いい加減にしましょうね? 2
星霜王国。
国境付近。
千乃。
柚乃。
真銀。
ララ。
ライ。
アイシィ。
六人は。
ユミナリア皇国へ向かっていた。
先頭。
千乃。
その隣。
柚乃。
黒マント。
ばさっ。
ばさっ。
右と左。
眼帯。
右と左。
包帯。
そして。
二人とも。
笑顔。
真銀。
「……」
ライ。
「……」
アイシィ。
「……」
ララ。
「……」
後ろの四人。
同時に。
思っていた。
――怖い。
ララ。
「主ー」
「なに?」
「……」
「ほんとに」
「怒ってない?」
千乃。
「怒ってないよ?」
にこっ。
柚乃。
「私も怒ってないよ?」
にこっ。
ララ。
「……」
「…………」
「うん」
「怒ってるね」
「「なんで!?」」
「二人とも!」
千乃と柚乃。
顔を見合わせる。
「……」
「……」
「「なんで?」」
ララ。
「ハモった!」
ライ。
「そこじゃない」
真銀。
「もう」
「今さら言っても無駄だ」
アイシィ。
「諦めが早いですね」
「経験だ」
その時。
千乃。
ぴたっ。
立ち止まった。
柚乃。
「どうしたの?」
「……」
千乃。
笑顔のまま。
空を見る。
「……」
「なに?」
真銀。
「何か見えるか?」
「うん」
千乃。
指を。
遠くへ向ける。
「あれ」
全員。
見る。
「……?」
ララ。
「何?」
千乃。
「ユミナリアの」
「偵察兵」
真銀。
「え?」
ライ。
「もう?」
千乃。
「多分」
柚乃。
「こっち見てる?」
「見てる」
「……」
柚乃。
にこっ。
「じゃあ」
「聞こうか」
真銀。
「待て」
柚乃。
「なに?」
「その笑顔で」
「聞くって言うな」
「なんで?」
千乃。
「……」
「…………」
「なんか」
「怪しまれるよ?」
真銀。
「今さらか?」
ライ。
「今さらだ」
アイシィ。
「今さらですね」
ララ。
「今さら!」
千乃。
「えー」
その頃。
少し離れた場所。
ユミナリア皇国。
国境警備の兵士。
「……」
「……」
「…………」
「何だ」
隣。
「何がだ」
「あれ」
「どれ」
兵士。
遠くを見る。
黒。
黒。
黒。
「……」
「……」
「…………」
「黒マントが」
「二人いる」
「見れば分かる」
「しかも」
「左右が逆だ」
「……」
「…………」
「何なんだ」
千乃。
柚乃。
二人。
こちらへ。
歩いてくる。
その後ろ。
真銀たち。
兵士。
「……」
「……」
「…………」
「待て」
「なに?」
「あの後ろ」
「真銀じゃないか?」
「……」
兵士。
目を細める。
「……」
「…………」
「……本当だ」
もう一人。
「じゃあ」
「前の二人は」
「……」
千乃。
にこっ。
柚乃。
にこっ。
兵士。
「……」
「…………」
「千乃様と」
「柚乃様」
「……」
「…………」
「なんで」
「そんな格好なんだ?」
「兵士さーん、聞こえてるよー」
「!?」
兵士。まさか聞こえっていたとは思ってもいなかったため、顎が外れそうな勢いで口が空いている。
「すっごく」
「聞こえてるよー」
兵士。
「!?」
距離。
かなりある。
兵士。
「……」
「…………」
「聞こえる距離か?」
「神の妹だから⋯?」
千乃。
にこっ。
兵士。
「誰も話していない!」
千乃。
「そう?」
柚乃。
「そういうところ」
「お姉ちゃんだよね」
千乃。
「柚乃もね」
「そう?」
「そう」
そして。
二人は。
国境の前へ。
到着した。
兵士たち。
固まる。
「……」
「……」
「…………」
「千乃様」
