サリアの災いを呼ぶ姫 9
「フェリスよ。薔薇の精霊たちが、サリア王宮で好き放題やりだして、それもオレのせいにされてるんだが?」
自室に引き取って、剣呑な表情のフェリスのもとに、レーヴェが舞い降りる。
「薔薇の精霊たちが? レーヴェの名でいったい何を?」
薔薇の精霊たちが、フェリスも賛成よね、うん、きっとフェリス喜ぶわ、怒られない筈! とざわめいてたがレティシアに夢中で、彼女たちの動きまで把握してなかった。
「私達の薔薇の姫に意地悪した宮は飾らん、て枯れまくってる」
「オリヴィエと話すから、誰も近づけてはいけないよ、て言ったのに、レティシアを入れてしまうし。困ったものですね」
ちっとも困った様子でなくフェリスは言った。
「それはおまえが悪い。フェリスの魔力をレティシアに入れたなら、下級の精霊たちには見分けがつかなくなって当然だ。庭の子たちはともかく、それも狙いのうちだろう?」
「御意。薔薇の精達の悪さがレーヴェのせいになってるのは何故なんですか?」
「レーヴェ神が花嫁交換にお怒りだと。まあそれは当たってるな。オレもお怒りだ。レティシアの両親の呪いか、レーヴェの呪いだって騒がれてるな。フェリスの呪いとは思わないのかね?」
「僕は呪わなそうに見えるんでしょうか? 占い師もろとも、王妃宮ごと破砕したい気分なんですが」
今朝マーロウ師が釘を刺しに来たばかりなのに、そんなにしょっちゅう他国の建物を破壊してはいけないだろうなと抑えているのだが、泣いているレティシアを見ていると、自制心が吹き飛びそうになる。
「うん。やりすぎるとたぶんレティシアに引かれるから、温厚にな。レティシアは、私が守ってあげなきゃ、な優しいフェリス殿下を愛してるからな」
「……レーヴェは、レティシアが異界で生まれ、前世の記憶を持ち、二度も両親を早く失ったことを心を痛めていること、御存じでしたか?」
「うん。結婚前に、フェリス様に黙っているのは悪いだろうか、ちゃんと告白しなくてはって気にしてたよ。フェリスはそんなの気にしないよって優しい精霊さんのオレが言っといたから」
「あなた、何でも勝手に」
「え? だって気にしないだろ、そんなの? 前世の記憶があったら嫌いにでもなるのか? お父さんはそんな残念な男にフェリスを育てた覚えはないぞ」
「お父さんじゃないでしょ、レーヴェは! まったく気にしませんが、レティシアが気に病んでいたなら、早く気付いてあげたかった。……なんで僕が知らないのに、レーヴェ、相談されてるんですか」
「オレ、これでも神様だし、相談しやすいタイプだから?」
「神様なら、相談された時に、レティシアが呪われてないってちゃんと安心させてあげて下さい」
いつもなら子供っぽい嫉妬で拗ねるけど、さすがに呪いや災いがどうのとなると、レーヴェが安心させてあげたほうが、フェリスより安心できるかも、と。
「サリアの王宮で、レティシアを呪われた姫だの貶めたのは、レティシアを王位に推す者達を蹴散らす為だから、レティシアの前世とはまるで関わりない、ごく現実的な話だがな」
「五歳の子供にも傷つく心があるとは、誰も考えないのでしょうか」
むしろ不思議な気持ちになる。
フェリスが幼い時も、寵姫の母を失った哀れな王子、と聞こえよがしに嘲笑う貴族の男がいた。
いい歳をした大人がだ。母親を亡くして泣いてる子供相手にだ。
そのときは悲し過ぎて何を言われているのかわからなかったのだが、
今から思えば、あれは決闘案件だった。自分よりも母の名誉の為に闘うべきだった。
「ああ、レティシアが不思議がってたな。サリアでもここでも、誰も私の気持ちなんてどうだっていいのに、フェリス様は私の気持ちを聞いてくれるの、精霊さん。フェリス様は不思議な人なの。あんなにいい方は、きっと悪い人に利用されちゃうわ。だから、私、お人好しのフェリス様を守ってあげなきゃいけないと想うのって」
「僕が僕の婚約者のレティシアの気持ちを気にするのは至極当然ですが、それ以前に、嘘の占いをして他人の人生や、国の決定を歪めようなんてものは、許せません」
何をどう間違ったら僕がお人好しに見えるんだろう、と甚だ疑問を感じるが、レティシアにそんな風に勘違いされてるのは、レティシアが片手によく持ってるくまのぬいぐるみのように、ふわふわとくすぐったくて心地がいい。できるだけ、そういう人でいたい。優しいレティシアに守って貰える優しい王弟殿下で。
「ディアナの神殿とディアナの魔法省から不愉快を訴えられたら、王妃に唆されたミゲル本人より、サリアのギルドが困惑するだろうなー」
「そうですね。シュヴァリエに春を呼ぶ薔薇の姫を貶めることは罪深いと自覚して頂きたいです。
……いますぐ五体を引きちぎってやりたいのを、謝罪の手紙を書かせるには腕が必要、と耐えてますから」
サリア王宮を鏡に映してみると、王妃の庭の薔薇が揃って枯れており、王妃が不機嫌そうに怒鳴っていて侍女たちが困っている。魔導士や占い師が呼ばれ、そのなかの一人、いかにも顔色の悪い男が問題のミゲルのようだ。まだディアナ神殿と魔法省からの不快の通達は、彼にまで届いてないのでは? と思うのだが、既に顔色は真っ青だ。
イザベラ王妃の首にはフェリスが贈った紅玉石の首飾りが輝いている。
「レーヴェ、あの紅玉石はやはり所有者の邪気を集めてしまうのでしょうか?」
「でもあれ自体に邪気がある訳じゃないんだよなー。イザベラは禍々しさが増してきてるが、サリア王宮そのものも、レティシアを失ってどうにも気が澱んでるな」
「レティシアを大切にしてくれない処には返しません。もう、うちのレティシアですから」
「フェリス。すっかり立派な大人になって、お父さんは嬉しいぞ」
「同じ貌で変な小芝居やめてください!」
にこにこ笑いながら竜王陛下は、最愛の末裔が怒りで暴発しないように、フェリスの金髪をくしゃくしゃと撫でて、可愛い子孫の竜の気を緩めていた。
久々の双子(親子というか、じーじと孫、笑)漫才
推し友のレーヴェ的には、ちびちゃん気にしてたから、やっと言えてよかったな~と
今年初のすいかを一昨日頂いたのですが、美味しかったですー!
熊本のすいかでした♪
◆◆◆五歳で、竜の王弟殿下の花嫁になりました
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コミック三巻表紙❤
五歳で、竜コミック連載