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162/197

いい加減にしましょうね? 2

 星霜王国。


 国境付近。


 千乃。


 柚乃。


 真銀。


 ララ。


 ライ。


 アイシィ。


 六人は。


 ユミナリア皇国へ向かっていた。


 先頭。


 千乃。


 その隣。


 柚乃。


 黒マント。


 ばさっ。


 ばさっ。


 右と左。


 眼帯。


 右と左。


 包帯。


 そして。


 二人とも。


 笑顔。


 真銀。


「……」


 ライ。


「……」


 アイシィ。


「……」


 ララ。


「……」


 後ろの四人。


 同時に。


 思っていた。


 ――怖い。


 ララ。


「主ー」


「なに?」


「……」


「ほんとに」


「怒ってない?」


 千乃。


「怒ってないよ?」


 にこっ。


 柚乃。


「私も怒ってないよ?」


 にこっ。


 ララ。


「……」


「…………」


「うん」


「怒ってるね」


「「なんで!?」」


「二人とも!」


 千乃と柚乃。


 顔を見合わせる。


「……」


「……」


「「なんで?」」


 ララ。


「ハモった!」


 ライ。


「そこじゃない」


 真銀。


「もう」


「今さら言っても無駄だ」


 アイシィ。


「諦めが早いですね」


「経験だ」


 その時。


 千乃。


 ぴたっ。


 立ち止まった。


 柚乃。


「どうしたの?」


「……」


 千乃。


 笑顔のまま。


 空を見る。


「……」


「なに?」


 真銀。


「何か見えるか?」


「うん」


 千乃。


 指を。


 遠くへ向ける。


「あれ」


 全員。


 見る。


「……?」


 ララ。


「何?」


 千乃。


「ユミナリアの」


「偵察兵」


 真銀。


「え?」


 ライ。


「もう?」


 千乃。


「多分」


 柚乃。


「こっち見てる?」


「見てる」


「……」


 柚乃。


 にこっ。


「じゃあ」


「聞こうか」


 真銀。


「待て」


 柚乃。


「なに?」


「その笑顔で」


「聞くって言うな」


「なんで?」


 千乃。


「……」


「…………」


「なんか」


「怪しまれるよ?」


 真銀。


「今さらか?」


 ライ。


「今さらだ」


 アイシィ。


「今さらですね」


 ララ。


「今さら!」


 千乃。


「えー」


 その頃。


 少し離れた場所。


 ユミナリア皇国。


 国境警備の兵士。


「……」


「……」


「…………」


「何だ」


 隣。


「何がだ」


「あれ」


「どれ」


 兵士。


 遠くを見る。


 黒。


 黒。


 黒。


「……」


「……」


「…………」


「黒マントが」


「二人いる」


「見れば分かる」


「しかも」


「左右が逆だ」


「……」


「…………」


「何なんだ」


 千乃。


 柚乃。


 二人。


 こちらへ。


 歩いてくる。


 その後ろ。


 真銀たち。


 兵士。


「……」


「……」


「…………」


「待て」


「なに?」


「あの後ろ」


「真銀じゃないか?」


「……」


 兵士。


 目を細める。


「……」


「…………」


「……本当だ」


 もう一人。


「じゃあ」


「前の二人は」


「……」


 千乃。


 にこっ。


 柚乃。


 にこっ。


 兵士。


「……」


「…………」


「千乃様と」


「柚乃様」


「……」


「…………」


「なんで」


「そんな格好なんだ?」


「兵士さーん、聞こえてるよー」


「!?」


兵士。まさか聞こえっていたとは思ってもいなかったため、顎が外れそうな勢いで口が空いている。


「すっごく」


「聞こえてるよー」


 兵士。


「!?」


 距離。


 かなりある。


 兵士。


「……」


「…………」


「聞こえる距離か?」


「神の妹だから⋯?」


 千乃。


 にこっ。


 兵士。


「誰も話していない!」


 千乃。


「そう?」


 柚乃。


「そういうところ」


「お姉ちゃんだよね」


 千乃。


「柚乃もね」


「そう?」


「そう」


 そして。


 二人は。


