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氷星の王城

数日後。


広大な草原の中央。


千乃は静かに立っていた。


真銀たちも少し離れた場所から見守る。


「いよいよか。」


真銀が呟く。


千乃はゆっくり頷いた。


「うん。」


「みんなが帰ってこられる場所。」


「作るね。」


ララは目を輝かせる。


「お城!」


「どんなのになるんだろ!」


アイシィも楽しそうに微笑む。


「千乃さんらしいお城になりそうですね。」


ライは腕を組む。


「魔力は十分か?」


「大丈夫。」


千乃は笑顔で答えた。


「神化した今なら、できる気がする。」


---


千乃は静かに目を閉じる。


深く息を吸い。


右手を空へ掲げた。


「我が願いは。」


「誰もが笑って帰ってこられる場所。」


「悲しみを癒やし。」


「希望を灯す。」


「星よ。」


「氷よ。」


「私と共に。」


その瞬間。


真紅の魔力が天へ駆け上がった。


ゴォォォォォ……


空一面へ巨大な魔法陣が広がる。


その大きさは、雲を覆うほど。


金色。


真紅。


氷色。


三色の光が重なり合い、王国全体を包み込む。


「すごい……。」


ララは思わず息を呑む。


アイシィも目を見開く。


「ここまでの魔力量……。」


ライが静かに呟く。


「神そのものだ。」


---


千乃は静かに詠唱する。


「永久に輝く星々よ。」


「永遠に眠る氷よ。」


「天と地を繋ぎ。」


「希望の居城となれ。」


「顕現せよ。」


「──《星氷神城(アストラルグレイシア)》」


ドォォォォォン!!


