レーヴェ神殿の厨房にて
「あ、フェリス様、フェリス様の御手に保護魔法……」
自分にかけてもらうのは大袈裟だとおもったけど、フェリス様の手は心配。
「それは大丈夫。レティシアの手より、僕の手は丈夫だから」
そうでしょうか? レティシアの手より、よっぽど綺麗な白魚のような御手ですし、フェリス様の方が料理経験がないから心配ですよ……。
「ロンは? 他の者は? かけてあげたほうがいいかい?」
「いえいえフェリス様。料理をする者は熱いものを触ることにも慣れております」
フェリス様ってこういう人なの。
自分のことは全然気にしないけど(気にしてもっと!)、周りには過保護なの。
推せるのー!
「レティシア、このボウルで手を洗ったらどうするの?」
「手にお塩を適量ふってください」
「塩だね」
レティシアが御匙でフェリス様の手に塩を少しのせてあげる。
なんとなく、レーヴェ神殿の厨房の塩のボトルですら、フェリス様の初めてのお料理に緊張してる感。
「そして、ごはんも適量、掌に!」
塩をつけた掌にごはんをのせると、温かい。
レティシアの掌に、過保護なフェリス様の保護魔法かかっても、ごはん、ちゃんとあったかい。
「……レティシア? 何か辛い記憶が……?」
「いえ! ただ、ごはんがあったかくて、うれしくて……」
昔々、小さい頃に、前世のお母さんにおにぎりの作り方教わったみたいに、フェリス様にレティシアが教えてる。
お母さんがお弁当に持たせてくれたおにぎり。春のお花見のおにぎり。夏に家族で海にいったときのおにぎり。宿題してたら作ってくれたおにきり。雪が一人暮らしになってから、食費節約の為に適当にラップして作ってた自分の為のおにぎり。
いろんなおにぎりに、たくさんの思い出があって。
でも、ディアナにお嫁に来て、夜遅くまで一人で仕事してるフェリス様に、おにぎり作ってあげたいなー、と思ったあたりが、我ながら日本の子だ。
「ごはんの真ん中へんに、お好きな具を入れて下さい。具を入れなくて、塩だけのおにぎりも美味しいです。……神殿の方もよかったらご一緒に」
鮭、青菜、小魚、豆、お肉(これはレティシアのリストにはなかったはずだけど、厨房からのお勧めね、きっと)、と小皿に豊富な具が用意されている。
「私どもも、お手伝いしても、よろしいでしょうか、姫?」
料理人という者は、やはり新しい料理は気になるのか、神殿の厨房の方々も興味津々だ。
あと、フェリス様とレティシアの負担を減らそうという意図もあるのかも。
「はい。ごはんたくさんありますし」
可愛らしく微笑んで、レティシアは答えた。
フェリス様は少食だし、たくさん作って、お世話になってる神殿の人にあげるのもいいかも……。
あでも、ロンに持って帰ってもらって、フェリス宮の皆にも……。
「レティシア、中身は何が好き? レティシアは僕に食べさせてくれるそうだから、僕はレティシアの為におにぎりを作るよ」
「……わ、わたし、サケがいちばん……っ」
フェリス様の人生初めてのお料理のおにぎりを、わたし、頂けてしまうの!? と、レティシアは、小さな手でおにぎりをにぎりつつ、嬉しくて真っ赤になってしまった。
「お父さんもレティシアといっしょにおにぎり作りたいぞー、フェリス!」(from竜王陛下)
昨日も書いてあげるつもりが、ちょっと書籍化作業と暑さにやられてました(笑)
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