千乃。
「はい」
にこっ。
「柚乃様」
柚乃。
「はい」
にこっ。
兵士。
「……」
「…………」
「ご用件を」
「お聞きしても?」
千乃。
「犯人探し」
兵士。
「……」
「…………」
「犯人?」
柚乃。
「お姉ちゃんの声を」
「私の声を」
「「勝手に使った人」」
「……」
「…………」
兵士。
「……?」
千乃。
「音声結晶石」
「へぇー、お姉ちゃんの声使った犯人知ってるんだ?」
兵士。
「……」
顔色が変わった。
さぁーっと死人のように青白くなる。
「「「「……」」」」
千乃。
にこっ。
「知ってるんだ」
兵士。
「い、いや!」
「知らない!」
柚乃。
「へえ」
千乃。
「そうなんだ」
兵士。
「……」
「…………」
柚乃。
「じゃあ」
「なんで」
「顔色変わったの?」
兵士。
「……」
「…………」
「暑いからだ!」
ララ。
「おかしいよ?」
ライ。
「無理がある」
アイシィ。
「無理がありますね」
真銀。
「自分から怪しくなってるぞ」
兵士。
「……!」
千乃。
少し。
首を傾げる。
「大丈夫だよ」
にこっ。
「私たち」
「ただ」
「犯人を探してるだけだから」
兵士。
「……」
「…………」
千乃。
「犯人じゃなければ」
「怖がる必要ないよね?」
兵士。
「……」
「…………っ」
「そ、そそそそそそそそ、そうだな」
千乃。
「うん」
柚乃。
「じゃあ」
「通して?」
兵士。
「……」
「…………」
「いや」
「それは」
「その」
「入国の」
「手続きが」
千乃。
「……」
笑顔。
真銀。
「……」
「千乃」
「なに?」
「笑顔が」
「怖い」
「なんで?」
「なんで?」
千乃と柚乃。
「「なんで?」」
兵士。
「ハモった!?」
ララ。
「そこ?」
兵士。
「怖い!」
千乃。
「大丈夫」
「殺さないよ」
柚乃。
「多分」
全員。
「「「「「「そこじゃない!!」」」」」」
兵士。
「……」
「…………」
「……お通りください」
千乃。
「ありがとう」
にこっ。
柚乃。
「ありがとう」
にこっ。
黒マント。
ばさっ。
ばさっ。
二人。
堂々と。
ユミナリア皇国へ。
入国。
その後ろ。
真銀。
「……」
「俺」
「本当に」
「ついてきてよかったのか?」
ライ。
「今さら帰る気か?」
「……」
「…………」
「帰れないな」
ララ。
「主が二人いる!」
「違う」
「片方は柚乃だ」
「分かってるよ!」
アイシィ。
「真銀さん」
「はい」
「お気を確かに」
「……」
「…………」
「それ」
「俺に言う言葉か?」
その頃。
ユミナリア皇国。
皇城。
パイライト。
机の前。
「……」
「……」
「…………」
「姉上」
「なに?」
「……」
「…………」
「国境の兵から」
「報告が来ましたぞ」
エリシア。
「何ですの?」
パイライト。
通信結晶石を見る。
「……」
「…………」
「千乃と」
「柚乃が」
「黒マントで」
「入国したそうです」
エリシア。
「……」
「…………」
「……」
パイライト。
「……」
「…………」
「……」
エリシア。
「……弟」
「はい」
「なぜ」
「黒マント?」
「知りませんぞ!?」
「……」
「…………」
パイライト。
「でも」
「片方は」
「左目眼帯」
「右腕包帯」
「もう片方は」
「右目眼帯」
「左腕包帯」
エリシア。
「……」
「…………」
「双子ですもの」
「左右くらい」
「揃えたんじゃない?」
パイライト。
「そこは」
「普通なんですな」
「……」
