隣りに立つための変化
あの護衛任務のあと、真銀は少し変わった。
いや、正確には「変わらざるを得なくなった」。
「お前、最近疲れてないか」
千乃が何気なく聞く。
「別に」
真銀は即答する。
だが、それは少しだけ遅かった。
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ギルドの訓練場。
真銀は一人で剣を振っていた。
以前より速い。
以前より重い。
そして、以前より“ズレていない”。
「……また伸びてるな」
訓練官が呟く。
「普通じゃない速度だ」
真銀は止まらない。
剣を振るたびに、空気が裂ける。
でもそれは魔力ではない。
もっと単純なものだった。
集中。
理解。
適応。
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数日前の戦闘が頭から離れない。
(攻撃が通じない理由じゃない)
(そもそも“当てる”って概念がズレてた)
ならどうするか。
答えは単純だった。
(届く場所まで行く)
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次の任務。
今度は遺跡探索。
千乃と真銀は並んで歩く。
「最近、剣の動き変わったね」
千乃が言う。
「そうか」
「うん。前より……正確」
真銀は少しだけ黙る。
「お前のせいだろ」
「え?」
「いや、いい意味で」
即補足。
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遺跡の入口。
空間が歪んでいる。
普通なら入った瞬間に認識が狂う場所。
だが真銀は止まらなかった。
「先行く」
「ちょっと待って」
千乃が言うより早く。
真銀は一歩踏み込んだ。
その瞬間。
空間の圧が襲う。
普通なら意識が崩れる。
でも真銀は、踏みとどまった。
「……なるほどな」
彼は目を細める。
「こういう場所か」
そして剣を軽く回す。
空間の“歪み”に対してではなく。
そこに存在する“違和感そのもの”に合わせて動く。
次の瞬間。
歪みが切り裂かれた。
真っ直ぐに。
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千乃は止まる。
「今の」
「何だ」
「普通に切った?」
「多分な」
彼は軽く言う。
だが千乃は気づいていた。
(あれ、適応してる)
(私の“世界のズレ”に合わせてる)
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遺跡の奥。
異常存在が現れる。
以前なら手に負えないはずの個体。
だが真銀は一歩前に出る。
「これも同じだな」
剣を構える。
魔力はない。
詠唱もない。
ただ一つ。
“届く距離”だけを見ている。
「邪魔だ」
一閃。
終わる。
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静寂。
千乃は少しだけ目を細める。
「……なんかさ」
「ん?」
「前より危なくなってない?」
真銀は剣をしまう。
「お前と一緒にいるからだろ」
「責任転嫁やめて」
「半分は事実だ」
軽く笑う。
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ギルドへ戻ると、受付が固まった。
「……真銀さん、戦闘能力上がってませんか」
「そうか?」
「明らかに」
千乃が横から言う。
「たぶん慣れたんだよ」
「何にですか」
「私に」
受付は黙った。
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その夜。
宿。
真銀は剣を見ていた。
(あいつの隣にいるなら)
(これくらいは必要だ)
静かにそう思う。
恐怖じゃない。
諦めでもない。
ただの事実。
千乃が“世界の基準をずらす存在”なら。
自分はそれに“ついていける側”になるしかない。
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一方その頃、千乃はノートを見ていた。
そこに一行だけ、薄く変化がある。
真銀の名前の横に、ほんのわずかな記述。
適応進行中
「……ほんとに人間?」
そう呟いて、ノートを閉じる。
まだ説明する気はない。
でも一つだけ分かっている。
彼はもう、ただの同行者じゃない。




