沐浴を楽しむ花嫁 2
「うん、きっと皆も喜ぶ……。レティシア、今日は、本とお菓子を用意してもらったよ」
昨日、足浴していた場所に、銀の三段盆のアフタヌーンティセットが用意され、美しい装丁の本が数冊、積まれている。
前世より本は貴重でしょうに、こんな水気だらけの沐浴場所に、なんて、もったいない……!
「も、桃づくしのアフタヌーンティ! そ、そんな欲望全開でいいんでしょうか。婚前の沐浴ですのに……!」
うう、桃のケーキ、美味しそう……。
「うん。婚前の沐浴だから、癒されないと」
「で、でも、本がいたまないかなって……」
「大丈夫。本にはちゃんと保護魔法かけてあるよ」
「ホントですか! よかった!」
ほう、とレティシアは息を吐く。神殿の大切な本を傷めたらと思うと、気が気ではなかった。
「レティシアが昨日、ディアナのことに興味を持ってくれてたから、僕が選んだディアナの地理や歴史の本と……、選書してたら、フェリス様、乙女の楽しまれる恋物語なども必要では、と渡された本と……」
「恋物語ですか……?」
恋物語とか読んだことないかも!
だって、サリアの王女レティシアは、実年齢的には五歳だからね。
「うん。僕は、レティシアにはまだ早いと思うんだけど……」
「でも、私、お嫁さんなので、ロマンス読んでおいたほうがいいのかも……? ディアナの恋愛小説、興味深いです!」
前世では、通勤途中にスマホで小説や漫画を読んでいたので、ちょっと嬉しい。
サリアでも本はたくさん読んだけど、レティシアか五歳というのもあるけど、やはり紙は大切なものなので、趣味的な恋愛小説などがたくさん本になるのは、ディアナの経済や文化の豊かさの象徴かも……。
「氷の王子の初恋。……フェリス様、この王子様、ちょっとフェリス様に似てます!」
その御本には挿絵があって、美貌の王子様がフェリス様に似てる。フェリス様に似てるので、竜王陛下にも似てるのだけど。
「……いや、どうだろう? 僕は似てないと……」
「似てます! きっとフェリス様がモデルですねっ。楽しそうです、この御本読むの」
「いや……、では、お相手をレティシアをモデルに書き換えてもらわなくては……」
基本、天然なフェリス様が混乱してる。
「そんな無茶は無理です。もう本になってますし」
くすくす、レティシアは笑った。フェリス様がモデルのロマンスと思うと、楽しそうー、と呑気なレティシアは浮かれている。
「だが、これは婚姻の沐浴で読むには不適な本に想える。選書が至らなくて申し訳ない、レティシア」
「まったく。本物のフェリス様のことではありませんし。……あ、でも、フェリス様似だから、この王子様が意地悪に書かれてたら、怒っちゃうかも」
こういうフェリス様や、竜王陛下がモデルのロマンスものたくさんありそう。時間のあるときに、ディアナ語の勉強かねて、読むと楽しいかも。
「オレの本の方が楽しいぞ、我が娘よ」(from竜王陛下)
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