勇者Time!
カイルの部屋。
大きな鏡の前に、カイルが立っていた。
「……ふっ」
髪を整える。
右へ。
左へ。
少しだけ顎を引く。
「完璧だ」
カイルは満足そうに頷いた。
そのままベッドへ腰掛ける。
「……」
ふかふか。
「……最高だな」
そのまま仰向けに倒れ込む。
「勇者に相応しいベッドだ」
天井を見上げる。
そこには、魔法で作られた満天の星空が広がっている。
「星空まで完璧……」
カイルはしばらく眺める。
そして。
「……俺、ここに住んでいいんだよな」
少しだけ感慨深そうに呟いた。
しかし。
数秒後。
むくり。
起き上がる。
「……やっぱり鏡を見るか」
鏡の前へ戻る。
「うん。今日もイケメンだ」
自信満々に頷く。
そして今度は勇者の剣を手に取った。
鏡の前で構える。
「……」
横顔。
「……」
正面。
「……」
剣を肩に担ぐ。
「決まっている」
カイルは一人で満足そうに頷いた。
その後。
机に座ってみる。
椅子の座り心地を確認。
立ち上がる。
また鏡を見る。
ベッドに戻る。
また鏡を見る。
「……この部屋、いいな」
誰もいない部屋で。
カイルは満足げに笑った。
しばらくして。
カイルは机に向かっていた。
目の前には、一冊の本。
……しかし。
ページは一向に進まない。
「……」
カイルは本を閉じた。
「勇者たるもの、読書姿も絵になるな」
誰もいない。
それでも言う。
「……」
ふと、視線が鏡へ向く。
「確認しておくか」
椅子から立ち上がる。
鏡の前へ。
「読書姿も完璧だった」
満足。
再び机へ戻る。
今度は勇者の剣を磨き始めた。
「愛剣も常に美しく」
布で丁寧に磨く。
「輝いているな……」
剣を見る。
鏡を見る。
「……俺も」
剣を見る。
「……俺もだな」
また鏡を見る。
しばらくして。
カイルは剣を壁の飾り台へ戻した。
「よし」
そしてベッドへ向かう。
腰を下ろす。
「今日は魔王を倒した日か……」
天井の星空を眺める。
「世界を救った勇者、カイル」
自分の名前を呟く。
「……悪くない響きだ」
にやりと笑う。
数秒後。
「いや」
むくりと起き上がる。
「かなりいい」
カイルは満足げに頷いた。
そしてまた鏡の前へ向かった。
カイルは、再び大きな鏡の前に立っていた。
「さて……」
腕を組む。
鏡を見る。
「まずは基本形からだな」
片手を腰に当て、もう片方の手を軽く掲げる。
「ふっ」
角度を変える。
「……悪くない」
次。
勇者の剣を抜き、肩に担ぐ。
「世界を救う勇者、カイル」
決め顔。
「……完璧だ」
さらにポーズを変える。
剣を前へ。
次は横へ。
片膝をついてみる。
立ち上がる。
マントを翻す。
「これはいい!」
カイルは満足げに頷く。
そして。
「衣装も変えてみるか」
クローゼットを開ける。
勇者の鎧。
普段着。
別の服。
次々と着替えては、鏡の前へ。
「なるほど……」
腕を組む。
「この服なら知的な勇者」
別の服。
「こちらなら爽やかな勇者」
さらに別の服。
「そしてこれなら……」
カイルは鏡の前で一回転。
「完璧な勇者」
誰もいない。
だが本人は非常に満足している。
そして最後。
クローゼットの奥に、綺麗に畳まれた服を見つけた。
「……ん?」
取り出してみる。
「パジャマまであるのか」
ありがたいことに、ちゃんと用意されていた。
「これは寝るための服……」
カイルはしばらく考える。
「……」
着替える。
そして鏡の前へ。
「…………」
しばし無言。
「パジャマ姿の俺も、悪くない」
腕を組む。
少し角度を変える。
「いや」
さらに角度を変える。
「かなりいい」
カイルは満足げに頷いた。
そのままベッドへ向かう。
ふかふかのベッドへ倒れ込む。
「……」
