水の神殿にて
レーヴェ神殿での沐浴逗留は、何かとうるさいマクシミリアンのような人種への邪気祓い的な意味と、レティシアの気晴らしになればと思っていたんだけど、気晴らしになっているだろうか、かえって疲れさせてはいまいか? とレティシアと手を繋いで、沐浴の場へと向かいながら、フェリスは少し心配している。
もっとも、レティシア本人はとても楽しそうだ。
さっきも『眼福です、沐浴着のフェリス様!』と浮かれていた。
フェリスが自分で鏡で見た分には、何ら眼福は感じなかったが、レティシアが喜んでくれて嬉しい。
『レーヴェ神殿のフェリス様は、とっても輝いていらして、後光が差して来そうです! 神官さんがフェリス様を拝みかけるのも納得です!』
きゃっきゃっとレティシアは笑っていたが、実際に、竜王陛下と間違えるのか、印を結んで跪いて拝みかける神官までいて、本当に困る。
そうだった。これに困るから、最近、神殿くるの控えてたんだった……と思い出す。
とはいえ、拝まれるのは困るが、隣に立つレティシアがいかに清廉かはよく見ておいてもらいたい、と願いつつ。
人の噂なんていい加減なものなので。
ほんの一瞬で変わるものだからこそ、普段の行いには気を付けている。
奢ることなく、卑屈になることなく、侮られることなく。
常に粛々と、為すべきことを為せ、と。
「フェリス様」
「ん? なに、レティシア?」
「空がとっても碧いです!」
「ホントだね。とても綺麗だ」
回廊を歩いて、屋外へ出ると、晴れた空が抜けるように碧い。
先ほどの礼拝堂の中での邪神騒ぎなど嘘のようだ。
リリアの大司教が街中で襲われたからと言って、何故うちにまで邪神騒ぎが? とかすかに苛立っていたが、レティシアと手を繋いで、碧空の下、神殿の水の回廊を歩いていくと、そんな気持ちすら、この瞬間は溶けていく気がする。
白い沐浴着に身を包んだレティシアは、いつにも増して清らかで、いつにも増して、何ものからもこの子を守ってあげたい、と思わせる。
「今日は、昨日みたいに仰々しい儀式はないから、気楽にね、レティシア」
「はい。でも昨日の儀式も素敵でした! 録画できるものなら、フェリス様推しの会の方々にお見せしたかったです!」
「推しの会の人たちとは、仲良くなれそう?」
「はいっ! ずーっとずーっとフェリス様の御話を皆様と楽しくできるのです! とっても素敵な方々です……!」
ずっとずっと僕の話をしていったい何が楽しいんだろう? といつものフェリスなら不可解に思うところだが、小さなレティシアが羽根でも生えそうに楽しそうなので、レティシアが楽しいならよかった、何とも謎な会だと思っていたが、佳き令嬢方だ、レティシアの力になってくれたら嬉しい、と心から思った。
「佳きかな佳きかな」(from竜王陛下)
すみません! 書籍化作業でバタバタしておりました!
昨日今日と、コミカライズのチェックやら、書籍の表紙やら見せて頂いて、「きゃー!」て感じです!
早く皆様とこの美しさを共有したいです!
あ、各電子書店のフェアが本日迄な気がします♪夏のお供にどうぞ♪
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