サリアの災いを呼ぶ姫 7
「まあ、レティシア様、どうなさいました、その御姿……」
「ハンナ、ごめんなさい。走ったから、ドレス、少し汚してしまって……」
「ドレスなど。お怪我ございませんでしたか?」
「うん。転びかけた時に、フェリス様が助けて下さったから、でもサキやリタやフェリス様に選んだ薔薇が……」
「我が姫の選びし薔薇たちよ、我が姫のもとへ」
レティシアがしょんぼりしかけると、フェリスの薄い唇が囁き、放り出してしまったはずの薔薇がレティシアの手の中に何だか誇らしげな顔で戻って来た。
「薔薇の精達がね、余計な話聞かせてごめんね、てレティシア」
「そんなことないです。薔薇の精霊さんは悪くないですって伝えて下さい、フェリス様」
ふるふる、レティシアは首を振る。
それに、御墨付きを頂いた。
ディアナの有能魔導士の婚約者様から、災いの姫なんかじゃないよ、って。
それは嬉しい、永い呪いを祓う、御守りのような言葉だ。
「髪やお化粧を直してもらっておいで、レティシア。出かけようかと思ってたけど、今日は一日、家に二人でいようか?」
「出かけても大丈夫ですー私、もう元気なので!」
「……無理してない?」
「全然! です! 嘘ついてないです。ね?」
レティシアもフェリス様の気分が何となくわかるから、フェリス様にもわかるかも? とレティシアはフェリスに、んしょ、と額を寄せてみた。
フェリス様の御顔、綺麗。
フェリスの腕の中で、ごっつんこしそうになりながら、フェリスの碧い瞳をまじまじとレティシアは見つめる。
うん。大丈夫。この美しい人はとても強い。
どんな禍々しい災いも、この人を傷つけたりできない、って信じられる。
「レティシア。僕はずっとこうやってレティシアと見つめあってても構わないんだけど、居心地悪そうだからハンナには下がってもらう?」
「え? え? いえ! すみません、私、うっかりフェリス様に見惚れて……き、着替えてきます! 泣いた顔みっともないし!」
フェリス様とにらめっこしてたら、何だか途中で癒されてほんわかしてしまってた……。
いや、癒し系と言うには、破壊力強い美貌なんだけど、我が婚約者様。
「泣き顔も、綺麗だよ。僕のレティシアはいつも可愛い」
「でも泣いた顔はフェリス様にしか知られたくないのです。お外ではちゃんとしたいのです」
「それはそうだね。化粧直しには僕は立ち会えないけど、気分が悪くなったら、僕の名を呼んで」
「はい」
「あの。何かあられたのですか、御二人とも? すみません、フェリス様、私がレティシア様を」
「いや、僕の結界がレティシアには効いてなくて、少し手違いがあっただけだ。気にしなくていい。
レティシア、オリヴィエに聞き損ねたけど、イザベラ叔母様のお気に入りの占い師の名はなんと?」
「……? イザベラ叔母様のお気に入りの占い師なら、確かミゲルと……。でも、その人はいつもの叔母様の機嫌を伺う人で……。私はフェリス様やディアナに、私のことで害がなければいいのです! 呪われた姫や不気味な姫扱いは慣れてますので!」
うー。明るく言ったつもりだったのに、フェリス様に悲しい顔をさせてしまった。失敗。
その占い師には、サリアに居た頃から、嫌な占いをされてたけど、いつも怯えてるみたいな人だったな。
叔母様に脅されたりしてたのかな。
「そんな無礼に慣れるべきじゃない。僕の愛しい妃、シュヴァリエの薔薇の姫、レーヴェの大切な娘を愚弄する者に、僕がレティシアの騎士として、正式な謝罪を要求しよう」
なんだか気配が不穏? だったけど、レティシアの名前いっぱいできた! 薔薇の姫はどうにも名前負けしてるけど、レーヴェ様の大切な娘はちょっと嬉しいなーと密かに想ったり。
「だ、大丈夫です、フェリス様。フェリス様が私を信じて下さるなら、謝罪なんて……」
「優しいレティシアがよくても、公式な文書として謝罪はさせるよ。その義母上へのふざけた書簡は後世にも残るし、そんな詐欺師に国の大切な占いを任せていては、サリアの方も気の毒だ。……レティシアは気にしないで、可愛いドレスに着替えておいで」
「あの、フェリス様。もしかして凄く怒ってらっしゃるんですか?」
「大切な婚約者を、まるで品物のごとく交換と言われて怒らなかったら、僕はいつ怒るの?」
う、うう?
フェリス様はレティシアをハンナに優しく頼んで、お部屋に帰られたけど。
フェリス様が私の為に怒ってくれてるのは嬉しいんだけど。
なんでだろう……?
あのレティシアの苦手な占い師の人、大丈夫なのかしら? てちょっと心配になるのは。
暑い日でしたが、皆様、大丈夫でしたか~?
私は昨日、薔薇園のお土産に可愛い薔薇の茶器を頂きました
薔薇の花びらみたいなカップの受け皿がとても可愛いので、
いつもよりいいお茶を煎れなければ! と思っています(笑)
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