↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
151/198

新しい領域

 アストラル・レルム。


 神々の世界。


 青白い星々が浮かぶ空の下。


 守護神アルテナ・アストラルは。


 広大な空間に立っていた。


「……よし」


 千乃。


 いや。


 アルテナは。


 両手を前に出す。


 その隣。


 エレノア・アストラルが。


 首を傾げた。


「アルちゃん、何してるの?」


「新技の練習」


「新技?」


 グランも。


 少し離れた場所から。


 顔を向ける。


「お?」


「アル、また何か作ったのか?」


「うん」


 アルテナ。


 静かに。


 頷いた。


「今回は」


 一瞬。


 沈黙。


「かなり」


 両手の間。


 淡い光。


 星。


 羽。


 それらが。


 ゆっくりと。


 集まり始める。


「……かなり?」


 エレノアが。


 嫌な予感を覚えた。


 そのとき。


 アルテナの。


 瞳が。


 金色と。


 桃色に。


 輝く。


 巨大な。


 白い翼。


 ばさり。


 広がった。


「……」


 神々しい魔力。


 空間を。


 満たす。


 グラン。


「……」


 エレノア。


「……」


 カミル。


「……」


 周囲の神々。


「……」


 アルテナ。


 ゆっくり。


 右手を。


 上げる。


「……我が掌に集え」


 空間が。


 震える。


「万象を構成する」


「全ての境界よ」


 光。


 アルテナの。


 指先へ。


 集まる。


「存在と」


「非存在」


「有限と」


「無限」


「その狭間に」


 神々の。


 顔が。


 真剣になる。


「……おい」


 グランが。


 呟く。


「アル」


「なに?」


「……これ」


「かなりヤバい系か?」


「大丈夫」


「その返事が一番怖ぇんだよ」


 アルテナ。


 両手を。


 広げる。


 そして。


「――境界を穿て」


 星々が。


 一瞬。


 遠ざかる。


「零へ収束し」


「ただ一点に」


「無限を刻め」


 空間。


 大きく。


 歪む。


「――我が名の下に」


「その矛盾を」


「現界せよ」


 アルテナ。


 片手を。


 前へ。


 突き出す。


「――」


 静寂。


 そして。


 アルテナは。


 技名を。


 告げた。


「――《δ(x)=0 (x≠0)》」


 空間。


 凍結。


「――《δ(0)=∞》」


「…………」


 グラン。


「…………」


 エレノア。


「…………」


 カミル。


「…………」


 周囲の神々。


 全員。


 停止。


「……」


 アルテナ。


「……」


 首を傾げる。


「どう?」


 グラン。


「……」


「……アル」


「なに?」


「……」


 グラン。


 指を。


 空間へ。


 向ける。


「……技」


「うん」


「……」


「……何が起きるんだ?」


 アルテナ。


「?」


「……何?」


「いや!」


 グランが。


 思わず叫ぶ。


「俺が聞きてぇんだよ!!」


 エレノア。


「アルちゃん」


「なに?」


「技名」


「うん」


「……それ」


「数式?」


「うん」


「……」


 エレノア。


 頭を抱える。


「……厨二病が」


「新しい領域に行っちゃった」


 アルテナ。


「え?」


 カミル。


 静かに。


 アルテナを見る。


「……アル」


「なに?」


「……我には」


「理解できぬ」


「うん」


 アルテナ。


 即答。


「私も」


「……」


「え?」


「よく分かんない」


「分かんねぇの!?」


 グラン。


 絶叫。


「なんで使ったんだよ!?」


「かっこいいから」


「理由が厨二病の神すぎるだろ!!」


 その瞬間。


 アルテナの前。


 光。


 ぽつん。


 現れる。


「……?」


 アルテナ。


 前を見る。


「……」


 何も。


 起きない。


「……」


 グラン。


「……何も起きねぇな」


「うん」


 エレノア。


「……失敗?」


「うーん」


 アルテナ。


 少し考える。


「たぶん」


「……」


「……?」


「……成功?」


「疑問形やめろ」


 グラン。


 即答。


 そのとき。


 アルテナ。


 光を。


 指で。


 つん。


 触った。


「……」


 次の瞬間。


 ずん。


「「「「「「……?」」」」」


 何もない。


 何も。


 起きていない。


 だが。


 アストラル・レルムの。


 地面。


 巨大な。


 クレーターが。


 一点。


 だけ。


 出現していた。


「…………」


 グラン。


「…………」


 エレノア。


「…………」


 カミル。


「…………」


 アルテナ。


 クレーターを見る。


「……」


「……一点に」


 小さく。


 呟く。


「……無限?」


「説明書みたいに確認すんな!!」


 グラン。


 全力で。


 叫んだ。


 そして。


 アルテナ。


 空を見上げる。


「……」


 少しだけ。


 笑った。


「……かっこよくない?」


「……」


 グラン。


「……」


 エレノア。


「……」


 カミル。


 数秒後。


 エレノア。


「……うん」


「ほんと?」


「……意味は分からないけど」


「うん」


「……厨二病としては」


 一瞬。


