サリアのレーヴェ神殿にて 3
「美しいうえに御妃に一途なんて、本当に神話の中の方のようだわ、フェリス様! わたしたち、いま、レーヴェ神殿に来るのが一番の楽しみなの」
「そ、それは、光栄の至りでございます……」
そりゃーさー、オレ様への信仰心じゃなくて、フェリスとレティシアの新しい絵巻が欲しいとかだろー、御婦人方? とレーヴェ神殿の御本尊は大笑いしている。
おもしろいよなあ、レティシアの国の人、とレーヴェ神殿を埋める参拝の人々の輝く顔を見下ろす。
さすがオレの娘、遠く離れていても故郷の人々に幸福を届けてる。
「……神官長は何処に? アドリアナ姫は、本日、特別の御祈祷をご希望です……!」
「まあまあ。かしましい御付きですこと。お作法がなっていないわね」
サリアの夫人は唇に手をあてた。
「本当ね。お輿入れなさったレティシア姫は、ご婚姻前そっと御一人でレーヴェ神殿にいらしてたそうなのに」
ここのところ、夫人たちはレーヴェ神殿に足しげく通っているので、レティシアが嫁入り前にそっとレーヴェ神殿を参拝していた折の話など聞かせてもらった。
その折、寂し気な佇まいで、レーヴェ神殿を訪れたサリアの小さな王女レティシアは、勇壮な竜の姿のレーヴェ神に見惚れていて、夫似の人間の姿のレーヴェの記憶があまりなかったのだが。
到底、輿入れ前の姫の華やぎとは縁遠かったその孤独なレティシアを、レーヴェ神殿の神官達も覚えているので、ディアナから幸せなフェリスとレティシアの話が伝わってくるのが本当に嬉しい。
「レティシア姫は、お輿入れ前にこちらに参拝においでになった折、竜のレーヴェ様を、美しいですね、と仰いでおいででした」
「なんて健気なレティシア姫。きっとレーヴェ神様も姫を愛さずにはいれないわ」
神の血をひく人とはどんな人だろう、とそのとき、小さなレティシアは思っていた。
この世界の神の血を引く人のところに嫁ぐのが、異世界から来た魂の入った娘で大丈夫かしら? とやや不安になりつつ。竜の神様、これからよろしくお願いします、と祈っていた。
サリア神殿はどうしても父様や母様の思い出が多すぎて切なかったが、レーヴェ神殿は異国の竜の神の神殿ということで珍しさでいっぱいだった。
その頃のレティシアは、サリア王宮の居心地が悪かったので、神殿に出かけられるのは憩いだった。
「アドリアナ姫がおいでになられました」
ものものしい先触れに、サリアの夫人たちは肩をすくめて、礼をとった。
アドリアナ入場の仰々しさに少々ならずうんざりしつつ、美しいドレスの裾を捌きながら、レーヴェ神殿の壁に飾られたフェリスとレティシアの楽し気な美しい姿に心和んでいた。
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家の事と書籍化作業とに忙殺されてて、更新できず申し訳ない&私が寂しいです!笑。
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