「…………」
「弟」
「はい」
「逃げる?」
パイライト。
「……」
「…………」
「私は」
「次期皇王ですぞ」
「そうね」
「堂々と」
「しますぞ」
「ええ」
「……」
「…………」
「逃げる?」
「逃げますわ」
「ブヒッ!?」
エリシア。
「だから!」
「今!」
「鳴くところじゃありませんわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ユミナリア皇国。
城下町。
千乃。
柚乃。
二人の黒マントが。
ばさっ。
ばさっ。
大通りを歩いていた。
その後ろ。
真銀。
ララ。
ライ。
アイシィ。
そして。
なぜか。
少し離れて。
歩いている。
真銀。
「……」
千乃。
「真銀?」
「なに?」
「なんで」
「そんなに離れてる?」
「……」
「…………」
「なんとなく」
千乃。
「ふーん」
にこっ。
真銀。
「近づく」
千乃。
「なんで?」
「「なんとなく」」
「俺の真似するな」
「似た者夫婦?」
「今は違う」
柚乃。
「お兄ちゃん」
「大丈夫?」
真銀。
「何が?」
「顔」
「若干」
「死んでるよ?」
「元気だ」
ライ。
「嘘だな」
「何で分かる」
「分かる」
アイシィ。
「分かります」
ララ。
「分かる!」
真銀。
「……」
「…………」
「全員」
「俺の何なんだ」
その時。
道端。
子どもが。
小さな結晶石を。
拾い上げていた。
「ママー!」
「これ何ー?」
千乃。
ぴたっ。
止まる。
柚乃。
ぴたっ。
止まる。
真銀。
「……」
ララ。
「……」
ライ。
「……」
アイシィ。
「……」
全員。
察した。
結晶石。
淡く。
光る。
『みんないらない! 消えればいいのに』
子ども。
「……」
「……?」
「千乃様の声?」
母親。
はっとする。
「ちょっ……!」
千乃。
ゆっくり。
子どもへ近づく。
こつ。
こつ。
こつ。
黒マント。
ばさっ。
ばさっ。
子ども。
「……?」
千乃。
「それ」
「どこで」
「拾ったの?」
にこっ。
子ども。
「……」
母親。
「……」
子ども。
「えっと」
「あっち!」
指。
一本。
路地の奥。
千乃。
「そう」
にこっ。
「ありがとう」
柚乃。
「ありがとね」
にこっ。
子ども。
「……」
「……?」
母親。
「……」
「…………」
「千乃様」
千乃。
「はい?」
「その」
「結晶石の声」
千乃。
「ああ」
「偽物だよ」
母親。
「……」
「…………」
「ですよね」
千乃。
「うん」
母親。
「……」
「……」
「…………」
「……本当に」
「偽物なんですよね?」
千乃。
にこっ。
「うん」
「そうだよ」
母親。
「……」
「……」
少し。
安心したように。
息を吐いた。
「よかった……」
千乃。
「……」
真銀。
「……」
千乃。
「信じてくれた?」
母親。
「……」
「…………」
「分かりません」
千乃。
「……」
母親。
「でも」
「千乃様が」
「わざわざ」
「子どもの前で」
「優しく話してるのに」
「そんな言葉を」
「本当に言うとは」
「思えません」
千乃。
「……」
少し。
目を丸くした。
そして。
「そっか」
にこっ。
「ありがとう」
母親。
「いえ」
千乃。
子どもの頭を。
軽く撫でる。
「じゃあ」
「気をつけてね」
「うん!」
子ども。
「千乃様!」
「なに?」
「その石」
「割っていい?」
千乃。
「……」
にこっ。
「いいよ」
子ども。
「やったー!」
ぱりんっ!
