初恋の姫君は、竜の神殿にいる 45
「フェリス様」
「フェリス様、レティシア姫、お怪我は」
祈りを終えて、舞台袖に戻ると、神官さんたちが、心配して、フェリス様に駆け寄ってきた。
「僕達は何ともない。何か被害を受けた者がいないか確認を。……扇動していた者は、何か暗示をかけられているように思えたが?」
「はい。現在、拘束して確認中ですが、ごく普通のディアナの街の者で、急に頭が痛くなって、何をしていたか覚えていないと……、何か礼拝中に失礼をしてしまったでしょうかとのことで……」
「そうだね。己の意志ではない、魔術的な影響を感じた。他のあの場にいた者達も心配だから、魔法省から人を頼んで、神殿を出る前に、礼拝堂にいた者達全員に、何らかの魔術的な影響がないか確認して、家に帰してあげて」
「畏まりました」
頷いて、何人かの神官が、魔法省に行くのか、その場を離れる。
「フェリス様、申し訳ありません、私が我儘をお願いしたせいで、このような……」
大神官オリヴィエが神官達を引き連れて現れる。
「どちらかというと、邪神とやらを思わせる僕のせいではないか? すまない、オリヴィエ。大切な朝の礼拝の場を騒がせて」
「こちらの警備上の問題です。婚儀前の大切な御二人の御身をお預かりしているのに、ご不快な思いをさせて、お恥ずかしい限りです。……レティシア姫にも、神殿ならば安全とお過ごし頂きたかったのに、恐ろしい思いをさせて申し訳ありません」
「神殿は安心です! 私は日々、レーヴェ神殿で、竜王陛下の御姿を愛でて快適に過ごさせて頂いてます。……私こそ、フェリス様のとこに飛んでちゃってごめんなさい」
ぺこっと、レティシアは、フェリスの腕の中から詫びる。しかし、抱っこされたまま謝ってても、どうなのという……。
「フェリス様。それこそ、もう、安全ですから、レティシアを降ろしてください」
「でも、やっぱり、心配だから……」
いつものことながら、緊急事態が起きて、フェリス様が心配怪獣になってしまうと、レティシアはなかなか地上に降ろしてもらえない!
「どうぞ、御二人は私室でお寛ぎください」
「三流魔導士として必要があれば、僕も手伝うので言っておくれ」
「フェリス様。学生時代から申し上げておりますが、過ぎた謙遜は美しくありません。……この度は、大きな騒ぎにならぬように、あの場を収めて下さって、ありがとうございました」
「神殿の魔術にたけた神官達の助力のおかげだ。……皆に、僕とレティシアからの礼を伝えておくれ」
礼拝堂にはレーヴェ様の白い花が降り注いで、前世の結婚式のフラワーシャワーのように可愛らしかったけど、裏ではディアナの男たちにかけられた暗示を無力化するように、フェリス様や神殿側の神官の方々の魔力が礼拝堂を覆っていたことは、見習い魔法使いのレティシアにもわかった。
「神殿のみなさま、ありがとうございました」
私の大事な推しとディアナの方々を守ってくださって! と言いかけて、後半は口の中に留め、フェリスの腕の中からレティシアは、オリヴィエと多くの神官達にあどけなく微笑んだ。
「フェリスなんてレティシアが飛んできてくれて大ご機嫌なんだから、そのへんに放っときゃいいんだよ」(from竜王陛下)
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