↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
104/194

仲間たちの、夏祭り。(からのぶち壊し☆)

夏祭り。


王都の川辺には、色とりどりの提灯が並び、人々の笑い声が響いていた。


ララはりんご飴を片手に飛び跳ねる。


「すっごーい!」


アイシィは穏やかに微笑む。


「とても綺麗ですね。」


ライは静かに周囲を警戒しながら歩いていた。


千乃は淡い桜色の浴衣。


メタルピンクの髪は、いつものお団子。


真銀は濃紺の浴衣を着ている。


「似合ってる。」


真銀がぽつりと言った。


「え?」


千乃は少し照れながら笑う。


「ありがと。」


「真銀も似合ってるよ。」


その言葉だけで、真銀は少し照れくさそうに笑った。


---


「ねぇねぇ!」


ララが二人の手をぐいっと引っ張る。


「花火まで時間あるし、みんなで回ろ!」


「いや。」


ライがララの肩に手を置く。


「二人は二人で見てこい。」


「え?」


千乃が目を丸くする。


アイシィも優しく頷いた。


「私たちは屋台を見て回っています。」


「でも……。」


「気にしなくて大丈夫ですよ。」


ララもにやにやしながら笑う。


「いってらっしゃーい!」


真銀は三人を見た。


……何か企んでるな。


そう思ったが、口にはしなかった。


---


川辺。


人混みから少し離れた場所。


川面には提灯の灯りが揺れている。


「静かだね。」


千乃が座る。


真銀も隣へ腰を下ろした。


しばらくは何も話さない。


風だけが優しく吹いていた。


やがて。


夜空へ最初の花火が上がる。


ドォン……。


大輪の花が咲いた。


「きれい……。」


千乃が空を見上げる。


その横顔を、真銀は見つめていた。


「千乃。」


「ん?」


「少し話してもいいか。」


「うん。」


真銀は静かに息を吸う。


「地球で。」


「あの日。」


「俺を庇って死んだよな。」


千乃は驚いたように目を瞬かせた。


「……うん。」


「後悔した。」


真銀は拳を握る。


「あの時。」


「守られるのは俺じゃなく、お前だった。」


「違うよ。」


千乃は首を振る。


「私が助けたかったから。」


「それでも。」


真銀は続ける。


「異世界へ来て。」


「奈落へ落ちて。」


「世界修正体と戦って。」


「何度も死にそうになって。」


「そのたびに。」


「俺は、お前を失うのが怖かった。」


千乃は静かに聞いていた。


「神になっても。」


「強くなっても。」


「俺にとって、お前は。」


「守りたい相手のままだ。」


花火がまた夜空へ咲く。


ドンッ。


赤。


青。


金色。


その光が二人を照らした。


真銀は浴衣の懐へ手を入れる。


小さな箱。


ずっと大切に隠してきた箱だった。


「これ。」


「受け取ってくれ。」


千乃はそっと受け取る。


「開けてもいい?」


「ああ。」


箱を開く。


そこには。


白銀の簪。


星の飾り。


真紅の宝石。


金色と淡い桃色の宝石。


羽のように揺れる飾り。


「……。」


千乃は言葉を失った。


「すごい……。」


「きれい。」


真銀は少し笑う。


「お前のお団子に似合うと思って。」


「……。」


「それと。」


真銀はまっすぐ千乃を見つめた。


「千乃。」


「好きだ。」


「仲間としてじゃない。」


「家族としてでもない。」


「一人の女性として。」


「好きだ。」


「これから先も。」


「ずっと隣にいてほしい。」


花火が夜空いっぱいに咲き誇る。


千乃はしばらく黙っていた。


目には涙が浮かんでいる。


「……。」


「私ね。」


「地球で真銀を守ったこと。」


「後悔したこと、一回もない。」


「奈落に落ちたことも。」


「世界修正体と戦ったことも。」


「全部。」


「真銀がいたから頑張れた。」


涙が一粒こぼれる。


「私も。」


「真銀が好き。」


「ずっと前から。」


「大好き。」


その瞬間。


真銀はほっと息をついた。


「……よかった。」


千乃は泣きながら笑う。


「うん。」


真銀は箱から簪を取り出した。


「着けてもいいか。」


「……うん。」


そっと髪へ簪を挿す。


メタルピンクの髪によく映えた。


「似合う。」


「ありがとう。」


千乃は嬉しそうに簪へ触れた。


---


少し離れた木陰。


ララは目を潤ませていた。


「うぅぅぅ……。」


「やっとぉぉぉ……。」


アイシィもハンカチで目元を押さえる。


「本当に……よかったです。」


ライは静かに微笑んだ。


「長かったな。」


ミルは腕を組み、満足そうに頷く。


『ようやくか。』


その時だった。


「恋は世界を救いまぁぁぁぁぁぁす!!」


バァン!!


