第332話 悪人でも強制的に改心して貰うのは有りだよね
メイリンさん達は、とても疲れていそうだったので、車でギルドへ向かう事にした。
ツドイさんが<虚空界>からマイクロバスを取り出すと、メイリンさん達は驚いていたが、少しだけ耐性が付いてきたようだ。
そして、僕は1つ気になる事があったので、リラさんにお願いして調べものを頼んでおいた。
ギルドへ着くと、早速受付嬢さんにダンジョン素材の買い取りを、お願いすることにした。
受付嬢さん達は、僕の顔を見た瞬間から全員整列して出迎えてくれた。
そのままVIPルームまで案内してくれて恐縮してしまいそうだ。
おそらくヤン部長が気を使ってくれたんだと思うけど、一緒に連れて来られたメイリンさん達が少し怯えてしまっている。
「大サービスですね?」
「いえ、当然の対応です。私達にもボーナスが出ましたので全員感謝しています。本当にありがとうございます」
「いえいえ、僕も査定を頑張って貰ったから感謝してるんですよ?」
「ヤン部長は有能なお方ですから♪」
「あはは、確かに。今日も買い取りを、お願いして良いですか?」
「もちろんです。直ぐにヤン部長も来られますので、少しだけお待ちください」
「はい」
僕達はダンジョン素材をテーブルに出していくと、今日も結構大量になってしまった。
メイリンさん達の素材は、ちゃんと分けて出していく。
「こっちはメイリンさん達の取り分ですからねー」
「ええっ?」×メイリン達
「多すぎますよ? 私達は宝箱だけで十分満足ですから」
「駄目よ? メイリンさん達が倒した魔物素材なんだから、ちゃんと受け取ってくれないと」×アヤメ
「そだよー! 本当なら山分けが基本なんだからね?」×ナギサ
「わ、分かりました。ありがとうございます」
「いえいえ」
僕達が素材を出し終わる前にヤン部長も来てくれ、素材の量を見て固まってしまった。
「くはっ! 昨日より多いのではないですか・・・」
「えっと、頑張っちゃいました?」
「フフ、恐ろしいまでの強さですね?」
「今日はシュアン達が頑張ったからね~」×ノノ
「ハハ、チラッと地獄が見えたような?」×ソンイ
「ば、馬鹿。ソンイ?」×シュアン
「い、いえ、とっても頑張りました! 楽しかったです!」
「フフ、鍛え足りないのかと思いましたよ?」×リラ
「「「「「「そんな事ないです!」」」」」」
「そだそだ、ヤン部長。今日一緒に行ったメイリンさん達の素材も頼んじゃって良いですか?」
「もちろんです。えっ! あれは金の延べ棒ですか?」
「はい、宝箱から手に入れたんですよ」
「素晴らしいですね、金は現在高騰しておりますし、ダンジョン産の物は純度も高いですから」
「高く売れそうですか?」
「はい、頑張らせていただきます」
「「「「「「キャアアアアアアアア!!!!!」」」」」」×メイリン達
「良かったね~♪」×テユン
「ですが、少しお時間を頂けますか? 明日には全額引き渡せると思います」
「メイリンさん、急がなくても大丈夫ですか?」
「はい、明日なら全然大丈夫です」
メイリンさん達は本当に嬉しそうにしているので、見ているだけで僕も嬉しくなる。
すると、リラさんに頼んでいた調べものが終わったらしく、僕に耳打ちしてくれた。
僕はリラさんの話を聞いてから納得すると、次の行動へ移る事にした。
「あの良かったら、今日のお礼に食事でも奢らせて貰えませんか?」×メイリン
「そんなに気を使わなくても良いですよ?」
「でも、私達には何も返せるものがありませんし・・・奢るって言っても安いとこになっちゃうんですけど」
「ごめんなさい。僕達はこれから少し用事があって、行かなくちゃいけないんですよ」
「そうですか。では、何か違うもので、お礼させて下さいね」