千乃。
「……」
柚乃。
「……」
真銀。
「……」
ララ。
「……」
ライ。
「……」
アイシィ。
「……」
子ども。
「割れたー!」
千乃。
「よかったね」
母親。
「……」
「…………」
「千乃様」
「何か」
「思ったより」
「普通ですね」
千乃。
「失礼じゃない?」
「少し」
柚乃。
「お姉ちゃん」
「怖がられてるもんね」
「柚乃もね?」
「私は」
「まだ何もしてないよ?」
千乃。
「私は?」
「色々してる」
「……」
真銀。
「正論」
「うるさい」
その後。
千乃たちは。
子どもが指差した。
路地へ。
向かった。
細い。
細い。
裏通り。
そして。
地面。
小さな。
結晶石の破片。
千乃。
「……」
しゃがむ。
拾う。
柚乃。
「お姉ちゃん」
「うん」
「また」
「追跡する?」
「する」
真銀。
「もう」
「止める気もないんだな」
ライ。
「ないだろ」
ララ。
「主!」
「もう止まらない!」
アイシィ。
「知っています」
千乃。
破片を。
手のひらへ。
乗せる。
「記録」
「追跡」
ぽうっ。
光。
細い線。
地面から。
すうっ。
空へ。
そして。
「……」
千乃。
にこっ。
「見つけた」
真銀。
「今度は?」
千乃。
「ここ」
柚乃。
「この街?」
「うん」
ライ。
「撒いた奴が」
「まだ近くにいる?」
「……多分」
千乃。
立ち上がる。
「追う」
真銀。
「待て」
「何?」
「走るな」
「まだ走ってないよ?」
「その前に言っておく」
「……」
千乃。
にこっ。
「優しい」
「経験だ」
柚乃。
「じゃあ」
「私も」
「ついてく」
千乃。
「うん」
二人。
歩く。
こつ。
こつ。
こつ。
こつ。
黒マント。
ばさっ。
ばさっ。
光の線。
町の奥へ。
真銀たち。
後ろから。
ついていく。
そして。
数分後。
大きな広場。
そこには。
人。
人。
人。
千乃。
「……」
柚乃。
「……」
真銀。
「……」
ララ。
「……」
ライ。
「……」
アイシィ。
「……」
広場の中心。
何人かの人が。
集まっている。
そして。
その真ん中。
大きな袋。
千乃。
「……」
にこっ。
「怪しいね」
真銀。
「待て」
「まだ何もしてない」
「袋が」
「怪しい」
柚乃。
「お姉ちゃん」
「ちょっと待って」
「うん?」
「私」
「聞いてくる」
千乃。
「……」
「…………」
「どうぞ?」
柚乃。
広場へ。
歩いていく。
黒マント。
ばさっ。
右目。
眼帯。
左腕。
包帯。
袋の近く。
男たち。
「……?」
「誰だ?」
柚乃。
「こんにちは」
にこっ。
男。
「……」
「何だ」
「ちょっと」
「聞きたいことが」
「あるんだけど」
「何だ」
柚乃。
袋を見る。
「その中」
「何?」
男。
「……」
「……」
「…………」
「関係ないだろ」
柚乃。
「ふーん」
にこっ。
その時。
千乃。
後ろから。
ひょこっ。
「ねえ」
男。
「!?」
千乃。
黒マント。
左目。
眼帯。
右腕。
包帯。
男たち。
「……」
「……」
「…………」
「二人?」
千乃。
「「双子」」
「「よろしくね」」
男たち。
「……」
「…………」
「よろしくされたくねぇ……」
千乃。
「ねえ」
「その袋」
「見せて?」
男。
「……」
「…………」
「嫌だ」
千乃。
「そっか」
にこっ。
柚乃。
「じゃあ」
「別の方法」
真銀。
「……!」
「待て!」
千乃。
「まだ何もしてないよ?」
真銀。
「お前らが」
「別の方法って言うときは」
