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ドタバタドタバタ

 翌朝。


 星氷神城アストラルグレイシアの廊下に、けたたましい声が響き渡った。


「悪魔だぁぁぁぁぁ!!」


 千乃が自室から顔を出す。


「……?」


 廊下の向こうから、カイルがものすごい勢いで走ってくる。


「千乃! 大変だ!」


「どうしたの?」


「悪魔がいる!!」


「うん」


「うんじゃない!!」


 カイルが指を震わせる。


「しかも二体!! 黒い翼! 角! 赤い目! 完全に悪魔じゃないか!!」


「まあ、悪魔だからね」


「認めた!?」


 その後ろから、ルシアとルシファーがゆっくり歩いてくる。


 ルシアは黒髪のボブ。


 赤い瞳。


 背中には黒い悪魔の翼。


 額には二本の黒い角。


 ルシファーは赤いメッシュの入った髪に、同じく赤い瞳。


 そして、二人ともどこか余裕のある表情をしていた。


 カイルが勇者の剣に手をかける。


「悪魔め……!」


 その瞬間。


「待って」


 千乃が間に入った。


「この二人は大丈夫だよ」


「しかし!」


「私が召喚したから」


「……」


 カイルの動きが止まる。


「召喚……?」


「うん。昨日、遊びで」


「遊びで悪魔を召喚するな!!」


 城中にカイルの声が響く。


 ルシアが少しだけ眉をひそめた。


「朝からうるさいね」


「本当に」


 ルシファーも頷く。


「ところで、君」


 カイルを見る。


「僕らの主に向かって、ずいぶん大きな声を出すね」


「俺は勇者だぞ!?」


「そう」


 ルシファーは一切動じない。


「おまけ様だね」


「…………は?」


 ルシアも頷く。


「おまけ様」


「待て」


「おまけ様」


「待ってくれ」


「千乃がそういう扱いをしているなら、僕らもそれに合わせよう」


「いや待て!!」


 カイルが頭を抱える。


「俺は勇者だ! 魔王を倒した実績もある! イケメンだ! この俺をおまけ扱いするな!」


「「おまけ様」」


「様を付ければいいって問題じゃない!!」


 千乃は思わず吹き出す。


「ふふっ」


「千乃まで笑うな!」


 カイルが叫ぶ。


 その騒ぎを見て、ルシアが小さく息を吐いた。


「まあ、安心して」


「……何がだ?」


 ルシアとルシファーが、ほぼ同時にカイルを見る。


「「攻撃はしませんよ。千乃に危害を加えない限りは」」


 笑顔だった。


 けれど。


 二人の背後に浮かぶ黒い翼が、ゆっくりと揺れる。


 カイルの額に、冷や汗が一筋流れた。


「…………」


 勇者はそっと剣から手を離した。


「……俺、千乃に危害を加える予定はないからな」


「なら大丈夫」


「うん」


 ルシアとルシファーは何事もなかったように歩き出す。


 カイルはその背中を見送りながら、小さく呟いた。


「……この城、俺の居場所ある?」


 千乃は即答した。


「あるよ」


「本当か!?」


「おまけ様の部屋」


「だからそれやめろ!!」


 そのときだった。


「――む?」


 廊下の奥から、低い声が響いた。


 次の瞬間。


 ドドドドドドドドッ!!


