表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

281/322

第280話 顔が怖い人って優しいのかな


 草原を少し進んで行くと、怖い顔した冒険者を多数見かける。


 どうやら、魔物を倒してると言うよりも、魔物で戦闘訓練しているようだ。


 しかも、結構真面目に訓練しているので、少し感心してしまうほどだ。


 僕達は軽く会釈をして通り過ぎようとすると、声を掛けられてしまった。


 そう言えば、プチ威圧をするのを忘れていたので、しまったな~っと思っていると絡まれたわけではなさそうだ。



「おい」


「はい?」


「此処は上級ダンジョンってのは、分かってるよな?」


「はい、分かってますよ?」


「・・・・・・・・・・・」


「大丈夫なのか?」


「えっ?」


「言っとくが、此処は他の上級ダンジョンと比べて魔物が強いんだ。それに、この草原には一角兎の穴が多数あり、奇襲が多いから気を付けろよ?」


「なるほど。ありがとうございます」


「別に、礼を言われるような事じゃねえ。男はお前1人みてえだが、危ねえ時はシッカリと守るんだぞ?」


「うわ~ 僕を子供扱いしない人は、初めてかもです」


「大人も子供も関係ねえ、危ねえ時は男が女を守るもんなんだよ」


「分かりました。僕、頑張ります」


「おう、気を付けてな」


「はい」



 僕は強面の優しい男性に、手をブンブンと振って別れの挨拶をした。



「んふふ、昔気質みたいな人だったわね?」×アヤメ


「いや~ 良い人でしたね。僕、尊敬しちゃうな~♪」


「あはは、そう言えば、ヨウ君好みの男性だったわね」×ナギサ


「ヨウ君ってさ、男気がある人が好きだよね?」×ツドイ


「だって、格好良いじゃないですか?」


「フフ、私達ではどう頑張っても、真似が出来ませんからね」×リラ


「フフ~ リラ姉なら、ツンデレ出来るかも?」×ノノ


「リラはツンデレって言うより、デレデレだよね?」×ツドイ


「コホン! ツドイも人の事は言えないでしょう?」


「うん、僕もデレデレだね♪」


「照れちゃいますよ?」


「あはは♪」×全員



 それからも歩を進めて行くと、かなりの頻度で冒険者に会う。


 上級ダンジョンでは一番人が多いかもしれない。


 そして、地下2階へ進むと、今度は格好良い防護服で統一された、女性冒険者達と遭遇した。


 全員が同じ防護服なので同じチームなのだろう、クランなのかな?


