ディアナの美しい妃たち 4
「マグダレーナ様、本日、フェリス王弟殿下が祈りの書を朗読されていた神殿の礼拝にて、邪神と騒ぐ者どもがいたと……」
「邪神? リリア僧どもは、すっかりガレリアに送り返したのではなかったのかは? まだ残っておったのか?」
邪神、の言葉に、すうっと現実に意識が戻る。
そもそもリリアの坊主共はなぜ竜王陛下を邪神扱いするのか?
マグダレーナは敬愛しながらも、竜王陛下に、何故、どうしてなのですか、と絶望と共に伺いたいことはあれど、他国の者から、レーヴェ様を貶されることなぞ、まったく受け入れられない。
マリウスもフェリスも揃って甘いからいけない。
そんな坊主共は、不心得者、と書いて、広場に、逆さに釣り下げてやったらいいのだ。
だいたいその坊主共は、マリウスの戴冠におかしな噂を流した者達だ。
八つ裂きにしても飽き足りぬ。
「いえ……、どうやら、ディアナの街の者達が、おかしな術をかけられていたとか……」
「なんと。ディアナの無辜の民を幻術で使うなどと。害悪としか言いようがないな」
マグダレーナも戦うことはできる。騎士たちのように、剣や槍を持って戦うわけではない。
マグダレーナなりの戦い方で、ずっとマリウスを守ってきた。……つもりだ。
(母上はフェリスに辛くあたられるが、本当はフェリスのような息子が欲しかったのだろうと。……私はそう思って、ずっと努力して参りましたが……)
「愚かなことを……」
十数年、何の悪意もないフェリスが、竜王陛下そっくりの姿に育ち、その話す姿に、その魔法の腕に、その行政の手腕に、人々が感嘆することに怯え続けてきた。
竜王剣の継承の儀式で、マリウスには絶対に明かせぬ嘘をついてからは、いつの日かフェリスがディアナの玉座を奪い返すのでは、との焦燥が募り、それまでよりいっそうフェリスに冷たく当たってしまった。
(フェリス様はいつも、陛下と王太后様のことを思っておいでです)
レティシアの柔らかな声が、マグダレーナの耳に蘇る。
不思議な娘だ。
あの娘が隣にいると、マグダレーナの眼にすら、フェリスが玉座を奪おうとする神獣似の何か恐ろしいものではなく、まるで、あたりまえのこの世の青年のように見える。
(レティシア、苺を食べる?)
(はい、フェリス様……あ、いえ、今日はわたし、大人にしなくては……)
我が義息子が、可憐な姫君の食事の世話なぞ焼くのを、マグダレーナは、レティシアとの茶会で生まれて初めて目にした。
(王太后様に、シュヴァリエの朝摘みのいちごを召し上がって頂こうと、本日は御用意を……)
そもそもは、フェリスにディアナの力のある貴族の後ろ盾や、他国の強力な庇護を与えたくないと選んだ実家にも本人にも力のない花嫁のレティシアのはずだ。
それなのに、あの琥珀の瞳の娘を伴ったフェリスは、何というか、水を得た魚のようだ。
「メロメロだからな、フェリスの奴」(from竜王陛下)
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五歳で、竜コミック連載