 何かがものすごい勢いで走ってくる。


「悪魔の気配がする!!」


 千乃たちが振り返る。


「ミル?」


 純白の巨体が、廊下の向こうから突っ込んでくる。


「我の城に悪魔がいると聞いた!!」


「いや、ここ私の城なんだけど」


「今はそれどころではない!」


 神龍カミル。


 純白の身体に、紅い瞳を持つ神龍。


 そのカミルが、ルシアとルシファーを見た瞬間。


「――ッ!?」


 びくっ。


 翼が大きく跳ね上がる。


「悪魔……!」


「だから悪魔だって言ってるだろ!」


 カイルが便乗する。


「「おまけ様は黙ってて」」


「なんでお前らまで!?」


 カミルは二人から距離を取ろうとする。


「千乃! 何故このような危険な者たちが我の前にいる!?」


「召喚したから」


「召喚!?」


 カミルがさらに慌てる。


「上位種を!? 二体も!?」


「うん」


「しかも、双子!?」


「うん」


「なんということだ……!」


 カミルが後ずさる。


 一歩。


 二歩。


 三歩。


「落ち着いて、ミル」


「落ち着けるか!!」


 カミルの魔力が暴れ始める。


 純白の身体が眩い光に包まれた。


「え?」


 千乃が目を細める。


「ミル?」


「我は……神龍だぞ……!」


 光がさらに強くなる。


「この程度のことで取り乱している場合では……!」


 バシュンッ!!


