ディアナ王宮にて
「……それで、邪神と騒ぐ者が、フェリス殿下を……」
「レティシア姫が果敢にお傍に……」
王宮の庭園を散策していたルーファスは、耳慣れた名に耳をくすぐられた。
「そこの者、フェリス叔父上とレティシア姫がどうしたのだ?」
ルーファスは、毎日、叔父上とレティシアに逢いに神殿に行きたいぞ、と思っているのに、叶っていない。
「お、王太子殿下!」
「ルーファス殿下! こ、これは、ご無礼を……」
ルーファスはディアナの王太子であるから、軽々しく行動してはいけない。皆を驚かしてはいけない、と言われている。
だが、人間、たまにはこっそり庭園を散歩したくなるではないか。
とくに叔父上とレティシアのいる神殿に行く許可が母様から降りないとあっては。
「かまわぬ。僕は叔父上たちの話が聞きたい」
王宮の女官たちは、ときに高位の貴族たちよりも、ずっと、いろんなことを知っている。
彼女たちはお喋りが好きで、一人が得た情報は、あっという間に皆に知れ渡る。
女子とはまことに測り知れない。
「……どうぞ、ルーファス様にもお聞かせ下さませ」
ルーファス付きの女官が、にこりと噂話をしていた女官に微笑む。
ルーファスの女官は王太子付きだから、この王宮の女官の中では、ちょっと偉いんだそうだ。
いつも他愛ない話ばかり王太子宮でしているのだが。
「はい。王太子殿下に申し上げます。……本日、レーヴェ神殿での朝の礼拝にて、少々、騒ぎがございまして……」
「騒ぎ? フェリス叔父上とレティシア姫の身は……?」
叔父上は、婚儀の沐浴中なのに、礼拝に借りだされたりしているらしいが(それもまあ民を安心させる為なんだろうけど……)、レティシアはもっと奥まった辺りにいるはずだが……。
「ご、御心配なく。フェリス様が祈りの書の朗読中に、フェリス様を邪神よ、と騒ぐ者達がいたそうですが、フェリス様の魔法にて、レーヴェの花を降らせて沈静化されたと……何処からか、レティシア姫がフェリス様を護るように現れて、まことに仲睦まじいご様子だったと……」
「……何だと! 何故そんな者が神殿に入り込んで……!」
ぐらり、とルーファスは足元が揺らいだような気がした。
お、落ち着け。
叔父上もレティシアも無事だ。
フェリス叔父上は強い。
小さな、あのレティシアも無事……。
……この感じたこともない怒りは何だろう?
あのレティシアを傷つけるような者は、焼き滅ぼしてやりたい、と小さなルーファスの体の底から湧いてくる、この……。
暑すぎて、校正ゲラの為に、机に向かうのが夜になってからに……。
前回は「蒼蘭訣」をかけ流しながら、今回は「馭鮫記」をかけ流しながら、六巻作業中です(笑)
夏なので、朝、愛犬王子散歩の為に四時に起きたくて、昨日も夜更新しそこねて申し訳ない!
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