「んふふ、本当に気を使わなくて良いわよ、私達も楽しかったからさ」×アヤメ
「そそ、借金なんて全部返しちゃって、明日から楽しんじゃってね」×ナギサ
「はい、本当に今日は、ありがとうございました」
「いえいえ」
メイリンさん達は、僕達に何度もお礼を言ってくれ嬉しそうに帰っていった。
「ねえ、ヨウ君。もちろん、私達も連れてってくれるのよね?」×シュアン
「あれ? ひょっとしてバレてます?」
「どうせ、闇金融に行くんだろ?」×ソヒョン
「あはは、鋭いですね~」
「でも、ヨウ君。そんな闇金融なんて沢山あると思うんだけど?」×テユン
「ん~ リラさんに調べて貰ったんですけど、始末するほど悪い人達じゃなさそうなんですよね」
「なら、どうしてかな?」×ギュリ
「詳しく言っちゃうと、ギルド職員からダンジョンで亡くなった人の情報を貰って、借金を上乗せして家族に請求してるんですよね」
「うはーーー!」×シュアン達
「クズじゃない?」×フィ
「クズなんですけど、実際に借金がある人にとっては、救済システムとして優秀なんですよ?」
「なるほどね。大体ヨウ君のやりたい事は分かったわ」×シュアン
「忠告、いや警告ってとこか?」×ソヒョン
「フフ、これからの条件次第で、クリーンな会社になりそうですね」×リラ
「うはー やっぱり、リラさんは怖いですね?」
「誉め言葉として受け取っておきますね」
「本当にシュアン達も行くのかな?」×ツドイ
「私達の国ですからね?」
「んふふ、じゃ強く成らないとね?」
「イイッ!!!」×シュアン達
「ハハ、そういう意味でしたか・・・でも大丈夫です。私達はもっともっと強くなりますから」
「あはは、僕も手伝いますよ?」
「ヨウ君は手加減してくれると嬉しいかな~」×テユン
「いつもメッチャ手加減してますー」
「あはははは♪」×全員
僕達は結局シュアンさん達と一緒に、メイリンさん達の闇金屋さんに行くことにした。
事前に調べてあったので迷う事もなく到着したんだけど、悪い事をしている割には古い建物だ。
築20年以上は経っていそうなビルの3階が闇金屋さんらしい。
とりあえず、僕達はビルに入って良き闇金屋さんのドアを叩いた。
中へ入ると店の人達は、僕達を見て驚いていた。
店の人は強面の人だろうなと勝手に想像してたけど、40代ぐらいの普通の装いをした男性と若い人がいる。
建物は古いけど内装は綺麗にしてあり、掃除も行き届いているようだ。
まず言葉を発したのは、その40代ぐらいの男性だった。
「リー・シュアンだと?」
「やっぱり、シュアンさん有名人ですね~」
「地元だからよ?」×シュアン
「ま、まさか、SSランク三日月陽か! こんなところに凄い奴が来たもんだな?」
「どうやら、挨拶は要らないみたいね?」
「まさか、金を貸してくれって言うんじゃないだろうな?」
「うふふ、私じゃ無いわ。三日月さんに着いてきただけよ?」×シュアン
シュアンさんがそう言うと、男性は怪訝な表情をしながら僕を見ている。
どうやら僕の事も良く知っているのだろう、見た目が子供のような僕に対して緊張しているのが伺える。
「・・・まさか、世界一の冒険者が、金を借りに来た訳じゃないんだろ?」
「あはは、100億元貸して下さいって言ったらどうします?」
「そんな金、あるわきゃねえだろ?」
「あれ? それぐらいのお金もないんだ?」
「ふぅ~ 悪いが俺も忙しくてな、用事があるなら早く言ってくれないか?」
「結構せっかちですね~ 今から貴方達の人生が変わるかも知れないのに?」
ゾクッ!
別に<威圧>したわけでもないのに、男性は額に汗を掻いている。
あまり焦らしても悪いので、僕は本題に入る事にした。
「じゃ、冗談は抜きにして本題に入りますね。
ここからは、十分考えてから喋った方が良いですよ?