 光が弾けた。


 そこに立っていたのは。


 白い髪。


 青い瞳。


 整った顔立ち。


 すらりとした長身。


 完全な人型になった、一人の青年だった。


「…………」


 全員が固まる。


 カミル本人も固まる。


「……?」


 自分の手を見る。


 そして身体を見る。


「…………我、人になっている?」


 千乃が目を丸くする。


「ミル、人化できたの!?」


「どうやら……そのようだ」


 カミルは自分の白髪を触る。


「先ほどの混乱で、何かを習得したらしい」


「すごい!」


「うむ」


 カミルは少し得意げに頷いた。


「これより、必要なとき以外はこの姿でいるとしよう」


「うん、それがいいかも」


 そして。


 カイルがカミルの顔を見る。


 青い目。


 白い髪。


 整った顔。


「…………」


 ぷるぷる。


「…………」


 カイルの肩が震える。


「……青い目」


「?」


「イケメン」


「……?」


「名前も似てる!!」


「我の名はカミルだが」


「キャラ被りだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 城が震えた。


「俺はカイル!! イケメンの勇者、カイルだ!!」


「知っている」


「なのに何で新しく青い目のイケメンが増えるんだ!!」


「知らん」


「しかも白髪!! 神龍!! 名前までカミル!! 俺のアイデンティティがぁぁぁぁ!!」


「お前のアイデンティティはそこなのか?」


 真銀が呆れた顔をする。


「そうだ!!」


「うるさい」


「真銀まで!?」


 しかし。


 その直後。


 真銀がカミルを見る。


 白髪。


 青い瞳。


 整った顔。


 長身。


「…………」


 真銀の顔が変わった。


「……その男、誰だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


「!?」


 今度は千乃が振り返る。


「ミルだよ!?」


「ミル!?」


「神龍カミル!」


「男になってるじゃねぇかぁぁぁぁ!!」


「人化したんだって!」


「聞いてない!!」


「今なったばっかりだもん!」


「何でそんなイケメンなんだよ!!」


「知らないよ!!」


 千乃も負けじと叫ぶ。


「真銀だってイケメンだもん!!」


「「「…………」」」


 静寂。


 真銀が固まった。


 千乃も固まった。


 ルシアが小さく笑う。


「……千乃、急に惚気るんだ」


「だって本当だもん!」


「そうだね」


 ルシファーも頷く。


「真銀も十分イケメンだと思うよ」


「だろ!?」


 真銀が食い気味に反応する。


「そこは譲らないからな!」


「俺だって譲らん!!」


 カイルが叫ぶ。


「我も別に競うつもりはないのだが」


 カミルが困惑する。


「カミル、お前も自分がイケメンだと認めろ!」


「何故だ!?」


「そこは認めろ!!」


「嫌だ!!」


「なんでだよ!!」


「我は神龍だぞ!!」


「今は人型だろ!!」


「そういう問題ではない!!」


 ルシアが頭を抱える。


「……朝から何をしてるの、これ」


 ルシファーも遠い目をする。


「僕らが召喚された時点で十分騒がしかったのに」


 そこへ。


「朝食の準備ができましたら、皆さんでゆっくり食事にしましょうか」


 アイシィが通りかかった。


 そして廊下の惨状を見る。


 悪魔の双子。


 人型になった神龍。


 ナルシスト勇者。


 叫ぶ真銀。


 叫ぶ千乃。


「…………」


 アイシィは少しだけ微笑んだ。


「……賑やかで何よりですね」


 こうして。


 星氷神城アストラルグレイシアの朝は。


 **過去最高レベルにカオスだった。**


 そして。


 廊下の騒ぎを聞きつけた、ララとライがやってきた。


「なにー!? 朝からうるさいよー!」


「……何事だ」


 二人が廊下へ出た瞬間。


 ぴたり。


 動きが止まる。


 目の前にいるのは、見覚えのない白髪の青年。


 青い瞳。


 整った顔立ち。


 その姿を見たララが叫ぶ。


「だ、誰ぇぇぇぇぇ!?」


「……知らない男がいる」


 ライも警戒する。


「主」


「ん?」


「こいつは誰だ」


「ミル」


「……は?」


 ライの耳がぴくっと動く。


「ミル?」


「神龍カミルだよ」


「…………」


 ライが青年をじっと見る。


「……神龍?」


「うむ」


 カミルが頷く。


「我だ」


「…………」


 ライは無言でカミルの周囲を一周する。


