きゅっ。
千乃。
「じゃあ」
「行くよ」
エリシア。
「待ちなさい!」
千乃。
「なに?」
「せめて」
「もう少し」
「ゆっくり……!」
千乃。
「大丈夫」
「安全運転」
真銀。
「その状態で」
「安全運転という言葉を使うな」
千乃。
「行きまーす!」
次の瞬間。
全員。
ふわっ。
廊下を。
滑るように。
進み始めた。
ララ。
「わあああああああ!」
柚乃。
「速い速い速い!」
ライ。
「千乃!」
「もう少し」
「速度を落とせ!」
アイシィ。
「千乃さん!」
「壁です!」
千乃。
「大丈夫」
すっ。
壁の直前。
全員。
ぴたっ。
停止。
真銀。
「……」
「心臓に悪い」
千乃。
「ごめん」
エリシア。
「……」
「…………」
「安全運転とは」
「一体」
千乃。
「安全に」
「運転してたよ」
エリシア。
「飛んでますわ!」
千乃。
「細かいことは」
「気にしない」
真銀。
「そこは」
「気にしろ」
千乃。
「じゃあ」
「東側の塔」
「行こっか」
白い髪。
深紅の瞳。
鬼月姫。
千乃。
先頭に立つ。
その後ろ。
真銀。
柚乃。
ララ。
ライ。
アイシィ。
そして。
魔法の糸で。
確保された。
エリシア。
向かう先は。
東側の塔。
三階。
そこには。
ユミナリア皇国の次期皇王。
パイライト。
千乃。
「今度こそ」
「見つけた」
エリシア。
「……」
千乃。
にこっ。
「行こう」
千乃。
「……」
真銀。
「……」
千乃。
「……あ」
真銀。
「?」
千乃。
「ゲート開けばよくない?」
真銀。
「……」
柚乃。
「……」
ララ。
「……」
ライ。
「……」
アイシィ。
「……」
エリシア。
「……」
真銀。
「今」
「気づいたのか?」
千乃。
「うん」
真銀。
「さっきまで」
「全員浮かせて」
「廊下を移動していたのは?」
千乃。
「忘れてた」
真銀。
「……」
ライ。
「……」
「アホか」
千乃。
「ひどい」
柚乃。
「お姉ちゃん」
「さっきから飛ぶ方法とか」
「色々考えてたよね」
千乃。
「考えてた」
「じゃあ」
「なんで」
「ゲートの存在を忘れるの?」
千乃。
「……」
「…………」
「厨二病だから?」
真銀。
「意味が分からない」
千乃。
「じゃあ」
「ゲート開くね」
真銀。
「その前に」
「待て」
千乃。
「なに?」
「普通に」
「開くな」
千乃。
「?」
真銀。
「嫌な予感がする」
千乃。
「なんで?」
真銀。
「お前」
「今」
「厨二病って言っただろ」
千乃。
「言ったよ」
真銀。
「……」
千乃。
「せっかくだから」
真銀。
「せっかくだから?」
千乃。
「厨二病で開く」
真銀。
「ほらな」
千乃。
すっ。
右手を前へ。
差し出した。
白い髪。
深紅の瞳。
鬼月姫。
千乃。
静かに。
目を閉じる。
「……」
柚乃。
「お姉ちゃん?」
千乃。
「静かに」
ララ。
「はい!」
真銀。
「始まったな」
千乃。
右手。
人差し指を。
ゆっくり。
持ち上げる。
「世界と世界の狭間」
「光と闇の境界」
真銀。
「……」
ライ。
「……」
アイシィ。
「……」
千乃。
指先。
淡い光。
きらっ。
「我が求める場所は」
「遥か彼方にあり」
「されど」
「我の前に道は存在する」
ララ。
「主!」
「かっこいい!」
千乃。
「でしょ?」
真銀。
「まだ詠唱中だ」
千乃。
「ごめん」
千乃。
再び。
真顔。
指先。
空中へ。
すっ。
線を描く。
光。
そこに。
一つ。
円。
さらに。
複雑な。
幾何学模様。
魔法陣。
きらきらと。
空中に。
浮かび上がる。
「時空を越え」
「我らを導け」
魔法陣。
回転。
ゆっくり。
そして。
少しずつ。
速くなる。
「開け」
千乃。
深紅の瞳を。
開いた。
「――《境界転移門》」
どんっ。
魔法陣。
強く。
光る。
次の瞬間。
目の前の空間。
ぐにゃり。
歪む。
そこに。
巨大な。
円形のゲート。
現れた。
向こう側。
見える。
東側の塔。
三階。
真銀。
「……」
千乃。
「どう?」
真銀。
「普通に開けばよかった」
千乃。
「えー」
ララ。
「主!」
「めっちゃかっこよかった!」
千乃。
「でしょ?」
ライ。
「……」
「一番喜んでいるのは」
「お前だな」
千乃。
「うん」
真銀。
「認めるんだな」
千乃。
「厨二病だから」
真銀。
「便利な言葉じゃない」
千乃。
「じゃあ」
「行こっか」
真銀。
「待て」
千乃。
「なに?」
真銀。
「確認」
「ちゃんと」
「パイライトがいる場所なんだな?」
千乃。
「真銀が探知した場所」
「うん」
真銀。
「間違いない」
千乃。
「じゃあ」
「行こー!」
千乃。
一歩。
ゲートへ。
ララ。
「主ー!」
「待ってー!」
ぴょんっ!
