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とんでもないプレゼント

数日後。


宿へ、一通の手紙が届いた。


封筒には、金色の紋章。


翼を広げた白銀の獅子。


真銀が封を開く。


「……王家の紋章だ。」


「え?」


千乃たちも集まってくる。


中には、一枚の手紙。


---


**親愛なる千羽千乃へ。**


久しぶりだね。


元気にしているかな?


ぜひ、一度王城へ遊びに来てほしい。


渡したい物がある。


                    **アルセリア王国国王 レオニス・アルセリア**


---


「レオニスさん!」


千乃はぱっと笑顔になった。


ララが驚く。


「王様なのに"さん"なんだ。」


「だって友達だもん。」


「友達!?」


真銀たちは一斉に千乃を見る。


「いつの間に。」


「前に色々あって仲良くなった!」


「色々、で済む話じゃない気がする。」


ライが小さく呟いた。


---


翌日。


アルセリア王国王城。


謁見の間。


豪華な赤い絨毯の先で、一人の男性が立ち上がる。


白銀の髪。


落ち着いた青い瞳。


年齢は四十代半ばほど。


威厳はある。


しかし千乃を見るなり、その表情が柔らかくなった。


「千乃!」


「レオニスさん!」


千乃は笑顔で駆け寄る。


「久しぶり!」


「元気そうで安心した。」


真銀たちは少し驚いていた。


王がここまで気さくに接する相手は珍しい。


レオニスは真銀たちへも微笑む。


「皆さんも、ようこそ。」


「歓迎する。」


---


お茶を飲みながら世間話をしたあと。


レオニスは立ち上がった。


「さて。」


「今日呼んだ理由だ。」


侍従が、大きな筒を運んでくる。


レオニスはそれを広げた。


机いっぱいに広がる巨大な地図。


「これは……。」


真銀が目を細める。


王都から少し離れた場所。


広大な平原。


森。


川。


湖。


山まで描かれている。


レオニスは、その一角を指差した。


「ここを。」


「千乃に贈ろうと思う。」


「…………え?」


千乃が固まる。


「土地だ。」


「広さは……。」


レオニスはさらりと言った。


「小国一つ建国できる程度かな。」


部屋が静まり返る。


ララが口をぱくぱくさせる。


「……え?」


アイシィも珍しく言葉を失う。


ライでさえ目を見開いた。


真銀が確認する。


「今。」


「小国って言いましたか。」


「ああ。」


レオニスは笑顔のまま頷く。


「正確には約三千平方キロメートル。」


「十分に一国を築ける。」


「人も住める。」


「農業もできる。」


「湖も川もある。」


「資源も豊富だ。」


「未開発だから自由に使っていい。」


「…………。」


全員の思考が止まった。


千乃がおそるおそる聞く。


「レオニスさん……。」


「これ、高くない?」


「高いね。」


即答だった。


「じゃあ受け取れないよ!」


「いや。」


レオニスは笑う。


「君はこの国を救ってくれた。」


「民も。」


「私の家族も。」


「この程度では恩は返しきれない。」


千乃は困ったように真銀を見る。


真銀も苦笑した。


「桁がおかしい。」


ララは地図を見ながら叫ぶ。


「歩いて回ったら何日かかるの!?」


ライが静かに答える。


「全部なら、数日はかかるな。」


「広すぎるよ!」


---


レオニスはさらに続けた。


「もちろん。」


「税は免除。」


「自治も自由。」


「建物を建ててもいい。」


「城を建ててもいい。」


「村を作ってもいい。」


「学校でも研究所でも好きにしていい。」


「ただ一つ。」


「条件がある。」


千乃は姿勢を正した。


「何?」


レオニスは穏やかに笑う。


「時々。」


「遊びに来させてくれ。」


「……。」


一瞬の静寂。


千乃は思わず笑ってしまった。


「そんな条件でいいの?」


「ああ。」


「君たちが笑って暮らせる場所になれば、それで十分だ。」


千乃は深く頭を下げる。


「ありがとう。」


「大切に使わせてもらう。」


レオニスは満足そうに頷いた。


「それと。」


「名前も自由につけていい。」


ララが目を輝かせる。


「国作れるじゃん!」


真銀は苦笑しながら千乃を見る。


「……また、とんでもないものをもらったな。」


千乃も地図を見つめながら、小さく笑った。


「うん。」


「今度は、みんなでどんな場所にするか考えよう。」



翌朝。


千乃たちは、レオニスから譲り受けた土地へ向かっていた。


空から見下ろす景色は、どこまでも続いている。


深い森。


透き通る川。


大きな湖。


なだらかな丘陵。


そして広大な草原。


「……広い。」


千乃は思わず呟いた。


「想像以上だ。」


真銀も苦笑する。


ララはアイシィの背中の上で大はしゃぎだった。


「端が見えなーい!」


ライも静かに周囲を見渡す。


「魔物はいるが、凶暴なものは少ないな。」


「自然も豊かですね。」


アイシィがゆっくりと降下する。


---


草原へ降り立つ。


風が心地よく吹き抜けた。


「ここが……。」


千乃は一歩踏み出す。


神靴が柔らかく草を踏む。


「私たちの土地。」


真銀も辺りを見回した。


「静かでいい場所だ。」


ララはその場を駆け回る。


「ひろーーーい!」


「かけっこし放題!」


「かくれんぼもできる!」


「全部できる!」


「全部やる気か。」


ライが少し笑う。


---


少し歩くと、小高い丘があった。


そこからは土地全体の一部が見渡せる。


千乃は丘の上に立つ。


風でメタルピンクの髪が揺れる。


「ここ。」


「景色いいね。」


真銀も隣へ立った。


「ああ。」


「城を建てるなら、この辺りか。」


「え?」


千乃は驚いて振り向く。


「もう考えてるの?」


「拠点は必要だからな。」


「確かに。」


アイシィも頷く。


「湖も近いですし、水にも困りません。」


ライは森を見つめる。


「あちらは従魔たちが暮らす場所にも向いていそうだ。」


ララは元気よく手を挙げる。


「大きな広場ほしい!」


「遊ぶためか?」


「もちろん!」


「予想どおりだ。」


---


その時。


千乃は地面へしゃがみ込む。


土へそっと手を触れた。


「……。」


不思議と温かい。


「どうした?」


真銀が尋ねる。


千乃は優しく笑った。


「なんかね。」


「この土地。」


「歓迎してくれてる気がする。」


その瞬間。


ふわり。


優しい風が吹き抜ける。


草花が一斉に揺れた。


『神格の影響だろう。』


ミルが静かに言う。


『この土地は、主を拒んでいない。』


『むしろ受け入れている。』


「そうなんだ。」


千乃は嬉しそうに立ち上がった。


「じゃあ。」


「ここを、みんなが笑顔になれる場所にしたい。」


真銀は頷く。


「ああ。」


「戦うためだけの拠点じゃない。」


「帰ってこられる場所を作ろう。」


ララが両手を大きく広げる。


「楽しい場所!」


アイシィは微笑む。


「温かい場所ですね。」


ライも静かに頷いた。


「悪くない。」


千乃は広大な景色を見渡す。


まだ何もない。


だからこそ。


これから、何だって作れる。


その時だった。


遠くの空から、一羽の白い鳥が飛んできた。


千乃の肩にふわりと止まる。


「こんにちは。」


鳥は小さく鳴くと、また大空へ飛び立っていった。


その姿を見送りながら、千乃は微笑む。


「ここから始まるんだね。」


新しい土地での、新しい日々が。

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