茂みから勢いよく飛び出してきた一人の女性。


金髪にピンクのメッシュ。


ハート型メガネ。


「ラブリー・スミス、参上でぇぇぇぇぇぇぇぇぇす!!」


ララが叫ぶ。


「出たぁぁぁ!!」


ラブリー・スミスは号泣しながら巨大なファイルを掲げた。


「特別観察対象No.001!」


「ついに!」


「ついに!!」


「両想い確認でぇぇぇぇぇぇぇぇす!!」


バサバサバサッ!!


大量の書類が夜空へ舞う。


「恋愛査定!!」


「更新します!!」


「恋愛適性……最高!!」


「信頼度……限界突破!!」


「夫婦オーラ……測定不能!!」


「恋人成立ぃぃぃぃぃぃ!!」


花火。


歓声。


そしてラブリー・スミスの絶叫。


静かな告白の余韻は、一瞬で夏祭りらしい大騒ぎへと変わった。


真銀は額に手を当てる。


「……やっぱり来たか。」


千乃は涙を拭きながら笑う。


「ふふっ。」


「ラブリーさんらしいね。」


翌朝。


恋愛ギルド本部。


「緊急集合ぉぉぉぉぉぉ!!」


ラブリー・スミスの声が建物中に響き渡る。


ギルド員たちが慌てて大広間へ集まってきた。


「ギルド長!」


「何事ですか!?」


「事件ですか!?」


ラブリー・スミスは勢いよく机の上へ飛び乗る。


「事件ではありません!!」


「奇跡です!!」


全員が固まる。


「ついに!!」


「特別観察対象No.001!!」


「千羽千乃さんと夜坂真銀さんが!!」


「恋人になりましたぁぁぁぁぁぁぁ!!」


……


静寂。


次の瞬間。


「うおおおおおおおおおおお!!」


「本当ですかぁぁぁ!?」


「やったぁぁぁ!!」


「長かったぁぁぁ!!」


「何年待ったと思ってるんですか!!」


ギルド員全員が飛び跳ねた。


中には泣き崩れる者までいる。


「査定記録を持ってこい!」


「観察日誌も!」


「歴代資料全部です!」


大広間は一気にお祭り騒ぎになった。


---


ラブリー・スミスは、分厚いファイルを机へ置く。


ドォン!


厚さは辞書どころではない。


「それでは!」


「更新作業を始めます!」


一人の査定員が読み上げる。


「恋愛適性。」


「最高のまま!」


別の査定員。


「信頼度。」


「限界突破のまま!」


「進展率。」


「百パーセント!!」


「恋人認定!」


「おめでとうございます!!」


拍手喝采。


ラブリー・スミスは感極まっていた。


「うぅ……。」


「私は信じていました……!」


「世界を救う前に恋を自覚してくださいって書いたあの日からぁぁぁぁ!!」


ハンカチを取り出し、大号泣。


---


その頃。


宿。


「……。」


「……。」


千乃と真銀は並んで朝食を食べていた。


昨日と変わらない空気。


ただ一つ違うのは。


時々目が合うと、お互い照れてしまうこと。


「……。」


「……。」


ララが二人を交互に見た。


「なんか。」


「空気が甘い。」


ライが静かに頷く。


「ああ。」


アイシィも微笑む。


「幸せそうですね。」


真銀は少し咳払いをする。


「そんなに変わったか?」


ララは即答した。


「めっちゃ!」


千乃は顔を真っ赤にする。


「そんなことないよ!」


「ある!」


ララは笑いながら言う。


「前は真銀って呼ぶだけだったのに!」


「今は"真銀"って呼び方が優しい!」


「えっ!?」


千乃はさらに赤くなる。


真銀も珍しく視線を逸らした。


「……。」


ライがぼそりと呟く。


「分かりやすい。」


---


その時。


バァン!!


