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二人で災害☆

 ギルドは、朝から妙に騒がしかった。


 正確には「騒がしいというより、落ち着かない」。


 千羽千乃と夜坂真銀が受付に並ぶと、空気が一段薄くなる。


「……また二人ですか」


 受付の女性が、若干疲れた声で言う。


「またって何」


 千乃が即答する。


「いや、最近ずっとペア行動なので」


「そういう仕様になってる」


 真銀がさらっと言う。


「勝手に決めないで」


---


 ギルド長が奥から出てくる。


 机の上には分厚い報告書。


「お前たちの扱いが決まった」


「嫌な予感しかしない」


 千乃が言う。


「国家直轄案件扱いだ」


「……やっぱり?」


---


 報告書の内容は簡単だった。


 二人の行動ログ。


 ・単体でも災害級案件を処理

 ・二人揃うと異常発生率が上昇

 ・周囲環境の正常値が逆に崩壊する傾向


「ちょっと待って」


 千乃が途中で止める。


「私、何もしてない案件も入ってない?」


「入っている」


 即答だった。


---


 真銀が資料を見ながら言う。


「つまり俺たち、危険物扱いか」


「そういうことだ」


 ギルド長は頷く。


「正確には“災害観測対象ペア”だ」


「名前ださい」


 千乃が即答。


---


 翌日から状況はさらに変わった。


 依頼が減る。


 いや、消える。


「なんで依頼ないの」


 千乃が掲示板を見る。


「全部回収された」


 受付が答える。


「誰に」


「上層部に」


---


 真銀が隣で呟く。


「隔離準備だな」


「何それ」


「戦力管理」


「それ私のこと?」


「多分両方」


---


 その日の午後。


 簡易任務が一つだけ残された。


 封鎖区域の調査。


 誰も行きたがらない場所。


 ギルド長が言う。


「最後の確認だ」


「確認?」


「お前たちが“本当に人類側か”をな」


 千乃は目を細める。


「失礼じゃない?」


「事実だ」


---


 封鎖区域。


 空気が重い。


 地面が軋む。


 世界が少しだけ“ズレている”。


「ここ、嫌な感じする」


 千乃が言う。


「いつも通りだろ」


 真銀は剣を抜く。


---


 そして異常は現れた。


 巨大な影。


 複数の概念が混ざったような存在。


 普通なら都市が消えるレベル。


 だが千乃は止まらない。


「じゃあ、いつも通りでいいか」


 ノートは開かない。


 真銀も一歩前へ出る。


「やるぞ」


---


 戦闘は短かった。


 正確には“戦闘と呼べない何か”だった。


 千乃がいることで空間が安定しない。


 真銀がいることで“届く形”に修正される。


 その結果。


 存在が成立できなくなる。


 影は崩れた。


 音もなく。


---


 静寂。


 千乃は軽く息を吐く。


「またこれか」


 真銀は剣をしまう。


「もう慣れた」


「それ問題発言」


---


 ギルドへ戻ると、報告書は一行でまとめられた。


 二人の評価はこうだった。


 単独危険度:災害級

 ペア危険度:未分類


 そして最後に一言。


 人類側かどうか判定不能


---


 千乃はそれを見て、ため息をつく。


「もう普通に暮らせないじゃん」


 真銀は横で言う。


「最初から普通じゃないだろ」


「それはそう」


---


 その夜。


 二人は同じ屋根の下にいた。


 距離は近い。


 でも不思議と居心地は悪くない。


 千乃はノートを閉じる。


「ねえ」


「ん」


「これ、どこまでいくと思う?」


 真銀は少しだけ考える。


「知らない」


「だよね」


「でも」


 間。


「ついていく」


 千乃は少しだけ黙る。


「……それ、ずるい」


 小さく笑った。

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