「本当に?」


「本当だ」


「……」


 ライが千乃を見る。


「主」


「うん」


「何故、人になっている」


「さっき覚えたみたい」


「そうか」


 ライは一度頷いた。


 そして。


「納得できるかぁぁぁぁぁ!!」


「ライ!?」


 普段冷静なライが吠えた。


「昨日まで巨大な神龍だっただろう! 何故いきなり白髪の青年になっている!!」


「人化を習得したのだ」


「習得したのだ、ではない!!」


 ララもカミルの周囲をぐるぐる回る。


「本当にミルなの?」


「我だ」


「でもミルってもっと大きかったよ?」


「それは本来の姿だ」


「じゃあ、ちっちゃくなったの?」


「人型になった」


「ふーん……」


 ララがカミルの顔をじーっと見る。


「……」


「……」


「……イケメンだね」


「そうか?」


「うん!」


 ララが笑う。


 そして突然、カイルを振り返る。


「カイルとイケメンが二人になった!」


「違う!!」


 カイルが即座に叫ぶ。


「俺が本物のイケメン勇者だ!!」


「でもミルもイケメンだよ?」


「やめろララ!!」


 ライがため息をつく。


「……また面倒なことになったな」


 すると、ララが思い出したようにカミルを見る。


「ねえミル!」


「なんだ?」


「人になったなら、一緒にご飯食べられるね!」


「……そうだな」


「やったー!」


 ララがぴょんっと跳ねる。


 ライも少し考えてから頷いた。


「まあ……姿が変わっただけなら、仲間であることに変わりはない」


「うむ」


 カミルが微笑む。


「これからもよろしく頼む」


「うん!」


「こちらこそ」


 ようやく平和になった。


 ……と思った瞬間。


「でもさ」


 ララが首を傾げる。


「なんで男の人がこんなに増えてるの?」


「…………」


 千乃が周囲を見る。


 真銀。


 カイル。


 カミル。


 ルシファー。


 そして少し離れたところにいるルシア。


「……確かに」


「主、そこに気づくのか」


 ライが呆れる。


「だって、昨日までこんなにいなかったし」


「「「…………」」」


 男たちが顔を見合わせる。


 そしてカイルが胸を張った。


「俺は元からいた!」


「知ってる」


「そして俺はイケメン!」


「はいはい」


「雑!」


 ララが笑う。


「朝から楽しいね!」


 ライは深々とため息をついた。


「……この城、静かな朝はもう二度と来ない気がする」


 その横で。


 アイシィが穏やかに微笑んだ。


「では、朝食へ参りましょうか。冷めてしまいますよ」


「「「はーい!」」」


 こうして。


 **星氷神城の朝は、今日も平和だった。**


 たぶん。


 その日の昼。


 千乃たちは、星氷神城アストラルグレイシアを出て、星霜王国の城下町へ向かっていた。


 先頭を歩く千乃。


 その隣に真銀。


 少し後ろにカミル、カイル、ルシア、ルシファー。


 さらにララとライ、アイシィが続いている。


 城門を抜ける。


 いつもの賑やかな街並み。


 商人の呼び声。


 冒険者たちの談笑。


 子どもたちの笑い声。


 そこまでは、いつも通りだった。


 しかし。


 カミルが街へ一歩入った瞬間。


「…………」


 近くにいた女性が、ぴたりと動きを止めた。


「……え?」


 その視線がカミルへ向く。


 白い髪。


 青い瞳。


 整った顔。


 長身。


「…………」


 女性の口が、ゆっくり開く。


「……知らないイケメンがいるぅっ!?」


「!?」


 街中の視線が一斉に集まった。


「どこ!?」


「えっ、あの白髪の人!?」


「誰!?」


「知らない!!」


「めちゃくちゃイケメンじゃん!!」


「青い目だ!!」


「真銀様と同じくらいのイケメンがぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!!」


 街が一瞬で沸騰した。


「なんだなんだ!?」


「新しい貴族様!?」


「いや、あんな人見たことないぞ!」


「王族の関係者!?」


「待って、あの人めちゃくちゃ顔がいい!」


「白髪似合いすぎでしょ!?」


「真銀様と並んで歩いてる!!」


 真銀がぴくっと反応する。


「……俺と同じくらい?」


 千乃が隣から顔を覗き込む。


「うん! 真銀と同じくらい!」


「…………」


 真銀が少しだけ満足そうになる。


 しかし。


「でもカミルもかっこいいね!」


「…………」


 真銀の表情が微妙になった。


「千乃」