今日、僕がここに来たのは、ちょっとした頼み事って言ったら良いのかな。
実は今日、メイリンさん達と一緒にダンジョン探索したんですよ。
その時に、ここの事を聞いて興味が湧いたんで、ちょっと調べさせて貰いました。
まだ、どうするか決めてないんですけど、これから貴方の返答次第で決めたいと思います。
何の事だか、説明しなくても分かりますよね?」
僕がそう言い終わると、男性は大量の汗を掻きながら必死に考え事をしているようだ。
「お前、なにを訳が分からない事を言ってるんだよ?」×店員
「馬鹿野郎! お前は黙ってろ、良いか? お前は何も喋るな。分かったか?」
「・・・はい」
「ふぅ~ 何でだろうな・・・誤魔化せるような気がしねえのは?」
「うふふ、意外と賢明じゃない? 私から言って上げれる事は、もう詰んでるって事だけよ?」×シュアン
「分かった。分かったよ・・・借金を上乗せした分、いや全額免除にするから許してくれねえか?」
「えっと、それってメイリンさん達だけじゃなく、全員って事ですよね?」
「ば、馬鹿な?」
「だって、それぐらいしないと、謝罪にならないじゃないですか?」
「そんな金は、ウチにはねえぞ? どう頑張っても無理だ」
「フフ、物理的か社会的にか、どちらに致しますか?」×リラ
「む、無理だ! 本当に無理だ! 出来ねえ事は、出来ねえんだよ?」
「僕が貸してあげましょうか? 貴方達ほど優しくないですけど?」
「・・・お前の話しは聞いている。『ドーシー』を潰した事も、裏の噂も知っている。だが、借金したって返せる金額じゃねえんだよ」
「じゃ、しょうがないですね?」
「待ってくれ! こんな俺にも家族がいるんだよ? なんでもするから許してくれ」
「存じ上げております。貴方の交友関係から関係する企業、団体、自宅の住所から家族構成、学歴から犯罪歴、パーソナルデータまで揃えてありますので」×リラ
「言っとくけど、下手な嘘はつかない方が良いわよ?」×アヤメ
「・・・参った、お手上げだ。泣き落しも無理って事かよ、何がお望みなんだ?」
「潔いですね~ じゃ、僕から提案があるんですけど?」
「強制の間違いだろ?」
「あはは、そうとも言いますね♪ 僕の提案を受けるんですね?」
「ああ、それしかねえからな・・・」
「ではでは、説明しますね。現在、お金を貸している皆さん全員の上乗せを解除して下さい。それから金利も真っ当な価格にして貰いたいですね」
「それだけじゃないんだろ?」
「もちろんです。同じような闇金をやってるとこが多いと思うんですけど、それ全部貴方が纏め上げて同じ様にして下さい」
「本気で言ってんのかよ?」
「はい。でも、冒険者を殺してマッチポンプしてるようなとこは、誘わなくて良いですからね? そんな人達は直ぐに居なくなりますから」
ゾクッ! 「わ、分かったよ」
「言っときますけど転職とかは駄目ですからね? ちゃんと真っ当に頑張って下さい」
「悪い事してたんだから、ちゃんと罰は受けないとね」×アヤメ
「でも、これぐらいで済んで良かったね~」×ナギサ
「最後にこれだけは言っておきますけど、メイリンさん達は貴方に、とても感謝してましたよ?」
「貴方に良心があって良かったわね♪」×シュアン
「では、僕の言いたい事は終わったので、これから宜しくお願いします」
「ああ・・・」
僕の用事は終わったので、闇金屋を後にする事にした。
「社長・・・あんな約束して良かったんですか?」×店員
「良いも悪いも、それしか選択肢がなかったんだよ・・・
お前も良く覚えておけ、世の中には逆らっちゃ生きていけない奴がいるんだよ」
「いくらSSランクって言ったって、あんなガキなのに?」
「そのガキに、あの『ドーシー』が一瞬で潰された、建物ごと粉々だ」
「う、嘘ですよね?」
「明日には幾つかの同業者が消えてなくなる・・・お前も人を見る目を養うんだな、長生きしたけりゃよ」
「・・・・・・・」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
僕達は、ちょっとした掃除をしてから日本へ帰る事にした。
そして翌日! 僕達は、またシュアンさん達と北京に来て、まずはギルドへ行くことにした。
ヤン部長に、少しお願い事をするためにだ。
受付嬢さんにヤン部長を呼び出して貰うと、快く了承してくれ直ぐに顔を出してくれた。
「おはようございます。三日月様」
「おはようございます。すみません忙しいのに呼び出しちゃって」
「いえ、そんな事は気にしないで下さい。昨日の査定も終わっておりますので、メイリンさん達にも既にお渡ししておきました」
「ありがとうございます。喜んでましたか?」
「はい、とても良い笑顔で帰っていかれました」
「それは良かった」
「・・・どうやら、その一件ではなさそうですね?」
「ヤン部長も鋭い人ですよね?」
「で、できれば良い話しであることを願いますわ」