 国境の前へ。


 到着した。


 兵士たち。


 固まる。


「……」


「……」


「…………」


「千乃様」


 千乃。


「はい」


 にこっ。


「柚乃様」


 柚乃。


「はい」


 にこっ。


 兵士。


「……」


「…………」


「ご用件を」


「お聞きしても?」


 千乃。


「犯人探し」


 兵士。


「……」


「…………」


「犯人?」


 柚乃。


「お姉ちゃんの声を」


「私の声を」


「「勝手に使った人」」


「……」


「…………」


 兵士。


「……?」


 千乃。


「音声結晶石」


「へぇー、お姉ちゃんの声使った犯人知ってるんだ?」


 兵士。


「……」


 顔色が変わった。


 さぁーっと死人のように青白くなる。


「「「「……」」」」


 千乃。


 にこっ。


「知ってるんだ」


 兵士。


「い、いや!」


「知らない!」


 柚乃。


「へえ」


 千乃。


「そうなんだ」


 兵士。


「……」


「…………」


 柚乃。


「じゃあ」


「なんで」


「顔色変わったの?」


 兵士。


「……」


「…………」


「暑いからだ!」


 ララ。


「おかしいよ?」


 ライ。


「無理がある」


 アイシィ。


「無理がありますね」


 真銀。


「自分から怪しくなってるぞ」


 兵士。


「……!」


 千乃。


 少し。


 首を傾げる。


「大丈夫だよ」


 にこっ。


「私たち」


「ただ」


「犯人を探してるだけだから」


 兵士。


「……」


「…………」


 千乃。


「犯人じゃなければ」


「怖がる必要ないよね?」


 兵士。


「……」


「…………っ」


「そ、そそそそそそそそ、そうだな」


 千乃。


「うん」


 柚乃。


「じゃあ」


「通して?」


 兵士。


「……」


「…………」


「いや」


「それは」


「その」


「入国の」


「手続きが」


 千乃。


「……」


 笑顔。


 真銀。


「……」


「千乃」


「なに?」


「笑顔が」


「怖い」


「なんで?」


「なんで?」


 千乃と柚乃。


「「なんで?」」


 兵士。


「ハモった!?」


 ララ。


「そこ?」


 兵士。


「怖い!」


 千乃。


「大丈夫」


「殺さないよ」


 柚乃。


「多分」


 全員。


「「「「「「そこじゃない!!」」」」」」


 兵士。


「……」


「…………」


「……お通りください」


 千乃。


「ありがとう」


 にこっ。


 柚乃。


「ありがとう」


 にこっ。


 黒マント。


 ばさっ。


 ばさっ。


 二人。


 堂々と。


 ユミナリア皇国へ。


 入国。


 その後ろ。


 真銀。


「……」


「俺」


「本当に」


「ついてきてよかったのか?」


 ライ。


「今さら帰る気か?」


「……」


「…………」


「帰れないな」


 ララ。


「主が二人いる!」


「違う」


「片方は柚乃だ」


「分かってるよ!」


 アイシィ。


「真銀さん」


「はい」


「お気を確かに」


「……」


「…………」


「それ」


「俺に言う言葉か?」


 その頃。


 ユミナリア皇国。


 皇城。


 パイライト。


 机の前。


「……」


「……」


「…………」


「姉上」


「なに?」


「……」


「…………」


「国境の兵から」


「報告が来ましたぞ」


 エリシア。


「何ですの?」


 パイライト。


 通信結晶石を見る。


「……」


「…………」


「千乃と」


「柚乃が」


「黒マントで」


「入国したそうです」


 エリシア。


「……」


「…………」


「……」


 パイライト。


「……」


「…………」


「……」


 エリシア。


「……弟」


「はい」


「なぜ」


「黒マント?」


「知りませんぞ!?」


「……」


「…………」


 パイライト。


「でも」


「片方は」


「左目眼帯」


「右腕包帯」


「もう片方は」


「右目眼帯」


「左腕包帯」


 エリシア。


「……」


「…………」


「双子ですもの」


「左右くらい」


「揃えたんじゃない?」


 パイライト。


「そこは」


「普通なんですな」