「何かする前提だろ!」
千乃。
「そうかな?」
柚乃。
「そうだよ」
ライ。
「そうだ」
ララ。
「そう!」
アイシィ。
「そうですね」
男。
「……」
「…………」
「何なんだ」
その時。
風。
ふわっ。
袋の口。
少し。
開く。
中から。
きらっ。
きらっ。
きらっ。
結晶石。
千乃。
「……」
柚乃。
「……」
真銀。
「……」
男。
「……」
千乃。
にこっ。
「……へえ」
柚乃。
にこっ。
「……へえ」
男。
「……」
「…………」
「終わった」
真銀。
「まだだ」
ライ。
「始まったところだ」
ララ。
「主!」
「笑顔!」
「怖い!」
千乃。
「ねえ」
「これ」
「どこで」
「手に入れたの?」
男。
「知らない」
千乃。
「ふーん」
にこっ。
男。
「……」
柚乃。
「知らないのに」
「運んでるの?」
男。
「……」
千乃。
「誰に」
「頼まれたの?」
男。
「知らない」
柚乃。
「また?」
千乃。
「すごいね」
「何も知らないのに」
「何かを運んで」
「何も知らないのに」
「こんなに顔色悪くして」
男。
「……」
「…………」
千乃。
「ねえ」
「怖い?」
男。
「……!」
千乃。
にこにこ。
「大丈夫」
「殺さないよ、たぶん」
「千乃!」
「お姉ちゃん!」
千乃。
「え?」
「まだ何もしてないよ?」
男。
「……」
「…………」
「……言う」
千乃。
「うん」
男。
「言うから」
「その笑顔を」
「やめてくれ」
千乃。
「なんで?」
男。
「怖いからだ!」
千乃。
「……」
「…………」
「そっか」
真銀。
「納得するんだ」
男。
「俺たちは」
「頼まれただけだ!」
「誰に?」
「皇城の人間だ!」
空気。
止まった。
千乃。
「……」
柚乃。
「……」
真銀。
「……」
ライ。
「……」
ララ。
「……」
アイシィ。
「……」
男。
「……」
「…………」
「名前は知らない!」
「でも!」
「皇城から!」
「結晶石を運び出せって!」
「町に置けって!」
「それだけだ!」
千乃。
「……」
にこっ。
「なるほど」
真銀。
「千乃」
「なに?」
「今」
「何を考えてる?」
千乃。
「皇城に」
「行こうかなって」
柚乃。
「私も」
「行く」
真銀。
「待て」
「俺も行く」
ライ。
「俺も」
ララ。
「主!」
「ララも!」
アイシィ。
「私も行きます」
千乃。
「うん」
黒マント。
ばさっ。
柚乃。
黒マント。
ばさっ。
二人。
同時に。
「「皇城」」
「「そこに犯人がいる」」
真銀。
「何でハモるんだ」
千乃。
「双子だから」
柚乃。
「便利な言葉」
真銀。
「さっきも言った」
その頃。
ユミナリア皇城。
パイライト。
「……」
「……」
「…………」
ぶるっ。
エリシア。
「弟?」
「……」
「…………」
「姉上」
「なに?」
「今」
「ものすごく」
「嫌な予感が」
エリシア。
「……」
「…………」
「私もですわ」
パイライト。
「……」
「…………」
「今回は」
「本当に」
「気のせいでは」
「ありませんな」
その瞬間。
皇城の外。
黒マント。
二つ。
ばさっ。
ばさっ。
パイライト。
「……」
「…………」
「あら、今回は鳴かないのね」
ユミナリア皇城。
正門前。
千乃。
柚乃。
真銀。
ララ。
ライ。
アイシィ。
六人。
皇城を見上げる。
「……」
千乃。
「大きいね」
柚乃。
「お姉ちゃんの城も大きいよ?」
「星氷神城は」
「お城というより」
