サリアの災いを呼ぶ姫 8
「レティシア様。オリヴィエ様はあのどのような御用件で……いえ、もちろんお話したくなければ……」
んしょ、とドレスを着替えさせてくれながら、ハンナが問いかける。
小さな身体。レティシアの気持ちもこの身体も、いまのサリア王室にとってはいらない。
邪魔だったから、島流しのようにディアナに送られた。
島流し先にしては、ディアナのほうがずっと裕福だけれど。
生きる。それがお母様とお父様の願いなんだから、と想ってたけど、サリア王宮にいると、レティシアが生きたところで、むしろ叔父一家の邪魔になるばかりでは? と運命とやらに嘲笑われているような気がした。
「私が災いを呼ぶ姫だから、フェリス様にもディアナにもふさわしくないと……」
「神殿はなんでそんな無礼なことを! レーヴェ様の罰があたりますわ!」
「神殿ではなく、サリアから。叔母様の占い師が占ったと。災いを呼ぶレティシアでなく、従妹のアドリアナに花嫁交換をと」
「何と奇妙なことを……フェリス様がお怒りになるのは当然ですわ!」
ぽつりぽつりと言いながら、レティシアはアドリアナのことを思い出していた。
ディアナの変人王弟がレティシアを愛す筈がない、と意地の悪い従妹は言ってた。
アドリアナに意地悪される理由も、イザベラ叔母様に憎まれる理由も、思いつかなくて、レティシアはサリアで一人、途方に暮れてた。
前世では、ただ生きてるだけで人に憎まれるなんて体験のない薄い娘だったから。
ここにいても誰かの邪魔にしかならない。
お父様やお母様のように、小さなレティシアもサリアの為に何かしたかったけど、これではとても役に立てない。
ディアナ王弟との婚姻は、レティシアがたったひとつ、この身と引き換えに、サリアに与えられる祝福になると想ってた。
結婚相手だというのに、ここに来るまで、フェリス様を大事に想うことなんて考えてなかった。
でもいまではとてもフェリス様が大事。優しいディアナの人たちも大好き。
フェリス様やディアナの人達に厄災を及ぼすくらいなら、嫌だけど帰る、と想うくらいには。
「ハンナ。私、フェリス様といたい、ここにいたい……」
フェリス様といると、レティシアは不気味でもなければ、おかしくもないんじゃないかなって。
何も災いなんて持ってないんじゃないかな、って思える。
とても自然に息ができる。
でもそれって、レティシアばかり幸せにしてもらって、フェリス様に特典がなさすぎなのでは……
と心配だけど……。
僕の大切な姫君、と言ってもらうたびに、そんな姫君では全然ないけど、その言葉にふさわしい自分であれたら、と。
「もちろんでございますよ! レティシア様は私達の薔薇の姫なのですから。何の心配もありません。
その占い師とやらは、きっとすぐに己の不見識を心の底から後悔しますわ」
「フェリス様が抗議なさるから?」
「そもそも、竜の王家ディアナの花嫁を奪えるなどと考えるほうが了見がおかしいと思いますわ。ディアナの地を踏まれたときから、レティシア様はもうレーヴェ様の娘、私達の姫君なのですから。サリアの三流占い師……御無礼を……が、髪一筋といえど竜王陛下の美しい愛娘に傷をつけることなど叶いません」
にこり。ハンナがそう言って優しく抱きしめてくれると、やんちゃな竜王陛下が守って下さってるような気がして、レティシアは何だか肩に入ってる力が少し抜ける気がした。
ディアナ人はレーヴェが大好きなんですが
神代の昔から、竜王陛下は「占いなんて都合のいいときだけ信じりゃいいんだよ」
という現実派の竜なので、べつに迷信深い訳ではないという(よその占いとかちっとも怖がらない笑)
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