「……」


「…………」


「弟」


「はい」


「逃げる?」


 パイライト。


「……」


「…………」


「私は」


「次期皇王ですぞ」


「そうね」


「堂々と」


「しますぞ」


「ええ」


「……」


「…………」


「逃げる?」


「逃げますわ」


「ブヒッ!?」


 エリシア。


「だから!」


「今!」


「鳴くところじゃありませんわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 ユミナリア皇国。


 城下町。


 千乃。


 柚乃。


 二人の黒マントが。


 ばさっ。


 ばさっ。


 大通りを歩いていた。


 その後ろ。


 真銀。


 ララ。


 ライ。


 アイシィ。


 そして。


 なぜか。


 少し離れて。


 歩いている。


 真銀。


「……」


 千乃。


「真銀?」


「なに?」


「なんで」


「そんなに離れてる?」


「……」


「…………」


「なんとなく」


 千乃。


「ふーん」


 にこっ。


 真銀。


「近づく」


 千乃。


「なんで?」


「「なんとなく」」


「俺の真似するな」


「似た者夫婦?」


「今は違う」


 柚乃。


「お兄ちゃん」


「大丈夫?」


 真銀。


「何が?」


「顔」


「若干」


「死んでるよ?」


「元気だ」


 ライ。


「嘘だな」


「何で分かる」


「分かる」


 アイシィ。


「分かります」


 ララ。


「分かる!」


 真銀。


「……」


「…………」


「全員」


「俺の何なんだ」


 その時。


 道端。


 子どもが。


 小さな結晶石を。


 拾い上げていた。


「ママー!」


「これ何ー?」


 千乃。


 ぴたっ。


 止まる。


 柚乃。


 ぴたっ。


 止まる。


 真銀。


「……」


 ララ。


「……」


 ライ。


「……」


 アイシィ。


「……」


 全員。


 察した。


 結晶石。


 淡く。


 光る。


『みんないらない! 消えればいいのに』


 子ども。


「……」


「……?」


「千乃様の声?」


 母親。


 はっとする。


「ちょっ……!」


 千乃。


 ゆっくり。


 子どもへ近づく。


 こつ。


 こつ。


 こつ。


 黒マント。


 ばさっ。


 ばさっ。


 子ども。


「……?」


 千乃。


「それ」


「どこで」


「拾ったの?」


 にこっ。


 子ども。


「……」


 母親。


「……」


 子ども。


「えっと」


「あっち!」


 指。


 一本。


 路地の奥。


 千乃。


「そう」


 にこっ。


「ありがとう」


 柚乃。


「ありがとね」


 にこっ。


 子ども。


「……」


「……?」


 母親。


「……」


「…………」


「千乃様」


 千乃。


「はい?」


「その」


「結晶石の声」


 千乃。


「ああ」


「偽物だよ」


 母親。


「……」


「…………」


「ですよね」


 千乃。


「うん」


 母親。


「……」


「……」


「…………」


「……本当に」


「偽物なんですよね?」


 千乃。


 にこっ。


「うん」


「そうだよ」


 母親。


「……」


「……」


 少し。


 安心したように。


 息を吐いた。


「よかった……」


 千乃。


「……」


 真銀。


「……」


 千乃。


「信じてくれた?」


 母親。


「……」


「…………」


「分かりません」


 千乃。


「……」


 母親。


「でも」


「千乃様が」


「わざわざ」


「子どもの前で」


「優しく話してるのに」


「そんな言葉を」


「本当に言うとは」


「思えません」


 千乃。


「……」


 少し。


 目を丸くした。


 そして。


「そっか」


 にこっ。


「ありがとう」


 母親。


「いえ」


 千乃。


 子どもの頭を。


 軽く撫でる。


「じゃあ」


「気をつけてね」


「うん!」


 子ども。


「千乃様!」


「なに?」


「その石」


「割っていい?」


 千乃。


「……」


 にこっ。


「いいよ」


 子ども。


「やったー!」


 ぱりんっ!


