第326話 初の3パーティ探索ですよ
<イー・ヤン 視点>
「可愛い顔してんのによ、おっとろしい奴等だぜ。言っとくが、絶対に敵対するような事はするんじゃねーぞ?」
「・・・ああ、分かってる。いや、今日分かったと言った方が良いだろうな。やはり、ウェイから見たら分かるのか?」
「それがよー、全く分かんねえんだわ。誰がどう見ても強者なんて思わねえだろうな」
「ふぅ~ 全く危険な罠もあったものだな」
「わはは! そうだな。あれは一等危険な罠みてえなもんだ。
エサが豪華絢爛ときてやがる。パクっといったら釣られて終わりだ♪
どうやら、裏の話しは本当らしい」
「裏の話し?」
「ああ、『明日が見たいなら、三日月陽には手をだすな!』誰が言ったか知らねえが、上手い事言いやがる」
「・・・それは、裏でも有名人って事だろう?」
「おいおい、下手に藪を突いて何が出てきても知らねえぞ?」
「ああ、もう尾行を付けるのは止める。おそらく、バレていると見た方が良いだろうしな」
『フフ、それが賢明かと』×<念話>リラ
「なっ?」
『御安心して下さい。これは、<念話>と言うスキルです。
貴女にしか、この声は聞こえておりません。
私はヨウ様のパーティメンバーの1人、天満リラと申します。
貴方が私達に尾行を付けたと同時に、私も貴女の事を調べさせていただきました。
貴女の経歴、身体情報、家族構成、友人、趣味に至るまで。
フフ、とても素敵な趣味をお持ちのようですね。
もし、貴女がお忘れなら、何時でも教えて差し上げます。
ヨウ様は、貴女に好感を持っておられますので、警告させていただきました。
くれぐれも、ヨウ様を不快にさせないよう、お願い致しますね。
では、失礼します』
「おい、顔が真っ青だぞ?」
「・・・何でもない、そろそろ私は失礼するよ」
「ああ、大丈夫だよな?」
「なんとかな・・・」
・・・恐ろしい。
全く持って恐ろしい・・・<念話>だと?
そんなスキル聞いた事もない。それに何時、私の事を調べる時間があったのだ?
それも、私自身しか知り得ない情報を、一体どうやって・・・
そんなスキルが存在するのか? そんなスキルがあったら秘密など、なんの意味を成さないではないか。
シュアン達が、三日月陽の事を何も教えてくれなかったのは、こういうことか・・・
まさか、この年になって、これだけ戦慄を覚える事になるとはな、先ほどから冷たい汗が止まらない。
分かった、理解した。私などが触れて良い人物じゃないって事だ。
天満リラか・・・どうやら、恐ろしいのは三日月陽だけではないらしい。
私に此処まで言ってくれたと言う事は、私に盾になれと言う事か。
シュアン達を日本に送り出して、まさか、こんな展開になるとは予想出来る筈もない。
三日月陽と良い関係になってくれてる様なので、助かっていると考えるべきだろうな。
やれやれ、中国に居る間は誠心誠意で接するとしようか。
今日だけで、どれだけ寿命が縮んだのか分かったもんじゃない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
<ヨウ視点>
「ぷはっ! 老酒って美味しいですねー」
「・・・なあ、なんか罪悪感がスゲエんだが?」×ウェイ
「リーダーが勧めてるので、なおさらかと?」×リウ・クゥシン
「だってよう? これだけ、カパカパ飲まれたら普通注ぐだろ?」
「んふふ、大丈夫よ。ヨウ君は見かけに寄らずザルだからさ。
それにしても綺麗な女性ね、ウェイさんの彼女さんかな?」
「いえ、リーダーはお慕いしておりますが、私はパーティメンバーの1人です」
「へえ~ 名前を聞いても良いかしら?」
「はい、私はリウ・クゥシンと申します。それに、私などより貴女達の方が、よほど綺麗ではありませんか?」
「そんな事ないわよ。ねー、ウェイさん?」
「そこで俺に振るのかよ? まあ、俺のパーティの紅一点だからな」
「逆ハーレムなんだ?」×ツドイ
「うふふ、そんなことありませんよ」
パクパク! モグモグモグ!
