世界集成体降臨☆
世界修正体が一歩踏み出しただけで、大地が大きく揺れた。
周囲の飛竜たちは空高く飛び去っていく。
まるで、自分たちでは敵わないと理解しているようだった。
「飛竜が逃げた……?」
千乃は空を見上げる。
「つまり、あいつのほうが強いってことか。」
真銀は剣を握り直した。
「久しぶりに歯ごたえがありそうだ。」
「その言い方、ちょっと危ない人みたい。」
二人は笑う。
だが、その直後だった。
世界修正体が腕を振り下ろす。
轟音。
渓谷の岩壁が砕け、巨大な岩が雨のように降り注ぐ。
「危ない!」
真銀が千乃の腕を引く。
二人は間一髪でかわした。
「ありがとう。」
「礼はあとだ。」
世界修正体は止まらない。
二本目の腕を振るう。
空気そのものが押し潰されるような衝撃。
真銀は剣で受け止める。
「ぐっ……!」
地面に足がめり込む。
重い。
今までの敵とは比べものにならない。
「真銀!」
「大丈夫だ!」
押し返そうとしても、びくともしない。
「力負け……か。」
その瞬間。
千乃の表情が変わった。
「真銀から離れて。」
静かな声だった。
世界修正体は反応しない。
巨大な腕をさらに押し込む。
「だったら。」
千乃はノートを開いた。
「久しぶりに本気でいこうかな。」
ページをめくる。
そこには、昔の自分が一番お気に入りだった技が書かれていた。
「世界崩閃。」
赤い魔力が渦を巻く。
真紅の光が空を染める。
千乃の周囲だけ、風向きが変わった。
世界修正体が初めて動きを止める。
「危険度……上昇。」
「脅威認定。」
「排除優先順位……変更。」
「もう遅いよ。」
千乃が手を前へ伸ばす。
真紅の光が一直線に走る。
それは爆発ではない。
斬撃でもない。
空間そのものを一直線に切り裂く光だった。
世界修正体の右腕が消えた。
「……え?」
千乃自身が一番驚いていた。
「消えた?」
切れたのではない。
跡形もなく消失した。
真銀も思わず目を見開く。
「今のはさすがに反則だろ。」
「私もそう思う。」
二人は顔を見合わせる。
だが、世界修正体は腕を失っても止まらない。
胸の真紅の核が強く輝き始めた。
「自己修復開始。」
失われた腕が再生する。
「再生するの!?」
「面倒だな。」
真銀は深く息を吸った。
「なら、核を狙う。」
「分かった!」
二人は同時に駆け出す。
真銀が正面から斬りかかる。
世界修正体は迎え撃つ。
その隙に千乃が側面へ回る。
「今!」
「任せろ!」
真銀の剣が核をかばう腕を弾き飛ばす。
千乃は迷わず右手を突き出した。
「終焉紅閃。」
真紅の光が一点へ収束する。
次の瞬間。
核を貫いた。
世界修正体は大きく震える。
全身にひびが広がる。
「修正……失敗……。」
その声を最後に、巨大な身体は光の粒となって消えていった。
静寂が戻る。
渓谷には風だけが吹いている。
「終わった……?」
千乃は大きく息を吐く。
「終わったみたいだな。」
真銀も剣をしまう。
二人がその場に座り込んだ、そのときだった。
空の高い場所で、小さなひびが入る。
誰も気づかないほど小さなひび。
しかし、その向こう側では。
「第一世界修正体、消滅を確認。」
「次段階へ移行。」
感情のない声が静かに響いた。
世界は、一体だけで終わるつもりはないようだった。




