氷の王弟殿下とおにぎり
「レティシア姫、こちらはいかがでしょうか」
「……フェリス様」
高い椅子を持ってきてくれたので、うん、いいかも、とレティシアが見ていると、ひょい、とレティシアはフェリスに抱えあげられる。
「フェリス様、わたし、自分で座れま……」
「でもちょっと高いかなって。どう? いくつかちょうどよさそうな椅子持ってきてもらう? 僕が出したほうがいい気も……」
フェリス様は、幾らお得意でも、何でも魔法でやってしまってはいけません、坊ちゃま、皆は坊ちゃまの為に働きたいのです、と言われてて、極力、大人しくなさっているそう。
「だいじょうぶです! ぴったりです! ありがとうございます!」
ちょこんと椅子に座らせてもらうと、足は床に届かなくなったが、ちょうどいいかんじにテーブルで作業はできそうだ。
「では、おにぎりを握ります!」
心では、やったー! とガッツポーズしたいくらいだ。
嬉しい!
ロンが蓋をあけてくれて、ほかほかと湯気をたてる白い御飯を見てるだけでも嬉しくなる。
日本人のDNAが騒ぐ!
レティシアの身体に日本人の遺伝子は入ってないけど、雪の魂が浮かれてしまう!
「これをにぎるの? どうやって?」
不思議そうに、フェリス様が尋ねる。そもそもフェリス様は料理と縁がないので。
「わたしの、このお手てで! フェリス様に保護魔法もかけてもらいましたから、ばっちりです!」
小さな掌を、レティシアはかざす。
「ロン、ボウルに綺麗なお水をお願いできますか?」
「御持ちします、姫」
ロンが返事する前に、厨房の人が返事してくれた。
「このゴ、ハンを、お水と混ぜるの?」
「いいえ、フェリス様、お水は手につけるのです。ラップで握る方も多いですが、ここにラップはないので……」
「ラップ?」
「ちょっとしたお道具です、でも、基本、人の手さえあれば、大丈夫です!」
それ必要? 魔法で出せるものなら出そうか? という貌をしているフェリスに、レティシアはふるふる首を振る。
「レティシア姫。私も制作をお手伝いしてよろしいですか? ラムゼイに作り方を報告できるように」
「もちろん。じゃ、ロンも、このボウルの水で手を洗って、適量、お塩を手に取って、この白いゴハンを掌にのせて、にぎってみてください」
レティシアが手順を説明している様子を、レーヴェ神殿の厨房の者も、ふむふむと聞いている。
「楽しそうだ」
「フェリス様も、おにぎり、にぎります?」
興味深々なフェリスをレティシアは誘ってみる。
「僕にもできるかな?」
碧い眸に好奇心を覗かせつつ、小首を傾げるフェリス様が可愛い!
「できます、できます、簡単なのでぜひフェリス様も一緒に」
ああ、こんな風に一緒にお料理に参加して頂くと、フェリス様ももっとお食事が好きになるかも!
(今回のおにぎりは料理というほどではないんだけども)
小さい子に食の大切さを教える、食育というやつだな(from竜王陛下)
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