「神殿みたいな感じだから」
「それもそうか」
真銀。
「観光しに来たんじゃないぞ」
「分かってるよ?」
千乃。
にこっ。
真銀。
「その笑顔で言われると」
「全然安心できない」
ララ。
「主!」
「いくの?」
「うん」
ライ。
「正面から?」
千乃。
「うん」
アイシィ。
「堂々と行くんですね」
「堂々と行くよ」
千乃。
「……」
「…………」
「だって」
「私は」
「何も悪いことしてないから」
真銀。
「それは」
「そうだな」
柚乃。
「じゃあ」
「行こっか」
千乃。
「うん」
二人。
同時に。
黒マント。
ばさっ。
正門へ。
歩き出した。
衛兵。
「止まれ!」
千乃。
「はい」
柚乃。
「止まったよ」
衛兵。
「……」
「…………」
目の前。
黒マントが二人。
しかも。
片方は左目眼帯。
右腕包帯。
もう片方は右目眼帯。
左腕包帯。
衛兵。
「……」
「…………」
「何者だ」
千乃。
「千乃」
柚乃。
「柚乃」
「「よろしくね」」
衛兵。
「いや」
「知ってる」
千乃。
「早いね」
衛兵。
「その格好で来られて」
「分からない方が無理だ」
真銀。
「同感」
ララ。
「分かる!」
ライ。
「……」
アイシィ。
「わかりやすいですね」
千乃。
「そう?」
衛兵。
「用件は?」
千乃。
にこっ。
「皇城に」
「入る」
衛兵。
「理由は?」
柚乃。
「犯人探し」
衛兵。
「……」
「…………」
「犯人?」
千乃。
「私の声を勝手に使って偽物の音声を作った人」
衛兵。
ぴくっ。
千乃。
「……」
にこっ。
「知ってる?」
衛兵。
「知らない」
柚乃。
「そっか」
「じゃあ」
「通して」
衛兵。
「いや」
「それとこれは別だ!」
真銀。
「まともだな」
千乃。
「褒めてる?」
「褒めてる」
衛兵。
「皇城への立ち入りには」
「許可が必要だ」
千乃。
「誰の?」
「皇王家の」
柚乃。
「じゃあ」
「皇王家に」
「会いに来た」
衛兵。
「……」
「…………」
「なおさら駄目だ!」
千乃。
「なんで?」
「今」
「犯人探ししてるって言った!」
「だから!」
「会わせられない!」
千乃。
「……」
にこっ。
「へえ」
衛兵。
「……」
千乃。
「私」
「皇王家の人が」
「犯人だって」
「まだ言ってないけど」
衛兵。
「……」
真銀。
「……」
ライ。
「……」
ララ。
「……」
アイシィ。
「……」
柚乃。
ゆっくり。
衛兵を見る。
「……」
「…………」
「今」
「ちょっと」
「自分から」
「怪しくならなかった?」
衛兵。
「……」
「…………」
「き、きききききききき気のせいだ」
千乃。
「そう?」
「そうだ」
千乃。
「ふーん」
にこっ。
衛兵。
「……」
真銀。
「……」
「千乃」
「なに?」
「笑顔」
「うん」
「怖い」
「なんで?」
「お前」
「今日」
「なんで?が多くねぇか?」
千乃。
「そんなことないよ?」
柚乃。
「お兄ちゃん」
「ちょっと疲れてるんだよ」
真銀。
「誰のせいだ」
柚乃。
「さあ?」
真銀。
「お前もか」
その時。
皇城の上。
鐘。
ゴォォォォォォン!!
ゴォォォォォォン!!
衛兵たち。
「!?」
「な、何だ!?」
城内。
騒がしくなる。
千乃。
「……?」
柚乃。
「何?」
真銀。
「俺たちじゃないぞ」
ライ。
「当たり前だ」
ララ。
「主!」
「まだ何もしてない!」
千乃。
「うん!」
アイシィ。
「そこを強調する時点で」
「不安になります」
皇城の門。
ばぁんっ!
