レーヴェ神殿の厨房にて 4
「ホントに? 美味しい?」
「はい! とっても!」
面映ゆげなフェリス様が、何とも可愛い!
『初めてのお使い』みたい!
「レティシア様。無理はされておられませんか? フェリス様のお料理という時点で、些かレイは不安を感じますが……」
「レイ。食べられないものは入れてない。レティシアのレシピに従ってるから、おかしなものにはなりようがないぞ」
「……フェリス様の初めてのおにぎりだから、美味しさ百倍です!」
はむっとレティシアは、あたたかいおにぎりを頬張って、幸せを噛み締める。
「海苔があるとさらにいいんだけど、さすがに海苔は……」
「の、り?」
レティシアの言葉に、フェリスが首を傾げる。
「あ。海藻で作った食品なのですが、おにぎりに巻くと美味しいのです。……それはちょっとすぐにはできないので、今後の課題にしようかと……もしかして何処かに似たものがあるかも知れませんし」
「なるほど。それは探してみたいね」
「フェリス様。係の者が、そろそろお二人の御昼のお食事の時間とのことで、どのようにされるかお伺いしたいと……」
「僕たちのお昼は、おにぎりでいいのでは? レティシア、どうしたい?」
「あ、じゃあ、少し待って頂いて、おにぎりはたくさん作って、皆様にも差し上げて、……せっかくご用意頂いたお昼は食べましょう、フェリス様。おにぎりは単体でも食事になりますが、コースのなかでパンと同じ役割も果たせます」
「なるほど。では昼食は、パンのかわりにおにぎりを頂くので、いつもより主菜や副菜などを軽めに用意してくれ、と伝えておくれ」
もちろん、おにぎりだけでも、おなか一杯になるけど、神殿の厨房をお借りしてるのに、せっかく作って頂いた食事キャンセルは申し訳ないので。それに、フェリス様にお野菜も食べさせなきゃ!
「レイも一緒におにぎり作る?」
「よろしいですか?」
興味深そうなレイも誘う。そうと決まれば、人海戦術でおにぎりを仕上げちゃおう。いえ何もこのゴハン全部使わなきゃいけない訳じゃないんだけど、嬉しくて、ついたくさん作って、たくさん、皆様に食べさせたくて……。
「ごはんは熱いんだぞ、レイ。気をつけるように」
「あたたかい食材はあたたかいほうが美味しいですからね」
フェリス様が初心者のレイを監督してるのが面白すぎる。
「レティシア様が作られたもの、お手伝いされた食べものは、殊更にフェリス様を癒しますから、こちらのお料理もきっと滋養が高いですね」
「そうですね。レティシア姫の聖なる御力を感じます」
おにぎりを握ってくれているレーヴェ神殿の厨房の方が、何だかレイと盛り上がってる。
いや……いくら竜王陛下そっくりのフェリス様のお嫁さんだからって、私の料理に聖なる御力とかないから……、それはフェリス様効果で私の力が盛られすぎだし……、とレティシアはびっくりして、ぶんぶん首を振りたくなった。
「いえ、私の力ではなくて、おにぎりは美味しくて、とってもとっても癒されるお料理なのです!」
おにぎりの魔法は確かなのよ、ここでも、ここでない世界でも、と力いっぱい故郷の自慢のお料理を称えておいた。
「レティシアはきっと父の分も用意してくれるとオレは知ってるぞ~」(from竜王陛下)
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