「なに?」


「俺は?」


「だから同じくらいだって!」


「ならいい」


 そのやり取りを見ていたカイルが叫ぶ。


「待てぇぇぇぇぇ!!」


 街中に声が響き渡る。


「なぜ俺の名前が一度も出てこない!?」


「……誰?」


 街の女性が首を傾げた。


「勇者だ!!」


「勇者?」


「カイルだ!!」


「ああ……」


「その反応はなんだ!?」


 ルシファーが隣で笑う。


「おまけ様、人気ないね」


「おまけ様言うな!!」


 ルシアも頷く。


「でも、千乃様がそう呼んでいますから」


「お前まで!?」


 さらにララがカミルの腕を引っ張る。


「ミル、こっち!」


「うむ」


 カミルが歩く。


 すると街の人々がさらにざわついた。


「笑った!」


「笑ったよ!」


「破壊力高すぎない!?」


「誰なのあの人!?」


「真銀様の隣にいるってことは、かなり重要人物なんじゃ……」


 ライが周囲を見渡す。


「……予想以上だな」


「ですね」


 アイシィも困ったように微笑む。


「カミル様が人型になったことで、街が随分と賑やかになりましたね」


「我は何もしていないのだが……」


 カミルが困惑する。


 千乃はそんなカミルを見て笑った。


「ミル、すごい人気じゃん」


「我としては、少々落ち着かない」


「そのうち慣れるよ」


「そうだろうか」


 その瞬間。


「真銀様ぁぁぁぁぁ!!」


「千乃様ぁぁぁぁぁ!!」


 今度は別方向から歓声が飛んできた。


「お二人とも今日も素敵です!!」


「仲良しだぁぁぁ!!」


「お似合いです!!」


 真銀が千乃を見る。


「……俺たちも十分騒がれてるな」


「うん!」


 千乃は楽しそうに笑う。


 その隣では。


「……俺も勇者なんだけどなぁ」


 カイルが肩を落としていた。


 そして街の誰かが、ぽつり。


「……あの金髪の人、誰?」


「「おまけ様」」


 ルシアとルシファーが即答した。


「聞こえてるぞぉぉぉぉぉ!!」


 城下町は、今日も平和だった。


 ただし。


 **新たなイケメンの登場によって、平和の音量が限界突破!していた。**


 数日後。


 千乃たちは、隣国へ遊びに行くことになった。


 今回の同行者は、千乃、真銀、カミル、そしてカイル。


 ララ、ライ、アイシィ、ルシア、ルシファーは星氷神城でお留守番だ。


 そして。


 隣国の王都へ到着。


 大通りを歩く。


 真銀とカミル。


 その二人の間に千乃。


 さらに、その少し後ろをカイルが歩いている。


「わぁ……!」


 千乃が王都を見回す。


「こっちの王都も賑やかだね!」


「そうだな」


 真銀が頷く。


 カミルも静かに周囲を見渡す。


「星霜王国とはまた違った雰囲気だな」


「うん!」


 そして。


 通りの人々が、三人に気づいた。


「…………」


「…………」


「…………」


 一人。


 また一人。


 足を止める。


「……え?」


「ちょっと待って」


「真銀様じゃない?」


「え!? なんで隣国に!?」


 そして、カミルを見る。


「…………誰?」


「白髪……」


「青い目……」


「えっ」


「まさか……」


「真銀様に並ぶほどのイケメン!?」


 次の瞬間。


「誰だぁぁぁぁっっっっっ!?」


 王都中に響き渡る声。


「新しいイケメンだぁぁぁ!!」


「真銀様と並んで歩いてるぞ!!」


「しかも千乃様が二人の間にいる!!」


「何あの光景!?」


「目の保養が渋滞してる!!」


 千乃はきょとん。


「……?」


 真銀は苦笑。


「またか」


 カミルは困惑。


「我はそんなに騒がれるような姿なのか……?」


「たぶんね」


 千乃が笑う。


 そして。


「千乃様ぁぁぁ!!」


 聞き覚えのある声が飛んできた。


「……ん?」


 人混みをかき分けて現れたのは。


「千乃さぁぁぁぁん!!」


 ラブリー・スミスだった。


「ラブリーさん!?」


「お久しぶりですぅぅぅ!!」


 ラブリーは千乃のもとへ駆け寄る。


 そして、真銀とカミルを交互に見る。


「…………」


 数秒。


 沈黙。


 そして。


「並ぶと真銀さんのイケメンさがより引き立つぅぅっっっっっ!!!!!!!」


「なんで!?」


 真銀が叫ぶ。


「いや、だって!」


 ラブリーが二人を見比べる。


「カミルさんもものすごくイケメンなんですよ!?」


「そうだろうか」


「そうなんです!」


 しかしラブリーは真銀を見る。


「でも真銀さんはですね!」


 ぐっと拳を握る。


