レーヴェ神殿の厨房にて 3
「ごめん。両手が塞がってて」
「うう。言ってくだされば、じ、自分で……」
きゅう、とレティシアは困っている。
ごはんを顔につけていたのも恥ずかしいが、フェリスらしくない仕草に、周りの人がおにぎり握ったまま、固まっている。
「フェリス様、お料理されてるレティシア姫のお邪魔をしてはなりません」
不意に現れたレイが戒める。
「レイ!」
「申し訳ありません、レティシア姫。少々、神殿の方とお話しておりましたら、御二人のお傍に戻るのが遅れました。私のおらぬまに、フェリス様が困らせておりませんか?」
「レイ。僕を駄々っ子か何かのように言うな」
フェリス様が笑ってる。
「ううん。困らせては……いまちょっとびっくりしただけで……、レイ、お疲れ様」
「邪神騒ぎの者たちは?」
「はい。幻術をかけられただけのディアナの民なので、体調を診る為、二、三日神殿で留め置こうとの話に……、ご迷惑おかけしたフェリス殿下達にお詫びしたいとしょんぼりしてるそうです」
「では僕が覗きにいこうかな? オリヴィエの許可が降りればだけど」
フェリス様の呼ぶオリヴィエ大神官の名に、厨房の方の背中がちょっと緊張する。
「レティシアのおにぎりが綺麗にできた」
「はい。フェリス様、いま召し上がります?」
出来立ても美味しいよねっ、おにぎりっ。みんなで作ってるから、おにぎりの美味しそうな匂いが立ち込めてる。
「うん、食べたい」
「きゃー、フェリス様」
かぷっと、フェリス様が、レティシアの手から握りたてのおにぎりを食べてしまった。
もちろん出来立ては美味しいけど、フェリス様がそんな食べ方するとは想定外……!
レーヴェ神殿の厨房だから、フェリス様が竜王陛下っぽくなってるのかしら?(神様なのに、竜王陛下は、いかにもこんな食べ方しそうなのだけど……)
「レティシアも食べる? 僕のおに、ぎり、ちょっと不格好になった」
「フェリス様、初めてなのに、とっても上手です! 美味しそう!」
うちの麗しの推し制作のおにぎり! なんて貴重! それに、さすがフェリス様、とっても綺麗に出来てる。
「フェリス様が作られたのですか?」
疑わし気なレイの声。
「そうだよ。レティシアに食べてもらいたくてね。……美味しく出来たかな?」
「あむっ……、美味しい、です!」
姫君としては、ちょっとお行儀がどうだろう? とは思ったものの、美貌の婚約者殿が感想を聞きたそうなので、レティシアはフェリスの手から、作り立てのおにぎりを頂いた。
美味しいごはんに良質な鮭と良質な塩で、どうやって握っても美味しいのだけど、食事に興味の薄いフェリス様の初の料理と思うと、殊更美味しかった。
「うちの娘がディアナの悪い男に騙されるー。誰だよ、フェリスをこんな風に育てた奴は」(from竜王陛下)
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