「ぐびっ! ぷはっ! おいひぃーです♪」
「・・・なあ、あの小さな体のどこに入ってくんだ?」
「それを言うなら、女性達も凄まじいのですけど?」
「あ、兄貴、食材が足りないらしいっすよ?」
「なんでだよ? 今日、買い出し行ったばっかだろうが?」
「そんなの、とっくに無くなりましたよ?」
「んふふ、ごめんね~ 私達ってよく食べるからさ」
「僕、食材いっぱい持ってるんで差し入れして来ますねー」
「あっ! おい? まだ食うのかよ? どんな体してやがんだ」
「明らかに自分の体重以上食べてるような・・・」
「あ~ あんまり常識に囚われてると、三日月達の相手は出来ないぞ?」×ソヒョン
「うふふ、何もかも超越した人達ですからね」×シュアン
僕は食堂に行くと皆、必死になって料理を作ってくれていた。
申し訳ないので僕は大量の食材と、お詫びに『霧のワイン』を10本ほど提供することにした。
「こんな大量の食材をどっから・・・ひょっとして<虚空庫>?」
「ですです! これも置いておきますから、皆で飲んで下さい。では、すみませんけど。お願いしますねー」
「お、おい!」
「客から差し入れされたら、兄貴に怒られそうなんだけどな。礼を言う暇もなく行っちまったぞ?」
「しかし、凄いよな~ 当然の様に<虚空庫>まで持ってんだからよ」
「あ、あああ~~~ こ、これ知ってるーーー!」
「なんだよ大声出して、どうしたんだ?」
「これって、あれよ? 以前話題になった『霧のワイン』よ?」
「なにぃいいいいいいいいいいいい!!!!!」
「そんな高額なワインを、10本も置いていったのかよ?」
「そんなの、勝手に飲んだら兄貴にブッ飛ばされるぞ?」
「わ、私、リーダーに伝えてくるわ」
「ああ、頼む」
僕が席に戻ると先ほど食材を渡した女性が、何かウェイさんに耳打ちしているようだ。
「ブッ!? な、なんだと? おい! SSランクさんよ?」
「僕の事はヨウって呼んでくれたら良いですよ? 僕も兄貴さんって呼ばせて貰いますから」
「いやいや、呼び方なんてどうでも良いんだが、俺達も『霧のワイン』がどんなものか知ってんだよ?」
「ほんのサービスですから、皆さんで飲んで下さい」
「あんな高い酒、ポンっと出すんじゃねえって。老酒を吹いちまったじゃねーか」
「フフ、『霧のワイン』より食材の方が高額ですから、お気になさらず」
「ぶはっ! なんて物を置いてきやがったんだよ?」
「えっとですね、マンモスの肉とかブラックダイヤって言うマグロと、ドラゴンの肉とかだったと思います」
「ドラゴンだと? あ、頭が痛くなってきやがったぞ?」
「んふふ、ヨウ君は絶対に食材は売らないから、ラッキーだと思えば良いんじゃない?」
「ささ、老酒のお礼に『霧のワイン』も出しちゃいますから、皆さん飲んで下さい」
「うおおおおおお! 本当かよ?」
「おぃいいいい! 正気かよ?」
「遠慮なんてしないで良いから、パアッといきましょ」
「ええい! もう、どうでも良いか、遠慮なんてしねーぞ?」
アヤメさん達が『霧のワイン』をワイングラスに注いでいってくれ、改めて乾杯することにした。
「かんぱ~い!」
「イエ~~~~~~♪」
グイッ! ゴクッ!
「う、旨え・・・なんだこりゃ?」
「美味しいです・・・こんな、ワインがこの世にあったなんて」
「それにしても、とんでもない物ばかり出しやがって、隠す気ねえだろ?」
「あはは、そんな事無いですよ?
でも、こんな時に出さないで、何時出すんですか?」
「わはは、違いねえ♪
おう! お前等、ちゃんと礼だけは言っとけよ」
「ごちになりま~す!」
「SSランク太っ腹~」
「みっかづき、みっかづき!」
「イエ~~~~~~~~~♪」
「あはははは! 兄貴さん最高~~~」
僕が提供した食材やお酒が余程美味しかったのか、皆大いに飲み食いし酔い潰れる人が多くなってきた。
「なんだよ、何か言いたそうな顔してやがんな?」
「うわ~ 僕って顔に出やすいのかな、流石ですね?」
「何言ってやがる。元々俺のファンだからってだけで、此処に来たわけじゃねーんだろ?」
「あはは、本当にファンだから一度会ってみたかったんですよ?
