リリア神殿にて
「失敗しただと?」
リリア神殿にて、カルロは不機嫌そうに下問した。
「い、いえ……大司教様、完全に失敗という訳ではないのですが……」
下問されたリリア僧は、声を詰まらせる。
「では成功したのか? レーヴェ神殿で、礼拝に集う者達の前で、フェリス王弟は赤っ恥を欠いたか?」
まったくもってフェリスの与り知らぬことなのだが、カルロは愛するガレリアの民から襲撃を受けたことを深い心の傷とし、いつもながらの画期的な論理の飛躍で、邪神レーヴェやフェリスの責任にしていた。
「こちらが疑われぬように、ディアナの民に術をかけ、レーヴェ神殿にて何とか邪神騒ぎは起こせたものの、やはりフェリス王弟殿下の魔力も総本山の守りも強く、思ったほどの大騒ぎや、フェリス殿下に危害を加えるには到底及ばず、騒ぎを収められてしまいました……。礼拝堂から出てきた者達は、邪神騒ぎよりも、フェリス殿下が美しかったですとか、レティシア姫が可愛らしかったとか、そのようなことばかり申して……」
青息吐息で、リリア僧は説明する。そうは言っても、潜入組も頑張ったのだ。それほど強い魔導士の力も借りられない中、ディアナの民を術にかけて、ディアナ王都のど真ん中、総本山のレーヴェ神殿で騒ぎを起こせただけでも褒めて欲しいくらいだ。
「……なんたる無能! なんたる無様! これだからディアナの民はおかしいというのだ! 我らの必死の布教活動を、無礼にもディアナから追い払い、いつまでも邪神、邪神と……おかしいとは思わぬのか! なんで、あやしげな竜を神と仰いでいるのだ! リリア神様の聖なる御声が耳に届かぬなど、どうかしているであろう!」
玉座で癇癪を起す大司教カルロに、下級のリリア僧は震えあがる。
大司教カルロ殿は、街中で暴徒に襲われて以来、ずっとご機嫌が悪いのだが、各国に潜入してリリア教の布教活動をしていた僧達にしてみると、食べ物を投げつけられたくらいで、そんなに怒らなくても……うるせぇ、とみかんくらいはよく投げつけられた、というところである。
まして、ディアナのフェリス王弟殿下は、到底、人とは思えぬような美しさと神通力と気迫に満ちているし、ディアナの民ときたら、これまたこの人と竜王陛下とやらが大好きなのだ。
たとえ幻術を施していても、そんな人に抗え、というのは、なかなかに難しい。
「……猊下、御心を安らかに。異国で、異なる神の教えを説くことは、長い時間を要するものです。リリアの僧達は努力しております。レーヴェ神殿はディアナの結界も強いでしょうし、フェリス殿下は非常に魔力の強い御方ですから……」
穏健派のタウ枢機卿が、激昂するカルロを諫める。
「オレん家で変なことしてると、吹き飛ばすぞ(たぶんオレじゃなくてフェリスやオリヴィエが笑)」
(from竜王陛下)
連載四周年お祝いありがとうございますー!!
五年目の一話目がガレリアて(笑)
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