 特に胸の谷間が協調されたデザインなので、視線のやり場に困ってしまう。


 恰好良いな~っと、思って見過ぎてしまったのか、キッチリと声を掛けられてしまった。



「まちな!」


「はい?」


「・・・冒険者なんだよな?」


「はい、もちろんですよ?」


「・・・見たところ良い装備みたいだが、地下2階からウルフ系の魔物が多いんだ。盾かアームプロテクターが無いと危ないよ?」


「なるほど。ありがとうございます、気をつけますね」


「それにしても女5人で、こんな可愛い少年を上級ダンジョンに連れてるなんざ、気合が入ってるよな? 皆、綺麗な顔してるが、かなり強いんだろ?」


「フフ、私達の強さが分かるのですか?」×リラ


「まあな。少なくとも私達、全員相手でも勝てるかどうか・・・」


「あはは、リーダーそれは無いって♪」


「私達が、こんなモデルみたいな奴に、負ける訳がないっしょ」



 僕達がこの女性達のリーダーさんに感心したが、その仲間達は大したことはなさそうだ。


 リーダーさんも『やれやれ』といった感じで、溜息をついている。



「フフ~ 君達のリーダーは凄い人だよ? もっとリーダーの言う事を信じなきゃ?」×ノノ


「確かにリーダーは凄い人だけどな。まさか、私達に戦って勝つ自信があるのかよ? 言っとくけど。私達に喧嘩を売る馬鹿は、此処じゃ居ないんだぞ?」


「じゃ、ちょっとだけ、信じさせてあげようかな?」



 ノノさんがそう言った瞬間。女性達は臨戦態勢に入ったのか、空気が重くなった。


 余程、喧嘩慣れしてるんだろう。僕達は少しだけ評価を上げる事にした。



「正気かよ?」


「こら! 止めとけって。悪いな、気を悪くしたなら私が謝るよ」×リーダー


「フフ~ 大丈夫だよ♪ 誰にも危害なんて加えないから、私を良く見ててね?」



 ノノさんは両手を広げ、自分に注目するようにアピールしている。


 そして、次の瞬間。ノノさんの姿は溶ける様に消えて行く。



「なっ!」×女性達



 ノノさんは、リーダーの後ろに居た女性に正面からハグをし、首筋にキスをしていた。


 それと、同時に軽く<威圧>を解き放ったようだ。


 ノノさんに抱き着かれた女性は当然だが、その場に居る全員までもが死すら感じさせる恐怖に包まれた。



「ヒッ!」


「フフ~ 私が吸血鬼なら、君は死んでたね~」



 ノノさんがハグを解くと、女性はガクガクと身体を震わせながら、地面に膝を付いた。


 リーダーさんも、ノノさんを凝視しながら大量の汗を掻いている。


 おそらく、自分の見積もりが、かなり甘かったことに気付いたのだろう。


 臨戦態勢を取る事も適わず立ち竦んでいた。



「リーダーさんは勘が良いのかな?


普通の人は私達を見ても、強そうには見えない筈なんだけど?


