初恋の姫君は、竜の神殿にいる 31
「おじいちゃんが、いつでもレティシアをこの背に乗せて飛んであげるのに……」
「いけません。義母上がきっとお倒れになります。レティシアの仲良しのフェリス宮の精霊さんは、そんな何処かの偉大な我儘竜ではありません。きっと、僕に似て控えめな精霊さんです」
「……ん? フェリスに似て控えめ? ……控えめ? どうもディアナの言葉も昨今は難しくなったようだな?」
わざとらしく、レーヴェは艶やかな黒髪を揺らして、可愛らしく小首を傾げまくっている(……まったく可愛くないが)。
「いやまあ戯言はおくとして。……なあ、フェリスよ、誰かを好きになるときに、至らぬから好きになるわけでも、偉大だから好きになる訳でもあるまい? おまえだって、孤立無援なレティシアが哀れだから好きなわけでも、将来めちゃくちゃ美人になるのを知ってるから、好きなわけでもあるまい?」
レーヴェの言葉に、フェリスはリリア神の嘆きの声を思い出す。
(どうしてあなたはいつも)
(どうしてあなたは昔から、自分には不似合いな娘ばかり、愛すのか?)
と、フェリスに向けて、レティシアの姿で、女神は責めていた。
あのとき、それは僕じゃない、とフェリスはリリア神に答えた。
偉大な神の身で、地上の人の子の娘を愛したのはレーヴェだと。
「だから、どうして、レティシアは僕をオシてくれるのか? なんて、言われてもなあ? 好きなんて、理屈じゃないだろ? その子が、何かしてくれるから好きになる訳じゃない。その相手から、何か見返りがほしいわけでもない。……もう、ただの本能だ。……おまえだって、レティシアがそこにいるだけで、愛しくて可愛くて、どんな望みも叶えてやりたくなるだろう?」
最愛の后の、ディアナを守って、レーヴェ、の言葉を、千年後もずっと叶え続けてる人が言うと、説得力がありすぎるけれど……。
「はい、レーヴェ……、わかります」
面映ゆげに、フェリスは、偉大な御先祖の言葉に頷いた。
以前は、わからなかった。
自分は人より情が薄いから、人々の言う愛も恋も情もわからないまま、ただ一人、孤独に生きて、孤独に死ぬんだろう。まさに氷の王弟殿下とは言い得て妙だ、と自嘲気味に思っていた。
でも、いまは、わかる。
フェリスはレティシアの為に何かしたいし、レティシアの為に生きたい。
どうしてレティシアはこんな僕を推してくれるんだろう? とはいまも思うけど、誰かを好きだとか、誰かを大切にしたいとか、レティシアをこの世のすべてのわるいものから遠ざけて守りたい、という気持ちは、理屈ではなく、レティシアがただそこにいるだけで湧いてくるものなのだということを、フェリスは、あの何も欲しがらない小さなお姫様から教わった。
「もしやルーファスより鈍いんじゃね、うちのフェリス? と時々思うんだよなー、じいちゃんとしては」(from竜王陛下)
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コミック三巻表紙❤
五歳で、竜コミック連載