 千乃。


「……」


 柚乃。


「……」


 真銀。


「……」


 ララ。


「……」


 ライ。


「……」


 アイシィ。


「……」


 子ども。


「割れたー!」


 千乃。


「よかったね」


 母親。


「……」


「…………」


「千乃様」


「何か」


「思ったより」


「普通ですね」


 千乃。


「失礼じゃない?」


「少し」


 柚乃。


「お姉ちゃん」


「怖がられてるもんね」


「柚乃もね?」


「私は」


「まだ何もしてないよ?」


 千乃。


「私は?」


「色々してる」


「……」


 真銀。


「正論」


「うるさい」


 その後。


 千乃たちは。


 子どもが指差した。


 路地へ。


 向かった。


 細い。


 細い。


 裏通り。


 そして。


 地面。


 小さな。


 結晶石の破片。


 千乃。


「……」


 しゃがむ。


 拾う。


 柚乃。


「お姉ちゃん」


「うん」


「また」


「追跡する?」


「する」


 真銀。


「もう」


「止める気もないんだな」


 ライ。


「ないだろ」


 ララ。


「主!」


「もう止まらない!」


 アイシィ。


「知っています」


 千乃。


 破片を。


 手のひらへ。


 乗せる。


「記録」


「追跡」


 ぽうっ。


 光。


 細い線。


 地面から。


 すうっ。


 空へ。


 そして。


「……」


 千乃。


 にこっ。


「見つけた」


 真銀。


「今度は?」


 千乃。


「ここ」


 柚乃。


「この街?」


「うん」


 ライ。


「撒いた奴が」


「まだ近くにいる?」


「……多分」


 千乃。


 立ち上がる。


「追う」


 真銀。


「待て」


「何?」


「走るな」


「まだ走ってないよ?」


「その前に言っておく」


「……」


 千乃。


 にこっ。


「優しい」


「経験だ」


 柚乃。


「じゃあ」


「私も」


「ついてく」


 千乃。


「うん」


 二人。


 歩く。


 こつ。


 こつ。


 こつ。


 こつ。


 黒マント。


 ばさっ。


 ばさっ。


 光の線。


 町の奥へ。


 真銀たち。


 後ろから。


 ついていく。


 そして。


 数分後。


 大きな広場。


 そこには。


 人。


 人。


 人。


 千乃。


「……」


 柚乃。


「……」


 真銀。


「……」


 ララ。


「……」


 ライ。


「……」


 アイシィ。


「……」


 広場の中心。


 何人かの人が。


 集まっている。


 そして。


 その真ん中。


 大きな袋。


 千乃。


「……」


 にこっ。


「怪しいね」


 真銀。


「待て」


「まだ何もしてない」


「袋が」


「怪しい」


 柚乃。


「お姉ちゃん」


「ちょっと待って」


「うん?」


「私」


「聞いてくる」


 千乃。


「……」


「…………」


「どうぞ?」


 柚乃。


 広場へ。


 歩いていく。


 黒マント。


 ばさっ。


 右目。


 眼帯。


 左腕。


 包帯。


 袋の近く。


 男たち。


「……?」


「誰だ?」


 柚乃。


「こんにちは」


 にこっ。


 男。


「……」


「何だ」


「ちょっと」


「聞きたいことが」


「あるんだけど」


「何だ」


 柚乃。


 袋を見る。


「その中」


「何?」


 男。


「……」


「……」


「…………」


「関係ないだろ」


 柚乃。


「ふーん」


 にこっ。


 その時。


 千乃。


 後ろから。


 ひょこっ。


「ねえ」


 男。


「!?」


 千乃。


 黒マント。


 左目。


 眼帯。


 右腕。


 包帯。


 男たち。


「……」


「……」


「…………」


「二人?」


 千乃。


「「双子」」


 「「よろしくね」」


 男たち。


「……」


「…………」


「よろしくされたくねぇ……」


 千乃。


「ねえ」


「その袋」


「見せて?」


 男。


「……」


「…………」


「嫌だ」


 千乃。


「そっか」


 にこっ。


 柚乃。


「じゃあ」


「別の方法」


 真銀。


「……!」


「待て!」


