魔法使いの弟子 3
一人ではできないこと。
確かに、フェリスが私的に義母上を招いてお茶会を開くなど、我ながら天変地異が起きそうだ。
レティシアがここディアナで、心地よく暮らしていけるようにしてあげたい。
どんなことでも、後ろ指など差されぬようにしてあげたい。
その為ならば、氷の王弟殿下の名を返上して、社交的な王弟殿下にもなれる。
(見よ! あの男は邪神だ! あの禍々しい声、あの人を誑かす美しい姿! あれが邪神でないはずが……!)
知らない誰かから、そんな呪いの言葉をぶつけられても、フェリスの小さな天使様が、金色の髪を翻して、文字通り、群衆の中から、飛んできて守ってくれる。
(必ずや、私がフェリス様を御守りします!)
初めて逢った時に、何もかも諦めたような瞳をしていたレティシアが誓ってくれた、あの言葉は嘘ではないのだ。フェリスの天使様は、あんな小さな身体を盾にしてでも、フェリスを守ろうとする無謀な姫君だ。
そんな無謀な姫君を、愛さずにはいられない。
フェリスにとって、フェリス宮の者であれ、領地シュヴァリエの者であれ、ディアナの民であれ、他者というのは、守ってあげるべき者だったのだが、小さなサリアのお姫様は、フェリスを守ってくれるというのだから。
フェリスは、レティシアの為なら、どんなことでもできる気がする。
「……リリアの大司教カルロ殿は、ガレリアの民に襲われて傷心な御様子です」
白い瞼を閉じたまま、セフォラが言葉を綴る。
「各国からの貿易規制に関して、無策なことに恥じ入るのではなく?」
「……カルロ大司教としては、大いなる正義の為に邁進してるおつもりのようです……リリア神の教えがフローレンス大陸にあまねく響き渡るための困難に、民も共に耐えてくれるはずだと……なのに何故、愛しきガレリアの民は聖なる仕事に励む自分を襲うのかと……」
「彼の見果てぬ野望の為に利用されるリリア神様も、勝手に手伝わされるガレリアの民もお気の毒なことだ」
「民は……日々、生活しなくてはいけませんから、大司教の崇高な理想とはズレが……、」
「ディアナや他の国の民が望んでもないリリア教の教えを押し付けられるのは、崇高とは言い難いよね。……セフォラ、君の負担になるなら、そんなもの視なくていい」
フェリスは、顔色のよくない夢見殿に手を差し伸べる。
学生の頃もよく、悪しき気に疲れたセフォラに肩を貸していた。フェリスが触れていると、いろいろ、他の雑多な思念を遮断できるのだそうだ。
フェリスが排他的なことで、友人の役に立てることもあるのか、それはよかった、と妙なことに喜んだ記憶がある。
「……申し訳ありません、フェリス様。……ガレリアは新興な国で、おそらく……ガレリアの玉座にあられる御方や、リリアの大司教殿は、ディアナの富もですが、ディアナの千年の歴史的な権威も妬ましいようで……」
「……歴史的な権威とは程遠い性格なのにね、レーヴェ」
なんでこんなに謎なしきたりがいっぱいできたんだ……、無駄すぎる、もっと簡略化しろ、と壮麗な儀式が始まると途端にうんざりするうちの御本尊様。
「……さよう、我らが竜王陛下は、無駄な権威をお厭いになる、風のように自由な御方。……フェリス様、どうかお気を付けください。竜王陛下を目の敵にしていると噂のカルロ大司教が、自分が暴徒に襲われたことを怨んで、竜王陛下の御姿を写したようなフェリス様に害をなそうとしたのやも」
「ガレリアの民がカルロ殿の行いに不満を持ったことの責を、僕が負わされるのは、どう考えても理解不能すぎるが……、確かに、僕も重々、気を付けるよ。ディアナの民がいらぬ被害を受けぬように」
そして、貿易問題に関しては、ディアナに関してならまだフェリスの裁量も多少は効くが、この機に乗じて制裁している他国に関しては関与しようもない。
それはガレリア自身で、何か事が起こったら、これ幸いと、付き合いを切られるような日ごろの行いを見直してもらいたい。
「人間てなんであんな眠くなる儀式が好きなんだろうな?」(from竜王陛下)
昨日これ七割書けてたのに、22時頃仕上げてUPしよとしてたら、遅くに食べたあんかけ蓮根饅頭が、睡魔を……!(笑)
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