おにぎりと姫君 3
「は! 精霊さん、おにぎり、ぜんぶ食べちゃいました? 竜王陛下のぶん……」
お皿はからになっている。
竜王陛下のお供え用に、もう一個、二個、握るべし?
(だいじょうぶ、だいじょうぶ。竜王陛下も食べた食べた)
「え? そうですか?」
思わず、レティシアは見上げてしまう。
精霊さんの姿は見えないけど。
(うん。レティシアがお供えしたい! と思ってくれたときに、竜王陛下はもう気持ちをもらってるから)
「そうかな? そうだといいな。大好きな精霊さんと竜王陛下にお供えしたかったのです。私の故郷のおにぎり」
(大好きな?)
「はい! 大好きな!」
鸚鵡がえす精霊さんの声に、レティシアも元気に鸚鵡がえす。
(オレも大好きだぞ、愛しい、うちの末の娘レティシア)
「………っ」
ぽぽぽ、とレティシアの白い頬は赤くなった。
精霊さんはフェリス様のおうちの精霊さん。
フェリス様のおうちの精霊さんに『うちの末の娘レティシア』と言ってもらえるのは、とっても嬉しい。
「……精霊さん、私の世界では、あ、私の国では、……美味しいものや、珍しい食べ物を頂いたりすると、御仏壇に供えます」
(お、ぶつ、だん?)
「はい。ご先祖にお供えします。……一緒に食べましょうって」
(死んだ後も、食事に誘ってもらえるんだな)
「はい。たぶん、一緒に食べたかったんだと思います、それを始めた昔の人も……、大好きなお父様やお母さま、おじいさま、おばあさま、夫、妻、御兄弟と……」
一緒に食べようって。レティシアの生まれたサリアにそういう風習はなかったと思うけど、このスープはちょっと冷たくてごめんね母様父様……と思いながら、食べてた。
「私は、フェリス様や、精霊さんとおにぎり食べられて嬉しいです」
フェリス様が生きていてくれて嬉しい。
レティシアがフェリスを守りたい! と思う心は、皆が想像するよりも、実は切実である。
父様母様を護れなかったけど、今度こそ、家族をこの手で守り抜くのだ、きっとその為にこの世界に生まれてきたのだと納得できるように。大事な人を、守れなかったと泣くのは、二度で十分だ。
「精霊さん、お義母様にも、私、おにぎり、押し付けてみます!」
ふんすっ! とレティシアは小さな手を握りしめる。
お義母様には自分で握ってもいいかしら? 念を深く籠めたいわ。
(うーん、喜ぶだろうけど、もしかしたら、マグダレーナは、変わった食べものは食わんかも知れんぞ? 頑固な年寄りになりかけてるからな)
「んにゃ?……精霊さんよりは、お義母様、お若いのでは?」
よくわからないけど、精霊さん、この前、とっても長く生きてるお話されてたので……。
とはいえ、王太后様はお食事もきっと拘り深くて、難しそうではある! 精霊さん正しい!
(うん。でも、オレ、わりと飽きずに珍しいもの好きなんだよな? なんで人間て、歳とると、新しいもの嫌うんだろうな?)
「うーん。それは防衛本能かも知れません。人の子は、きっと、精霊さんみたいにおおらかだったり、長生きだったり、強くないと思うので……若いときほど、丈夫ではない自分を、無意識に守ってるのかも……?」
(なるほど防衛本能かあ。……ほんっとフェリスのお嫁さんはおもしろいな)
くすくす、精霊さんの楽しそうに笑う気配。
「オレ、めっちゃ年寄りだけど、新しもの好き!!」(fromいつまでも元気な竜王陛下)
昨日、推しのライヴに旧グループメンバーなど来てたお話に浮かれております(笑)
7/1、椎名先生の5歳コミカライズ18話シーモア先行配信しました!
マリウス陛下に謹慎解除の御礼に行く二人の回です! マリウスもイケメン!





コミック三巻表紙❤
五歳で、竜コミック連載