一安心(?)
この、「ちのかれ!」。
なろうフェス2026に応募してるのですが・・・このままだとピンチです!!
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星氷神城へ戻ると。
城の中から、ララとライ、そしてアイシィが駆けてきた。
「主ー!」
ララが真っ先に千乃へ飛びつく。
「おかえり、千乃!」
「ただいま、ララ」
千乃はララを抱き上げる。
続いてライがゆっくり歩いてくる。
「おかえり、千乃」
「ただいま、ライ」
ライは千乃の隣に並ぶと、じっとカミルを見る。
「……」
「……」
カミルもライを見る。
「……我はカミルだ」
「そうか」
ライは短く頷いた。
「よろしく、カミル」
「こちらこそ」
その横から、アイシィが丁寧に頭を下げる。
「おかえりなさい、千乃さん」
「ただいま、アイシィ」
アイシィもカミルへ視線を向ける。
「そして……カミル様も、おかえりなさいませ」
「うむ」
カミルが頷く。
「我も戻ってきた」
「はい。無事で何よりです」
ララが首を傾げる。
「ねえねえ、カミルってずっとこの姿なの?」
「必要がない限りは、この姿でいることになった」
カミルは自分の白い髪を軽く触る。
「我もこの姿のほうが動きやすいからな」
「へー!」
ララがカミルの周りをぐるぐる回る。
「人間みたい!」
「我は神龍だ」
「でも人間みたい!」
「……」
カミルが少し困った顔をする。
「まあ、そうだな」
千乃が笑う。
「ララ、あんまりカミルを困らせちゃ駄目だよ」
「はーい!」
ライが小さく息を吐いた。
「相変わらず元気だな」
「ララだもん!」
そんな光景を眺めながら。
千乃は、ふと城を見上げた。
「……帰ってきたなぁ」
真銀が隣に立つ。
「ああ。やっぱりここが落ち着くな」
「うん」
そのとき。
「おかえりなさいませ、千乃様、真銀様!」
城の使用人たちの声が響いた。
千乃は笑顔で手を振る。
「ただいま!」
真銀も微笑んだ。
「ただいま」
そして。
「……ところで」
ララが千乃の服をくいくいと引っ張る。
「お腹すいた!」
アイシィが穏やかに微笑む。
「帰りましたら、みんなでゆっくり食事にしましょうか」
「賛成!」
「俺も賛成だ」
「我も異論はない」
「俺もだ!」
カイルが勢いよく手を挙げる。
ララが振り返る。
「おまけ勇者も?」
「だから俺はおまけじゃない!!」
城内に、カイルの叫び声が響き渡った。
食事を終えたあと。
カイルは、廊下をとぼとぼ歩いていた。
「……」
その顔は、いつもの自信満々なものではない。
むしろ。
ものすごく不満そうだった。
「……なんでだ」
ぽつり。
「なんで俺の周りには、イケメンが二人もいるんだ……」
前を歩いていた真銀。
その隣には、白髪に青い瞳のカミル。
二人が並んでいる。
「……」
カイルは足を止めた。
「キャラが被ってる……」
拳を握る。
「金髪イケメン勇者!」
自分を指差す。
「白髪イケメン神龍!」
カミルを指差す。
「そして黒髪系イケメン主人公!」
真銀を指差す。
「多すぎるだろぉぉぉぉぉ!!」
廊下に響き渡る絶叫。
真銀が振り返る。
「……何してるんだ?」
「悩んでるんだよ!!」
「何を?」
「俺の存在意義だよ!!」
「……」
真銀は少し考える。
「勇者として頑張ればいいんじゃないか?」
「そういう正論が一番刺さるんだよ!!」
カミルが首を傾げる。
「我とお前は、別の存在だろう」
「そういう問題じゃない!!」
カイルは頭を抱える。
「くそぉ……!」
「俺はイケメン勇者……」
ぶつぶつ。
「俺は勇者……」
さらにぶつぶつ。
「俺は……」
そして。
「……もういい」
カイルはくるりと踵を返した。
「部屋に帰る」
「カイル?」
「今日は誰とも話さない」
「え?」
「俺は自分自身と向き合う」
「急にどうした」
真銀が困惑する。
カイルはそのまま自室へ向かう。
扉の前まで来ると。
くるっ。
振り返った。
「俺は……俺だけの輝きを探す!!」
バタン!!
