うちの推しは天然
「レティシア姫、火をお使いになりますか?」
「いいえ。火は使いません。手を洗って、調理台だけお借りできれば」
ざわざわ、ざわざわ、とレーヴェ神殿の厨房にどよめきが広がる。
まあね。
小さなレティシアの姿もだけど、フェリス様の美貌が物凄く厨房から浮いているわ。
「では、御手はこちらで」
さすが水を司るレーヴェ様に守護されたディアナだけあって、何処に行っても豊富に水はある。
有り難いことだ。これほど清潔な水が豊富であれば、料理にも困らないけど、疫病などに苦しめられることも少ないだろう、と思いながら、レティシアは小さな手を洗う。
「どうぞ、姫、こちらで御手をお拭き下さい」
緊張した面持ちの若い神官さんから、清潔そうな白い布を借りる。
「ああ、ありがとう」
レティシアと一緒に手を洗ったフェリス様が御礼を言ったら、神官君が真っ赤になってしまった。
我が推し……っ、相変わらず、麗しすぎて罪作りだわっ。
水に触れたフェリス様はいつも何だか生き生きしている。
やはり、水の竜の血をひく方、て感じ。
「調理台はこちらを……」
「うう……っ」
勧めてもらった調理台が、大人の背丈にちょうどいい設定なので、レティシアの背丈には高い!
「ああっ、すみませんっ、えっと、も、もっとちょうどいい高さの調理台をいま…御用意…っ」
レティシアが、調理台をうーんと見上げてしまったので、厨房の人が困っている。
「レティシア、椅子に座ってする? それとも、僕がレティシアを抱いて……」
「椅子を希望です、フェリス様。抱っこしてもらっておにぎりはにぎりにくいです」
天然のフェリス様が、天然なことを言い出す前に、レティシアは椅子を希望する。
百万歩譲って、二人だけのお茶会のときならまだしも、歴史あるレーヴェ神殿の厨房で、フェリス様に抱っこされておにぎりは大却下である!
「そう? ああ、では少し高めの椅子はあるかな? なければ、僕が……」
フェリス様はレティシアを抱いててもちっとも重くないらしく、いつでも肩に乗せてたいとか言ってるけど、レティシアは小鳥ではないので!
しかも、そんなの、おにぎり、握りにくいから!
「ご、ございます、椅子! いまっ、いまっ、お持ちします!」
お昼前でお忙しいだろうに、ちょっと天然な我が推しフェリス様が麗しすぎて、無駄に、厨房の方を緊張させて申し訳ない……。
しかも、フェリス様、息をするように自分が働きかける人だしね。
神殿の厨房に潜入するレティシアご一行でした!
ROAD TO レティシアのおにぎり4(笑)
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