開く。
中から。
兵士。
数十人。
走ってくる。
「何だ?」
衛兵。
「どうした!?」
一人の兵士。
「侵入者だ!」
真銀。
「……」
千乃。
「……」
柚乃。
「……」
ララ。
「……」
ライ。
「……」
アイシィ。
「……」
全員。
「「「「「「え?」」」」」」
兵士。
「侵入者が!」
「皇城の地下へ!」
衛兵。
「地下!?」
千乃。
「……」
柚乃。
「……」
千乃。
にこっ。
「面白くなってきたね」
真銀。
「面白がるな」
千乃。
「だって」
「私たちが」
「来たタイミングで」
「地下に侵入者だよ?」
柚乃。
「偶然かな?」
ライ。
「偶然にしては」
「出来すぎてる」
千乃。
「うん」
「私も」
「そう思う」
衛兵。
「お前たち!」
千乃。
「はい?」
「入国してから」
「何をしていた!?」
真銀。
「……」
「…………」
「まさか」
千乃。
「なに?」
「俺たちを」
「侵入者扱いする気か?」
衛兵。
「怪しい!」
ララ。
「主!」
「怪しいって言われた!」
千乃。
「私たち?」
「私たち」
柚乃。
「なんで?」
衛兵。
「その格好!」
千乃。
「気分」
衛兵。
「その眼帯!」
「気分」
「包帯!」
「気分」
「黒マント!」
「気分」
衛兵。
「怪しい!」
千乃。
「気分なのに?」
真銀。
「そこは俺も擁護できない」
千乃。
「えぇ」
その時。
千乃。
ふと。
視線を。
城の中へ向ける。
「……」
柚乃。
「どうしたの?」
千乃。
「さっきの鐘」
「うん」
「誰が鳴らしたんだろう」
真銀。
「普通」
「警報なら」
「城内から鳴らすんじゃないか?」
ライ。
「……」
「それもそうだ」
アイシィ。
「侵入者が地下にいるのなら」
「鐘を鳴らす暇がある人が」
「侵入者を見つけたということになります」
千乃。
「うん」
「でも」
「見つけただけなら」
「どうして」
「場所を」
「地下って」
「分かったんだろうね」
衛兵。
「……!」
柚乃。
「お姉ちゃん」
「うん」
「これ」
「変だね」
千乃。
「うん」
真銀。
「……」
ライ。
「……」
ララ。
「……」
アイシィ。
「……」
千乃。
衛兵を見る。
笑顔。
「ねえ」
「地下への道」
「教えて?」
衛兵。
「は?」
千乃。
「侵入者」
「探しに行く」
「駄目だ!」
柚乃。
「なんで?」
「あなたたちは部外者だ!」
千乃。
「でも」
「侵入者は」
「私たちじゃないんでしょ?」
衛兵。
「……」
「…………」
「そうだが」
千乃。
「じゃあ」
「困ってるよね?」
衛兵。
「……」
千乃。
「手伝うよ」
真銀。
「……」
衛兵。
「……」
真銀。
「今度は」
「普通の笑顔だな」
千乃。
「真銀」
「なに?」
「私」
「いつも普通の笑顔だよ?」
「……」
「…………」
「はいはい」
千乃。
「適当」
その時。
皇城の中。
どんっ!!
大きな音。
ララ。
「!?」
アイシィ。
「何か」
「壊れました!」
兵士。
「地下だ!」
千乃。
すっ。
走り出す。
真銀。
「千乃!」
柚乃。
「お姉ちゃん!」
千乃。
「先行く!」
真銀。
「待て!」
千乃。
「今回は」
「ちゃんと」
「手伝うだけ!」
ライ。
「その言葉を」
「信用できるか?」
千乃。
「できるよ!」
ララ。
「主ー!」
全員。
走る。
そして。
衛兵たちの間を。
すり抜け。
皇城の中へ。
「待てぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
衛兵。
「侵入者ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
真銀。
「お前らだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
千乃。
「えぇ!?」
柚乃。
「手伝いに来たのに!?」
ライ。
「結果的に侵入してる!」
アイシィ。
「もう少し」
「穏便に入れませんでしたか!?」
ララ。
「主!」
「はやーい!」
千乃。
「それ褒めてる?」
ララ。
「褒めてる!」
皇城。
廊下。
ばたばたばたばたっ!
