花嫁の沐浴 2
(僕の小さな騎士様。僕は見かけより丈夫な男だから、レティシアはいつも誰よりも安全なところにいてくれなくてはいけないよ?)
てフェリス様は仰ってたけど……。
「はっ! 婚姻の沐浴中なのに、突然飛び出してくるなんて、皆様に、慎みのない花嫁だと思われたりは……」
いけない。
フェリス様との婚姻前の沐浴、楽しすぎて、精進潔斎してる感がなさすぎだけど、一応、花嫁の聖なるお浄めの期間……。
「まさか。ディアナの民は、アリシア妃の時代から、勇敢な花嫁をお慕いします。小さき御身でフェリス様を御守りしようとなさるレティシア姫に、皆、さすが竜王陛下の御選びになりし花嫁と喜んでおりましたよ。私もレティシア様が誇らしゅうございますが、姫、どうか危ないことは……」
「きっと礼拝にきた人々から、レティシア姫のお話が広まりますわ! うちのレティシア様がどんなに可愛くて勇ましいお姫様かということが伝わりますわ! 」
サキは心配そうだが、リタはご満悦だ。
うーん、ちびっこレティシアの武勇伝はともかく、邪神騒ぎよりフェリス様の花嫁の話で街が湧いてくれるなら、そのほうがいいかな? また邪神の騒ぎか……てディアナの人の心が沈むよりは?
「みんな勇ましい? ディアナの歴代の御妃様、ディアナの花嫁たちは?」
「そうですね。可憐に見えても芯の強い方が好まれますね。竜王陛下が強い気性の女性を好まれることもあり……」
王太后様はもちろん御強い方なんだけど、フェリス様のお母さまも、芯の強い方だったのかな?
きっとそうだよね。あんなに優しくて強いフェリス様を育んだ方だもの。
そういう強さを、レティシアも持てるといいな。
フェリス様を、フェリス宮の人を、シュヴァリエの人を、ディアナの人を、少しでも守れる強さを。
竜王陛下の肖像画を見上げながら、レティシアは、サキとリタの手で沐浴着に着替える。
「沐浴の儀はいかがでしょう、レティシア様? 春の水は冷たくありませんか? もし冷たいようでしたら、魔法で調整もお願いできると……」
「ううん、竜王陛下の水は冷たくないわ。あのね、水の中にいると、なんだか力が湧いてくるような気がするの。ディアナ王都も、神殿から眺められて、沐浴、とても楽しい」
本当に、竜王陛下の水の神殿で、サリアの孤独なレティシア王女から、ディアナの竜王陛下の娘、フェリス様の妃レティシアへと生まれ変わっていくような心地がする。
清らかな水は、俗世のいろんな柵を浄めてくれる気がしてる。
「それは、レーヴェがレティシアを歓迎してるからじゃないかな?」
「フェリス様!」
迎えに来てくれたフェリスの貌を見て、レティシアの琥珀の瞳は輝いた。
「くまちゃんとレティシアだけでのんびり来てもいいぞー、沐浴ー」(fromレーヴェ神殿の御本尊)
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