天井には満天の星空。
「最高の部屋だ」
カイルは目を閉じる。
……が。
数秒後。
ぱちっ。
目を開ける。
「もう一回、鏡見てから寝るか」
カイルは起き上がった。
カイルは、また鏡の前に立っていた。
パジャマ姿のまま。
「……」
右手を腰に。
左手を胸元へ。
顎を少し上げる。
「……ふっ」
次。
片手を前へ伸ばし、もう片方の手で髪をかき上げる。
「勇者の朝は――」
「何してるの?」
「!?」
カイルの動きが止まった。
鏡越しに見る。
扉のところに、千乃が立っていた。
「……千乃」
「うん」
千乃は部屋の中を見渡す。
そしてカイルを見る。
大きな鏡を見る。
またカイルを見る。
「……」
「……」
「何してるの?」
「……鍛錬だ」
「ポーズの?」
「そうだ!」
カイルは堂々と答えた。
「勇者たるもの、どんな角度から見ても格好よくなければならない!」
「そうなんだ……」
千乃は少しだけ呆れた顔をする。
「さっきからずっと?」
「ずっとではない!」
「じゃあ、どれくらい?」
「……」
カイルが目を逸らす。
「かなり」
「かなりなんだ」
千乃が笑う。
「しかもパジャマで?」
「パジャマでも格好いいのが真の勇者だ!」
「なるほど」
千乃は腕を組む。
「じゃあ、今のポーズもう一回やってみて」
「え?」
「せっかくだし」
カイルは一瞬迷った。
しかし。
「……見ているがいい!」
すぐに鏡へ向き直る。
右手を腰に。
左手を胸元へ。
顎を上げる。
「……ふっ」
千乃は後ろでじっと見ている。
「……」
「……」
「……」
「どうだ!」
「うん」
千乃が頷く。
「パジャマだね」
「そこ!?」
カイルの叫びがこだまする。
「だってパジャマじゃん!」
「パジャマでも俺は――」
「もういいよ」
千乃が小さくため息をつく。
「うるさい」
「え?」
千乃が指先を軽く振る。
「おやすみ」
「ちょ、待――」
カイルの言葉が途中で止まった。
「…………」
そのまま、鏡の前で力が抜ける。
ぐらり。
鏡に映った自分の姿を最後に。
カイルはその場へ崩れ落ちた。
「……寝た」
千乃はしゃがみ込む。
「しょうがないなぁ」
千乃が手をかざす。
すると、カイルの身体がふわりと浮かび上がった。
「よいしょっと」
そのままベッドまで運ぶ。
そっと寝かせる。
そして千乃は布団を手に取った。
「ちゃんと寝てね」
ぱさっ。
布団をかけてやる。
「……」
カイルはすやすやと眠っている。
さっきまであれだけ騒がしかったとは思えないほど、静かな寝顔。
「……あれ?」
千乃が少し驚く。
「意外と可愛い寝顔してる」
普段のナルシストっぷりからは想像できない。
髪も少し乱れていて、表情も穏やか。
「寝てると普通なんだね」
千乃は小さく笑う。
しかし。
「……ふふ……」
「ん?」
カイルの口が動いた。
「俺が……一番……」
千乃が首を傾げる。
「……?」
「……イケメン……」
「…………」
カイルは幸せそうな顔で寝言を続ける。
「……世界中の鏡を……俺のために……」
「…………」
千乃の表情から笑顔が消える。
「……やっぱりカイルだ」
千乃は静かに立ち上がった。
「寝ててもこれかぁ……」
そして。
部屋の扉へ向かう。
「おやすみ、カイル」
ぱたん。
扉が閉まる。
部屋には。
すやすや眠る勇者と。
壁いっぱいの大きな鏡だけが残った。
今までに出てきたキャラの中で、みなさんは誰が一番好きですか?
ぜひぜひ、感想欄で教えてください!
氷空は……やっぱり千乃ですかね…いや、でも真銀も…ライもかっこいいし…ララもかわいい…アイシィもきれいだし…カミルもかっこいいし…おまけカイルも結構好き…ラブリーさんも結構いいなぁ…
すみません。選べませんでした




