レーヴェ神殿の回廊にて
「フェリス様、おにぎりは皆様のお口にあうでしょうか」
大神官にも、ディアナ市民の皆様にも、押し付けてきちゃった、どきどき、とレティシアは想っている。
「もちろん。あわぬなどというものがいたら、僕が許さない」
「……いえ、フェリス様、それでは、自然発生的に美味しいというのとは違います」
レティシアはフェリスとともに、レーヴェ神殿の回廊を歩いている。神殿の庭には、春の花が咲き誇っていて華やかだ。
「おにぎりは美味しいと思うよ。味に疎い僕でも美味しいと思うし。……それに、オリヴィエもだが、先ほどの者達のように、心身が疲弊しているときに、優しい差し入れは嬉しいものだよ」
「そうだと嬉しいのですが。……みなさま、とっても竜王陛下やフェリス様贔屓なので、妖しい術にかかってしまったことを、落ち込んでいらっしゃいましたね」
男達は、まだ何か後遺症があったらいけないから、数日、神殿に泊まってもらうそうだ。家族なども面会に来られるそうで、親や妻にあわせる顔がない、としょんぼりしていた。
「あの者達も気の毒だし、騒ぎがあったので、ガレリアとの輸出入に規制をかけないでほしい、と僕達の気持ちを伝え損ねてしまった」
「は! そうですね。それも皆様にお伝えしなくてはですが、あのタイミングでは……」
「そうなんだよね。もっと穏やかな時に伝えないと。……彼らに幻術をかけた犯人も気になるし……」
「フェリス様。もし犯人捕まえに行くなら私も一緒ですよ!」
あ! フェリス様がまた単独行動しようとしてるかも! とレティシアは、めっする。
「……いや……、レティシアと婚姻前の沐浴中だから、神殿で大人しくしてる……つもりだよ。事件の犯人逮捕は僕の仕事ではない、フェリス様はレティシア姫との御婚儀に集中を、って皆に言われるだろうし……」
背伸びしたレティシアに叱られて、フェリスは笑っている。
「ホントですか、フェリス様? 御一人であぶないことしちゃ、めっ! ですよ」
背の高い婚約者殿を、レティシアは大きな琥珀色の瞳で見上げる。
「レイ。何を笑ってるんだい?」
「いえ。竜王陛下は私にレティシア姫という大いなる援軍を授けて下さった、と竜王陛下に感謝の祈りを……」
少し後ろをついてきていたレイがフェリス様の言葉に答えてる。
レイの援軍になってるかしら、私? とりあえず、フェリス様の単独行動はダメ! あぶないし、またフェリス様がリリア僧に恨まれたらダメ、ぜったい!
「婚姻前の沐浴中ですから、フェリス様は私を一人にしてはダメです!」
「心得ました、我が姫。……髪に、桜の花びらがついてるよ、レティシア」
レティシアの金髪に絡まった桜の花びらを、フェリスが長い指でとってくれる。
うううっ、ダメっ、レティシア、麗しの推しに幻惑されないで、しっかりお約束しておかなくては、秘密に何かなさるときは、レティシアも一緒にって!
「フェリスはレーヴェが育てた子ですね、本当に」(fromサリア神、ため息とともに)
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