さまざまな思いとともに 3
「お、王弟殿下……! レティシア姫様!」
別室で、礼拝堂で騒ぎを起こした男達と逢った。
「ああ、楽にしてくれ。……体の調子は?」
「は、はいっ。何も……、れ、礼拝の折は、ご無礼を……」
「いや。何処かでおかしな者に逢った記憶はあるかい?」
もっとも高位の魔導士であれば、遠隔操作で、たとえばガレリアからでも術にかけることは可能だ。フェリスも、やろうと思ったことはないが、できないことはないと思う。
「……そ、それが皆目……強いて言うなら、昨夜、酒場の帰りに、黒い頭巾を被った見慣れぬ男にぶつかられたので、もしかしたらそのときに……でもぶつかられただけで、何もされた覚えはないのですが……」
「お、オレは、三日前に、リリアの坊さんと飲んだんですが……、その人は前からディアナに住んでて、竜王陛下の悪口いうような人じゃなかったんですが……」
「そうか。ちょっと微妙な時期だから、悪い者じゃなくても、リリア僧は避けてもらったほうがいいかな…」
男達は、パン屋だったり、鍛冶屋だったり、花屋だったり、身元も確かで、ごく普通のディアナの街の男達とのことだ。
「は、はい。申し訳ないです、王弟殿下。妻にも、いまはやめとけって言われてたのに……」
パン屋のトムは、しゅんと沈んでいる。この時期、避けられがちなリリア僧と飲むくらいだから、だいぶお人好しなのであろう。
「皆、レーヴェや僕に、普段から、不満があったなどは……?」
「あ、ありませんよ、フェリス様!」
「生まれついてのディアナの男なんですから、三度の飯より竜王陛下が好きですよ!」
「フェリス様に不満なんて……、フェリス様のご婚約のおかげで来年遊んでても暮らせそうなくらい、注文もらってるのに……」
「そうですよ。ご結婚おめでとうございます、フェリス様、姫様。御二人のご成婚のおかげで、うちは在庫たりないくらいです」
花屋だという男と、酒屋だという男が頷きあっている。
「お祝い、ありがとうございます」
フェリスの隣で、小さなレティシアがにこっと微笑むと、わっと男達が湧いた。
「わー、可愛い、姫さん」
「姫様、本当に申し訳ない、オレらは決して、竜王陛下にもフェリス殿下にも仇なす者では……」
「もう、ほんとに、なんでこんなことになったのかと……」
しょんぼりしている壮年の男たちに、レティシアは笑いかけた。
「あの、お疲れの皆様に、よければ、ささやかなお料理の差し入れを。フェリス様と神殿の厨房の方々と作りましたので、きっと竜王陛下の加護もあると……」
レーヴェの加護はともかく、レティシアの癒しの魔法はあると思う。さっきレティシアが知らずに礼拝堂を浄化していたように。なので、幻術をかけられていた者達を癒す効用はあると思うが、レティシアの大切な手料理を、あちこちに分けるのはなんだか不本意なフェリスは心が狭いに違いない。
五歳六巻の原稿作ってたのですが、竜王剣→沐浴の儀式→アドリアナ誘拐→助けに行くフェリスとレティシア辺りですが、去年これ書いてた頃、本当に五巻は来年になるの?と私は疑問符で一杯でしたが、お話の中の神殿暮らしの二人はめちゃめちゃ幸せそう!と読んでてウケました(笑)
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