扉が閉まった。
廊下に静寂が落ちる。
真銀とカミルが顔を見合わせる。
「……大丈夫か?」
「さあな」
その頃。
部屋の中。
カイルはベッドに倒れ込んでいた。
「……俺だって……」
枕を抱える。
「俺だってイケメンなのに……」
ごろん。
「俺だって……」
ごろん。
「……二人もいらないだろ……」
しばらくして。
鏡の前に立つ。
「……」
じっと自分を見る。
「……やっぱり俺、イケメンだな」
少し元気を取り戻す。
「うん」
髪を整える。
「間違いない」
しかし。
ふと脳裏に、真銀とカミルの姿が浮かぶ。
「……」
また沈む。
「……でも二人いるんだよなぁ……」
カイルは鏡に背を向けた。
「もう今日は引きこもる……」
そしてベッドへ戻る。
その日。
カイルは本当に部屋から出てこなかった。
翌朝。
ようやく。
カイルの部屋の扉が開いた。
ギィ……。
「……」
カイルがゆっくり顔を出す。
髪は少し乱れている。
服装もいつもの勇者らしい格好ではあるが、どこか元気がない。
「……おはよう」
廊下にいた千乃が振り返った。
「あ、カイル。おはよ!」
「……千乃」
「どうしたの?」
カイルはしばらく黙っていた。
そして。
「……俺さ」
「うん?」
「勇者なんだよな?」
「うん」
「イケメンなんだよな?」
「うん」
「……じゃあ、なんで……」
カイルの目が潤み始める。
「なんで俺より目立つイケメンが二人もいるんだよぉぉぉぉぉ!!」
「えぇ!?」
突然の号泣。
「うわぁぁぁぁん!!」
カイルはその場にしゃがみ込む。
「俺だって……俺だって頑張ってるのにぃぃぃ!!」
「カイル!?」
「真銀は主人公だから仕方ない!!」
「なんで俺が主人公扱いされてるんだ?」
少し離れたところにいた真銀が困惑する。
「でもカミルはなんだよぉぉぉ!!」
カミルを指差す。
「白髪!! 青い目!! イケメン!! しかも神龍!!」
「……」
「設定が強すぎるだろぉぉぉ!!」
カミルは困ったように瞬きをする。
「我に言われても困る」
「しかも名前まで俺とちょっと似てるし!!」
「そこまで似ているか?」
「カイル! カミル! ほら似てる!!」
「……確かに」
真銀が頷く。
「そこはちょっと分かる」
「だろぉぉぉ!?」
カイルはさらに泣く。
「俺の居場所がないよぉぉぉ!!」
そこへララがやってきた。
「カイル、泣いてるの?」
「ララぁ……!」
「元気出して!」
ララがぽんぽんと肩を叩く。
「カイルはカイルだよ!」
「ララ……!」
「うん!」
カイルの顔が少し明るくなる。
「俺は……俺……」
ララがにこっと笑う。
「おまけ勇者!」
「なんでだよぉぉぉぉぉ!!」
再び号泣。
「ララ、追い打ちかけちゃ駄目だよ!」
千乃が慌てて止める。
「だってユラもそう呼んでるよ?」
「それはそうだけど!」
ライが静かに口を開く。
「……まあ、落ち着け」
「ライぃ……!」
「お前にも勇者としての役割はある」
「本当か!?」
「ああ」
「俺にも居場所が!?」
「ただし」
ライが淡々と続ける。
「騒ぎすぎるのはやめろ」
「……」
「あと、ナルシストも少し控えろ」
「……」
カイルは涙を拭った。
「……難しいな」
「そこは即答するな」
真銀が思わず笑う。
カイルは鼻をすすりながら、もう一度だけ真銀とカミルを見る。
「……でも」
「ん?」
「やっぱり二人ともイケメンすぎる……」
「まだ言うのか」
「だってぇ……!」
また涙がこぼれる。
「俺だってイケメンなのにぃ……!」