「すみません。あまり良い話しではないかもです」
僕の言葉にヤン部長の表情に陰りが見えている。ギルド職員も大変だなと少し同情した。
「話を聞く前に、謝りたくなってきました・・・」
「あはは、とりあえず聞いて貰えますか?」
「すみません、お聞きします」
僕はギルド職員の中に、冒険者の情報を闇金業者に流している人が居る事を詳しく話していった。
ヤン部長は、ドンドン悲壮な表情になっていき、なんか申し訳ない気持ちになってきた。
「すみませんでした。直ぐに対処致しますので、どうか許していただけないでしょうか」
「ん~ たぶん闇金業者が上手い事言って、ギルド職員から情報を貰ってたと思うんですけどね」
「騙してる事を知ってて、情報を流してたんなら問題よね?」×アヤメ
「はい、そこも十分に調査して対処致します。こんな事は、もう二度と起こらない様にしますので、どうかお許し下さい」
ヤン部長は深々と頭を下げてくれた。
「いえいえ、僕は怒ってなんてないので、どうか頭を上げて下さい」
「ありがとうございます」
「そこで、なんですけど?」
「は、はい」
「これからは、ギルドから率先して、闇金業者に情報を伝えてくれますか?」
「はい?」
「あはは、混乱しますよね? ごめんなさい。実は闇金業者と話をつけてきたんですよ」
「は、話しですか?」
「はい、これからは借金の上乗せとかせず、良心的な金利で冒険者のサポートをしてくれるそうです」
「んふふ、武器や防具の貸し出しや、パーティメンツの斡旋までしてくれるそうよ?」×アヤメ
「もう、闇金業者なんて呼べなくなりますね~」×ノノ
「フフ、ギルドからの救済措置として利用して下されば良いかと」×リラ
「冒険者は危ない仕事だからね、良いサポートになるんじゃないかな」×ツドイ
「っと言う訳で、情報を流していた職員達と、これからの対応をお願いします」
「はい、ありがとうございました」
「お礼なんて良いですよ、僕達が勝手にやったことですからね」
僕達はヤン部長への頼み事も終わったので、またシュアンさん達とダンジョンに行くことにした。
<ヤン部長視点>
フゥ~ また寿命が縮まる思いだ。
それにしても本当に恐ろしいな、彼等に分からない事は無いのではないかと思ってしまう。
さて、急いで今聞いたばかりのギルド職員を問い詰めねば。
私は早速、闇金業者に情報を流していた職員3名を呼び出した。
呼び出された職員は、どこか落ち着きのない様子だった。
こうやって冷静に見ていると、何か悪い事をしているのが一目瞭然ではないか。
これからは、もっとギルド職員にも目を光らせとかなければと思い知らされる。
「ヤン部長、朝から何の御用でしょうか?」
「それだけ落ち着かない様子をしているんだ、ある程度は分かっているのだろう?」
「なんの事を言っているのですか?」
「では、分かり易く言ってやろう。お前達が情報を流した闇金業者達は、ダンジョンで死んだ遺族に借金を上乗せしていたようだ」
「なっ?」
ふむ・・・反応を見る限り予想はしていたが、詳細までは知らなかったようだな。
「言っておくが下手に誤魔化さない方が良い、お前達が何時、何処で、誰に、何を言ったか全て証拠は揃っている」
「「「・・・・・・・」」」
「もちろん、何か事情があるのだろうが、それを詳しく話して貰おうか。
出来れば正直に話して欲しい、嘘や誤魔化しは無駄だと言っておこう。
分かる筈が無い証拠が揃っている事で察して欲しい。
知らなかったとは言え、亡くなった冒険者の遺族を苦しめたのだ、決して軽い罪ではない。
だが、お前達が今生きていると言う事は、まだ許される余地があると言う事だ。
これは、幸いと言って良いだろう。お前達も、そうは思わないか?」
「・・・SSランクとは、そこまで人外なのですね」
「ああ、彼には神と悪魔が共存しているらしい。私も最初聞いた時は鼻で笑ったが、今では私もそう思うよ」
「分かりました。全てお話しします」
「賢明な判断だと思う」
それから三名のギルド職員は、其々事情を説明してくれた。
予想通り、闇金業者とは思っていなかったようだ。保険会社だと言われ亡くなった冒険者遺族の為にと情報を渡していたらしい。
当然、例えそうだったとしても、ギルドの規則違反に抵触するため誰にも言えなかったそうだ。
最近になって疑惑があり問い詰めたところ、もう共犯だと脅されていたらしい。
それからは賄賂も貰う様になり、余計に誰にも言えなくなったそうだ。
「事情は分かった。だが、私にはそれが本当の話しなのかは分からない、本当にそれで良いんだな?」
「「「はい」」」
「分かった。予想の範囲内で少し安心したよ、では業務に戻ってくれ」
「えっ? 私達はクビでは無いのですか?」
「逆だ! お前達は、もうギルドを辞めれなくなったと思って貰いたい、処分については、また連絡する」
「「「はい」」」