 千乃。


「まだ何もしてないよ?」


 真銀。


「お前らが」


「別の方法って言うときは」


「何かする前提だろ!」


 千乃。


「そうかな?」


 柚乃。


「そうだよ」


 ライ。


「そうだ」


 ララ。


「そう!」


 アイシィ。


「そうですね」


 男。


「……」


「…………」


「何なんだ」


 その時。


 風。


 ふわっ。


 袋の口。


 少し。


 開く。


 中から。


 きらっ。


 きらっ。


 きらっ。


 結晶石。


 千乃。


「……」


 柚乃。


「……」


 真銀。


「……」


 男。


「……」


 千乃。


 にこっ。


「……へえ」


 柚乃。


 にこっ。


「……へえ」


 男。


「……」


「…………」


「終わった」


 真銀。


「まだだ」


 ライ。


「始まったところだ」


 ララ。


「主!」


「笑顔!」


「怖い!」


 千乃。


「ねえ」


「これ」


「どこで」


「手に入れたの?」


 男。


「知らない」


 千乃。


「ふーん」


 にこっ。


 男。


「……」


 柚乃。


「知らないのに」


「運んでるの?」


 男。


「……」


 千乃。


「誰に」


「頼まれたの?」


 男。


「知らない」


 柚乃。


「また?」


 千乃。


「すごいね」


「何も知らないのに」


「何かを運んで」


「何も知らないのに」


「こんなに顔色悪くして」


 男。


「……」


「…………」


 千乃。


「ねえ」


「怖い?」


 男。


「……!」


 千乃。


 にこにこ。


「大丈夫」


「殺さないよ、たぶん」


「千乃!」


「お姉ちゃん!」


 千乃。


「え?」


「まだ何もしてないよ?」


 男。


「……」


「…………」


「……言う」


 千乃。


「うん」


 男。


「言うから」


「その笑顔を」


「やめてくれ」


 千乃。


「なんで?」


 男。


「怖いからだ!」


 千乃。


「……」


「…………」


「そっか」


 真銀。


「納得するんだ」


 男。


「俺たちは」


「頼まれただけだ!」


「誰に?」


「皇城の人間だ!」


 空気。


 止まった。


 千乃。


「……」


 柚乃。


「……」


 真銀。


「……」


 ライ。


「……」


 ララ。


「……」


 アイシィ。


「……」


 男。


「……」


「…………」


「名前は知らない!」


「でも!」


「皇城から!」


「結晶石を運び出せって!」


「町に置けって!」


「それだけだ!」


 千乃。


「……」


 にこっ。


「なるほど」


 真銀。


「千乃」


「なに?」


「今」


「何を考えてる?」


 千乃。


「皇城に」


「行こうかなって」


 柚乃。


「私も」


「行く」


 真銀。


「待て」


「俺も行く」


 ライ。


「俺も」


 ララ。


「主!」


「ララも!」


 アイシィ。


「私も行きます」


 千乃。


「うん」


 黒マント。


 ばさっ。


 柚乃。


 黒マント。


 ばさっ。


 二人。


 同時に。


「「皇城」」


「「そこに犯人がいる」」


 真銀。


「何でハモるんだ」


 千乃。


「双子だから」


 柚乃。


「便利な言葉」


 真銀。


「さっきも言った」


 その頃。


 ユミナリア皇城。


 パイライト。


「……」


「……」


「…………」


 ぶるっ。


 エリシア。


「弟?」


「……」


「…………」


「姉上」


「なに?」


「今」


「ものすごく」


「嫌な予感が」


 エリシア。


「……」


「…………」


「私もですわ」


 パイライト。


「……」


「…………」


「今回は」


「本当に」


「気のせいでは」


「ありませんな」


 その瞬間。


 皇城の外。


 黒マント。


 二つ。


 ばさっ。


 ばさっ。


 パイライト。


「……」


「…………」


「あら、今回は鳴かないのね」


 ユミナリア皇城。


 正門前。


 千乃。


 柚乃。


 真銀。


 ララ。


 ライ。


 アイシィ。


 六人。


 皇城を見上げる。


「……」


 千乃。


「大きいね」


 柚乃。