六人。
走る。
その先。
地下へ続く。
階段。
千乃。
止まる。
「……」
真銀。
「どうした?」
千乃。
「匂い」
ライ。
「何の?」
「結晶石」
柚乃。
「……!」
千乃。
「ここ」
「音声結晶石を」
「保管してた場所かも」
真銀。
「じゃあ」
「さっきの侵入者は」
千乃。
にこっ。
「私たちを」
「ここから」
「遠ざけるため?」
柚乃。
「……」
黒マント。
ばさっ。
「じゃあ」
「急ご」
千乃。
「うん」
階段。
下へ。
下へ。
下へ。
暗い地下。
そして。
扉。
千乃。
手を伸ばす。
真銀。
「待て」
「なに?」
「罠かもしれない」
千乃。
「じゃあ」
「先に入るね」
「なぜそうなる」
柚乃。
「お姉ちゃん」
「ちょっと待って」
「うん?」
柚乃。
扉を見る。
「……」
「…………」
「私」
「嫌な予感する」
千乃。
「珍しい」
「何が?」
「柚乃が」
「まともなこと言った」
「失礼!」
真銀。
「……」
「…………」
「今回は」
「柚乃の言う通りにしろ」
千乃。
「うん」
全員。
一歩。
下がる。
そして。
扉。
ゆっくり。
開いた。
ぎぃぃぃぃ。
中。
暗闇。
誰もいない。
しかし。
部屋の中央。
机。
その上に。
一つだけ。
結晶石。
千乃。
「……」
柚乃。
「……」
真銀。
「……」
ライ。
「……」
ララ。
「……」
アイシィ。
「……」
千乃。
「……」
笑顔。
「これは」
「分かりやすい罠だね」
真銀。
「触るなよ」
「触らないよ」
柚乃。
「本当?」
「本当」
千乃。
「……」
「…………」
「多分」
真銀。
「触る気満々じゃないか」
千乃。
「えー」
その時。
結晶石。
ぽうっ。
勝手に。
光った。
『みんないらない!』
千乃。
「……」
『消えればいいのに』
柚乃。
「……」
結晶石。
さらに。
光る。
そして。
声。
『見つけたわね』
千乃。
真顔。
柚乃。
真顔。
真銀。
「……」
ララ。
「……」
ライ。
「……」
アイシィ。
「……」
千乃。
「……」
「今の」
「誰?」
次の瞬間。
部屋の奥。
冷たい風。
ふわっ。
白い靄。
ゆっくり。
集まり始めた。
柚乃。
「……」
千乃。
「……」
真銀。
「……」
そして。
靄は。
人の形に。
なっていく。
千乃。
「……」
真銀。
「まさか」
柚乃。
「……」
白い靄の中。
浮かび上がった。
金髪。
翡翠色の目。
そして。
その顔。
千乃。
「……」
小さく。
「エリシア」
幽霊。
ゆっくり。
笑った。
「ええ」
「久しぶりですわね」
千乃。
「……」
笑顔が。
消えた。
そして。
次の瞬間。
また。
にこっ。
「……そっか」
真銀。
「千乃」
「なに?」
「その笑顔」
「今度は」
「本当に怖い」
エリシア。
「……」
「…………」
「そこ?」
千乃。
「犯人」
「一人」
「見つけた」
黒マント。
ばさっ。
柚乃。
「あと」
「何人かな?」
千乃。
「探そうか」
エリシア。
「……」
真銀。
「……」
ララ。
「……」
ライ。
「……」
アイシィ。
「……」
地下室。
静寂。
そして。
エリシア。
ゆっくり。
笑った。
「……」
「ようこそ」
「ユミナリア皇城へ」
千乃。
「うん」
「来たよ」
「犯人を」
「迎えに」




