ディアナの美しい妃たち 6
「レティシアがフェリスの妃になっていなければ……」
フェリスが断っていれば、あのサリアの王女は、マクシミリアンの父の後妻になっていたかも知れぬというのに、と思うと、人生とは不思議だ。
もっとも、フェリスが、自分と同じように親を亡くした五歳の娘を見捨てられるとは思わなかった。
あのとき、マグダレーナがああ言えば、フェリスは婚約を受けるはずだと踏んでいた。
「マグダレーナ様?」
「いや、何でもない。……リリア僧の動きは不穏ゆえ、そなたらも身辺には気をつけるのだぞ。怪しきことがあれば、己で対処しようとしてはならぬぞ。すぐに警備の者か、魔法省を呼ぶように」
「はい、王太后様。……マグダレーナ様の命で、マクシミリアン様の身辺も調べておりますが、フェリス様達とのお茶会で、リリア僧とのつきあいは控えるように、と王太后様の御言葉を賜って以来、さすがに控えているようですが……」
「フェリスにも妾にもあれほど公然と言われて、控えなかったらどうかしてるわな。とはいえ、表向きかも知れぬし油断はならぬ。……陛下の治世に不満があるのやも知れぬ」
マクシミリアンが王位を狙って、リリア僧達と図って竜王剣の噂を撒かせたということはあるだろうか? と考えてみたものの、父マリウスの威信に瑕がついたら、王太子ルーファスの即位も危ういとはいえ、そうなると次の王位に望まれるのはフェリスだ。
王弟のフェリスがぴんぴんしてるのに、従弟に過ぎぬマクシミリアンに玉座がまわってくることはない。
しかもマクシミリアンにこれといって人望もない。
フェリスに悪評があって、マクシミリアンに人々の声が集うというのであれば、まだしも、ディアナの民ときたら、何かといえば竜王陛下似のフェリスなのだ。
竜王剣が、マリウスを王として認めておらぬ、で立場的に一番に得をするのは、フェリスなのだ。
もっともフェリス本人は、愛する兄マリウスの名を傷つけられたことを不快に感じて、みずからリリア僧を捕らえてしまったのだが。
「あのご様子ですと……個人的にも、フェリス殿下に含みがあるのでしょうか、マクシミリアン様……」
「……何故じゃ? フェリスの人気に妬いてでもおるのかの? しかしマクシミリアンがフェリスと何か競いあうのは少しならず無理のある話じゃ」
それゆえ、むしろ、リリア僧の一派が、マクシミリアンと組んでいるなら、これからもマリウスの治世は安泰と思える。
フェリスがマリウスに背かぬのであれば。
「さようでございますねぇ」
マグダレーナだとて、マリウスの王位を守る為でなければ、フェリスと競いあいたくなどない。心底では勝てる気がしないからだ。
とはいえ、一歩も譲る訳にはいかない。無事、マリウスからルーファスへと王冠を繋ぐまでは。
きっと竜王陛下も、ディアナ王はマリウスでよかった、あれでよかったのだ、と思って下さっているから、天は割れず、雷は落ちず、マグダレーナの嘘は暴かれないのだ、と自分を励ましながら、日々を過ごしている。
「マグダレーナ様、御茶をどうぞ」
「ああ……」
女官が丁寧に淹れた上質な葉ののレーヴェ茶は、どうにもいまのマグダレーナの舌にほろ苦かった。
「だからオレはそんなに怒ってない」(fromレーヴェじいちゃん)
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マリウス陛下に謹慎解除の御礼に行く二人の回です! マリウスもイケメン!
HONTOのファンタジー13位もありがとうございます!





コミック三巻表紙❤
五歳で、竜コミック連載