「千乃さんと並んだときの完成度が異常なんですよぉぉぉぉ!!」


「……」


 千乃が真銀を見る。


 真銀も千乃を見る。


「……まあ」


「うん」


 二人とも少し照れる。


 そこへ。


「俺は!?」


 後ろからカイルが割り込んできた。


「俺はどうなんだ!?」


 ラブリーが振り返る。


「あ、おまけ勇者さん」


「おまけじゃない!!」


 王都の人々もざわつく。


「勇者までいるぞ!」


「え、あの金髪の人?」


「そう!」


「……あの白髪の人のほうが目立ってない?」


「「それはそう」」


「俺の扱いぃぃぃぃ!!」


 カイルが頭を抱える。


 ラブリーはそんなカイルを完全に無視して、再び真銀とカミルを見る。


「いやぁ……」


 うっとりと眺める。


「本当にすごいですね……」


 真銀とカミル。


 その間に千乃。


 後ろにカイル。


 まるで王都の中心に突然現れた美形集団。


 周囲からは、


「真銀様ぁぁぁ!」


「白髪の方は誰なの!?」


「千乃様かわいい!!」


「勇者もいるぞ!」


「……でもやっぱり真銀様が一番!」


「わかる!!」


 という声が飛び交う。


 カミルは困惑しながら千乃を見る。


「……我は、今後も人型でいるべきなのだろうか」


「うん!」


「即答だな」


「だって楽しいし」


「千乃らしいな」


 真銀が笑う。


 その隣でラブリーが両手を握りしめる。


「やっぱり最高です……!」


「何が?」


「千乃さんと真銀さんです!!」


「「?」」


「そこに新しいイケメンまで加わるなんて……!」


 ラブリーは王都を見回す。


「今日の王都、最高に華やかですねぇぇぇ!!」


 こうして。


 隣国の王都でも。


 **真銀とカミルのイケメン騒動は、しっかり発生した。**


 その日のうちに。


 星霜王国へ戻ることになった。


 理由は単純。


 隣国の王都が、あまりにも騒がしくなりすぎたからだ。


「真銀様とカミル様が並んでるぅぅぅぅっ!!」


「どっちもイケメンすぎる!!」


「その間にいる千乃様も可愛すぎる!!」


「勇者様は……」


「後ろにいるね」


「……うん」


「なんかおまけ感あるね」


「おい聞こえてるぞ!?」


 そんな声が街中から飛んできていた。


 さらに。


「千乃さん!! 帰りましょう!!」


 ラブリー・スミスが千乃の腕を掴む。


「これ以上は私の心臓が持ちません!!」


「ラブリーさん、そんなに?」


「そんなにです!!」


 千乃は苦笑する。


「じゃあ、帰ろっか」


「はい!!」


 真銀も頷いた。


「そうだな。今日はもう帰ろう」


 その隣では、カミルが周囲を見回している。


 白い髪。


 青い瞳。


 人化したことで、完全に人間の姿になっている。


「……我は、そんなに目立っているのか?」


「めちゃくちゃ目立ってるよ」


 千乃が即答する。


「そうか……」


 カミルは少し困ったように頷いた。


「では、早く戻ろう」


「そうしよう」


 真銀も頷く。


 そして。


「よし! 帰るぞ!」


 カイルが拳を突き上げた。


「俺の美貌がこれ以上他国に広まる前に――」


「カイルは置いていこう」


「なんで!?」


 千乃の即答だった。


「冗談だよ」


「冗談に聞こえなかったぞ!?」


 結局。


 真銀、千乃、カミル、カイル、ラブリー・スミスの五人は、急いで星霜王国へ戻ることになった。


 王都を出る。


 街道を進む。


 そして。


 国境を越えた。


「……やっと帰ってきた」


 千乃がほっと息を吐く。


 遠くに見えるのは、星霜王国の王都。


 その中央には。


 巨大な氷の城。


 星氷神城アストラルグレイシア


 千乃が魔法によって生み出した、自分たちの城だ。


「やっぱり、ここが一番落ち着くね」


 千乃が微笑む。


 真銀も隣で笑った。


「ああ」


 カミルも城を見上げる。


「我らの帰る場所、か」


「そうだね」


 千乃が頷く。


 その後ろでは。


「帰ってきたぞぉぉぉぉぉ!!」


 カイルが両手を広げて叫んでいた。


「我が愛しき星霜王国よ!! イケメン勇者カイルの帰還だ!!」


「……」


 千乃は無言で振り返る。


「カイル」


「なんだ?」


「うるさい」


「はい」


 カイルは素直に口を閉じた。


 こうして。


 騒動だらけの隣国遠征は終わり。


 一行は再び、星氷神城アストラルグレイシアへと帰ってきた。

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