その勘は、大事にした方が良いよ。


<威圧>しちゃってごめんね。


私達は『クレセント』って言うの、またどこかで会いましょう」



 女性達は喋れる状態じゃなかったので、アドバイスをしてくれた感謝をこめて丁寧にお辞儀をしてから、その場を後にした。



 ガクガクガクガクガク! ×女性達



「くっ! くぅぅ! ま、魔物に警戒しろ! 今、魔物と遭遇するのは拙い。


ち、ちくしょう。私も恐怖で竦み上がって膝が笑いやがる・・・


なっ! う、嘘だろ・・・」×リーダー


「リーダー・・・周りに、大量のウルフが倒されています」


「そ、そんなまさか・・・この私に何も気付かせる事無く、これだけの魔物を倒してくれていたのかよ。


ば、化物め・・・あんなに恐ろしい奴等がいるのかよ?」


「リ、リーダー、彼奴等は?」


「ご丁寧に、この辺りの魔物を一掃してから下層へ向かったよ。魔物を倒してるとこなんて、全く分かんなかったけどな♪ 笑えるだろ?」


「すみませんリーダー・・・私達が余計なことを言ったばかりに」


「ああ、あれは仕方ないよ。私もあんな化物だとは思わなかったからな。しかし、敵対しなくて良かったな。彼奴等相手じゃ数秒で皆殺しってとこか♪」


「わ、笑えませんって、リーダー」


「まあ、あんな化物が普通に居るって事だ。皆も人を見掛けで判断するなよな」


「はい・・・身に染みて理解出来ましたよ・・・死んだと思いましたもの」


「あはは、悪いな。私もあんな化物相手じゃ皆を守れないわ。魔物の方がよっぽど可愛いよな?」


「あの人達に比べたら、ウルフなんてチワワに見えますって」


「あの人達、きっと大阪人ですよ? 発音がそれっぽかったですもの」


「そっか・・・やっぱ、大阪って怖いとこなんだな。今度、行ってみるか?」


「冗談じゃないですよ?」


「あはは♪」


◇    ◇    ◇    ◇    ◇


 僕達は下層へ向けてドンドン進んで行ったが、出会う人全員からアドバイスをしてくれた。


 此処の人達は、なんて優しいんだろうと感心してしまう。


 見た目は結構怖そうなのに、ギャップが実に面白い♪


 人が居ないところでは高速で移動し、僕達は遂に地下10階のボス部屋に辿り着いた。


 予想通り、ボス部屋前には多数の冒険者が待機しており、順番待ちをしているようなので、声を掛けてみることにした。



「すみません。ボス戦の順番待ちですよね?」


「・・・ちょっと待ってくれ。リーダー何か変な奴がいるんだが?」


「失礼な人ね? ヨウ君は変な奴じゃないわ」×ナギサ


「ちょっと待ってください! なんで僕、限定なんですか?」


「だって、変な奴等って、言わなかったじゃない?」


「なるほど・・・確かに複数形じゃない。でも、何か納得出来ない様な・・・」


「んん! なんだ?」×リーダー


「こんにちはー」


「あ、ああ、こんにちは?」


「僕達はボス戦をしに来たんですけど、順番待ちしてるんですよね?」


「・・・冒険者なのか・・・冒険者の恰好してるな・・・」


「そりゃ、冒険者ですから?」


「此処は上級ダンジョンだったよな? あれっ? 俺、何かおかしなこと言ってるか?」


「この馬鹿! シッカリしろよ?」



 リーダーさんと話していると、バッチリと化粧を極めた綺麗な女性が、話に入ってきてくれた。



「あ~ 悪いな。あんた等があんまりにも冒険者に見えないんで、この馬鹿は理解に苦しんでるんだ。


あんた等、見た目は全く強そうに見えないが、そこそこやるんだろ?


良さそうな装備してるしな。


だけど、まさか1パーティでボス戦しにきた訳じゃないんだろ?」


「えっと、一応、僕達だけでボス戦しに来ました」



 僕がそう告げると、女性は怪訝そうな表情になり、なにやら考え込んでいる。



「エスケープクリスタルは持ってるんだよな?」


「はい、一応?」


「あのな。ボスってのは、ここらの魔物よりずっと強いんだぞ?