でも兄貴さん。明日、僕達と一緒にダンジョンへ行きませんか?」
「んんっ? そんな事が目的だったのか?」
「目的って言うか、兄貴さんの事が知りたくなったんですよ」
「わはは! 良いぜ。俺もSSランクの戦闘を見てみたいしな」
「わーい、わーい♪ ありがとうございますー」
「本当に読めねえ野郎だな?」
「僕って、とっても分かり易いと思いますよ?」
「それは、どうだかな?」
「あはは、じゃ僕達は、そろそろ帰りますね。明日の朝に誘いに来ますから」
「ああ、今日は、ごっそさん」
「いえいえ」
僕達は酔い潰れてる人が多かったので、挨拶もそこそこにクラン本部を後にした。
兄貴さん達数人が見送ってくれたので僕は手をブンブンと振って、別れの挨拶をした。
「・・・どう思われますか。リーダー?」×クゥシン
「困ったことに、全然分からねえんだよ」
「珍しいですね、リーダーがそう言うなんて」
「普通の奴等なら兎も角、奴等が俺達とダンジョンに行って、得する事があるとは思えねえしな」
「・・・もちろん、実力はあるのでしょうが、私にはリーダーがそこまで言う程の強者には見えませんでした」
「俺も同じなんだけどよ、俺の勘は絶対に近づくなって警報音が鳴りっぱなしだったんだよ。
ほら見ろよ、この手汗をよ。情けねえことに緊張したぜ」
「そ、そこまでですか・・・私の警戒度も一段階上げておきます」
「無駄だ!」
「えっ?」
「どんだけ警戒したって、どうにもなんねえよ。全く世の中ってのは面白いよな?」
「・・・私は明日が怖くなってきました」
「わはは、俺もだ」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌朝、僕はアヤメさん達とシュアンさん達と共に、気分良くクラン『力拳』に車で向かう事にした。
「んふふ、機嫌良さそうね、ヨウ君?」
「だって、ウェイさんって僕の想像以上の人でしたから」
「そうね、あんなに笑わされるとは思わなかったわ」
「僕、腹筋が筋肉痛になりそうだったよ」
「フフ、少しヨウ様の事を警戒されてましたが、面白い方ですね」
「確かに、皆から慕われそうな人よね」
「フフ~ ヨウ様がファンになるだけはありますね~」
「たぶん、『ドーシー』の事を知ってたんでしょうね。それでも、あれだけ歓迎してくれたんだから凄い人です」
「うふふ、私達もウェイさんの評価が爆上がりしました」×シュアン
「あんなに面白い奴だったんだな~」×ソヒョン
僕達は兄貴さんの事を色々と話しているうちに、どうやら『力拳』クラン本部に着いたようだ。
改めて見ると、流石に中国でトップクラスのクランだけあり立派な本部だった。
そういや、昨日も大勢の冒険者達がいたんだけど、ウェイさんの話が面白すぎて意識が全部持ってかれちゃったからな。
僕達が車から下りる頃には、兄貴さんもクラン本部から出て来てくれた。
「おはようございます。兄貴さん」
「おう、昨日は旨いもん食わせてくれてありがとな」
「いえいえ、こちらこそ」
「よーし! じゃ行くか、歩きで良いよな?」
「はい」
北京上級ダンジョンは歩いて10分ぐらいらしいので、3パーティでゾロゾロと歩いて向かう。
そう言えば、クランメンバー以外と3パーティでダンジョンへ行くのは初めてかもしれない。
本来、上級ダンジョンなら当たり前の事なんだろうけど、僕達には新鮮な気分になる。
歩きだしてしばらく経つと、また僕達を尾行している者が居るようだ。
「ヨウ様、どうやら昨日とは違う者のようですね」
「たぶん、ヤン部長が僕達から手を引いてくれたんでしょうね」
「でも、昨日より増えてるわ、6人ぐらい居そうなんだけど?」
「おいおい、そんなに正確に分かるのかよ?」
「んふふ、上手く隠れてるつもりなんだろうけど、私達にはバレバレよ?」
「丁度6人なら、ちょっと揶揄って上げましょうか? こんなのは、どうです?」
僕はアヤメさん達に尾行者の揶揄い方を説明すると、皆悪い笑顔になっていった。
「んふふ、ヨウ君ったら悪いんだから?」
「あはは、そんな事言いながら、悪い笑顔してるじゃないですか?」
「ほ、本当にそんな事が出来るんですか?」×テユン
「フフ~ 見てたら分かるって」
「すみません。兄貴さん、ちょっとだけ時間貰えますか?」
「・・・ああ、別に良いぜ」
「ではでは」
僕とアヤメさん達は、一瞬の内に6人の尾行者の背後に立った。
「「「「「「き、消えた?」」」」」」×尾行者
「「「「「「誰かお探しですか?」」」」」」
「なっ?」
「ひっ!」
「くっ!」
「えっ?」
「はあ?」
「・・・」
尾行者は全員振り返り、僕達が誰かを確認すると全員驚き戸惑っていた。
それはそうだろう。100メートル以上離れている場所から尾行していたのにも関わらず、瞬きの間に背後に居るのだから。
僕達は笑顔で、次の言葉を発する!