真銀。
「走るな!」
ライ。
「お前も」
「ゲートに飛び込むな」
アイシィ。
「普通に歩きましょう」
柚乃。
「はーい!」
千乃。
「エリシアは」
「どうする?」
エリシア。
「……」
「…………」
「連れて行かないという」
「選択肢は?」
千乃。
「ないよ」
エリシア。
「でしょうね!」
魔法の糸。
ふわっ。
エリシア。
そのまま。
ゲートへ。
「ちょっと!」
「せめて自分で歩かせなさい!」
千乃。
「歩ける?」
エリシア。
「歩けますわ!」
千乃。
「じゃあ歩いて」
エリシア。
「……」
千乃。
「どうしたの?」
「……」
「…………」
「本当に」
「歩かせますの?」
千乃。
「うん」
エリシア。
「意外ですわね」
千乃。
「でも」
「魔法の糸は外さないよ」
エリシア。
「ですよね」
真銀。
「もう行くぞ」
千乃。
「はーい」
千乃。
先頭。
真銀。
その隣。
柚乃。
ララ。
ライ。
アイシィ。
そして。
魔法の糸に。
確保された。
エリシア。
全員。
ゲートへ。
一歩。
踏み込む。
その瞬間。
視界。
白く。
染まった。
ふわっ。
身体が。
軽くなる。
そして。
次の瞬間。
光。
消える。
そこは。
東側の塔。
三階。
大きな。
扉の前。
真銀。
「……」
千乃。
「着いた」
ララ。
「はやっ!」
ライ。
「さっきまでの移動は」
「何だったんだ」
千乃。
「忘れて」
真銀。
「忘れられるか」
千乃。
扉を見る。
その向こう。
真銀の探知魔法。
確かに。
パイライトの気配。
千乃。
「……いるね」
真銀。
「ああ」
柚乃。
「どうする?」
千乃。
「普通に入る」
真銀。
「普通に?」
千乃。
「うん」
真銀。
「……」
「それが一番不安だ」
千乃。
「大丈夫」
千乃。
「さっきも」
「安全運転って言ってた」
真銀。
「まだ引きずってるのか」
千乃。
「引きずるよ」
ララ。
「主!」
「早く行こう!」
千乃。
「うん」
真銀。
「……」
「待て」
千乃。
「なに?」
「お前が」
「先頭に立つな」
千乃。
「えー」
真銀。
「俺が先に入る」
千乃。
「分かった」
真銀。
扉へ。
手を伸ばす。
千乃。
「真銀」
「なに?」
「気をつけてね」
真銀。
「千乃こそ」
「うん」
そして。
真銀。
扉を。
ゆっくり。
開けた。
ぎぃぃ。
その先。
大きな部屋。
そして。
窓の近く。
一人。
立っている。
金髪。
翡翠色の瞳。
パイライト。
千乃。
「……」
白い髪。
深紅の瞳。
鬼月姫のまま。
一歩。
部屋へ。
入る。
パイライト。
「……」
ゆっくり。
振り返る。
「誰だ?」
千乃。
「久しぶり」
パイライト。
「……?」
千乃。
「千乃だよ」
パイライト。
「……」
「…………」
「……は?」
エリシア。
「……」
千乃。
「……」
真銀。
「……」
柚乃。
「……」
ララ。
「……」
ライ。
「……」
アイシィ。
「……」
パイライト。
千乃の姿。
じっと。
見つめる。
「……」
「…………」
「……誰?」
千乃。
「千乃」
パイライト。
「……」
「…………」
「誰?」
千乃。
「千乃!」
パイライト。
「だから!」
「誰だ!?」
千乃。
「……」
真銀。
「……」
千乃。
「真銀」
「なに?」
「分かってくれない」
真銀。
「今の姿だと」
「仕方ないだろ」
千乃。
「えー」
パイライト。
「……」
エリシアを見る。
「姉上?」
エリシア。
「……」
パイライト。
「何故」
「そこに……」
エリシア。
「それは」
「わたくしが聞きたいですわ!」
千乃。
「……」
にこっ。
「パイライト」
パイライト。
「……」
千乃。
「話」
「しようか」
真銀。
「千乃」
「なに?」
「その笑顔」
「やめろ」
千乃。
「えー」
そして。
大きな部屋。
静かになる。
白髪。
深紅の瞳。
鬼月姫。
千乃。
その前。
パイライト。
そして。
捕まった。
エリシア。
ついに。
二人の。
嫌がらせ計画。
その首謀者たちが。
同じ場所に。
揃った。
千乃。
「さて」
「話そうか」
にこっ。