「お姉ちゃんの城も大きいよ?」


「星氷神城は」


「お城というより」


「神殿みたいな感じだから」


「それもそうか」


 真銀。


「観光しに来たんじゃないぞ」


「分かってるよ?」


 千乃。


 にこっ。


 真銀。


「その笑顔で言われると」


「全然安心できない」


 ララ。


「主!」


「いくの?」


「うん」


 ライ。


「正面から?」


 千乃。


「うん」


 アイシィ。


「堂々と行くんですね」


「堂々と行くよ」


 千乃。


「……」


「…………」


「だって」


「私は」


「何も悪いことしてないから」


 真銀。


「それは」


「そうだな」


 柚乃。


「じゃあ」


「行こっか」


 千乃。


「うん」


 二人。


 同時に。


 黒マント。


 ばさっ。


 正門へ。


 歩き出した。


 衛兵。


「止まれ!」


 千乃。


「はい」


 柚乃。


「止まったよ」


 衛兵。


「……」


「…………」


 目の前。


 黒マントが二人。


 しかも。


 片方は左目眼帯。


 右腕包帯。


 もう片方は右目眼帯。


 左腕包帯。


 衛兵。


「……」


「…………」


「何者だ」


 千乃。


「千乃」


 柚乃。


「柚乃」


「「よろしくね」」


 衛兵。


「いや」


「知ってる」


 千乃。


「早いね」


 衛兵。


「その格好で来られて」


「分からない方が無理だ」


 真銀。


「同感」


 ララ。


「分かる!」


 ライ。


「……」


 アイシィ。


「わかりやすいですね」


 千乃。


「そう?」


 衛兵。


「用件は?」


 千乃。


 にこっ。


「皇城に」


「入る」


 衛兵。


「理由は?」


 柚乃。


「犯人探し」


 衛兵。


「……」


「…………」


「犯人?」


 千乃。


「私の声を勝手に使って偽物の音声を作った人」


 衛兵。


 ぴくっ。


 千乃。


「……」


 にこっ。


「知ってる?」


 衛兵。


「知らない」


 柚乃。


「そっか」


「じゃあ」


「通して」


 衛兵。


「いや」


「それとこれは別だ!」


 真銀。


「まともだな」


 千乃。


「褒めてる?」


「褒めてる」


 衛兵。


「皇城への立ち入りには」


「許可が必要だ」


 千乃。


「誰の?」


「皇王家の」


 柚乃。


「じゃあ」


「皇王家に」


「会いに来た」


 衛兵。


「……」


「…………」


「なおさら駄目だ!」


 千乃。


「なんで?」


「今」


「犯人探ししてるって言った!」


「だから!」


「会わせられない!」


 千乃。


「……」


 にこっ。


「へえ」


 衛兵。


「……」


 千乃。


「私」


「皇王家の人が」


「犯人だって」


「まだ言ってないけど」


 衛兵。


「……」


 真銀。


「……」


 ライ。


「……」


 ララ。


「……」


 アイシィ。


「……」


 柚乃。


 ゆっくり。


 衛兵を見る。


「……」


「…………」


「今」


「ちょっと」


「自分から」


「怪しくならなかった?」


 衛兵。


「……」


「…………」


「き、きききききききき気のせいだ」


 千乃。


「そう?」


「そうだ」


 千乃。


「ふーん」


 にこっ。


 衛兵。


「……」


 真銀。


「……」


「千乃」


「なに?」


「笑顔」


「うん」


「怖い」


「なんで?」


「お前」


「今日」


「なんで?が多くねぇか?」


 千乃。


「そんなことないよ?」


 柚乃。


「お兄ちゃん」


「ちょっと疲れてるんだよ」


 真銀。


「誰のせいだ」


 柚乃。


「さあ?」


 真銀。


「お前もか」


 その時。


 皇城の上。


 鐘。


 ゴォォォォォォン!!


 ゴォォォォォォン!!


 衛兵たち。


「!?」


「な、何だ!?」


 城内。


 騒がしくなる。


 千乃。


「……?」


 柚乃。


「何?」


 真銀。


「俺たちじゃないぞ」


 ライ。


「当たり前だ」


 ララ。


「主!」


「まだ何もしてない!」


 千乃。


「うん!」


 アイシィ。


「そこを強調する時点で」


「不安になります」


 皇城の門。


 ばぁんっ!