宿の扉が勢いよく開いた。


「おめでとうございまぁぁぁぁぁぁぁぁす!!」


「!!」


真銀が頭を抱える。


「来た……。」


ラブリー・スミスが紙吹雪を撒き散らしながら飛び込んでくる。


「恋愛ギルドを代表して!!」


「恋人成立記念品をお持ちしましたぁぁぁ!!」


後ろにはギルド員が十数人。


全員が満面の笑み。


「記念写真を!」


「インタビューを!」


「馴れ初めを!」


「初デートの予定は!?」


「結婚予定日は!?」


真銀が立ち上がる。


「待て待て待て!」


「まだ付き合ったばかりだ!」


「そんな先まで決まってない!」


「なるほど!」


ラブリー・スミスはメモを取る。


「結婚予定日は未定!」


「記録!」


「違う!」


千乃は笑いを堪えきれず吹き出した。


「あはははっ!」


ララは床を転げ回る。


「ラブリーさん最高!」


アイシィは苦笑しながらも楽しそう。


ライは額に手を当てる。


「今日も騒がしくなりそうだ。」


こうして。


恋人になった二人の日常は。


まったく静かにはならなかった。




その日の昼。


「気分転換に街でも行くか。」


真銀の一言で、みんなは王都へ出かけることになった。


「屋台あるかなー!」


ララは先頭をぴょんぴょん跳ねながら歩いていく。


千乃はその隣。


真銀も自然とその横を歩く。


昨日までは普通だった。


……はずだった。


王都の門をくぐった瞬間。


「「「あ。」」」


通りを歩いていた人たちの視線が、一斉に集まる。


「……?」


千乃が首を傾げる。


すると。


「おめでとうございます!!」


花屋のおばさんが花束を差し出した。


「え?」


「恋人成立のお祝いです!」


「えぇっ!?」


次の店。


「こちら、お祝いのお菓子です!」


「いや、あの……。」


さらに次。


「末永くお幸せに!」


「おめでとう!」


「お似合いですよ!」


「昨日の花火、見てました!」


「きゃー!」


「本人たちだ!」


「写真撮っていいですか!?」


「えっ、えっ!?」


千乃は完全に混乱していた。


真銀も目を丸くする。


「なんで……。」


ライが静かに周囲を見回す。


「嫌な予感しかしない。」


その時だった。


通りの真ん中に、大きな掲示板が立っているのが見えた。


ララが近付く。


「なになに?」


そこには、大きな文字で。


---


## 恋愛ギルド速報


### 特別観察対象 No.001


**千羽千乃 ❤ 夜坂真銀**


恋人成立!!


恋愛査定結果


・恋愛適性 ★★★★★


・信頼度 ∞


・進展率 100%


・結婚予想 高確率


恋愛ギルド一同、心より祝福いたします!


---


「…………。」


全員が固まる。


真銀はゆっくり振り返った。


「ラブリー・スミス……。」


その名前を口にした瞬間。


「はいっ!」


ビシッ!


近くの屋根の上から、ラブリー・スミスがポーズを決めた。


「恋愛速報号外でぇぇぇぇぇぇす!!」


「お前かぁぁぁぁぁ!!」


真銀の叫びが王都中に響く。


ラブリー・スミスは胸を張る。


「市民の皆様には、幸せを共有する権利があります!」


「ない!」


「あります!」


「ない!」


「あります!」


「ないって!」


ララは笑い転げている。


「お腹痛い!」


アイシィも肩を震わせながら笑う。


「さすがラブリーさんです……。」


ライは深いため息をついた。


「予想を超えてきたな。」


千乃は掲示板を見上げる。


「……結婚予想?」


顔が一気に真っ赤になる。


「ま、まだそこまで考えてないよぉ!」


その一言で。


周囲の人たちはさらに盛り上がった。


「かわいいー!」


「照れてる!」


「応援してます!」


「お幸せに!」


拍手が起こる。


花びらまで舞い始めた。


真銀は頭を抱えた。


「今日は宿から出なきゃよかった……。」


すると。


千乃が小さく笑って、真銀の袖をつまむ。


「……でも。」


「みんなが祝ってくれるのは、ちょっと嬉しいね。」


真銀はその笑顔を見る。


「……そうだな。」


その言葉を聞いたラブリー・スミスは、拳を高く突き上げた。


「恋は世界を救いまぁぁぁぁぁぁぁぁす!!」


王都中から大きな拍手が沸き起こる。


そして真銀は、今日だけで何度目か分からないため息をついた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。