大地が震えた。


しかし。


揺れは恐怖ではない。


まるで世界そのものが祝福しているようだった。


草原の中心から、無数の氷柱が天へ伸びる。


透明な氷。


青白く輝く氷。


星の光を閉じ込めたような結晶。


それらが組み合わさり、一つの巨大な城を形作っていく。


城壁は夜空のような深い蒼。


そこへ無数の星々が瞬くように輝いている。


尖塔はまるで流星。


風を受けるたび、小さな光の粒が舞い散った。


巨大な門には、翼と星を組み合わせた紋章。


窓は水晶。


昼は青空を映し。


夜は本物の星空と溶け合う。


城の周囲には、美しい氷の庭園。


その氷は冷たくなく、季節を問わず花々が咲いている。


さらに城の背後には、大きな湖。


水面には昼でも星空が映り込んでいた。


---


「……。」


誰も言葉を発せない。


ララがぽつりと呟く。


「お城……?」


「宮殿じゃないの?これ」


真銀が苦笑する。


「いや。」


ライは首を横に振った。


「これはもう、一つの奇跡だ。」


アイシィは目を潤ませていた。


「本当に……。」


「綺麗です。」


ミルも満足そうに頷く。


『神の城として申し分ない。』


---


千乃は城を見上げる。


「できた……。」


少し照れながら笑う。


「みんな。」


「帰ろう。」


真銀も笑った。


「ああ。」


「俺たちの城へ。」


---


その日の夕方。


レオニスにも完成の知らせが届いた。


報告書を読んだ彼は、思わず笑ってしまう。


「土地を渡したら……。」


「本当に国が始まってしまったか。」


側近が苦笑する。


「しかも、この規模のお城は世界でも指折りです。」


レオニスは窓の外を眺めた。


「ならば。」


「国としての名も必要だな。」


数日後。


正式な建国式が行われ、新たな国の名が世界へ発表された。


国名

**星霜王国(せいそうおうこく)**


星のように希望を照らし。


霜のように澄んだ心を忘れない国。


そして、その中心にそびえ立つ王城は。


**《星氷神城(アストラルグレイシア)》**


人々はいつしか、その城をこう呼ぶようになる。


**「星空が地上へ降り立った城」**





建国から数日。


巨大な**《星氷神城(アストラルグレイシア)》**は完成したものの、中はまだ広い空間が続くだけだった。


「……広い。」


千乃の第一声は、それだった。


「広すぎる。」


真銀も辺りを見回す。


「廊下だけで迷いそうだ。」


ララは元気いっぱいに走り出す。


「探検だぁぁぁ!」


「走るな。」


ライがすぐに止める。


「転ぶ。」


「はーい!」


返事だけは元気だった。


---


「よし。」


千乃は手を合わせる。


「今日は内装!」


「魔法で作っちゃう!」


真銀が笑う。


「任せた。」


「でも、無理はするな。」


「うん!」


千乃は両手を広げた。


真紅の魔法陣が城全体へ広がる。


「星よ。」


「氷よ。」


「この城へ温もりを。」


キィィィィン……


澄んだ音が響く。


---


まず現れたのは、大広間。


床は白い大理石。


その中には星座を模した金色の装飾。


天井は深い夜空。


昼でも無数の星が優しく輝いている。


中央には巨大なシャンデリア。


氷でできているのに、不思議と温かい光を放っていた。


「すごぉぉぉい!」


ララはくるくる回る。


「お姫様のお城みたい!」


「いや。」


真銀は笑う。


「本当に王城なんだけどな。」


---


次に。


長い食堂。


何十人でも座れる大きなテーブル。


椅子は白木と氷を組み合わせた柔らかな造り。


料理は冷めず。


飲み物はぬるくならない魔法付き。


アイシィが感動する。


「便利ですね……。」


「料理しやすそう。」


---


厨房。


巨大な調理場。


魔法コンロ。


自動で洗浄される流し。


保存魔法付きの食料庫。


ララは目を輝かせる。


「おやついっぱい置ける!」


「そこか。」


ライが小さく笑う。


---


図書室。


壁一面が本棚。


二階まで続く吹き抜け。


星空が映る読書スペース。


ふかふかのソファ。


真銀は静かに本棚へ触れる。


「ここは気に入った。」


「真銀専用の席もあるよ。」


「……本当に?」


「もちろん。」


「ありがとう。」


---


訓練場。


屋内とは思えないほど広い。


魔法障壁付き。


飛行訓練も可能。


分身も自由。


羽射撃もたぶん外へ漏れない。


ライが満足そうに頷く。


「申し分ない。」


「これなら思い切り鍛えられる。」


---


温泉。


「えっ。」


真銀が思わず振り返る。


「温泉?」


「いるでしょ?」


千乃が笑う。


「疲れ取れるし!」


露天風呂。


内風呂。


薬草風呂。


氷を使った冷泉。


景色は湖と星空。


ララは大喜びだった。


「毎日入る!」


---


そして。


最後は。


みんなの個室。


「できた!」


扉が六つ並んでいる。


「一人ずつ違うよ!」


ララの部屋。


白を基調とした、もふもふだらけの部屋。


ぬいぐるみ。


大きなベッド。


遊べるスペース。


「かわいいー!」


ライの部屋。


青と黒を基調とした落ち着いた空間。


本棚。


武器掛け。


静かな読書スペース。


「悪くない。」


アイシィの部屋。


淡い水色。


雪の結晶の装飾。


大きな窓。


花の香りが漂う優しい部屋。


「素敵です……。」


真銀の部屋。


夜空を思わせる紺色。


本棚。


書き物机。


広いベランダ。


静かな空気。


「落ち着くな。」


ミルの部屋。


竜の姿でも眠れるよう、天井が高く作られていた。


『気が利いている。』


---


そして最後。


千乃の部屋。


扉を開く。


みんなが思わず息を呑む。


部屋いっぱいに星空。


天井にはゆっくり流れる流れ星。


大きな窓からは湖が見える。


ベッドは白。


カーテンは淡い桃色。


部屋の中央には、小さな水晶の木。


夜になると星のように光る。


「わぁ……。」


千乃は目を輝かせた。


「私の理想のお部屋。」


真銀は優しく笑う。


「千乃らしいな。」


みんなが笑顔になる。


こうして。


**星霜王国**の象徴である**《星氷神城(アストラルグレイシア)》**は、ただ美しいだけではない。


仲間たちが「おかえり」と言える、本当の意味での"家"になっていった。


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