千乃は頭を抱えた。
「……今日も平和だなぁ」
「どこがだ!?」
昼過ぎ。
カイルは、気分転換のために城下町へ出ていた。
「……今日は、俺のことをちゃんと勇者として見てもらう」
拳を握る。
「そうだ。俺は勇者だ。イケメンで、強くて、頼れる――」
そこまで言ったところで。
近くにいた町人が、ひそひそと話している。
「ねえ、あれって……」
「うん」
「おまけの金髪勇者がグズってるよ?」
「聞こえてるぞぉぉぉぉぉ!!」
カイルの肩が震える。
「……おまけ」
ぷるぷる。
「金髪勇者……」
ぷるぷる。
「グズってる……」
そして。
「びょえええええええええええええっっっっっっっ!!!」
大号泣。
「俺はおまけじゃないぃぃぃぃぃ!!」
街中に響き渡る。
「俺は勇者だぁぁぁぁぁぁ!!」
「泣いてる」
「本当にグズってるじゃん」
「誰か千乃様呼んできて!」
「いや、これは千乃様じゃないと無理だろ!」
「びょええええええええええ!!」
カイルは道の真ん中で泣き続ける。
そのとき。
人混みの向こうから、千乃が歩いてきた。
「……」
状況を見た。
泣いているカイル。
周囲を囲む町人。
完全に騒ぎになっている城下町。
千乃は静かに近づいた。
「カイル」
「千乃ぉぉぉぉ!!」
カイルが泣きながら振り返る。
「俺はおまけじゃないんだよぉぉぉ!!」
「うんうん」
「俺は勇者なのにぃぃぃ!!」
「うん」
「みんな俺のことおまけってぇぇぇ!!」
「うん」
千乃はしゃがんで、カイルの肩をぽんぽん叩く。
「……帰ろっか」
「嫌だぁぁぁ!!」
「帰ろ」
「まだ俺はここで――」
千乃はカイルの腕を掴んだ。
「帰るよ」
「えっ」
ずる。
「ちょ、千乃!?」
ずるずる。
「待って! 自分で歩くから!」
「じゃあ歩いて」
「……」
歩かない。
千乃は無言で引っ張る。
「ずるずるずるずる……」
「千乃ぉぉぉぉぉ!!」
町人たちが見送る。
「連行されてる……」
「千乃様、大変だなぁ……」
「勇者様、頑張れ……」
「びょええええええええ!!」
そのまま。
カイルは星氷神城までズルズルと引きずられていった。
◇
城内。
「……カイル」
「はい」
千乃が腕を組む。
「城下町で大号泣するの、何回目?」
「……」
「答えて」
「……二回目です」
「今回で?」
「三回目です」
「増えてるじゃん」
「はい……」
カイルはしょんぼり俯く。
「みんなに笑われて……」
「笑われたんじゃなくて、心配されたんだよ」
「……」
「勇者なんだから、もうちょっと堂々としてて」
「でも……」
「でも?」
「真銀もカミルもイケメンで……」
「そこはもういいでしょ」
「はい……」
「それに」
千乃は少し笑う。
「カイルはカイルじゃん」
「……」
「真銀は真銀。カミルはカミル。カイルはカイル」
「……俺は俺」
「そう」
「……」
カイルは少しだけ顔を上げる。
「俺は……俺だけの勇者……」
「うん」
「俺だけの……」
そして。
「イケメン……」
「そこはまだ言うんだ」
「譲れない」
「そこは譲れないんだ……」
千乃はため息をついた。
「とにかく、もう城下町で泣かないこと」
「……はい」
「約束」
「約束します」
カイルは神妙な顔で頷いた。
しかし。
「……でも、おまけって言われたら?」
「泣かない」
「……」
「泣かないよ?」
「……努力します」
「絶対だからね?」
「はい……」
こうして。
カイルは千乃から、しっかりお説教を受けたのだった。