 開く。


 中から。


 兵士。


 数十人。


 走ってくる。


「何だ?」


 衛兵。


「どうした!?」


 一人の兵士。


「侵入者だ!」


 真銀。


「……」


 千乃。


「……」


 柚乃。


「……」


 ララ。


「……」


 ライ。


「……」


 アイシィ。


「……」


 全員。


「「「「「「え?」」」」」」


 兵士。


「侵入者が!」


「皇城の地下へ!」


 衛兵。


「地下!?」


 千乃。


「……」


 柚乃。


「……」


 千乃。


 にこっ。


「面白くなってきたね」


 真銀。


「面白がるな」


 千乃。


「だって」


「私たちが」


「来たタイミングで」


「地下に侵入者だよ?」


 柚乃。


「偶然かな?」


 ライ。


「偶然にしては」


「出来すぎてる」


 千乃。


「うん」


「私も」


「そう思う」


 衛兵。


「お前たち!」


 千乃。


「はい?」


「入国してから」


「何をしていた!?」


 真銀。


「……」


「…………」


「まさか」


 千乃。


「なに?」


「俺たちを」


「侵入者扱いする気か?」


 衛兵。


「怪しい!」


 ララ。


「主!」


「怪しいって言われた!」


 千乃。


「私たち?」


「私たち」


 柚乃。


「なんで?」


 衛兵。


「その格好!」


 千乃。


「気分」


 衛兵。


「その眼帯!」


「気分」


「包帯!」


「気分」


「黒マント!」


「気分」


 衛兵。


「怪しい!」


 千乃。


「気分なのに?」


 真銀。


「そこは俺も擁護できない」


 千乃。


「えぇ」


 その時。


 千乃。


 ふと。


 視線を。


 城の中へ向ける。


「……」


 柚乃。


「どうしたの?」


 千乃。


「さっきの鐘」


「うん」


「誰が鳴らしたんだろう」


 真銀。


「普通」


「警報なら」


「城内から鳴らすんじゃないか?」


 ライ。


「……」


「それもそうだ」


 アイシィ。


「侵入者が地下にいるのなら」


「鐘を鳴らす暇がある人が」


「侵入者を見つけたということになります」


 千乃。


「うん」


「でも」


「見つけただけなら」


「どうして」


「場所を」


「地下って」


「分かったんだろうね」


 衛兵。


「……!」


 柚乃。


「お姉ちゃん」


「うん」


「これ」


「変だね」


 千乃。


「うん」


 真銀。


「……」


 ライ。


「……」


 ララ。


「……」


 アイシィ。


「……」


 千乃。


 衛兵を見る。


 笑顔。


「ねえ」


「地下への道」


「教えて?」


 衛兵。


「は?」


 千乃。


「侵入者」


「探しに行く」


「駄目だ!」


 柚乃。


「なんで?」


「あなたたちは部外者だ!」


 千乃。


「でも」


「侵入者は」


「私たちじゃないんでしょ?」


 衛兵。


「……」


「…………」


「そうだが」


 千乃。


「じゃあ」


「困ってるよね?」


 衛兵。


「……」


 千乃。


「手伝うよ」


 真銀。


「……」


 衛兵。


「……」


 真銀。


「今度は」


「普通の笑顔だな」


 千乃。


「真銀」


「なに?」


「私」


「いつも普通の笑顔だよ?」


「……」


「…………」


「はいはい」


 千乃。


「適当」


 その時。


 皇城の中。


 どんっ!!


 大きな音。


 ララ。


「!?」


 アイシィ。


「何か」


「壊れました!」


 兵士。


「地下だ!」


 千乃。


 すっ。


 走り出す。


 真銀。


「千乃!」


 柚乃。


「お姉ちゃん!」


 千乃。


「先行く!」


 真銀。


「待て!」


 千乃。


「今回は」


「ちゃんと」


「手伝うだけ!」


 ライ。


「その言葉を」


「信用できるか?」


 千乃。


「できるよ!」


 ララ。


「主ー!」


 全員。


 走る。


 そして。


 衛兵たちの間を。


 すり抜け。


 皇城の中へ。


「待てぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 衛兵。


「侵入者ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 真銀。


「お前らだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 千乃。


「えぇ!?」


 柚乃。


「手伝いに来たのに!?」


 ライ。


「結果的に侵入してる!」


 アイシィ。


「もう少し」


「穏便に入れませんでしたか!?」


 ララ。


「主!」


「はやーい!」


 千乃。


「それ褒めてる?」


 ララ。


「褒めてる!」


 皇城。


 廊下。


 ばたばたばたばたっ!