まして、このダンジョンのボスは半端じゃないんだ。


それでも、戦うって言うのか?」


「はい」



 僕は相変わらず親切な人が多いなと思いながら、ニコニコと返事を返した。



「はぁ~ 仕方ねえな。おいリーダー! 2パーティ用意してくれ、私達も行くぞ」


「ああ、そうだな。とてもじゃないが、ほっとけねえか」



 何時の間にか僕達に2パーティが加わり、3パーティでボス戦をやることになった。


 本当に此処の冒険者は、どれだけ優しいのか、ホッコリとした気分になる。



「あの、ちょっと聞いてみたいんですけど、此処の冒険者さんは何故こんなに親切なんですか?」


「あん? 他の奴等なんて知らねえよ」×リーダー


「でも、此処の冒険者さんって皆、雰囲気が似てるから同じクランかチームなんでしょ?」


「別に同じクランやチームって訳じゃねえ」


「あらっ? そうなんですか?」


「しょうがねえな、私から説明してやんよ。


このダンジョンは東京でも、一等厳しいダンジョンなんだよ。


一番死者が多く怪我人も多いんだ、特にボス戦がな。


そんで、ウチのリーダーが地元の冒険者を纏め上げて、誰も死なない様に守るようになったんだ。


此処の冒険者は素行の悪い奴が多いんだけど、多かれ少なかれリーダーには感謝してるんだよ、馬鹿だけどな♪」


「馬鹿は余計だ!」


「あはは、リーダーが依光いこう 代継しろつぐって名前だから、私達の依代って事でチーム『YORISIRO』って名乗っているんだ。


此処等じゃ有名なんだぜ。


私は副リーダーの香坂こうさか 紗理奈さりなだ、宜しくな」


「なるほど。優しいリーダーさんなんですね~」


「そんなんじゃねえんだよ」


「あはは、照れるなって」


「最近は誰が作ったのか知らないが、エスケープクリスタルが売り出されるようになって、ようやく死者が出なくなったんだけどな。


安く売りだしてくれた、ダンジョン攻略部隊ってとこにも感謝しないとな」



 まさか、僕が丸投げしただなんて言える筈もなく、愛想笑いをしてしまう。



「とろこで、本当に僕達とボス戦するんですか?」


「ああ、悪いが同行させて貰おう。もし、ボスを倒せたとしても分け前なんて請求しないから安心してくれ。


1パーティで倒せるとは、とても思えないけどな。


戦うかどうかは、ボスを見てから判断したら良いさ。


あの凶悪なボスを見て、動揺するといけないからな。俺達も同行するんだ」


「ん~ 分かりました。僕達の判断で決めて良いって事ですね?」


「ああ、見れば分かるさ」



 僕達の為にボス戦の順番も譲ってくれて、3パーティでボス戦に入る事になった。


 脱出することになったらエスケープクリスタルを失う事になるのに、本当に優しい人達だ。


 ボス部屋の中へ入ると、そこには禍々しい形をした黒く大きなサソリが鎮座していた。


 トラック程の大きさがありそうだ。なるほど、これを見たら尻込みする人の方が多いだろう。



「な、なんてこった。こいつはデススコーピオンじゃないか・・・


くっ! よりによってレア種だと・・・おい、お前等落ち着けよ?


少しでも前に出たら襲い掛かって来るぞ?」×リーダー


「どうやら私達も来て良かったみたいだな。おい、先にエスケープクリスタルで脱出しろ」×サリナ


「僕達の判断に任せる。って、言いましたよね?」


「なっ! まさか、あれと戦う気じゃないだろうな?」×リーダー


「馬鹿野郎! 正気か? あんなのと対峙したら、一瞬で叩き潰されるぞ?」×サリナ


「言っときますけど、動いちゃ駄目ですよ?」



 僕はこの人達が正義感を出して加勢してくるのを恐れ、少し<威圧>をして動きを封じることにした。



「なっ! なにっ?」


「くっ! くぅぅ」


「う、うああ」



 僕が意図した通り、手伝いに来てくれた皆さんは膝が震えて動けないようだ。



「では、ヨウ様。行って参ります」×リラ


「リラさんの順番でしたか、結構硬そうですよ?」


「フフ、分かりました」



 リラさんは刀を抜くと、数々のスキルを発動させ刀にも魔力を浸透させていく。


 何時もなら淡く半透明に輝くアダマンタイトの剣が、濃紺に染まっていく。



「フゥ~ 魔掌空剣! 双鏡連斬!」



 キンッ!



 リラさんは、僕が教えた魔掌空拳を刀にまで浸透させ、魔掌空剣として解き放った。


 その切れ味は凄まじく、鉄よりも硬そうなデススコーピオンの甲殻を寸断し、ガラガラと地面に崩れ落ち、光の粒子となって消えていく。



「フフ、完成には程遠いですね。今の私では一瞬しか持ちません」


「いやいや、見事でしたよ。流石、リラさんです」


「ありがとうございます、ヨウ様」


「お、お前等?」×リーダー


「おっ! 流石ですねリーダーさん。僕の<威圧>を受けて喋れますか?」


「な、なんなんだよ、お前達?」×サリナ


「んふふ、貴女も流石ね、サリナさん。でも、人を見掛けで判断しちゃ駄目よ?


貴女の目の前にいるのは、世界でたった1人のSSランク冒険者なんですから」×アヤメ


「「なっ!」」


「お、お前が・・・」


「・・・ちょっと待て。何故それを簡単に言うんだよ? 今まで誰にも分からなかったのに、隠してきたんじゃないのかよ?」×サリナ


「だって、しょうがないでしょ? 私達の実力を見られたんだもの?」


「わ、私達は、誰にも言わない。頼む信じてくれ」


「・・・見逃してくれそうには、見えねえな」×リーダー



 僕達の雰囲気が変わったのを敏感に感じ取ったのか、リーダーとサリナさんが目に見えて顔色が悪くなっていく。



「お前等、逃げろ! エスケープクリスタルを使え!」×リーダー


「リ、リーダー・・・だ、駄目だ! 手が震えて・・・」


「くそう・・・サリナ。お前だけでも逃げろ! 俺が時間を稼ぐ」


「ば、馬鹿野郎! あんな化物達を、どうやって止めれんだよ?」×サリナ


「それでも、何とかするしかねえだろうが?」


「ど、どうにもならないのかよ・・・」


「悪いな・・・全部俺のせいだ」


「今更、リーダーのお人好しさは、どうにもなんねえよ? はは、こんな事になるならリーダーの求婚受けとくんだったよ?」


「全くだ! あの世で頼むわ?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
可哀想に威圧使うから、殺されると勘違いしてるやんwww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