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厨二病再発

 千乃は城の中庭へ出ていた。


 星氷神城アストラルグレイシアの中庭は広い。


 中央には大きな噴水。


 その周囲には氷でできた花々が咲き、空から降り注ぐ光を反射している。


「……よし」


 千乃は中庭の中央へ歩いていく。


 そして。


 懐から一冊のノートを取り出した。


 ――空想ノート。


 かつて、世界修正体を倒すために使ったもの。


「久しぶりだね」


 表紙を撫でる。


 ぱらり。


 ページを開く。


 そこには、これまで千乃が考えてきた魔法や技の数々が書き込まれていた。


「これ、結構使えるんだよね」


 千乃はページをめくる。


「……あった」


 一つの術式の前で、手が止まった。


「これ、もうちょっと改良できそう」


 ペンを取り出す。


 術式の横へ、さらさらと新しい文字を書き足していく。


「ここをこうして……」


 さらに一行。


「こっちは、こう」


 最後に。


 大きく名前を書き込む。


「……よし!」


 千乃はノートを閉じた。


 そして右手を前へ。


「我が空想よ」


 周囲の空気が変わる。


「紙の上で終わることなく」


 足元に魔法陣が広がった。


「今ここに、現実として顕現せよ」


 魔力が一気に膨れ上がる。


「――空想展開」


 中庭の空中に、無数の光が浮かび上がった。


 千乃はそれを見上げる。


「……うん」


 目を輝かせる。


「いい感じ!」


 さらにページを開く。


「次はこれ!」


 千乃は楽しそうに笑った。


「厨二病魔法、改良開始!」


 中庭いっぱいに、魔法陣が次々と展開されていく。


 かつて世界修正体を倒した力。


 その源となった一冊の空想ノート。


 そして今。


 千乃は再び、それを使って新しい魔法を生み出そうとしていた。


 千乃は、空想ノートを開いた。


 ページには、無数の術式が並んでいる。


「……いっぱい作ったなぁ」


 自分で書いたものなのに、千乃自身が少し引いている。


 けれど。


「せっかくだし、試してみよっと」


 千乃は一歩、前へ出た。


 空想ノートを片手に持ったまま、もう片方の手を空へ掲げる。


 魔力が集まる。


 中庭の空気が震えた。


 氷の花々が揺れる。


 空に巨大な魔法陣が展開される。


「まずは……これ!」


 千乃が空を見上げる。


「――『虚空蒼雷(ヴォイド・サンダー)神域崩落(サンクチュアリ)無限連鎖終末(インフィニット)審判剣(ジャッジメントソード)』!」


 その瞬間。


 空が裂けた。


 蒼い雷が幾重にも絡み合い、巨大な剣を形成する。


 轟音。


 大気そのものが震える。


 千乃が指を下ろす。


 ――ズドォォォンッ!!


 巨大な蒼雷の剣が地面へ突き刺さった。


 衝撃波が中庭を駆け抜ける。


「……おお」


 千乃は目を輝かせた。


「ちゃんと出た!」


 しかし。


 魔法陣はまだ消えていない。


「……あれ?」


 千乃が空想ノートを見る。


「これ、連鎖するやつだった」


 次の瞬間。


 一本。


 二本。


 三本。


 無数の蒼い剣が空から降り注ぐ。


 ズガガガガガガガッ!!


「うわっ!」


 千乃が慌てて手を振る。


「停止! 停止!」


 魔法陣がようやく消えた。


 中庭には、巨大な剣が何本も突き刺さっている。


「……」


 千乃は無言で空想ノートを見る。


「……威力、調整しよ」


 ページをめくる。


 今度は別の術式。


「じゃあ、次!」


 千乃の瞳が輝く。


「『深淵蒼(アビス・ブルー)王無限刻(キングインフィニット)崩絶対神罰(パニッシュメント)連鎖消滅波(ウェーブ)』!」


 空間が一瞬で暗くなる。


 蒼黒い波動が中庭を横切る。


 しかし千乃は途中で指をくるりと回した。


 波動が空中で方向を変え、ぐるりと円を描く。


「……こうすると綺麗かも」


 波動が何重にも重なり、巨大な蒼い円環となった。


「おお……」


 千乃は満足そうに頷く。


「厨二病って、やっぱり楽しい!」


 さらにページをめくる。


「次はこれ!」


 空想ノートのページが風もないのに勢いよくめくれていく。


 そして。


 千乃の手が止まった。


「……これ、前に世界修正体を倒したときのやつ」


 ページには、ひときわ大きな術式が記されていた。


 千乃は静かにノートを閉じる。


「……やってみよう」


 空を見上げる。


 中庭いっぱいに、巨大な魔法陣が展開される。


 蒼。


 深紅。


 金。


 そして、純白。


 複数の魔力が重なり合い、空そのものを覆っていく。


 千乃は右手を前へ伸ばした。


「――『天地創世蒼煌(ジェネシス・ブルー)虚無絶界終焉(ヴォイド・エンド)崩壊(コラプション)断罪覇王(コア)神核領域裁断剣(ブレード)』」


 静寂。


 次の瞬間。


 空が、青く染まった。


 巨大な光の剣が現れる。


 その刀身には、無数の魔法陣。


 さらにその周囲を蒼雷が走り、空間そのものが軋む。


 千乃は剣を見上げる。


「……」


 そして。


「……これ、城の近くで使うものじゃないね」


 そっと魔法を解除した。


 巨大な剣が消える。


 魔法陣も消える。


 静寂が戻る。


 千乃は空想ノートを閉じた。


「うん」


 満足そうに頷く。


「練習、順調!」


 ただし。


 中庭には、先ほどの実験でできた巨大な穴と、地面に突き刺さった蒼い剣が大量に残っていた。


「……」


 千乃はそれを見た。


「……あとで直そ」


 そう言って、何事もなかったかのように城へ戻っていった。


その後。


パキィィン


自動で庭が修復された。


「あ、自動修復されるんだった。」

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