初恋の姫君は、竜の神殿にいる 35
「おいで、レティシア」
「はい、フェリス様」
サキ達に髪を綺麗に結ってもらって、フェリスの子供の頃の神官服を身に纏ったレティシアは、フェリスに手を引かれて歩く。
「私のせいで、遅くなってませんか?」
「大丈夫。もし僕が遅れても、誰かが代わりに務めてくれるだろうし……」
「ええ……」
レティシアも、きっと皆様も楽しみにしてるのに、そんなのだめー、と大きな琥珀の瞳でレティシアはフェリスを見上げる。
「……遅れないから、レティシア、そんな顔しないで」
「ほんとですか? 私、走るので、フェリス様、遠慮なく急いでくださいっ。いつもより走りやすそうです、このフェリス様の神官服!」
お姫様のドレスは可愛いのだけれど、飛んだり走ったりはやりにくいので……。
「二人で走るの? 神殿の廊下を? それはとても楽しそうだけど……」
「二人で走ると楽しいですか?」
楽しいかな? 足の長いフェリス様とちびっこのレティシアが走ってたら、見た人はおもしろいかも……?
「きゃ、フェリス様?」
んん? と首傾げてたら、レティシアはフェリスに抱き上げられた。
「二人で走るのもいいけど……、それなら僕がレティシアを抱いて飛んだほうが早いよね」
レティシアを抱いたフェリスが、ふわっと宙に浮く。
「フェ、フェリス様、れ、礼拝に行くのに飛んでいって大丈夫でしょうか?」
「うん。レーヴェは礼拝は歩いて来い、なんて言わないと思うな……」
ふわふわと地上を離れると、地上の重力から自由になる。
それはやはり楽しい。
レーヴェ神殿の天井は、基本的に、何処もとても高い。
竜王陛下が、いつなんどき本体に戻られても御不自由がないように、という意図だそうだ。
そのあたりはやはり神話の竜の神様のいらっしゃる国だなあ、と、しみじみしてしまう……。
「あ、フェリス様、この竜王陛下、素敵ですっ」
フェリスの魔力で二人で浮遊してるので、竜王陛下の天井画に近くなる。
「レティシアはどのレーヴェを見ても素敵だと言う……」
「だってどの竜王陛下も素敵です! 高いところの絵は、いつもは遠くて見えにくいから、フェリス様がこうしてくださるとよく見えて嬉しいです……!」
「僕の姫君は、いつも、僕より竜王陛下に夢中だ……」
拗ねたふりをするフェリス様が可愛い。
「そんなこと全然ありません! レティシアは、フェリス様が一番! 竜王陛下は二番です!」
(それはずいぶんひどい話だ、我が娘よ。オレの神殿だってのにな)
「え……? フェリスさま、いま何か仰いました……?」
「何も言ってないよ。さあ、レティシア、早く行こう。オリヴィエに叱られてしまうよ」
しっしっと何かフェリスがはらうような仕草をして、レティシアはきょとんと琥珀の瞳を見開いたが、
足の下の地上が遠くて、優しい眸で人の子らを見下ろす竜王陛下の絵が美しくて、フェリスの腕が心地よくて、何処か不思議な囁きを深く思い悩むような気持にはとてもなれなかった。
新入学、新入社員、転職、引っ越し、新しい生活を始められた方々、おめでとうございます!
素敵な新生活をお祈りします!
桜が散ってしまうねーと、桜の池の傍で愛犬王子と惜しんでたら、身体が冷えて(笑)、今夜中に更新したいあとちょってで……と書きつつ、昨夜寝落ちしたあやでした(笑)
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