 間。


「……満点」


 アルテナ。


「やった!」


 グラン。


「褒めるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 カミル。


「……我は」


「うん」


「……もう慣れた」


「……」


「…………」


 その直後。


 別の神が。


 震える声で。


「……あの」


「はい」


 アルテナ。


 振り返る。


「……今の地面」


「はい」


「……誰が直すのですか?」


 全員。


 沈黙。


 グラン。


「……」


「……次の技名」


「?」


「……せめて」


「?」


「……読めるやつにしてくれ」


 アルテナ。


 少し考える。


「……」


「無理かも」


「即答すんな!!」


 アストラル・レルムに。


 破壊神の。


 叫び声が。


 今日も。


 響き渡った。


 アストラル・レルム。


 巨大なクレーター。


 その中心を。


 アルテナが見下ろしていた。


「……」


 グランが。


 ゆっくり口を開く。


「……で」


「うん」


「誰が直す?」


 アルテナ。


「私」


「おう」


 グランが頷く。


「じゃあ頼んだ」


「うん」


 アルテナは。


 巨大な穴の縁へ。


 ゆっくりと歩いていく。


 そして。


 片手を。


 地面へ向けた。


「――壊れたものは、元へ」


 淡い光が。


 指先に集まる。


「――失われた形は、再びここへ」


 地面の下から。


 光。


 ふわっ。


 次の瞬間。


 ばきっ。


 ごごごごごごご……。


「……」


 グラン。


「……」


 エレノア。


「……」


 カミル。


 クレーターの底。


 崩れた岩。


 土。


 地面。


 すべてが。


 ゆっくり。


 持ち上がっていく。


 まるで。


 時間が。


 逆再生しているように。


 だが。


 アルテナは。


 さらに。


 指先を。


 動かす。


「ここ」


 地面が。


 盛り上がる。


「もうちょっと右」


 ぐぐぐ。


「そこじゃない」


 ぐいっ。


 地面。


 横に移動。


「……」


 グラン。


「……アル」


「なに?」


「……お前」


「うん」


「地面を」


「手で直してない?」


「?」


 アルテナ。


 首を傾げる。


「魔法だけど?」


「いや、そういう意味じゃねぇよ」


 アルテナ。


 巨大なクレーター。


 じっと見る。


「……ここ」


 指先。


 ちょん。


 地面。


 ぐぐぐぐぐ。


「うん」


 次。


「ここ」


 ぐぐ。


「うん」


 さらに。


「ここも」


 ぐぐぐ。


 完全に。


 職人。


「……」


 エレノア。


「アルちゃん」


「なに?」


「もっとこう……」


「うん」


「一気に直せない?」


「できるよ?」


「じゃあ何で一部分ずつ?」


「そのほうが楽しい」


「神様の遊び方じゃないのよ」


 アルテナ。


 真剣な顔。


「でも」


「うん」


「こうやって」


 地面。


 ぐいっ。


「ここを」


 ぴたっ。


「合わせるの」


 少しだけ。


 嬉しそう。


「楽しい」


「……」


 グラン。


 頭を抱えた。


「……厨二病の神が」


「うん」


「今度は」


「?」


「地面職人になった」


「職人じゃないよ」


「何なんだよ」


 アルテナ。


 少し考える。


「……」


「守護神?」


「合ってるけどそうじゃねぇ!!」


 そして。


 数分後。


 アストラル・レルムの地面。


 完全復活。


 傷一つない。


「できた!」


 アルテナ。


 満足そうに。


 両手を上げる。


「……」


 グラン。


 地面を見る。


「……」


 足で。


 軽く。


 とん。


 とん。


「……ちゃんと直ってる」


「うん!」


「……」


 エレノア。


 笑いながら。


「アルちゃん」


「なに?」


「さっきの技」


「うん」


「ものすごい威力だったのに」


「うん」


「最後」


「?」


「地面をちまちま直してるの」


 アルテナ。


「?」


「何?」


 エレノア。


「……ギャップがすごい」


 カミル。


 静かに。


 頷いた。


「……我もそう思う」


 グラン。


「……《δ(0)=∞》で地面を消し飛ばして」


「うん」


「その後」


「うん」


「『ここちょっと右』ってやって直してる守護神」


「……」


 アルテナ。


 少し考える。


「……かっこよくない?」


「かっこよくはねぇ!!」


 グラン。


 即答。


「でも」


 アルテナ。


 直した地面を。


 見下ろす。


「ちゃんと元通り」


「……まあ」


 グラン。


 少しだけ。


 笑う。


「……それが」


 守護神らしいところなんだろうな」


 アルテナ。


 ぱっと。


 笑顔になる。


「でしょ!」


 エレノア。


「……でも」


「なに?」


「次からは」


「うん」


「壊す前に」


「?」


「ちょっと考えようね?」


 アルテナ。


「……」


 少し考える。


「……善処します」


 グラン。


「絶対考えねぇ返事だろそれぇぇぇぇぇ!!」


 今日も。


 アストラル・レルムは。


 平和だった。

δ(x)=0 (x≠0) δ(0)=∞


読み方:ディラック・デルタ・バースト



かっこよくないですか?笑

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。