「「「「「「ひょっとして、探してる人はあの人じゃないですか?」」」」」」
僕とアヤメさん達は今まで僕達が居たところを指差し、尾行者達が振り返る前に、また一瞬の内に元の場所へ戻った。
尾行者の6人は僕達が指を差した方向に僕達が居るのを見て、直ぐに振り返った、当然僕達が居る筈もなかった。
尾行者は何が起こったのか分からず、ただ立ち尽くしている。
「あはははは♪」×アヤメ達
「凄く、キョトンとしてるよ?」
「フフ、状況を正確に理解し、恐怖している者もいますね」
「ちょっとは、僕達を尾行する危機感が分かってくれたかな?」
「これでも、まだ尾行する者が居たら本物の馬鹿だわ」
「フフ~ ヨウ様は、悪い人です」
「誤解ですー、ちょっと揶揄っただけじゃないですかー」
「・・・ハハ、こんな揶揄い方が出来る、ヨウ君達が怖いんだけど?」×テユン
「何時でも始末できるぞ! って、言ってるんだよね?」×ソンイ
「そんなに、僕は黒くないですー」
「あはははは♪」×シュアン達
「・・・・・・」×ウェイ達
<ウェイ視点>
な、なんて奴等なんだよ。目の前に居たのに、俺でも消えたようにしか見えなかったぞ?
一瞬のうちに、あんな離れた所まで移動したのかよ・・・
俺としたことが情けねえな。震えがきちまうなんてよ。
尾行してた奴に同情しちまうぜ。クゥシンも可哀そうに、恐怖を感じて汗を掻いてやがる・・・
やっぱ、俺の勘は間違ってねえ。此奴等は、とんでもねえのは間違いねえな。
「お待たせしました。さあ行きましょうか、兄貴さん」
「おう」
<ヨウ視点>
僕達は余計な邪魔が入ったけど、無事北京上級ダンジョンへ辿り着いた。
結構冒険者が居たけど、皆ウェイさんに挨拶をしている。
「やっぱり、兄貴さんは有名人なんですね~」
「俺より余程、有名人だろーが?」
「あはは、まさか外国にまで知れ渡ってるとは、思ってなかったんですよ?」
「あのな~ ランクってのは世界中で統一されててよ、厳密に調査して決められてるんだぞ?
冒険者にとって、一番分かり易い肩書なんだ。
誰でも上位ランクを取得して、踏ん反り返りたいってのが普通なんだよ?
幾ら魔物素材の納品でランクが決まるって言っても、腕っぷしの世界だからな。
ちっとは分かったか? 世界一の冒険者様よ」
「あはは、僕の場合は本当に楽しんで冒険者してたら、こうなっちゃったんですよね・・・」
「そうなのよね~ ヨウ君って休み無しで、毎日ダンジョンに潜りっぱなしだもん」
「ちょっとでも時間があったら、トコトコダンジョンに行っちゃうんだよ、信じられる?」
「ほっといたら、絶対にダンジョンに居る時間の方が長いんだから」
「最初の頃なんてスライム相手に毎日、毎日、戦闘訓練してたしね」
「スライムボール100個ぐらい持ってくるんだもの、心配しちゃったわ」
「フフ、ヨウ様の凄さは強くなった今でも、決して油断しない事ですね」
「ヨウ様は例えスライム相手でも、逃走ルートを考えてから戦うから凄いよね」
「臆病なだけですよ?」
「本気で自分の事を弱いって思ってるしね」
「向上心の化物・・・(ぼそっ」
「ツードーイーさーん! 何か言いました?」
「ヨウ君を心の底から愛してるって、言ったかな?」
「えっ? 僕、照れちゃいますよ?」
「・・・全然懲りないと思ったら、躱し方が上手くなってるし?」
「んふふ、ヨウ君。チョロ過ぎ!」
「あはははは♪」×全員
「あっ! そだそだ。兄貴さん、兄貴さん、地下10階からで良いですか?」
「ん? なんだよ、北京上級ダンジョンに来たことがあったのか?」
「いえ、僕達は初めてなので、地下1階から追い掛けます」
「・・・ちっと、言ってる意味が分からねえんだが?」
「ウェイさん。私達は地下10階からボス部屋を目指しましょう」×シュアン
「まあ良いけどよ」
僕達は兄貴さん達とシュアンさん達に、また後でと言って先にダンジョンへ入って行った。
「さあ、急ぎましょうか」×シュアン
「おいおい! まさかと思うが、そんなに早く俺達に追い付くなんて言わねえよな?」
「急がないと、待たせる事になっちゃう」×ギュリ
「ほ、本気かよ?」
「ヨウ君達を常識で考えちゃ駄目だよー」×テユン
「さあ、これを飲んで下さい。疲れにくくなりますから」×ソンイ
「冗談キツイぜ・・・」