 六人。


 走る。


 その先。


 地下へ続く。


 階段。


 千乃。


 止まる。


「……」


 真銀。


「どうした?」


 千乃。


「匂い」


 ライ。


「何の?」


「結晶石」


 柚乃。


「……!」


 千乃。


「ここ」


「音声結晶石を」


「保管してた場所かも」


 真銀。


「じゃあ」


「さっきの侵入者は」


 千乃。


 にこっ。


「私たちを」


「ここから」


「遠ざけるため?」


 柚乃。


「……」


 黒マント。


 ばさっ。


「じゃあ」


「急ご」


 千乃。


「うん」


 階段。


 下へ。


 下へ。


 下へ。


 暗い地下。


 そして。


 扉。


 千乃。


 手を伸ばす。


 真銀。


「待て」


「なに?」


「罠かもしれない」


 千乃。


「じゃあ」


「先に入るね」


「なぜそうなる」


 柚乃。


「お姉ちゃん」


「ちょっと待って」


「うん?」


 柚乃。


 扉を見る。


「……」


「…………」


「私」


「嫌な予感する」


 千乃。


「珍しい」


「何が?」


「柚乃が」


「まともなこと言った」


「失礼!」


 真銀。


「……」


「…………」


「今回は」


「柚乃の言う通りにしろ」


 千乃。


「うん」


 全員。


 一歩。


 下がる。


 そして。


 扉。


 ゆっくり。


 開いた。


 ぎぃぃぃぃ。


 中。


 暗闇。


 誰もいない。


 しかし。


 部屋の中央。


 机。


 その上に。


 一つだけ。


 結晶石。


 千乃。


「……」


 柚乃。


「……」


 真銀。


「……」


 ライ。


「……」


 ララ。


「……」


 アイシィ。


「……」


 千乃。


「……」


 笑顔。


「これは」


「分かりやすい罠だね」


 真銀。


「触るなよ」


「触らないよ」


 柚乃。


「本当?」


「本当」


 千乃。


「……」


「…………」


「多分」


 真銀。


「触る気満々じゃないか」


 千乃。


「えー」


 その時。


 結晶石。


 ぽうっ。


 勝手に。


 光った。


『みんないらない!』


 千乃。


「……」


『消えればいいのに』


 柚乃。


「……」


 結晶石。


 さらに。


 光る。


 そして。


 声。


『見つけたわね』


 千乃。


 真顔。


 柚乃。


 真顔。


 真銀。


「……」


 ララ。


「……」


 ライ。


「……」


 アイシィ。


「……」


 千乃。


「……」


「今の」


「誰?」


 次の瞬間。


 部屋の奥。


 冷たい風。


 ふわっ。


 白い靄。


 ゆっくり。


 集まり始めた。


 柚乃。


「……」


 千乃。


「……」


 真銀。


「……」


 そして。


 靄は。


 人の形に。


 なっていく。


 千乃。


「……」


 真銀。


「まさか」


 柚乃。


「……」


 白い靄の中。


 浮かび上がった。


 金髪。


 翡翠色の目。


 そして。


 その顔。


 千乃。


「……」


 小さく。


「エリシア」


 幽霊。


 ゆっくり。


 笑った。


「ええ」


「久しぶりですわね」


 千乃。


「……」


 笑顔が。


 消えた。


 そして。


 次の瞬間。


 また。


 にこっ。


「……そっか」


 真銀。


「千乃」


「なに?」


「その笑顔」


「今度は」


「本当に怖い」


 エリシア。


「……」


「…………」


「そこ?」


 千乃。


「犯人」


「一人」


「見つけた」


 黒マント。


 ばさっ。


 柚乃。


「あと」


「何人かな?」


 千乃。


「探そうか」


 エリシア。


「……」


 真銀。


「……」


 ララ。


「……」


 ライ。


「……」


 アイシィ。


「……」


 地下室。


 静寂。


 そして。


 エリシア。


 ゆっくり。


 笑った。


「……」


「ようこそ」


「ユミナリア皇城へ」


 千乃。


「うん」


「来たよ」


「犯人を」


「迎えに」

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